朝、久し振りに身体が軽い気がした。 早めに目覚めたアンジェリークは、シャワーを浴びて身支度を整えた後、ルーフの付いたベランダのテーブルを綺麗にしてから、ルームサービスの朝食を頼んだ。 知っている限りの二人の好物を朝食メニューからチョイスしたつもりだ。 後はふたりを起こすために、再びベッドルームに向かう。 ふたりは同じ格好をして、ベッドの上で眠っていた。 ホント良く似ているわね・・・、あなたたちは・・・。 幸せな気分に浸りながら、アンジェリークはふたりの愛する者たちを見つめる。 するとゆっくりとアリオスの目が開いた。 彼の瞳が朝一番に写し出すのは、紛れもなくアンジェリークだ。 「おはよう、アンジェ」 「おはよう、アリオス・・・」 アリオスは乱れた銀色の髪をかき上げると、アンジェリークをじっと見つめる。 それがあまりにも素敵で、彼女は思わずドキリとしてしまった。 「ルームサービス頼んでおいたから・・・」 「サンキュ。今日、昨日より顔色がいいな?」 アリオスは上半身だけ起き上がると、指先を彼女の頬に伸ばし、その顔色を確かめる。 顔色がほんの少し良いだけでも彼は嬉しそうだった。 「うん、有り難う・・・」 アリオスは、かたわらに眠る息子を見つめる。 「昨日疲れてたんだろうな・・・。俺より早く起きて起こしてやるって言ってたが、どうだか・・・」 苦笑しながら言っている彼が、とても魅力的にアンジェリークは写った。 よかったね? レヴィアス・・・。 素敵なパパで・・・。 「ん・・・」 続いてはレヴィアスだ。 ゆっくりと目覚めているのか、小さな身体を揺すって伸び縮みする仕草が愛らしかった。 「こら、レウ゛ィアス、すぐに朝飯だぜ?」 軽く鼻を摘むと、彼は大きく身動ぎをする。 「んっん・・・」 大きく伸びをした後、レウ゛ィアスは静かに目を開けた。 そこには大好きな両親がいるのが判る。 「ママ、パパ」 「おまえ、パパより先に起きるって言っていたじゃねえか」 からかうように言うが、息子はまだ寝ぼけているようだった。 「だってパパ眠い」 「ほら、目覚めのシャワーを浴びるぞ!!」 「パパ〜」 寝ぼけ眼の息子を担ぎあげると、アリオスはシャワールームに入っていく。 タイミング良く、ルームサービスが来たので、アンジェリークは準備を始める。 まだ朝の熱気がない爽やかな風に揺られながら、彼女は快適だった。 シャワーから出た息子をアンジェリークは受け取り、バスタオルで綺麗に拭いてやった。 その後には、シッカロールではたいてやってから、おむつをつけ服を着せる。 アリオスが服を着終わる頃には、レウ゛ィアスも着替え終わっていた。 「おなか空いたでしょ? 朝御飯あるからね!」 「ちゅいたっ!」 いっちょまえにレウ゛ィアスが椅子に座ろうとしたので、アリオスは笑いながら抱き上げると、子供用の椅子に息子を乗せた。 「ほら皇子の椅子だぜ? レウ゛ィアス」 「パパ、パン食べう」 自分に頼って手を出してきた息子の愛らしさに、アリオスは目を細めながら見つめる。 「パンだな? バターロールがうまそうだぜ? 後は何が欲しい?」 「あえとあえ」 料理を指して、満足げにレウ゛ィアスは父親にねだった。 「スクランブルエッグ、ハムステーキ、ブロッコリーとホワイトアスパラのサラダだな?」 「あい」 素直に頷き、レウ゛ィアスはフォークを握り締める。 「レウ゛ィアスの好きなのだけ頼んじゃったけど、大丈夫だった?」 「ああ。どれも俺は好きだからな」 アリオスは、パンを一生懸命食べようと頑張る息子を見つめ、幸せな気分になった。 「おまえは一番何が好きなんだ?」 「ママがちゅくったもの!」 即答だった。 息子の答えが嬉しいやら恥ずかしいやらで、アンジェリークは真っ赤になってしまう。 「俺も食いたいぜ」 彼女は恥ずかしそうに俯くと、小さく「今度ね」と呟いた。 食事はとても楽しく進み、幸せを噛み締める。 この時間が永久に続けばいいのに・・・。 アリオスは深く思い、心が乱れるのを感じた。 ランチが済むと帰宅しなければならず、残った時間はホテルのプールに入ることにした。 屋内なので、アンジェリークもプールサイドで様子を見ている。 「ママー!!」 大きな声で何度も手を振る息子に振り返し、アンジェリークは穏やかに微笑んだ。 アリオスとレウ゛ィアスは心から嬉しそうに笑い、楽しんでいる様子だった。 ふたりの中にアンジェリークも必死に入る。 アリオスも彼女に何度も手を振ってくれる。 この時間を私は一生忘れないわ・・・、きっと。天国にいっても・・・。 手を振って泳いでいる二人が、アンジェリークにはもう眩しくて見えやしなかった------- --------------------------- 楽しい時間は直ぐに過ぎていく。 幸せな親子も帰る時間がやってきた。 ”現実”に戻っていくのだ。 「すっかり寝ちまったなあ…。よほど疲れてたんだろう…」 「そうね」 車に乗り込み、出発する頃には、レヴィアスは津kぁれたのかすっかり夢の中であった。 ゆったりと流れる景色を眺める。 「…!!」 とうとう… アンジェリークは疲れが闇となって訪れるのを感じる。 それに逆らうことはもう出来やしない…。 ゆっくりと瞳を閉じると、深く安らかな世界に、彼女は落ちていった------ 「おい、アンジェ、休憩しようぜ?」 ドライブインにつき、アリオスは横に座るアンジェリークに声をかけた。 だが、彼女は一向に反応しない。 「アンジェ?」 何度か呼び、身体を揺する。 しかし、アンジェリークの反応は全くなかった------ まさか…!!!! 「アンジェ!!!!!」 アリオスは頬に触れ、何度も揺する。 だが、アンジェリークのそこは冷たく、唇にも生気は見られない。 アリオスは、無意識に、彼女の名前を何度も何度も、切なげに呼び続けた------- |
コメント
「愛の劇場第5弾」です。
今回は、べたにメロドラマの題材です。
書くと心が洗われる物語です。
わしの節操のないとこはともかくとして(笑)
「愛の劇場」シリーズ
最長記録更新中。
さてアンジェはどうなるか!
もう一度波乱はありますです!!
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