「はい! 今日はどうして赤ちゃんが出来るかをお勉強しましょうね?」
担任のロザリアが、艶やかな微笑を浮かべながら、なるべく意識させないような口調で語りかける。
当然、女子生徒からは恥ずかしそうな反応が、男子生徒からは興奮が上がっていた。
もちろん、冷めている生徒もいる。レヴィアスである。
ケッ、ガキなんて、やれば出来るんじゃないか。やれば。
「親分〜、何か興奮しやすね〜」
鼻息を出して、興奮するのはゲルハルトである。
「レヴィアス様〜、今日は最高です!」
同じく興奮に顔を紅潮させているのはウォルターだ。
そんな興奮顔の二人を、白け顔で見つめているのが、ユージーンとカーフェイである。
「----はい、皆さん静かにしてください。お父さんとお母さんが、お互いに愛しいと思うと、一つになりたいと思います。一つになって、お母さんのおなかの中にお父さんの愛情が注がれると、赤ちゃんが出来ます。その中で約九ヶ月命が育まれるの。そこで生まれたのが、あなたたちなの」
小学校一年生と言うことでオブラートに包んだ性教育は、レヴィアスにとっては子供だましのものでしかない。
彼は、父親と同じ咽喉を鳴らして笑い、恥ずかしそうにする女子生徒たちを軽蔑する。
だから、お子様なんだよ、ここの奴らは。
アンジェリークとは比べ物にならん!!
「何か質問はないですか?」
ロザリアの言葉に、待っていましたとばかりに、レヴィアスは手を上げた。
「はい、レヴィアスくん。何かしら?」
「愛してたら、お母さんとやってもいいですか?」
これには流石のロザリアも絶句した後、怒りに肩を震わせる。
「レヴィアスくん、後で職員室に来なさい!!」
「判りました」
ッたく、頭の固い女だ。
------------------------------------------------------------
「親子だからやっちゃいけないって、どういうことだ、先生。愛してるのに」
職員室にいても、堂々とつっかっかるレヴィアスに、ロザリアはほとほと困り果てていた。
「だからね!」
職員室のドアが開き、アンジェリークが慌てて入ってきた。
「失礼します! ロザリア先生」
可愛らしいアンジェリークの声がしたかと思うと、レヴィアスは一目散に彼女の元に駈けていた。
「アンジェ!! また、我のことが待ちきれなかったのか?」
彼女の腰に手を回して抱きつき、レヴィアスは甘く囁く。
「バカ! おまえのせいで呼ばれたんじゃねーか!」
いつものように頭を叩かれ、レヴィアスは恨めしそうに横を見上げる。
そこにはアンジェリークと手を繋いだアリオスがいた。
「何でテメエがいやがる!?」
「久しぶりの平日の休みだったから、アンジェを可愛がってたのに、おまえがしょうもないことしやがるから、呼び出されたんだろうが!」
散々可愛がって、もう一度可愛がろうとしていたときに鳴った電話に、アリオスはかなりご立腹だった。
「我は何も言ってない! アンジェとやっていいかと訊いただけだ!」
「アンジェとやっていいのは俺だけなんだよ!!」
二人は、ここがどこであるかも構わず、綾子喧嘩を続ける。
二人のやり取りが面白いのか、教師たちも集まってくる。
アンジェリークは、恥ずかしくて堪らなく、怒りのあまり顔を紅くし、肩を震わせる。
「----もう二人とも!!! いい加減にしなさい〜!!!!!」
アンジェリークの激昂した絶叫が職員室にこだまし、誰もがぴたりと動きを止めた。
「----ホント、お母さんも大変ね〜」
ロザリアは、同情の溜め息を一つ吐いた。
---------------------------------------------------------
「もう! 二人とも、場所柄は弁えてね!」
「すまねえ」
「すまない」
アンジェリークが怒る表情に、この親子はからきし弱い。
アンジェリーク絶叫の後、全員で誤り、彼女を中心に、三人は手を繋いで帰っていた。
どこから見ても、微笑ましい家族にしか見えない。
「----だが、アンジェ、我はおまえを愛してるからだ。こんな奴と別れて、俺と結婚しよう。俺のほうが若いし、あっちもいいぞ?」
どこで育て方を間違えたのかしら…
再び、アリオスからのきつい一発がレヴィアスに降りかかる。
「この耄碌が!」
「俺のほうが上手いに決まってるだろ? このバカ息子!!」
「何!! 女子高生に手を出す元教師にそんなことは言われたくない!」
「俺がアンジェに手を出さなかったら、おまえなんか生まれてねエンだよ!!」
二人の間に再び火花が散り、怒涛のような轟音が包み込む。
「もう! 家ならともかく、外ではやめてっ!! もう知らない!」
とうとうアンジェリークは、二人から手を離すと、すたすたと怒りながら行ってしまった。
「おいレヴィアス、謝りに行くぞ?」
「----あ、ああ」
不本意ながらアリオスに手を引かれたレヴィアスは、彼と共にアンジェリークを追いかけてゆく。
「アンジェ!」
低いテノールと少年らしいアルトの声が重なって呼ばれると、アンジェリークの顔もついつい綻んでしまう。
彼女はぴたりと歩みを止め、二人が来るのを待った。
少し恐い顔を技としているが、本当は笑いたくて仕方がない。
「アンジェ!」
手を繋いでやってきた二人は、髪の色以外は全く良く似ていて、アンジェリークは誇らしく思う。
「何かしら、二人とも」
「すまなかった」
声をそろえて謝る二人が愛しくて、あかの叙は優しく微笑むとそっと頷いた。
「許してあげる」
言って、彼女はレヴィアスの手を繋いだ。
丁度レヴィアスが真中になり、幸せそうな親子の図になる。
アリオスも幸せそうに微笑む。
「さあ、三人で飯でも食いに行くか」
「ふふ、そうね」
「我は寿司がいい」
「じゃあ、行くか」
○月×日 晴れ。
どうして親子だとやってはいけないかが、よく判らなかった。
それでまたあいつと喧嘩になった。
アンジェリークがあまりにあいつに怒ったので、我は彼女に免じて許してやる。
アンジェリークとやるにはどうしたらいいか、今度、オスカーとやらに訊いてみることにする
ご満悦そうに日記を書き終えると、レヴィアスはベッドへと潜り込んだ。
神様、アンジェとやる夢(笑)を見せてください----
もちろん、レヴィアスの希望がかなえられる日は来ない(笑)----
![]()
コメント
久しぶりのバカ家族です。
前回早く更新するといっておきながら、こんなに開いてしまいました(反省)
申し訳ないですm(_)m
今回もまたまた暴走(笑)
読みきり連載ゆえに、tinkにほっとかれる可能性が高いんですね〜。
