BE MY WIFE

Chapter2


 アンジェリークはアリオスを見つめることしか出来ない。
「なんて顔してやがる・・・」
「えっ!?」
 気がついたときにはもう遅くて、アンジェリークは手を取られ、抱き寄せられていた。
 どうしていいか判らず、うろたえる彼女に、彼は微笑みを浮かべる。
 その甘さに、アンジェリークは頬をほんのりと紅く染め上げた。
「あの・・・」
「可愛いなおまえ。俺が選んだだけはある・・・」
 甘く囁かれて、アンジェリークは心臓が早鐘を打っているのを感じる。
 唇がゆっくりと近付いてくる。
 麻痺しているかのように、潤んだ大きな瞳を、アリオスに向けることしか、アンジェリークにはもはや出来なかった。
 その初々しい反応が、アリオスには可愛くて堪らない。
 このまま押し倒したい衝動を何とか堪えて、アリオスは、アンジェリークの甘い唇に口づけた。
 最初はゆっくりと優しくキスをする。彼女の唇をしっとりと包み込むように、甘く、切なく。
 少し震える華奢な体を支えてやりながら、彼女にとっては、これが初めてであることを感じた。
 舌を使ってゆっくりと腔口内を愛撫してやれば、彼女は全身を甘く震わせた。

 こんな感覚今までなかった・・・。

 アンジェリークはその甘さにしばし溺れる。
 アリオスもまた、彼女の甘い唇とその初々しい反応に、夢中にならずにはいられない。

 もう・・・、息が・・・、出来ない・・・。

 ようやく唇を離されて、アンジェリークはそのまま彼の腕にしがみついた。

 この反応・・・。性格に加えて、体も素直なのか・・・。

 アリオスは本当に嬉しくて、彼女を思わず抱きすくめてしまう。
「あ・・・、アリオスさん・・・」
「”さん”はいらねえよ、アンジェ。今日から俺たちは夫婦だからな?」
 その腕の温かさ、香りがアンジェリークをくらくらとさせる。
「さあ、行くぞ? おまえの父親も教会前で待っている・・・」
 ごく自然に、アリオスはアンジェリークの手を引くと、そのまま教会へと誘った。


 パイプオルガンの荘厳な音が鳴り響く。
 その音に導かれて、アンジェリークは父親と、アリオスの待つ場所まで行き、そこからは彼と一緒に祭壇まで向かった。

 神様に誓っちゃうのか、私・・・。

「アリオス、あなたはアンジェリークを病める時も健やかなる時も愛することを誓いますか?」
「誓うぜ」
「アンジェリーク、あなたはアリオスを病める時も健やかなる時も、愛することを誓いますか?」
「誓います」
 言葉が意思よりも先に自然と出てしまう。
 ベールを取って、アリオスはゆっくりと口づける。
 長い長い口づけを頬を染めて受けるアンジェリークに、誰もがこれが政略結婚だとは思えない。
 指輪の交換をして、二人は神の下で夫婦となった。


 披露宴は、財界の大物も参加した、とても大規模なもので、慎ましく育ったアンジェリークにとっては気後れしてしまう。
「大丈夫だ」
「はい・・・」
 テーブルの下で、アリオスが手を握って、優しく包みこんでいる。
 その温かさは、安堵感と切ない甘さの両方を運んでくれる。
 アリオスをちらりとはにかんで見つめるアンジェリークと、それを優しく見守るアリオスに、誰もが二人の間に愛情を感じずにはいられない。
 お色直しも四回行い、その度にレイチェルが付いてくれた。
 それ以外は、アンジェリークの手をアリオスが握り締めていてくれた。



 披露宴の後、二次会などは特に行わず、二人は挨拶を終えた後、ホテルのスウィートに向かう。
「ドレス姿も綺麗で良かったが、今のワンピースも可愛いぜ?」
「あ、有り難うございます、アリオスさん・・・」
 腰をすっと抱き寄せて、アリオスは耳元で囁く。
「”さん”は止めろ、アリオスだけでいい。敬語もいいからな? 遠慮するな、夫婦なんだからな」
 ”夫婦”その響きに戸惑いを感じながら、アンジェリークははにかんだように頷いた。
 スウィートルームの中に入ると、その豪華さに、アンジェリークは息を飲んだ。
「おまえとの記念すべき夜なんだから気合いをいれた」
 ”記念すべき夜”。
 その甘い言葉に、身を堅くしつつも、アンジェリークは身体が甘く潤うのを感じた。
「緊張しなくてもかまわねえからな? 今夜は、思い出の夜にしような?」
 アンジェリークは、耳まで真っ赤にして、コクリと頷く。
 恐怖感がないわけではない。
 だが、アリオスかくれる温かさは、それ以上の安らぎを彼女に与えてくれていた。
 入浴を先に済ませることになり、アリオスがシャワーを浴びた後、アンジェリークも入ることになった。  ゆっくりめに髪と身体を洗った後、浴槽に入る。
 お湯に浸かり、疲れを癒すと、肌だけが敏感になっているのを感じた。

 経験豊富な彼が、経験のない私なんかに、満足しないだろうな・・・。

 そう思えば思うほど、彼女は自信を無くしてしまうのであった。

 入浴後、少しゆっくりとすることになり、二人は隣り合わせでソファに座る。
 テーブルには、ルームサービスで頼んだ、ウォッカとハーブティが並んでいる。
 アリオスはウォッカを、アンジェリークはハーブティーを飲む。彼女はもちろん、高ぶった心を落ち着かせるためであった。
「美味しい…」
「どうだ落ち着いたか?」
 艶やかなローヴ姿のアリオスが、優しく囁いてくれて、アンジェリークは胸をどきどきさせながら頷く。
 ローヴの前が肌蹴ている彼の様子が、とても艶やかで、思わず目を反らせてしまう。
 その反応すらも可愛くて、アリオスはフッと笑った。
「アンジェリーク…」
 アリオスは優しく包み込むように彼女を抱き寄せると、耳元で囁く。
「ベッドに行くぞ?」
 アンジェリークは恥ずかしさのあまり、目を強く閉じて、そのまま彼にしがみつく。
 アリオスは、アンジェリークを抱き上げると、ベッドへと連れて行った----
TO BE CONTINUED…

コメント

「顔を知らないままに、アリオスと結婚をしたアンジェリークの物語です」
次回初夜です…。
新婚さんの甘い夜(笑)