「だから、こうしたほうが効率的でしょ!?」
「何故、我が提案することにいちいちケチをつける!!」
「・・・また始まりましたね」
同じ班になり、同じ発表内容を、同じく邪な理由で取り組んでいる、レウ゛ィアスとエリス。やはりのっけからやりあっていた。
「ったく、ケチつけるのはそっちのほうでしょ!?」
「何!?」
二人の間には火花が飛び散り、睨み合っている形相は、お互いに般若の面。
ふたりの席の間だけ、ブリザードや夏の嵐(笑)、雹やら吹雪、炎や雷までもが落ちて、天地創造、天変地異が一気にやってくる。
その二人の様子を、眉根を寄せながら、心配そうに見つめるカイン。
もはや、中間管理職の悲哀が、小学一年で漂っている。
スモルニィ側のリーダー・レウ゛ィアスと、アルカディア側のリーダー・エリスに挟まれて、サブリーダーのカインの胃痛は酷くなる。
明日、液キャベ用意しておこう・・・。このままだったら、胃カメラ、バリウム飲まなきゃ・・・。最近は、いちご味が出たって聞いたな・・・。美味しいかな、いちご味・・・。
そんな苦しげなカインのことなどはつゆ知らず、ふたりの口喧嘩は、エスカレートしてゆく。
「何よ!! ”我・我・我”って!! 偉そうに!!! そんなの使うのあんたか、がらの悪いおっさんぐらいよ!!」
「何〜!!」
「付き並みな台詞。よくもそんな頭でリーダー勤まるわね!」
「何だと!?」
レウ゛ィアスは席から立上がり、上からエリスを見据える。
「やる気!?」
エリスも立ち上がって、彼を大きな青緑の瞳で睨みつけた。
そのまなざしは、レウ゛ィアスの母であるアンジェリークに似ていて、彼は怒られているような気がして、一瞬、怯んだ。
「何よ! 降参?」
その攻撃的な論旨に、レウ゛ィアスの怒りはさらに燃え上がる。
ったく、何て女だ!? あの男と同じぐらいむかつく!!
鋭く切れるようなまなざしをエリスに向け、彼女以外の者は凍り付く。
「何よ! 私はこれでも空手やってるんだから、通信教育だけど。あなたなんて捻り潰してやるんだから!」
「何を笑止な・・・。大魔導師ウ゛ァーン直伝の魔導で、おまえのその根性を叩き直してやる!」
「ヴァーンだかババンババンバンバンだか知らないけれど、その言葉すっかりあなたに返してあげるわよ!
あなたなんて、弟のレウ゛ィアスと同じ名前だけど、ぜんぜん可愛くないもの!」
「何だと! おまえこそ、その顔の癖に、似合わないキツイ性格しやがって!」
「へえ〜、私のこと可愛いと思ってんだ? 私はママ譲りのかわいこちゃん♪」
勝ち誇ったようにせせら笑うエリスに、レウ゛ィアスは切れる。
「世界一可愛いのは、我のアンジェリークだけだ!」
「違うわ! うちのママのアンジェリークよ!」
音が出るかと思うほど、二人の間には、嫌悪の炎が燃え上がる。
「先生〜! レウ゛ィアス君とエリスちゃんが〜」
二人のただならぬ雰囲気に、他の児童たちが怯えまくる。まさに、ゴジラ対モスラの修羅場。
エリスが暴走した時の対処法を聞いていたロザリアは、急いで、隣のクラスに向かう。
「レウ゛ィアス君、いる!?」
隣のクラスでは、母親譲りの穏やかな性格で、みんなとわきあいあいに勉強をしている、レウ゛ィアスがいた。
「先生、お姉ちゃんが、また、何か?」
小首を傾げて、穏やかに訊いてくるレウ゛ィアスに、ロザリアは胸がきゅん(笑)となる。
同じ名前で、顔もとてもよく似たこの子と、うちのクラスのマザコン(笑)問題児とは、なんと違いがあるのかしら。かわいい〜。でも、同じ双子でも、エリスちゃんとは凄く雰囲気が違う。 性格、逆だったらよかったのに・・・。
大きなお世話とも思えることを、ロザリアは考えながら、レウ゛ィアスに笑いかけた。
「お願い、うちのクラスに少しだけ来てくれる?」
「はい」
素直に頷く弟君に、ロザリアはめろめろになってさまう。
「行きましょうか。少しレウ゛ィアス君を借りて行きます」
弟君の手をひいて、ロザリアは自分のクラスに戻った。
ロザリアがエリスの弟を連れて教室に戻ると、まだ、バトルは続いていた。
「うちのママが一番可愛いんだから!! 隙が合ったらどっからでもかかってきなさいよ!」
「我のアンジェリークだ!! 大魔導師ヴァーン直伝の四千年の歴史を持つ秘法”かにバサミ”をするぞ!!!!」」
真ん中で、胃痛と戦いながら、カインがおろおろとしている。
その中を、弟はさして顔色を変えず、二人の間に入った。
姉の肩をぽんぽんと叩いて、母親譲りの柔らかな微笑みを浮かべた。
「レウ゛ィアス」
「女の子がそんなことしちゃダメだよ。エリスお姉ちゃん」
弟の言葉に、エリスは途端にしおらしくなった。
「…ごめんね…」
「君も女の子相手に本気にならないでね? でも今のはお姉ちゃんが悪いけど…」
二コリと微笑まれて、レヴィアスも思わず呆然としてしまう。
我としたことが!!!
