CUTS LIKE A KNIFE


 アンジェリークは、拳を握り締めて、身体を怒りで震わせている。
「・・・!」
 その怒りを押さえて上げるかのように、アリオスはアンジェリークの手を握り締めた。

 アリオス・・・。

 そうしてもらうことで、アンジェリークは心が落ち着くのを感じる。
「俺も慈悲深い男でな・・・? このオスカー保安官と決闘をして、おまえが勝てば、この家族からも、町からも撤退してやるが・・・、もし・・・、負けたらおまえの命はない・・・」
 シュルツは冷酷極まりない表情で、卑劣にもアリオスを見据え、不気味な薄笑いを浮かべていた。
 銃を手にしてアンジェリークの額に向けている。
「もちろん、銃はこちらで用意したものでね?」
 シュルツニヤリと薄気味悪く口許に笑みをたたえている。
 怒りの余りつっかかっていこうとしたアンジェリークを、アリオスは腕だけで制した。
「アリオス・・・」
 不安げな彼女を、アリオスはまなざしで安堵させる。
「大丈夫だ」
 安心させるかのように優しく言うと、アリオスはオスカーに向き直った。
「判った・・・。連れていってくれ」
「判った」
 オスカーは頷くと、アリオスを中庭に導く。
 その後を、アンジェリークはディアと共に着いていく。
 その場所はおあつらいむきの場所だった。
「アンジェリーク、あの男が死んだら、おまえはわしの妻になれ」
「なっ!!!」
 シュルツが背後に近付いてきて、アンジェリークは背筋が凍ってしまうのを感じる。
 嫌悪感で、アンジェリークは、身の毛がよだつ。

 お姉ちゃんじゃなかったの・・・!?

「おまえの愛らしさは、素晴らしい」
 堪能するかのようにつぶやき、シュルツがアンジェリークに近づいてくる。

 ・・・助けて!!!

 アンジェリークの身体をシュルツが触れようとした瞬間-----
「いてっ!!」
 アリオスから、小さな鉛の玉が飛んできて、シュルツを直撃した。
「いてっ!!」
「悪ぃ手が滑った」
「おのれ〜!!」
 アリオスは平然とした表情で、何ごともなかったかのようクールにしている。

 アリオス・・・、ありがとう・・・。

 彼の子供っぽいし返しが、アンジェリークにはこの上なく嬉し区、少しだけ、心が明るくなるような気がした。
「立ち会いのウ゛ィクトールだ」
 シュルツの舎弟である、顔に傷が付いている、がっしりと体格がしている男が、立会人として現れた。
 一見、気難しいように見えるが、優しい瞳をしているようにアンジェリークには見える。

 この人は、シュルツの配下の中でも、やさしい顔をしている・・・

 銃は立派な箱にいれてあり、ウ゛ィクトールは二人に見せた。
「お互いに銃のチェックをしてくれ」
 頷いて、二人はチェックをし合い、入れ替える。
 銃弾をもチェックする。
「オッケ」
 アリオスは満足そうにいい、オスカーもまた頷く。
アンジェリークは、シュルツに連れられて、一番良く見える場所に移動させられた。

 神様・・・! アリオスを見守って下さい・・・!!!

「カウントは10。それで振り向いて早撃ち。いいな?」
 ウ゛ィクトールに言われ、アリオスとオスカーは頷く。
 アリオスは銃を手に取り、その感触を確かめた後、一瞬、アンジェリークを見つめた。
 アンジェリークは泣きそうな顔で、アリオスをじっとみつめている。
 それをアリオスは柔らかな表情で見つめた。
 アリオスは目線をオスカーに向けると、迷いなどないかのように、しっかりと頷いた。
「準備はいいか? 色男?」
 からかうように言われて、アリオスは少しむすっとする。
「準備はいいな? だったら、俺が数えるからそれに合わせて十歩歩け。十のところで振り返って撃つ。いいな?」
 二人は頷き、背中を向け合う。
「お互いに行くぞ! 1、2、3、4・・・」
 見守りながら、アンジェリークは、痛む胸をぎゅっと押さえて、必死に耐え抜こうとする。
 目の前でアリオスが死ぬことなど、アンジェリークには耐えられない。

 お願い・・・!

 この目で彼の様子を見ることができず、彼女は、目を深く閉じてしまう。
 心臓の音だけが、彼女の耳に残り、苦しくなった。
 その間にもアリオスはまた一歩と確実に進んでいく。
 心臓の音で、心が破裂してしまうのではないかと、アンジェリークは思う。
 彼女の心臓の音とともに、アリオスとオスカーは一歩、また一歩と歩みを進めた。
「・・・10!」
 ヴィクトールの声が響き渡った時であった-----
 二人は同時に振り返り、トリガーを引く。
 銃声が鳴り響く------
 まるでスローモーションの映像を見ているようだった。
 ゆっくりと鮮やかな鮮血が、オスカーそしてアリオスの胸から吹き出る。

 うそでしょ・・・!!!!

「いやぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!!!!!!!!!!!!!!!!!」
 アンジェリークの絶叫がこだました瞬間------
 二人はその場に倒れこんだ。
「・・・うそでしょ・・・!?」
 アンジェリークは信じられなかった。
 アリオスが自分のために目の前で死んでしまうなんて。
 そんなこと考えたくもなかった。
「はははは!!!! これでうまくいった!! さあ、アンジェリーク!!!」
 ぐいっと、シュルツに手をつかまれれば、アンジェリークはそれを拒絶するかのように、手を振り払う。
「いやあああっ!!!」
 まるで狂ったかのように泣き叫ぶアンジェリークに、シュルツは苦虫を噛み潰したような表情をした。
「・・・まあ、いいだろう・・・。わしのものになるんだからな・・・。まあ、せいぜい最後の別れでもして来い・・」
「言われなくてもいくわ!!!」
 アンジェリークはシュルツをキッとにらみつけると、全速力でアリオスの元に駆けつける。
「アリオス〜!!!!」
 アリオスのなきがらの元にアンジェリークは座り込み、彼をその腕の中で抱きしめた。
「・・・ごめんね・・・。私のために・・・。本当は・・・、あなたのこと・・・大好きだったの・・・!!!!」
 ぎゅっと抱きしめたあと、アンジェリークは、涙を流しながら、彼の形のよい唇にキスをする。
 万感の思いをこめて。
 が・・・。
「・・・んっ!!」
 突然、唇を強く吸われて、アンジェリークは驚いた。

・・・まさか・・・

 息を呑む間もない、そのとき。
「お嬢ちゃん、ちょっとそのままな?」
 オスカーの声も聞こえる。

 え!?
 どういうこと!!!

 刹那-----
 アリオスとオスカーは俊敏に上半身を起こすと、ホルスターから銃を抜き、シュルツの足に目掛けてトリガーを引いていた-----

コメント

72000番のキリ番を踏まれた沙羅様のリクエストで、西部劇なアリオス・アンジェです。
 今回のアンジェは勝気のはいった元気娘。
書いててとても楽しいです。
復活隊長!!
沙羅さま〜書きましたよ(笑)