その日、アンジェリークは、悔しくて堪らなくて、親友のリモージュに電話をした。 「リモちゃ〜んっ!」 「どうしたの、コレッちょ!」 いきなり電話に出るなり泣き付いてきた彼女に、リモージュは驚いた。 「シャルルが新しい彼女連れてたんだけれど、それが、すごーく嫌みっぽい女なの〜!」 「嫌みっぽいって、優等生独特のひがみじゃないの? 自分が不細工だからって、とっても可愛いコレッちょを僻んだのよ」 リモージュは確信を持って答える。が、それが逆効果になる。 「ブロンドの、スタイルの良い、綺麗なコなの〜!!」 一層、アンジェリークの泣きそうな悲鳴がこだました。 「でも、コレッちょのほうが性格がマシュマロみたいで、可愛いじゃない? 勉強だって一生懸命して、見返してやんなきゃ!」 「うん」 リモージュの優しくも元気の出る言葉に、アンジェリークは少しだけ気分が良くなる。 「うん。頑張る! 今日も、いっぱいいっぱい悔しいことがあったから、凄く、腹立ったけど、やっぱり、がんばって見返さないと」 少し元気が出てきたのか、アンジェリークは奮起するように力を漲らせて言う。 「そうよ! その調子! だってね、悪いことばかりじゃないでしょ?」 そう言われて、先程慰めてくれた青年の姿がよぎった。 シャルルよりも数倍は素敵だった。 それを思うだけで、アンジェリークは真っ赤になる。 「あ、うん。それはまあ・・・」 言葉尻を濁しつつも、アンジェリークは素直に認めた。 「だったら、がんばらなくっちゃね。コレッちょ!」 意味深に言われて、アンジェリークはますます真っ赤になる。 「あ。私も、報告があったわ! オスカーと結婚することになったの!!」 今度はリモージュが興奮気味に宣言する。 「よかったね〜! リモちゃんっ!!」 アンジェリークは興奮気味に言うと、心から親友を祝福する。 ふたりは、アンジェリークにとっての理想のカップルで、目標だ。 「だから、コレッちょも頑張ってね! エルサットであんなに頑張れたんだもん、きっと大丈夫よ!!」 やはり友達は良いものだ。 元気をいっぱいくれる。 「じゃあ有り難うリモちゃん! お影で元気でた」 「頑張ってね、コレッちょ。あ、それとね結婚式のブライズメイドをしてもらってもいい?」 「もちろんよ! 詳しいことが決まったら、また連絡してね〜! じゃあね」 電話を切った後のアンジェリークのモチベーションはかなり上がっていた。 先程に比べると、随分気分がいい。 「アル、頑張るわね!」 かたわらにいたチワワのアルフォンシアも嬉しそうに尻尾を振っていた。 早速頑張ろうと思い付き、まずはみんなが持っているノートパソコンを買いに行くことにした。 こういったものは形から入るのが常のアンジェリークである。 パソコンショップにいき、そこで可愛らしいiMacがあり、それに思わず見とれてしまう。 「可愛いわよね、これ。色も値段もいい感じだし」 「なんだ、おまえさんはマック派か?」 聞き慣れた声に、アンジェリークは振り返った。 そこには、あの銀色の髪の青年が立っている。 「パソコンを買うのか?」 「うん。皆、持ってるし」 「ああ。あいつらは皆同じメーカーのものを使っている。もちろんWIN機だ」 アンジェリークは頷くと、対抗するとばかりに鼻息を荒げて、パソコンを手にとる。 「待てよ。良いスペックで買いかどうか見てやるよ」 「うん。有り難う。でも、デザインはこれがいいわ。それだけは妥協したくないの」 嬉しそうに笑いながらも、アンジェリークはシビアに自分の欲求を言う。 「了解。アンジェリーク・コレッちょ」 「コレットです」 「まあいい、どっちでも」 「よくないです」 からかわれているのは判っているものの、ムキにならずにはいられなかった。 アリオスは、つかつかと店員に向かって歩いていくと、何やら話し始める。 使うのは私なんだからね〜! 少しだけむっとして怒っていると、アリオスが手招きをしてきた。 「何?」 