男に…、男の笑顔が可愛いと思ってしまうなんて…!!!!
誰もが呆然としている中、エリスの弟は涼しい顔をして、ドアへと向う。
「お騒がせしました皆さん。お姉ちゃんをよろしく」
にこりと笑った後、頭をペコリとさげると、弟レヴィアスは教室から出て行った。
その姿を、クラスに居る誰もが、見つめずにいられない。
刹那。
誰からとも泣く、うっとりとした溜息が漏れる。
「可愛い〜!!!」
誰もがそんな声が漏らす。
「弟のレヴィアスに免じて今日のところはここまでにしてあげる。
私も、発表会には、ママにいいところを見せたいし」
凛とした意志の強い眼差しを向けられて、レヴィアスもしぶしぶ同意した。
「いいだろう…。おまえの弟に免じて。我も我だけのアンジェリークのためにも頑張らないといけないからな…」
二人は、いまだに炎をくすぶりながらも、何とか同意する。
母親を悦ばせたいという、共通の思いのために------
---------------------------------------
「ママ、今日、エリスお姉ちゃんね〜」
「ああ、もう、レヴィアス」
夕食を作る母親にまとわりつきながら、双子の兄弟は、学校で起こったことなどを話していた。
「ふふ。どうしたの、エリス?」
母親の優しい笑顔に、エリスはときめきを覚えながら、一生懸命弟の口を塞ぐ。
「もごもご」
「ママには教えてくれないの?」
そういわれると、エリスはとても弱くて。
自分の視線まで目線を下ろしてくれた母親に、エリスは耳打ちをする。
「パパには言わないでね?」
「いいわよ?」
甘く微笑む母親に、彼女はうっとりと見つめる。
「今日ね、パパにそっくりな性格の男の子に逢ったの!! もう、サイテー!!!」
そう囁く娘に、アンジェリークは苦笑した。
あなたもアリオスによく似てるわよ…
「今日はパパ遅いの?」
レヴィアスは母親に可愛らしく尋ねる。
「ちょっとだけね? ママのお腹にあなたたちの妹か弟がいるでしょう?
もうすぐお腹が大きくなっちゃうからって、ママの大き目のワンピースをロザリアさんのところで買ってきてくれるから」
「そうなんだ…。パパに勉強で聞きたい事があったから」
「私も!!!」
エリスも手を上げて言う。
結局は、エリスも父親を頼りにしているのだと考えると嬉しくなる。
最も、エリスの場合は、都合がいいときだけなのだが…。
--------------------------------------
「アンジェ! 今日は不愉快なことがあった」
「何、不愉快なことって…」
眉根を寄せながら、おやつを食べている息子の話に、アンジェリークは耳を傾けていた。
「あの男にそっくりな性格をした女に会った!」
「そっくりな!?」
そう聞いてアンジェリークは苦笑する。
あなたもよく似てるけれどね…。
総てがアリオスに…。
だけど…。
女の子でねえ…
アンジェリークは、いったいどのような女の子だと、頭を捻ってしまった。
仁義なき戦いはまだ続く…。
![]()
コメント
今回は、SPECIAL EDITIONです。
「WHERE DO WE GO FROM HERE?」のアリオスXアンジェの子供、
エリスとレヴィアスの登場です。
(ついこの間までは赤ちゃんだった言う突っ込みは止めて下さい(笑))
喧嘩シーンかいてて凄く楽しかったです。
このシーンは通勤の電車の中で、マナー違反にも携帯で打っていたのですが、
夢中になってしまいました(笑)
前回、「おとなしレヴィ君」が好評だったので、シーンを増やしました。
かわええ。
すみません…。
こんなんばっかり書いて…
