C'est Toi

24


「ゲーム・・・!」
 アンジェリークは驚いたようにアリオスを見つめる。
 思いもよらない展開で、本当に驚いていた。
「ゲームでおまえが演じるのはプレイヤーが動かすキャラだ。顔も写ることはねえし、ほとんど肌も写らねえ。おまえのデビューものには、ぴったりだろ?」
「うん・・・」

 アリオスはそこまで考えてくれてたんだ・・・。

 嬉しい反面、少し複雑な感じがしてしまう。
「色々おまえもコスプレを楽しめるしな」
「エンペラーは?」
「俺もするぜ?」
 エンペラーならどんなコスプレだって似合うはずだと、アンジェリークは心密かに思って、嬉しかった。
 頬を赤らめながら、上目遣いで見つめてくるアンジェリークが可愛くて、アリオスは更に腰に回した手に力を込める。
 会議室に甘い雰囲気が漂い、誰もが微笑まずにはいられなかった。
「そろそろ会議を始めましょうか、エンペラー」
「ああ」
 文芸部のセイランが相変わらず冷ややかな雰囲気で話し、アリオスも仕事の際に見せる真摯な表情になる。
「では席に着いてくれ。今回は新しいプロジェクトを行うに当たって、主要メンバーに集まってもらった。もう、内示で判ってくれていると思う」
 アリオスは、やはり社長らしく堂々とした口ぶりで話した。
 その凛とした姿がアンジェリークにはとても素敵に映る。
「今回は、女性向けの18禁ゲームを発売する! その名も”L'Etoile Du Bonheur”」
 アリオスはホワイトボードにタイトルを発表して貼り付ける。
「今まで、男女の性を描いた18禁ゲームは、男性ユーザーをメインに作られ、女性向けは、ケツ入れ専門ホモセクシャルをテーマにしたものばかりだった。そこで、我”新宇宙企画”は、女性に、ロマンティックに、美しく、安心して遊んでもらえるように、女性が主人公の、女性のためだけの、18禁ゲームを作ることにした。それが今回のプロジェクトだ!」
 アリオスがホワイトボードを叩いて熱く語ると、誰もが拍手をした。
「第一段は、俺と”エンジェル・コレット”の”ゴールデン・コンビ”のお披露目作品”L'Etoile Du Bonheur”。第二弾は、オスカーとキャンディで”Calm Ta Joise”だ!」
 誰もが順当な組み合わせとばかりに、納得の上頷いてくれた。
 アンジェリークは、みんなと違う意味で嬉しいことがある。
 アリオスがちゃんと女優としての名前を考えてくれていたのが、何よりも嬉しかった。

 ”エンジェル・コレット”。
 凄く嬉しいわ、アリオス・・・。

「第一弾は、メインシステムとプログラミングに、大手ゲームメーカー”パニックス広場”出身の、ショナ、ルノー、うちの開発部からゼフェル、レイチェル。プロジェクトリーダーはエルンストだ」
 それぞれが拍手の中挨拶をする。
 アンジェリークは、こんな凄い所に自分がいていいのかと、思わずにはいられない。
「脚本は、俺、セイラン、ルウ゛ァの文芸チームが総力を挙げて行い、総監督は俺だ。衣装担当オリウ゛ィエ、ロケハン監督はウ゛ィクトールだ」
 次々に挨拶をしていくスタッフが、とても凄く思え、アンジェリークは妙に緊張していた。
「緊張してる?」
 横にいるレイチェルが優しく声をかけてくれるのが、嬉しい。
「うん、ちょっと」
「大丈夫よ。エンペラーがちゃんとフォローしてくれるから」
「うん」
 こういったきめ細かい気遣いは、女友達だからこそだ。
「出演者だが、デート部分と18禁部分は、俺と、ここにいる”エンジェル・コレット”が演じる。アンジェ」
 名前を呼ばれてアンジェリークは慌てて立ち上がった。
「あ、コレットです! 宜しくお願いします!」
 緊張の余りに、かくかくとした挨拶になって、バランスを崩す。
 アリオスがすぐに支えてくれて、何とか姿勢が崩れずにすんだ。
「こいつが俺の”パートナー”だからな。宜しく頼む」
 堂々と宣言されて、アンジェリークは真っ赤になった。
 それはアリオス流の、”俺の女に手を出すな”という威嚇だ。
「これから、以上の布陣で頑張っていくから、そのつもりでいてくれ」
「はい」
 会議に出たメンバーは全員がしっかりと頷く。
「アンジェ、一緒に頑張ろうな」
「うん、有り難う」
 アリオスが側で支えてくれれば、アンジェリークは頑張れるような気がした。
 一端、顔合わせの会議は終了し、各自が持ち場に戻っていく。
「アンジェ、この後会議だから、事務所の俺の部屋で待っててくれ。この後、メシでも食いに行こうぜ?」
「うん! 待ってる!!!」
 アリオスはアンジェリークの髪を軽くくしゃりと撫でて、僅かに微笑んでくれた。
 アリオスが会議に入るのを見送ってから、アンジェリークはアリオスの部屋に向かう。
 他の女優たちは、新宇宙企画でしっかりとした仕事を任されているが、アンジェリークは”エンペラー係”なので、ひとり暇なのだ。
 社長室に入ると、オートロックなので鍵が掛かった。
 その瞬間自分だけの空間となる。
 ソファに座って、参考に置いてあるロマンス小説を読みながら、うだうだとした時間を過ごした。

 ゲームか・・・。
 どんな感じに仕上がるのかな・・・。

 心の中で考えながら、期待と不安でいっぱいになる。
 初めてのことだけに、どうなるのか想像だに出来ない。
「ちゃんとアリオスの想像通りに演じられればいいのにな・・・」
 アンジェリークは大きな溜め息をひとつ吐く。
 読もうとしていたロマンス小説も、ゲームのことが気になりすぎて、うまく集中出来なかった。

 アリオスは守ってくれるって言ったもん・・・。
 大丈夫よね・・・?

 どんなゲームになるのか。成功に導くしかないと、アンジェリークは深く思った。
 色々考えを巡らせながらも、疲れに負けてアンジェリークは眠りに落ちていく。

 アリオスが迎えに来てくれた時には、アンジェリークはすっかり眠りに落ちていた。
「アンジェ、アンジェ」
 甘い声で名前を呼ぶと、僅かに瞼が動く。
「アンジェ」
 ゆっくりとアンジェリークが目を開くと、アリオスが抱き締めてくれた。離れていたのはほんの僅かなのに、この温もりが恋しくて堪らない。
 甘いキスをした後、二人は見つめあう。
「このままやりてえが、レストランの予約時間があるからな」
「そうね」
 アンジェリークはくすりと笑うと、アリオスの腕に自分の腕を上手く絡める。
「じゃあ行くか。お姫様」
「はいっ!」
 ふたりは幸せそうに食事に向かう。
 食事の後は、甘い甘いデザートが待っている--------

コメント

chatで生まれた、
「アリオスAV監督、アンジェ女優」物です。
アンジェちゃん初仕事が決まりました。
ゲームで頑張って演じるみたいです(笑)
エンペラーとの熱い夏。
あなたも経験してみませんか?(笑)
新宇宙企画のサイトでは、BBSにカキコするとエンペラーからレスがついてきます(笑)