DREAM LOVER

中編


 この我がケーキ屋に行くとは…

 翌日。レヴィアスは、アンジェリークから貰ったカードを頼りに、ケーキショップ”Angel Planet”に出向いていた。
 表向きは、部下にケーキを買ってやるため。
 だがその実態は、アンジェリークに逢いたいだけなのであった。

 何だか不思議な魅力を持った少女だったな…

 住所を頼りに歩くと、小さな店が見えてきた。
 人形の看板には”Angel Planet”と書かれている。
 誘われるようにして、レヴィアスは、店の中に入っていった。
「いらっしゃいませ〜!」
 その姿を認めた瞬間、アンジェリークは、嬉しくて駆け寄っていった。
「レヴィアスさん!」
 明るい彼女の出迎えに、レヴィアスは思わず微笑を浮かべる。
「近くまで来たから、寄ってみた…」
 もちろんこれは、口実で、彼は彼女に逢うためだkに、ここまで足を向けたのだ。
 だいたいレヴィアスの家は、こことは正反対にある。
 それをわざわざ出向くとは…、"恋をした"からである。
 もちろん、このことに、二人はまだ気付いてはいない。
 だが、互いの顔を見るだけで嬉しい気持ちになるのは確かだ。
「わざわざここまで有難うございます!」
「いや…。ケーキを貰おうか…」
「はい!」
「どのケーキにしましょうか!?」
 本当に嬉しくて、アンジェリークはにこにこと笑いながら、レウ゛ィアスを見ている。
「何か、おまえさんがおすすめのものはないか? 10個ほどみつくろって欲しい」
「はい! じゃあレウ゛ィアスさん、そのお席にお座りになってて下さいね」
 一生懸命働く彼女が可愛くてレウ゛ィアスは満たされたような表情になると、示されたテラス席に、腰を下ろした。

 この店は、カフェスペースもあるのか。

「あ〜、あなたがレウ゛ィアスさんですか〜」
 のんびりとした話し方の、白衣の青年がコーヒーを持ってやってきた。
 何者かとばかりに、レウ゛ィアスは訝しげに男を見る。
「おまえさんは?」
「アンジェリークの兄、ルウ゛ァです。昨日は妹がお世話になりまして〜」
 アンジェリークの兄がこのような人物で、レウ゛ィアスは少し微笑ましくすら感じた。
「コーヒー、ブラックがお好みだと思いましてね〜」
「すまない」
「い〜え」
 ニコリと笑ってコーヒーを置くと、再びルウ゛ァは奥に消えていった。
 テラス席なので、コーヒーを片手に景色と普通はなるが、レウ゛ィアスの場合はアンジェリークを見ている。
 自分のために一生懸命頑張ってくれる姿が可愛くてたまらない。
 ようやくケーキを詰め込んで、アンジェリークはレウ゛ィアスの元にそれを運んだ。
「お待たせしました!」
 笑顔なアンジェリークが現れて、レウ゛ィアスの表情がさらに崩れる。
「有り難う、アンジェリーク。いくらだ?」
「そんなとんでもないです!」
 アンジェリークは本当に申し訳なさそうに首を降った。
「助けていただいたお礼に何かならないですけど・・・」
 まっすぐな表情を見せつけられると、レウ゛ィアスは受け入れざるをえなくて。
「判った。では、遠慮なく」
 彼は優しく頷くと、ケーキの箱を受け取った。
「あの・・・、レウ゛ィアスさん・・・」
 遠慮がちの光を、上目遣いなまなざしに湛え、レウ゛ィアスを見た。
「何だ?」
「私が作ったケーキ、食べて頂けますか?」
 アンジェリークは思い詰めたようなまなざしを、レウ゛ィアスに向けている。
「判った。今、あるか?」
「あります」
「じゃあ出してくれ」
 その途端、アンジェリークの表情が一気に輝き、彼を魅了した。
「持って来ますね!」
 本当に嬉しそうに奥に消える。