「おい、おまえの学生証を見せろ」 「あ、うん」 言われるままに、アンジェリークはバッグからそれを取り出し、素直に見せる。 「では、先程と同じ値段で、勉強に必要なソフトを一通り付けましょう」 店員の言葉に、アンジェリークは嬉しくなり、アリオスを尊敬するような眼差しを送った。 「有り難う、助かったわ!」 彼女は鼻歌混じりに喜んで、お金を払う。 「学生証を見せれば、アカデミア割り引きが利くんだぜ」 「知らなかった〜! 有り難う!」 アンジェリークは得した気分で、上機嫌だった。 暫くして、パソコンがきちんと梱包がされて、ふたりの前にやってきた。 「半分持ってやるよ。寮の前までな」 「有り難う」 重ね重ねの親切が嬉しくて、アンジェリークの表情も愛らしいものとなる。 いつも、助けてくれる・・・。 さりげないから、全然くすぐったくない…。 すたすたと長い足で歩いていく彼の後を、アンジェリークはゆっくりと歩いていく。 パソコンショップから、彼女の住む寮は近くて、すぐに着いてしまった。 「ほら」 「有り難うございます」 アリオスは本体をそのまま持ってくれていたので、それを受け取る。 「本当に、いつもアリオスさんにはお世話になって、感謝してます」 丁寧にアンジェリークは礼を言う。本当に心から感謝していた。 「おい、俺の名前は呼び捨てでかまわねえ。覚えておけ? アンジェリーク・コレッちょ」 一瞬、鼻をつままれたかと思うと、、そのままアリオスは行ってしまう。 アンジェリークは、彼を呆然と見つめることしか、出来なかった。 翌日から、アンジェリークは”ガリ勉”に豹変した。 彼女は、パソコンを授業に持ち込んで、しっかりと勉強する。 しかも、アリオスが選んで入れてくれたソフトは、どれも判りやすく、使い易いものだった。 本当に、凄く勉強しやすい・・・。 アリオスの心遣いが、最高に嬉しかった。 授業後の勉強会にも、参加しようと決めた。 アンジェリークは沢山の荷物を持ち、図書館に向かうと、やはりレイチェルとシャルルのグループがいる。 「仲間に入れてもらっていい?」 一応は丁寧に挨拶をする。 だが、レイチェルの軽蔑の含んだ眼差しが、アンジェリークに突き刺さってきた。 「ここは、一年生でもトップクラスのグループなの。先生に追い出されるようじゃ、ついていけないってこと。だから、ダメ」 きっぱりと答えると、彼女はアンジェリークを無視して勉強を始めてしまう。 「おい、そこまでしなくても」 見かねたシャルルが気の毒そうにレイチェルに目配せしたが、逆に足を踏まれただけだった。 「おい、だったらこっちに来いよ! アンジェリーク・コレッちょ!」 その声を聞けば安心する。 立ち上がってくれていたのはアリオス。 彼と同じ机には、もうひとり、同じ年頃の生真面目な青年がいる。 「はい、お願いします」 アンジェリークがいそいそと机に向かうと、アリオスと生真面目な青年は、なにやら難しいことをしているようだった。 「すみません。お邪魔します…全然レベルが違いますけれど、宜しくお願いします」 少し緊張しながら挨拶をすると、生真面目な青年は僅かだが笑みを浮かべてくれる。 「エルンストです、宜しくお願いします」 「アンジェリークです。宜しくお願いします」 アンジェリークが席に着くと、二人は本を片付けた。 「おまえ、今、どこやってる? おまえに合わせてやるよ」 「あ、でも…。そんなの悪いです」 「先輩の務めだ。ほら、後輩やるぜ」 アリオスが彼女の本を広げて、中身を見てくれる。 それがアンジェリークにはとても嬉しい。 優しい人なんだ・・・。 この人の前だと、私、こんなにも、素直になれる・・・。 アンジェリークは幸せな気分を感じながら、猛然と演習課題に取り組み始めた。 TO BE CONTINUED… |
コメント 可愛い恋愛小説を書きたくて、連載開始です。 宜しくお願いします〜。 胸が大きいだけで振られてしまった、アンジェリークの奮戦記。 まだまだ、レイチェルとアンジェはVSモードですね〜。 ありたんとの恋の行方も頑張って書いていきたいと思っています〜。 |