BE MY WIFE

Chapter12


 飛行機の中でも、アンジェリークは目を真っ赤に晴らして、震えていた。

 お父さん…!!!!

 アリオスはアンジェリークの身体を引き寄せ、守るように抱き締める。
 彼女は彼の手をぎゅっと握り締めて、苦しくも悲しい心を預けた。
「大丈夫だアンジェ、俺がついてる」
「うん、アリオス…」
 夫になったばかりの相手が、アリオスでよかったとアンジェリークは思う。
 彼はとても頼りになり、包容力もある。
 アリオスと結婚してよかったと、思わずにいられなかった。
 良い結婚をしたと思った矢先に、父親が交通事故で他界するとは、思ってもみなかった
「アンジェ・・・」
「アリオスはいなくなったりしないでね? アリオスは絶対・・・」
 途中で波ファ郡で姉妹、アンジェリークはこれ以上の言葉を発することが出来やしない。
「俺は絶対におまえを置いていったりなんかしねえから…」
「うん…」
 まるで幼子のように、アンジェリークはアリオスの胸にしっかりとしがみ付いている。それを彼は優しく包み込んでいた。
「・・・お父さんに・・・、孫の顔を見せてあげたかった・・・」
「そうだな…」
「なのに・・・、赤ちゃんが出来る前に死んじゃうなんて・・・!!!」
 アリオスは余りにもアンジェリークが痛々しくて、愛しくてたまらなくて、華奢な彼女の躰をずっと抱き締めていた-----

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 アルカディア空港について、彼女の実家に向かう。
 他人が運転する車を嫌がったアンジェリークのためにと、アリオスは自分の愛車のスポーツカーで彼女の実家に向かった。
 アリオスに目で縋りつきながら、彼女は震える身体を抱き締めた。

 静かに車が駐車場に入った。
 車から降りると、アンジェリークは現実を突きつけられるのが嫌で、脚に力が入らない。
「大丈夫だから、アンジェ…」
「うん、アリオス・・・」
 アリオスに支えられるようにして、アンジェリークは家に向かう。
 その後ろを神妙な表情のアリオスの秘書カインが後に続いた。
 玄関のインターフォンを押し、アンジェリークは緊張のあまり、身体を震わせる。
「はい? アンジェ!!!」
「帰ってきたわ、アリオスと一緒に」
「待って直ぐ開けるから」
 母親は慌てて玄関に向かうと、ドアを大きくあける。
「アンジェ!! それにアリオスさんまで!!」
 母親は幾分かやつれているようだったが、それでも気丈に二人を迎えてくれる。
「お父さんの告別式は明日、ミカエル教会でだからね、アンジェリーク」
「・・・はい」
 告別式と聴かされて、いよいよ現実味が帯びてくる。
 リビングに案内されて、アンジェリークはソファに腰を下ろしたが、アリオスを掴んだまま離さない。
「・・・お父さんはどんな事故だったの?」
 震える声で、アンジェリークは何とか効くことが出来た。
「相手は飲酒運転だったの・・・。
 お父さんは避けようとしたんだけど巻き込まれて・・。
 お父さんのほかにも、この事故に何人も巻き込まれたのよ・・・。
 しかも相手は無免許だったのよ・・・」
 母親は途中まで淡々と離していたが、最後の言葉は涙で聞こえずらい。
「あなたが、本当に幸せだと電話で話してくれたでしょう? あの時、お父さんは本当に喜んでたわ・・・。
 早く、あなたたちの子供が、孫が見たいといっていたのに・・・」
「お父さん…っ!!」
 我慢していた感情が一気に噴出す。
 アンジェリークはアリオスの胸に思い切り顔を埋めると、そのまま大声で泣き始め、いつしかショックからか気を失っていた。
「気を失った見てえだ。どこか部屋はねえか?」
「だったら、あの子が使っていた部屋があります」
「案内してくれ」
 アリオスはアンジェリークを抱き上げると、アンジェリークが使っていた部屋に彼女を連れて行き、ベッドの上に寝かせる。
「俺がついてますから、お義母さんも休んだほうがいい」
「はい・・・」
 アンジェリークの母親は頭を下げると、寂しそうに笑ってアリオスを見た。
「このこ、電話を旅行先からくれたときに、すごく嬉しそうだったんです。
 あなたと結婚できて幸せだと…。
 出会って少ししかたっていないけど、あなたを愛していると…。そう言ってましたわ」
 母親の言葉が温かい温もりとなって、アリオスの胸に下りてくる。
 彼はまだあどけなさが残るアンジェリークの寝顔を見つめ、心が愛しさで溢れそうになるのを感じる。
「では、アンジェを頼みます」
「はい」
 アンジェリークの母親が部屋を出たあと、アリオスはアンジェリークの唇に愛しそうにキスをした。


「・・・んんっ・・・」
 気がつくと、ついこの間まで使っていたベッドに寝かされていた。
「アリオス…」
「ここにいる」
 彼が傍にいてしっかりと手を握りしめ、彼はアンジェリークに顔を近づける。
「有難う、アリオスがいると安心できるから…」
「今日は無理すんなよ? ゆっくりと休め」
「うん・・・。アリオス、一緒にいてね? 傍で眠ってね?」
 子供のように甘えるアンジェリークを、アリオスはしっかりと支えながら静かに頷いた。

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 翌日、葬儀は滞りなく済まされた。
 父親の亡骸と対面した時は、アンジェリークは大声で泣いたが、アリオスに支えられて、何とか火葬まで付き添うことが出来た。
 この後の処理は、アリオスが弁護士を紹介してくれ、アンジェリークの母親に有利なように取りはかれるよう、手配してくれている。
 父親が一代でここまで外食チェーンも、アルヴィースグループに吸収されることはなく、独自に歩むことも決定されている。
 もちろん後ろ盾はアルヴィースがしてくれる。
 自分の元には何の利益もないのに、しっかりとここまでしてくれるアリオスに、アンジェリークは感謝せずにはいられなかった。
 彼女の弟マルセルが、無事に会社を告げるようになるまで、彼女の母も社長として頑張っていくことになっている。
 ともあれ、少しは安心したアンジェリークだった。


 葬儀の後、アンジェリークは新居に向かう。
 アリオスとの愛の巣はかなり大きな邸宅であったが、葬儀直後の彼女にとっては、屋敷を見回る余裕すらなかった。
 寝室に入ると、アンジェリークは疲れきったように溜息を一つ吐く。
「・・・これからもうお父さんに逢えないなんて、信じられない・・・」
「アンジェ…」
 涙ぐむ彼女をアリオスはぎゅっと包み込む。
「これからは俺がいる。
 俺がお前を守ってやるから…」
「アリオス・・・っ!!」
 そのまま二人はしっかりと抱き合うと、ベッドの上に倒れこんだ。

 アリオス…。
 あなたがいないともう生きられないから・・・
TO BE CONTINUED…

コメント

「顔を知らないままに、アリオスと結婚をしたアンジェリークの物語です」
ただいま、「エロ祭り」開催中です(笑)
やっぱエロはええよな〜!!