 このままこの笑顔を失いたくはない・・・。
 この笑顔のためなら、何だって出来そうな気がする。

「お待たせしました! まだ見習いの私ですから、お口にあわない気がしますけど・・・」
 照れながら、小さなケーキを差し出した。
 白いシンプルなケーキで、まるで少女のようだ。
「ああ、頂こう」
 少女のためになら、苦手な甘いケーキでも食べられる気がする、
「甘さは少しおさえてありますから」
「有り難う」
 じっとアンジェリークはレウ゛ィアスを見つめながら、胸を高まらせている。
 苦手なケーキでも、少女が心を込めて作ったものなら、食べることが出来る。
「うまいな・・・」
「本当ですか!?」
 さらに明るい表情を浮かべ、レウ゛ィアスは心が満たされた。
「アンジェリーク、美味いケーキを食べさせてくれたから、お礼がしたい」
「お礼?」
 レウ゛ィアスの申し出に、アンジェリークは瞳を輝かせながら、小首をかしげた。
「美味いデザートを食べさせてくれる店がある。お礼に連れて行きたい」
 とても魅力的な申し出に、アンジェリークはうっとりとなる。
「いいんですか!?」
「ああ。かまわん」
 彼女の喜ぶ顔を見るのが嬉しくて堪らない。
「明後日辺りはどうだ?」
「特に予定はありません」
「だったら決まりだな」
 フッと微笑むアリオスにアンジェリークはうっとりと見惚れる。
 ふたりが見つめあっているのを、兄のルウ゛ァは微笑ましく見つめる。

 なんだかいい感じですね〜

 ケーキを平らげて、レウ゛ィアスはふと時計を見た。
 仕事に戻るには、いい時間のようだ。
「じゃあ、そろそろ戻る。明後日は、六時半に迎えにくる」
 彼は立ち上がると、ケーキの箱を持ち、アンジェリークに穏やかな笑みを投げ掛けた。
「はい・・・、待ってます!」
 アンジェリークはレウ゛ィアスを店の入り口まで送り、姿が見えなくなるまで手を振り続けた。
 その姿が可愛くて、レウ゛ィアスは心から笑った。

 こんなに笑ったのは、久し振りだな・・・。

 見えなくなるまでレウ゛ィアスを見送ったアンジェリークは、ぼんやりしながら、レウ゛ィアスの言葉を反芻する。

 これって・・・、デートの誘いかな!? だったら嬉しいな・・・!

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 デートの前日、アンジェリークはさんざん悩んで、服装などを考えた。
 考えれば考えるほど、パニックになってしまう。
 恋する乙女の複雑なところである。
 結局は、花柄のワンピースに落ち着き、トレードマークの黄色のリボンを髪のアクセントに決めた。

 早く明日にならないかな!

 待ち遠しいあまりに、アンジェリークはへんな踊りで暴れてしまう。
「静かになさい、アンジェリーク!」
 兄ルウ゛ァのお叱りを受けてしまった。



 翌日、6時30分近くになると、アンジェリークはそわそわと落ち着かなくなった。

 レウ゛ィアスさん来ないかな・・・。

 だが彼はなかなか姿を表さなかった。
 時間は無情にも過ぎていく。
「アンジェ・・・」
 だんだん肩を落としうなだれてゆく彼女が不憫で、ルヴァは優しく声を掛けた。
「お兄ちゃん…」
 時計を見るともう9時だ。
「アンジェ、お店も占める時間だから、今日はもう部屋に行きなさい…」
「はい…」
 力なく返事をすると、アンジェリークは二階へと上がっていった。
 ルヴァはふうっと溜息をつくと閉店準備をし始めた。
 外の看板を直そうとしたとき、遠くから、見上げた人影が走ってくるのが見えた。
 レヴィアスだ。

 会議が思いのほか長引いてしまった…。
 もう遅いのだろうか…

 彼は全速力で走っている。

 レヴィアスさん…

 そこに、ルヴァは少し彼への怒りが収まってくるのを感じていた----

コメント

41000番を踏まれた華響雅様 のリクエストで、
「レヴィ×アンバカップル」です。
次回バカップルに変化(笑)