Destiny 8

 翌朝、アンジェリークは院長室に、生活指導のシスターマグレタと院長に呼び出された。
「コレットさん、ここに呼び出された理由は判っていますね…」
 院長あくまでソフトに言う。
「はい…」
 うなだれたまま、アンジェリークは小さな声で返事をする。
 あの記事のせいで昨日は良く眠れなかった。
 頭がぼんやりして、ふらふらする。
「この写真週刊誌に写ってるのは…、あなたね?」
「はい・・・」
 シスターマグレタに差し出された雑誌をアンジェリークはよくも見ずに、頷いた。
「知ってるの?」
「昨日、雑誌を見て…」
 いつもの元気はなく、彼女は今にも倒れそうな声で言う。
「だったら話は早いわね。コレットさん」
 厳しいシスターマグレタの声が彼女の心に攻め入った。
 彼女は覚悟を決めてはいたが、やはりかなり息苦しさを感じる。
「顔をおあげなさい」
 シスターマグレタの声に導かれて、おずおずとアンジェリークは顔を上げた。
 涙でかすむ目でアンジェリークは、二人の顔を見つめる。
 院長は落ち着いた眼差しを彼女に送っているが、シスターマグレタの眼差しは険しい。
「アンジェリーク。あなたがここに写っているのであれば、このロックバンドのヴォーカルとはどういう関係ですか?」
 単刀直入に、シスターマグレタは尋ねてくる。
 だが、アンジェリークはどう答えていいか判らず、戸惑うばかりだ。
「答えなさい」
 院長の言葉に、アンジェリークは追い詰められる。
 答えたいけれども答えられない。

 アリオスと私は恋人同士でも何でもない…。
 だって、アリオスにはちゃんといい女性がいるんだから…

「----恋人ではないです・・・」
「だったら何なの?」
 院長に言われても、それ以上のことは答えられない。
 何もないからだ。
「----言えない関係なの!?」
「そんなことはありません!」
 シスターマグレタの声についかっとなり、アンジェリークは無意識に言い返していた。
「だったら何なの!? はっきりおっしゃい!!」
 彼女の言葉が相当いらだったらしく、シスターマグレタは金切り声を上げる。
「本当に何もないんです!! 私たち!!」
 アンジェリークは力強く言った後、旧に肩を落とす。
 その様子が余りにもかわいそうで、院長は思わず身体を乗り出し彼女を見つめた。
「どうかしたの、コレットさん」
 その優しい言葉に、彼女はぽろりと大粒の涙を一筋こぼす。
「ホントに…、ほんとに、何もなくて・・・。あの日も、誘われてご飯を食べに行っただけで、それ以上のことはなかったんです…」
 華奢な身体が小刻みに震える。

 ホントは・・・、ホントは…、あれ以上のことがあればよかったって、思ってる…。
 バカ、アンジェ…

「判りました…。それ以上訊いてももダメみたいね?」
 院長は慈悲深げ名声で、溜息を吐きながらゆっくりという。
 その声は誰よりも優しかった。
「院長!!」
 シスターマグレタはたしなめるものの、若い院長は耳を貸さない。
「ね、アンジェリーク、顔をおあげなさい」
 その声が余りにも優しくて、アンジェリークは癒されるような気持ちで顔を上げた。
「院長…」
「アンジェ…、あなたの気持ちは良くわかるわ。
 だけど・・・、今回のことは他の生徒にも影響が大きすぎるわ・・・」
 その言葉にアンジェリークも頷く。
 判っている。
 彼女は腹をくくり、真っ直ぐに院長を見た。
「どんな処分でも構いません、院長…」  

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 この様子を、レイチェルは扉越しに固唾を飲んで聞いていた。

 アンジェ…!! どうしたら…。

 レイチェルが彼女のために祈ったとき、廊下が急にざわつき始めて、思わず振り返った。
「レイチェル」
「アリオスさん・・・!!」
 目の前に現れたアリオスは、髪を乱し、憔悴しきった表情をしていた。
 写真誌のことをきちんと説明するためだろう、シーツを着ている。
「アンジェは・・・!?」
「あ…、今、処分が言い渡されるところ。きっと、軽くて停学、ひょっとしたら退学ってことも…」
 レイチェルの言葉に、自体の深刻さを知り、今更ながら彼は臍を噛む。
 昨日、彼女専用の携帯に電話をしても、一向に出てはくれなかった。
 その理由がわかって意だけに、アリオスはさらに苦痛になる。

 アンジェ、俺が助けてやる…!!

「あ、ちょっと、アリオスさん!!!」
 レイチェルが停めるのも訊かずに、アリオスは扉を乱暴に開いた---- 

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「言い訳が出来ない以上…、こちらとしても不純異性交際として処理しなければ…」
 院長がそこまで言いかけたときに、乱暴に扉が開く音がして、誰もが振り返った。

 アリオス…!!!

 アンジェリークは驚いて声にならない声を上げた。
「院長さん、不純でなければいいんだな?」
 院長室に入るなり、彼は鋭い眼差しを院長に送る。
「まあ・・・そうですが・・・」
 その絶対的な雰囲気に院長もたじたじになる。
 部屋の中の雰囲気は緊張感が漂っていた----
「----だったら・・・」
 彼は不適に、院長とシスターマグレタに笑みを向けると、アンジェリークの肩をいきなり抱いた。
「・・・!!」
「・・・!?」
「・・・!!!!」
 誰もが驚いたが、中でもアンジェリークが一番胸がすくむ思いがした。
 心を鷲掴みにされたような甘くて鋭い痛みが全身を駆け巡る。
「俺はアンジェリークと今すぐにでも結婚する。これだったら、もう文句はねえだろ?」

 アリオス!!!! どういうこと!?

TO BE CONTINUED・・・



コメント

はははは。
アリオスさんプロポーズです。
ようやく先が見えてきた〜。