FAMILY
TIES

PART 5

「はい! 今日はどうして赤ちゃんが出来るかをお勉強しましょうね?」
 担任のロザリアが、艶やかな微笑を浮かべながら、なるべく意識させないような口調で語りかける。
 当然、女子生徒からは恥ずかしそうな反応が、男子生徒からは興奮が上がっていた。
 もちろん、冷めている生徒もいる。レヴィアスである。

 ケッ、ガキなんて、やれば出来るんじゃないか。やれば。

「親分〜、何か興奮しやすね〜」
 鼻息を出して、興奮するのはゲルハルトである。
「レヴィアス様〜、今日は最高です!」
 同じく興奮に顔を紅潮させているのはウォルターだ。
 そんな興奮顔の二人を、白け顔で見つめているのが、ユージーンとカーフェイである。
「----はい、皆さん静かにしてください。お父さんとお母さんが、お互いに愛しいと思うと、一つになりたいと思います。一つになって、お母さんのおなかの中にお父さんの愛情が注がれると、赤ちゃんが出来ます。その中で約九ヶ月命が育まれるの。そこで生まれたのが、あなたたちなの」
 小学校一年生と言うことでオブラートに包んだ性教育は、レヴィアスにとっては子供だましのものでしかない。
 彼は、父親と同じ咽喉を鳴らして笑い、恥ずかしそうにする女子生徒たちを軽蔑する。

 だから、お子様なんだよ、ここの奴らは。
 アンジェリークとは比べ物にならん!!

「何か質問はないですか?」
 ロザリアの言葉に、待っていましたとばかりに、レヴィアスは手を上げた。
「はい、レヴィアスくん。何かしら?」
「愛してたら、お母さんとやってもいいですか?」
 これには流石のロザリアも絶句した後、怒りに肩を震わせる。
「レヴィアスくん、後で職員室に来なさい!!」
「判りました」

  ッたく、頭の固い女だ。

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「親子だからやっちゃいけないって、どういうことだ、先生。愛してるのに」
 職員室にいても、堂々とつっかっかるレヴィアスに、ロザリアはほとほと困り果てていた。
「だからね!」
 職員室のドアが開き、アンジェリークが慌てて入ってきた。
「失礼します! ロザリア先生」
  可愛らしいアンジェリークの声がしたかと思うと、レヴィアスは一目散に彼女の元に駈けていた。
「アンジェ!! また、我のことが待ちきれなかったのか?」
 彼女の腰に手を回して抱きつき、レヴィアスは甘く囁く。
「バカ! おまえのせいで呼ばれたんじゃねーか!」
 いつものように頭を叩かれ、レヴィアスは恨めしそうに横を見上げる。
 そこにはアンジェリークと手を繋いだアリオスがいた。
「何でテメエがいやがる!?」
「久しぶりの平日の休みだったから、アンジェを可愛がってたのに、おまえがしょうもないことしやがるから、呼び出されたんだろうが!」
 散々可愛がって、もう一度可愛がろうとしていたときに鳴った電話に、アリオスはかなりご立腹だった。
「我は何も言ってない! アンジェとやっていいかと訊いただけだ!」
「アンジェとやっていいのは俺だけなんだよ!!」
 二人は、ここがどこであるかも構わず、綾子喧嘩を続ける。
 二人のやり取りが面白いのか、教師たちも集まってくる。
 アンジェリークは、恥ずかしくて堪らなく、怒りのあまり顔を紅くし、肩を震わせる。
「----もう二人とも!!! いい加減にしなさい〜!!!!!」
 アンジェリークの激昂した絶叫が職員室にこだまし、誰もがぴたりと動きを止めた。
「----ホント、お母さんも大変ね〜」
 ロザリアは、同情の溜め息を一つ吐いた。

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「もう! 二人とも、場所柄は弁えてね!」
「すまねえ」
「すまない」
 アンジェリークが怒る表情に、この親子はからきし弱い。
 アンジェリーク絶叫の後、全員で誤り、彼女を中心に、三人は手を繋いで帰っていた。
 どこから見ても、微笑ましい家族にしか見えない。
「----だが、アンジェ、我はおまえを愛してるからだ。こんな奴と別れて、俺と結婚しよう。俺のほうが若いし、あっちもいいぞ?」

 どこで育て方を間違えたのかしら…

 再び、アリオスからのきつい一発がレヴィアスに降りかかる。
「この耄碌が!」
「俺のほうが上手いに決まってるだろ? このバカ息子!!」
「何!! 女子高生に手を出す元教師にそんなことは言われたくない!」
「俺がアンジェに手を出さなかったら、おまえなんか生まれてねエンだよ!!」
 二人の間に再び火花が散り、怒涛のような轟音が包み込む。
「もう! 家ならともかく、外ではやめてっ!! もう知らない!」
 とうとうアンジェリークは、二人から手を離すと、すたすたと怒りながら行ってしまった。
「おいレヴィアス、謝りに行くぞ?」
「----あ、ああ」
 不本意ながらアリオスに手を引かれたレヴィアスは、彼と共にアンジェリークを追いかけてゆく。
「アンジェ!」
 低いテノールと少年らしいアルトの声が重なって呼ばれると、アンジェリークの顔もついつい綻んでしまう。
 彼女はぴたりと歩みを止め、二人が来るのを待った。
 少し恐い顔を技としているが、本当は笑いたくて仕方がない。
「アンジェ!」
 手を繋いでやってきた二人は、髪の色以外は全く良く似ていて、アンジェリークは誇らしく思う。
「何かしら、二人とも」
「すまなかった」
 声をそろえて謝る二人が愛しくて、あかの叙は優しく微笑むとそっと頷いた。
「許してあげる」
 言って、彼女はレヴィアスの手を繋いだ。
 丁度レヴィアスが真中になり、幸せそうな親子の図になる。
 アリオスも幸せそうに微笑む。
「さあ、三人で飯でも食いに行くか」
「ふふ、そうね」
「我は寿司がいい」
「じゃあ、行くか」

 ○月×日 晴れ。
 どうして親子だとやってはいけないかが、よく判らなかった。
 それでまたあいつと喧嘩になった。
 アンジェリークがあまりにあいつに怒ったので、我は彼女に免じて許してやる。
 アンジェリークとやるにはどうしたらいいか、今度、オスカーとやらに訊いてみることにする

 ご満悦そうに日記を書き終えると、レヴィアスはベッドへと潜り込んだ。

 神様、アンジェとやる夢(笑)を見せてください----

 もちろん、レヴィアスの希望がかなえられる日は来ない(笑)----   

コメント

久しぶりのバカ家族です。
前回早く更新するといっておきながら、こんなに開いてしまいました(反省)
申し訳ないですm(_)m
今回もまたまた暴走(笑)
読みきり連載ゆえに、tinkにほっとかれる可能性が高いんですね〜。