ONLY YOU


 あまりにも情熱的に抱き締められ、囁かれて、アンジェリークは息が甘く詰まる。
「アリオス・・・」
 唇を何度も塞がれて、首筋に冷たい唇を感じる。
 触れられた場所から情熱が咲き乱れた。
「・・・アリオス、本当にジョアンナさんと結婚しないの?」
「するわけねえだろ! あんな性悪女」
 アリオスは忌ま忌ましく呟くと、アンジェリークの制服のリボンを簡単に外してしまう。
「アリオス・・・」
「おまえを妊娠させて、行かせないのは本気だからな。俺はおまえを放す気はさらさらねえからな。何のために、急きょ、この部屋に契約し直したと思ってるんだよ」
 その間も、アリオスの手は休みなく動いて制服を脱がせ、アンジェリークの息は更に乱れていく。
「結婚するから、広めの部屋だと思ってたもの・・・」
「あれは、おまえの部屋だ。寝室は俺と一緒だからな」
「あっ・・・!」
 とうとう下着姿にされ、潤んだ瞳で恥ずかしそうに、アンジェリークはアリオスを見る。
「アリオス・・・、そばにいていいの?」
「ああ。そばにいろ。ずっとだ・・・。俺は本気だぜ。おまえを妊娠させること。おまえとガキが増えても、ここは十分に暮らせる」
 アリオスの情熱を垣間見て、アンジェリークはようやく彼を受け入れるように抱き締めた。
「年がいもなく、17歳のおまえに一目で惚れちまったみてえだ・・・」
「アリオス・・・。世界でいちばんあなたが好きなのよ? 本当に大好きなのよ!」
 ようやく素直にアリオスに自らの気持ちを伝えることが出来る。
 アリオスもまた、甘い微笑みを浮かべると、気持ちごと包み込むような、とろけそうなキスを贈った。
 アンジェリークはキスの後、うっとりとアリオスを見つめると、初めて自分から彼を引き寄せる。
「キスして? もっと」
「しょうがねえな」
 ふっと甘く微笑むと、アリオスは極上の甘さのキスを送る。
 何度も何度も啄むようなキスをして、頭の芯からとろけそうになった。
 甘い吐息を吐いて見つめると、彼は応えるようにぎゅっと抱き締めてくれる。
「行くなよ? どこにもな」
「うん・・・。行かないわ。そばに置いてくれるの?」
「ああ。ここで一緒に暮らそうぜ?」
 しっかりと抱き合った後、アリオスがもぞもぞと動きだす。
「えっ!? あ・・・!」
「続きをするぜ? 一緒に暮らしたら、毎日だぜ? おまえを妊娠させなくっちゃならねえからな」
 キスをされて、もう何も考えられなくなる。
「愛してる」
 ようやくたどり着いた温もりに漂いながら、アンジェリークはアリオスに身を任せた--------



 八時近くになり、アンジェリークはアリオスに家まで送ってもらう。
 今日は、送ってもらうだけではなく、アリオスが両親に逢ってくれる。
 アンジェリークがここに残り、アリオスのそばにずっといられるようにと、心を砕いてくれるのだ。
「ちゃんと判ってくれるかな? お父さんとお母さん・・・」
「ちゃんと話せば判ってくれるはずだ」
「うん・・・。そうね」
 アンジェリークは頷くと、アリオスに甘える。
 愛する男性と結ばれた幸福感が躰の隅々まで染みとおり、彼女はふわふわとした気分だった。
「任せとけ」
「うん、信じてるから」
 車の心地好い振動に揺られながら、アンジェリークはアリオスに希望を託していた。


 アリオスは車を一旦自分の実家に止めてから、ふたり揃って彼女の実家に行く。
 アリオスと甘く愛し合った余韻なのか、アンジェリークの歩みがおぼつかない。
「アンジェ、大丈夫か?」
「うん、平気・・・」
 明るく笑うと、アンジェリークは恥ずかしそうにアリオスに掴まる。
「そのうち馴れるから、心配すんな」
「うん」
 ふたりはゆっくりと、アンジェリークの自宅に向かった。
「ただいま」
「遅かったわね、 アンジェ。ちゃんと連絡しなくっちゃダメでしょ」
 母親は、少し窘めるように言いながら、玄関先に出てきた。
 すると一緒にいる青年に、彼女はほっとしたように微笑んだ。
「あら、アリオスくんが一緒だったのね。だったら安心だけど」
「こんばんは。少し、話があるんですが、構いませんか?」
「ええ。とにかく上がって頂戴」
「はい」
 ふたりは甘い雰囲気を漂わせながら廊下を歩く。
 それだけで、ふたりの関係がすぐにかいま見られた。

 よかったわね? アンジェ…。

 ずっとアンジェリークの想いを知っている母親は、直ぐに二人が、お互いの思いを認め合ったのを知り、とても温かな気分になる。
 同時に、アリオスがこの時期に一緒に話があると着たのは、ある程度、内容を想像してしまえる。

 アンジェを行かせないように、説得に来たのね…。

 ふたりは、リビングに通されて、ソファに腰を落ち着ける。
「ちょっと待ってね? お父さんを呼んでくるから」
「はい」
 母親がいなくなった隙に、アンジェリークの手をアリオスはしっかりと握る。
「ちゃんと説得してやるから」
「うん、ごめんね。私が最初から素直にアリオスに相談すれば、こんなことにならなかったかも知れないのに」
「おまえのせいじゃねえ。あの性悪女のせいだ」
 小さな声でアリオスとアンジェリークは話し、足音が聞こえてきた瞬間に離れる。
「アリオス君、久しぶりだね…。
 この間はいろいろ情報提供すまなかったね」
「いえ…」
 父親がソファ似腰をかけると、アリオスは彼をまっすぐ見つめる。
「お話があります」
「何かね?」
 彼はゆったりと笑うと、アリオスを見た。
「-------今すぐ、アンジェを俺にください」

 アリオス!!!!!!

 まさかいきなりだとは思わず、アンジェリークは驚いてアリオスを見る。
 アンジェリークの母はどこか嬉しそうに、声を上げている。
 だが------
 父親だけは、とても複雑で厳しい表情をしていた------


tawagoto…

例のシーンはまた後ほど。
次回は最終回
大団円でございます〜。

マエ モドル ツギ