家をリフォームするために、アリオス一家は、アミューズメント型の住宅設備の総合ショールームにやってきた。
もちろん、キッチンやオーヴンといったものを見に来たこともあるが、中々遊びに連れて行けないレヴィアスの為でもある。
もちろん子供にも楽しめる仕掛けがいっぱい施されており、レヴィアスも飽きないだろうと、アンジェリークは考えていた。
ショールームに一家が現れた瞬間、受付のコンパニオンはおろか、そこにいる総ての者が、うっとりと息を飲む。
これほどの美形家族はいないとばかりに。
「いらっしゃいませ」
受付に行くと、綺麗なコンパニオンのお姉さんが立ち上がり挨拶をしてくれ、色々と案内をしてくれる。
「何か子供にでも楽しめるイヴェントはありませんか?」
コンパニオンよりもさらに明るい笑顔を向け、アンジェリークは穏やかに尋ねる。
我のアンジェリークはなんて可愛い!! コンパニオンなんか目じゃない!!
うっとりとレヴィアスが思えば、
アンジェと張り合う笑顔をしたって無駄だぜ? コンパニオンのおねーさん。あいつの笑顔は宇宙一なんだからな。
と、アリオスも思う。親子揃って、アンジェリークにメロメロである。
「本日は、ロボット君がおにぎりを握ってくれます”おにぎりロボットくん”がございます。小学校6年生までのお子様でしたら、どなたでも参加して頂けます」
「へ〜ロボットがおにぎりを握ってくれるんだって。クッキングも面白そうだし。小学校6年生まで参加できるから、両方、レヴィアス参加したら?」
華のような笑顔を向けられるとレヴィアスは、頷くことしか出来ない。
誰よりも愛らしい母親の笑顔に、彼はからきし弱いのだ。
「”おにぎりロボット君”が始まります!!」
担当のコンパニオンの声が聴こえ、アリオス一家もロボット君の前まで移動をする。
「ほら、行ってこいよ。俺はここでアンジェとイチャイチャしながら見ておくからよ」
息子の背中を押して促しながら、その翡翠と金の瞳には、怪しい光を湛えて、ニンマリとアリオスは微笑みかけた。
「そんなことをしてみろ。ブレイク・エッジをお見舞いして…」
「はい、列に並んでね〜」
アリオスにかかって行こうとした矢先、レヴィアスは、コンパ二オンに列へと誘導されてしまう。
その姿が余りにもおかしくて、アリオスは思わず喉を鳴らして笑った。
普通の子供たちに混じり、レヴィアスも"おにぎりロボットくん”の列に加わり、コンパニオンから言われる3つの約束を、げんなりしながら聞く。
「はい! 皆にはおにぎりの味は、ごま味とのり味を選んでもらいます。その時に3つお約束をしてもらいます。1つここは飲食禁止で、ロボット君のお隣の"クッキングテラス"だけ、だべてもいいことになっていますから、おにぎりはここで食べてね。2つ、みんなの周りのロープは危ないから触らないでね。3つ、おねえさんがボタンを押して言いというまで、ボタンは押さないで下さい。3つのお約束はちゃんと守ってね!! では、ロボット君は長い間お休みをしていたので、今から準備体操をします。そのときに、ごま味を選んだお友達は、ごまでっぽうを撃ってもらいますが、ここでやり方も説明しますね!!」
元気のいいコンパニオンがボタンを押すと、ロボット君は動き出す。
子供だましの、ちゃちいロボットだ…
「はい、では、"ごまでっぽう用意”とロボット君が言ったら、引き金は引いたまま、離さないで、そのまま狙って下さい」
コンパニオンが引き金を引くと、ごまは面白いように飛び散る。
これだ!! これは使える!!
