「ねえアリオス、私以外の女の人としちゃイヤ・・・」 初めて彼女から”所有”を示す言葉が聞かれて、アリオスは思わず微笑んでしまう。 誰よりも聞きたい言葉に、彼はぎゅっとアンジェリークを抱き締めた。 「大丈夫だ。目の前にこんな良い女がいるのに、他の女なんて欲しいと思わねえよ」 「依頼とかも受けないで・・・」 消え入るような声に、アリオスは益々アンジェリークが愛しくなってしまう。 「おまえの専属だ。アンジェ」 「アリオス」 ふたりはしっかりと抱き合って思いを確かめあう。 ”言葉”には出してはいなかったが、ふたりは互いに恋をし合い、思いあっていた。 --------------------------- ”同棲”途中で夏休みになり、宿題やハウスキーピングの合間に、新宇宙企画のDVD出荷最盛期の為、午後の数時間だけ手伝いに借り出されている。 他の男優女優陣も同様である。 ”夏はエロの季節”というのを忙しさで感じるアンジェリークだった。 「アナタのデビューは秋ごろかな?」 出荷作業で仲良くなったエルンスト専用女優レイチェルが、興味深げに訊いてくる。 「・・・だって私、まだ、”試用期間同棲”してるだけだから・・・」 「そうなんだ。どれくらい?」 「三週間ぐらいかな」 恥ずかしそうに俯く彼女が愛らしくて、レイチェルは笑う。 「そうなんだ! いつもなら二週間一緒に暮らして大丈夫だったデビューなのに、よほど社長はアナタのことが気にいっているのね〜」 二週間・・・。私がふがいないからかな・・・。 急に沈んだ彼女に、レイチェルは慌ててしまう。 「違うわよ! ふつうは、同棲期間が終わったら少しお互いを見つめ合う機会が設けられるの。それをするのが嫌だから社長はずっとアナタを側に置いているんだよ!」 途端に次は真っ赤になる。 百面相する彼女が可愛らしくて仕方ない。 和気藹々と作業をしていると、ひとりの作業員が中に入ってきた。 「ねえ、社長のところにローズが来てるわよ!」 「ローズ?」 アンジェリークは何か判らず首を傾げる。 「ローズはね、売れっ子AV女優よ。男性向けのね」 「そうなんだ・・・」 「社長とも共演してたこともあるのよ」 社長と共演------- それだけで胸が苦しくなった。 泣きそうになっているアンジェリークにレイチェルは察して肩を抱く。 「大丈夫だって、アンジェ。昔のことじゃないの! ただ、共演しているだけで!」 「うん・・・」 切なそうに彼女は頷き、小さくなる。 自信なさげにしているアンジェリークが愛らしくレイチェルは思う。 誰が見たってエンペラーがアンジェに夢中なのは明白なのにね・・・。 「ほら、仕事しよ? 一段落ついたら様子見に行けばいいしね?」 「うん」 レイチェルの心遣いが嬉しくて、少し気分が良くなった。 DVDの箱詰め作業が終わり、アンジェリークとレイチェルは”監督室”と言う名の”社長室”に様子を伺いにいった。 ドア越しに二人の声が聞こえ、二人は耳を傍立てた。 「・・・外部出演はNOなのね?」 「まあな。今は監督業が楽しいからな」 「私も引かないわ。AV女優五周年記念だもの、気合いが入るわ。やっぱりテクニックの面においても、何に置いても、あなたが最高だもの。あなたに抱かれたら他の男はみんな最低よ」 え・・・? アンジェリークは顔色をなくし一瞬めまいをする。 「共演だけだから、ね」 「うん」 再び声が聞こえる。 「とにかく破格の出演料よ? 考えておいてね?」 その声が聞こえると同時に、椅子を引く音がした。 「隠れよ!」 レイチェルに言われて、アンジェリークは慌てて隠れる。 出てきた女はとても艶やかで大人の女性そのもの。 アンジェリークは益々暗い面持ちになった。 「ちょっとアリオスに話してくる・・・」 「しっかりね?」 レイチェルに励まされて頷くと、彼女はドアをノックする。 「誰だ?」 「アンジェです」 その声に、アリオスは内心”来たな”と思いながらドアを開ける。 「入れ」 「はい」 アンジェリークが部屋に入るのを見届けてから、レイチェルはドアを見つめてしっかりと頷いた。 「頑張れ、アンジェ」 「あの・・・」 上目遣いで見つめながら、彼女は思い詰めたように言葉を震わせる。 「何だ?」 「ローズさんとは・・・、共演するの?」 切なく泣きそうな声で、やっとのことでアンジェリークは言った。 「アンジェ…」 「私じゃ…だめなの?」 アリオスは応えない。 「…おまえが望むなら…」 そっとアンジェリークに近づくと、彼女をぎゅっと抱き締める。 「俺はローズを選らばねえ…。選ぶのはおまえだけだ、アンジェ」 「アリオス…」 優しくキスをすると、アリオスは電話に手を伸ばす。 「アリオスだ。スタジオでカメラテストをする。 準備を頼んだ」 いよいよだ… アリオスの腕の中で包まりながら、アンジェリークは緊張感を覚える。 「スタジオの準備が終わったら、テストを開始する」 アリオスの声は真摯に響き、アンジェリークはただ彼を見つめることしか出来なかった------- |
コメント
chatで生まれた、
「アリオスAV監督、アンジェ女優」物です。
甘い新婚さんのような同棲です。
いつまで続くのか(笑)
今のところまったり連載中。
終わりもわからんがいつまで続くのか(笑)
この『ローズ』という名に爆笑した方、
お友達になりましょう(笑)