LEGALLY ANGEL

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 学部での張り紙を見に行くと、みんな色めきたっていた。
 そこには、一年生の成績優秀のものを、司法修習として四名、選ぶという旨のことが書かれていた。
 これには誰もが色めきたっている。
 しかも、スモルニィの教授を勤めるアルミスの超有名な法律事務所である。
 現場の空気を知られる絶好のチャンスである。
 不意に、アンジェリークが横を見ると、そこにはレイチェルとシャルルのふたりが同じように張り紙を見ていた。
「ワタシは選ばれて当然だけど、アナタには・・・」
 ちらりと横を見られて、蔑まれるかのように鼻で笑われる。
 それがアンジェリークには我慢ならなかった。
 当然のごとくアンジェリークの頭には血が上る。胃がムシャクシャとする。
「絶対、私も選ばれるように勉強するもん!!」
 今までと違って、アンジェリークは一生懸命、ロースクール一の秀才と誉れの高い、あのレイチェルに対抗意識を燃やして啖呵を切る。
 今までの、アンジェリークよりもより強い彼女になっていた。
 これ以上、感情的にならないようにと、尾は引かずに、アンジェリークは颯爽と立ち去る。
 ここまで啖呵を切ったのだから、後は、目標を目指して勉強するしかない。
 アンジェリークは初めてしっかりとした目標を持った。

 アンジェリークは、早速、図書室での自主的な勉強会で、アリオスに相談することにした。
「アルミス教授の司法修習に参加したいの」
「だったら、教授の授業で目立つことだな。それには、勉強するしかねえぜ。おまえなら出来るだろ、コレッちょ」
「うん!」
 一緒にいるエルンストが、当てられるような甘い雰囲気を、ふたりは無意識に醸し出している。
 アリオスに励まされて、アンジェリークは一生懸命この日も質問しながら勉強をした。

 更に猛勉強が始まる。
 アンジェリークは六法全書を片手に、様々な法廷の演習問題に取り組んだ。
 特に、アリオスの指示でアルミス教授が扱った判例を重点的に勉強する。
 全体的な成績アップと司法修習生の座を狙って、アンジェリークは猛然と目標に突き進む。
 そのせいか、完全無欠のビリの座から、あっさりと脱却をしていった。

 いよいよアルミス教授の授業に入り、その能力をいかんなく発揮する機会がやってくる。
「では、次の演習だが、私が以前扱ったことのある、精子バンクに精子を提供をした者が、自分の精子の使われた先をつき止め、父親の権利を主張した件だ」
 それは勉強したと思い出し、アンジェリークの表情は随分と明るくなった。
「ではこの辞令をどう弁護する? シャルル」
「はい」
 シャルルが立ち上がると、レイチェルは嬉しそうにしている。
「彼はDNA上では、きちんとした父親なわけですから、面会する権利はあると思います。彼にとっては血の分けた子供なのですから、権利を主張して当然です」
 彼は得意そうにいい、アルミス教授もしっかりと頷く。
「では、次に、コレットはどう思う?」
「はっ、はいっ!!」
 指名されて、アンジェリークは立ち上がり、落ち着くように大きく深呼吸をした。
「彼は逢う権利はないと思います。
 なぜなら、彼は報酬が欲しいために精子バンクに登録をした男性です。その・・・」
 アンジェリークは少し恥ずかしそうに、ほんのり顔を赤らめて続ける。
 その姿は、純情そうで愛くるしかった。
「愛もなく、試験管に・・・出した、段階では、自分のものが使われるのも、もちろん判らないわけです。また、報酬をもらっているわけですから、契約段階で、親権を放棄しているわけです。試験管に出した瞬間から、彼には何の権利も発生しません。契約違反です」
 きっぱりとした主張に、誰もが度肝を抜かれる。
今まで、”下にはアンジェリークがいる”と思っていた者たちが、にわかに焦り始めるのは、言うまでもなかった。
「有り難う。素晴らしい主張だ」
 教授に褒められて、アンジェリークは得意げな顔をして着席する。
 ちらりとレイチェルの表情を見ると、彼女は明らかにシャルルに幻滅し、うんざりとしているように見えた。


 数日後、司法修習実習生が発表され、誰もが色めき立つ。
 アンジェリークは精一杯背伸びをして、掲示版を見た。
「あっ・・・!!!」
 男女二名ずつの生徒が発表されている。
 そこに”アンジェリーク・コレット”と言う名を見つけ、飛び上がりながら喜んだ。
「あった! あった〜!!」
 騒いでいるアンジェリークを尻目に、横にいたレイチェルは当然といったようなクールな表情をしていた。
「一年生代表として、足を引っ張らないでよ」
 冷たく言い放つと、彼女はシャルルを引っ張って行ってしまった。
 その他の選ばれたメンバーを見ると、レイチェル、シャルルに加えて、優等生のティムカがいる。
 嵐を呼びそうなメンバリングだが、選ばれた誇りに、頑張ろうと思う。
 この喜びを、誰かと共有したいと思い、真っ先に頭に浮かんだのはアリオス。
 まずは彼に報告したかった。

 講義が終わったら、真っ先に言いに行こう…。
 お礼を言わなくっちゃ…。

 講義が終わるなり、アンジェリークは図書室にいるアリオスの元に、走っていく。
 いち早く、彼に喜びを伝えたかった。
「アリオス〜!!!」
「おい、図書室は静かにだぜ。小学校で習わなかったか?」
 言葉では咎めてはいても、その目は笑っている。
 アンジェリークは、走って乱れた息を深呼吸をすることで整えると、少しまじめ腐った顔をした。
「司法修習生に選ばれたの!!!」
「良かったな、コレッちょ」
 アリオスは嬉しそうに微笑むと、親指を立ててくれた。
「うん! アリオスのお陰!! 本当にどうも有り難う!!」
「おまえが努力したからだぜ?」
 アリオスの言葉になら素直に喜べる。
 アンジェリークは無意識に、心のベクトルが彼に向いていることに、まだ気がつかなかった----


 1年生がそろって、アルミスの法律事務所に初出勤する日がやってきた。
 誰もがきちんとしたフォーマルなスーツを身に纏い、やはり緊張している。
 会議室にそろって通された時も、その緊張は拭えない。

 …緊張しちゃうな…。
 初日だからしょうがないけれど…。

 アンジェリークは緊張を何度もほぐすために、深呼吸をした。
「待たせた」
 教授の声が響き渡り、張り詰めた緊張感が部屋の中を覆う。
「…!!!!」
 そして、何よりもアンジェリークが驚いたのは、その後ろから入ってきた、ふたりのスーツを着た青年だった。

 アリオス…!!!! エルンストさん!

 唖然としながら見ていると、アルミスがアリオスとエルンストを前に立たせる。
「彼らは、君たちの先輩に当たるスモルニィロースクール出身の弁護士、アリオスとエルンストだ。君たちの指導と、手助けをすることになる」
 教授の言葉を聞いて、アンジェリークは更に驚きを深める。
 その愛らしい驚いた顔が可愛くて、アリオスは笑いをこらえるのが必死のようだった。

 学生じゃなくて、弁護士だったんだ・・・。

 TO BE CONTINUED…

コメント

可愛い恋愛小説を書きたくて、連載開始です。
宜しくお願いします〜。
胸が大きいだけで振られてしまった、アンジェリークの奮戦記。

予想通りに、ありたんは弁護士です。
これから本題に入っていきますので〜。
もちろんありたんは切れ者ですよ(笑)



マエ モドル ツギ