ニヤリと父親そっくりの良くない微笑を浮かべながら振り返り、レヴィアスは、アンジェリークの腰を抱いたまま離さないアリオスを見た。
アリオスもレヴィアスの悪だくみな視線に気がつき、わざと彼女の腰をひきつける。
「やん…、アリオスのバカ…」
はにかむアンジェリークの可愛い仕草も、レヴィアスの怒りを助長させる。
余裕をかましてるのは今だけだ!! アリオス!!
こみ上げる怒りを何とか抑え、レヴィアスは来るべき報復のシーンを待った。
「はい、次のお友達。ごま味のり味どっちがいいかボタンを押してね〜」
レヴィアスはすかさずごまボタンを押す。
「ご〜まいっちょ〜」
おにぎりロボット君は楽しげに動き出した。
待っていろアンジェリーク!! 直ぐに助けてやるからな!!
「ご〜までっぽう用意!!」
いよいよ出番だとばかりに、レヴィアスは鉄砲の引き金に手をかける。
「きゃあ、ちょっと、僕、何をするの!!」
レヴィアスの的はおにぎりではなく、もちろんアリオス。
彼はアリオスに向かってごまを発射する。
「発射!!」
ロボット君の掛け声と共に、アリオスの顔面にごまが飛び散った。
「おい、レヴィアス!!」
目を閉じながら必死によけようとしたがよけきれず、口の中までごまが飛び散る。
レヴィアスはニヤリと冷徹な微笑をアリオスに向け、挑戦的に彼を見る。
「あのやろ〜」
柔らかな銀糸にかかったごまを取り除きながら、アンジェリークと二人、クッキングテラスでレヴィアスが列から出てくるのを待つ。
「ね、大丈夫、アリオス」
アンジェリークも一緒になってごまを払いのける。
「ったく、しょーがねーな、あのバカ息子は!!」
ごまをアリオスに掛けてしまい、レヴィアスのおにぎりはまっしろけだった。
そのためコンパニオンが、おにぎりにごまをかけてくれる。
「はい。今度はお父さんにかけないでね〜」
むすっとしながらおにぎりを受け取ると、ころっと表情を変えて嬉しそうにアンジェリークに駆け寄って行った。
「アンジェ〜我はカッコよかっただろう?」
「かっこよかったって、お父さんにごまを掛けたらダメじゃない」
苦笑いしながら、駆け寄ってきた息子の髪を優しく撫でる。
「そうだ! 俺はけが人だ。手当てしてくれるんだろ? アンジェリーク」
レヴィアスにはあからさまに不機嫌な表情を浮かべたが、アンジェリークには甘い艶やかな表情を浮かべる。
こんなところまで、二人はそっくりなのである。
「えっ」
彼女が頬を赤らめ息を飲んだのもつかの間、アリオスは彼女を抱き上げ、クッキングテラスを出てゆく。
「何をする!!」
アリオスの邪魔をしようと、レヴィアスは彼の脚に自分お足を絡ませ阻止しようと頑張るが、効果はまるでない。
追いかけようとするレヴィアスを、アリオスは足で制する。
「おっと、ここは"飲食禁止"だぜ? おまえはおにぎりでも食ってろ。俺は、あっちの床暖房のところで、アンジェに膝枕をしてもらって、怪我の手当てをしてもらうからな。じゃあな」
勝利の微笑をレヴィアスに向けると、アリオスは、前に見える50畳はある大床暖房に、アンジェリークを連れて行ってしまった。
残されたレヴィアスは、またいつものように悔しさのあまり、次のりヴェンジを考えるのであった。
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コメント
実に、1月半ぶりの「FAMILY TIES」の本編です。
今回は、思い切り職場ネタ(笑)
実は私の職場には、"おにぎりロボット君"という、おにぎりを握るだけの、ホンマに役にたつんかいなというロボットくんがいます。
本編では、レヴィアスがアリオスにごまをふりかけていましたが、実際の被害者は私です(笑)
制服までごまが入ってしまい、散々でした。
次回は、直ぐ更新します。
実は、ここで、アリオス・アンジェリーク夫妻の過去が明らかになります(笑)