
翌朝、アンジェリークは院長室に、生活指導のシスターマグレタと院長に呼び出された。
「コレットさん、ここに呼び出された理由は判っていますね…」
院長あくまでソフトに言う。
「はい…」
うなだれたまま、アンジェリークは小さな声で返事をする。
あの記事のせいで昨日は良く眠れなかった。
頭がぼんやりして、ふらふらする。
「この写真週刊誌に写ってるのは…、あなたね?」
「はい・・・」
シスターマグレタに差し出された雑誌をアンジェリークはよくも見ずに、頷いた。
「知ってるの?」
「昨日、雑誌を見て…」
いつもの元気はなく、彼女は今にも倒れそうな声で言う。
「だったら話は早いわね。コレットさん」
厳しいシスターマグレタの声が彼女の心に攻め入った。
彼女は覚悟を決めてはいたが、やはりかなり息苦しさを感じる。
「顔をおあげなさい」
シスターマグレタの声に導かれて、おずおずとアンジェリークは顔を上げた。
涙でかすむ目でアンジェリークは、二人の顔を見つめる。
院長は落ち着いた眼差しを彼女に送っているが、シスターマグレタの眼差しは険しい。
「アンジェリーク。あなたがここに写っているのであれば、このロックバンドのヴォーカルとはどういう関係ですか?」
単刀直入に、シスターマグレタは尋ねてくる。
だが、アンジェリークはどう答えていいか判らず、戸惑うばかりだ。
「答えなさい」
院長の言葉に、アンジェリークは追い詰められる。
答えたいけれども答えられない。
アリオスと私は恋人同士でも何でもない…。
だって、アリオスにはちゃんといい女性がいるんだから…
「----恋人ではないです・・・」
「だったら何なの?」
院長に言われても、それ以上のことは答えられない。
何もないからだ。
「----言えない関係なの!?」
「そんなことはありません!」
シスターマグレタの声についかっとなり、アンジェリークは無意識に言い返していた。
「だったら何なの!? はっきりおっしゃい!!」
彼女の言葉が相当いらだったらしく、シスターマグレタは金切り声を上げる。
「本当に何もないんです!! 私たち!!」
アンジェリークは力強く言った後、旧に肩を落とす。
その様子が余りにもかわいそうで、院長は思わず身体を乗り出し彼女を見つめた。
「どうかしたの、コレットさん」
その優しい言葉に、彼女はぽろりと大粒の涙を一筋こぼす。
「ホントに…、ほんとに、何もなくて・・・。あの日も、誘われてご飯を食べに行っただけで、それ以上のことはなかったんです…」
華奢な身体が小刻みに震える。
ホントは・・・、ホントは…、あれ以上のことがあればよかったって、思ってる…。
バカ、アンジェ…
「判りました…。それ以上訊いてももダメみたいね?」
院長は慈悲深げ名声で、溜息を吐きながらゆっくりという。
その声は誰よりも優しかった。
「院長!!」
シスターマグレタはたしなめるものの、若い院長は耳を貸さない。
「ね、アンジェリーク、顔をおあげなさい」
その声が余りにも優しくて、アンジェリークは癒されるような気持ちで顔を上げた。
「院長…」
「アンジェ…、あなたの気持ちは良くわかるわ。
だけど・・・、今回のことは他の生徒にも影響が大きすぎるわ・・・」
その言葉にアンジェリークも頷く。
判っている。
彼女は腹をくくり、真っ直ぐに院長を見た。
「どんな処分でも構いません、院長…」
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この様子を、レイチェルは扉越しに固唾を飲んで聞いていた。
アンジェ…!! どうしたら…。
レイチェルが彼女のために祈ったとき、廊下が急にざわつき始めて、思わず振り返った。
「レイチェル」
「アリオスさん・・・!!」
目の前に現れたアリオスは、髪を乱し、憔悴しきった表情をしていた。
写真誌のことをきちんと説明するためだろう、シーツを着ている。
「アンジェは・・・!?」
「あ…、今、処分が言い渡されるところ。きっと、軽くて停学、ひょっとしたら退学ってことも…」
レイチェルの言葉に、自体の深刻さを知り、今更ながら彼は臍を噛む。
昨日、彼女専用の携帯に電話をしても、一向に出てはくれなかった。
その理由がわかって意だけに、アリオスはさらに苦痛になる。
アンジェ、俺が助けてやる…!!
「あ、ちょっと、アリオスさん!!!」
レイチェルが停めるのも訊かずに、アリオスは扉を乱暴に開いた----
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「言い訳が出来ない以上…、こちらとしても不純異性交際として処理しなければ…」
院長がそこまで言いかけたときに、乱暴に扉が開く音がして、誰もが振り返った。
アリオス…!!!
アンジェリークは驚いて声にならない声を上げた。
「院長さん、不純でなければいいんだな?」
院長室に入るなり、彼は鋭い眼差しを院長に送る。
「まあ・・・そうですが・・・」
その絶対的な雰囲気に院長もたじたじになる。
部屋の中の雰囲気は緊張感が漂っていた----
「----だったら・・・」
彼は不適に、院長とシスターマグレタに笑みを向けると、アンジェリークの肩をいきなり抱いた。
「・・・!!」
「・・・!?」
「・・・!!!!」
誰もが驚いたが、中でもアンジェリークが一番胸がすくむ思いがした。
心を鷲掴みにされたような甘くて鋭い痛みが全身を駆け巡る。
「俺はアンジェリークと今すぐにでも結婚する。これだったら、もう文句はねえだろ?」
アリオス!!!! どういうこと!?
TO BE CONTINUED・・・