翌日から、アンジェリークは、アリオスの元に通い始めることになった。 毎日彼に逢えることが、アンジェリークの表情を明るくしてゆく。 そのことを知ってか、レイチェルも何も言わなくなった。 「アンジェ、もっと可愛い格好していかなきゃ」 『だって、デートじゃないのよ? お仕事だもん』 真っ赤になりながら、手話で答える彼女が、レイチェルは可愛いと思う。 ホント、明るくなったね、アンジェ…。 やっぱり恋の力って凄い…!! だって、私たちにはあんな可愛い表情をしたことがなかったもの…。 アナタ…。 「さてといってらっしゃい! ちゃんと遅くなるようだったら電話をするのよ?」 その言葉に、アンジェリークはしっかりと頷いた。 レイチェルに見送られて、アンジェリークはアリオスのマンションへと向った。 手には、アリオスが大好きなジンジャークッキーを持って。 昨日、アリオスのために焼いたのだ。 マンションの彼の部屋の前まで来ると、彼女は畏まったように、インターホンのボタンを押す。 一回押したところで、直ぐにドアが開いた。 「アンジェ、よく来たな?」 「こ…、こ…、アリ…、オス・・・」 必死で声を出して彼に挨拶しようとする彼女が意図し巣f儀手、アリオスは目を細めてしまう。 「こんにちは、アンジェ」 すっと彼女の頬に指先を当てる。 それはご褒美。 アンジェリークのその指先から出る温かさに、思わず目を閉じた。 「さあ、入ってくれ。仕事の内容を教えるからな?」 彼に優しく招き入れられて、アンジェリークはしっかりと頷いた。 「これがタイムテーブル。この時間通りに俺は仕事をしているから、その補助をしてくれ」 アンジェリークは頷いて、彼から早速用紙を受け取った。 それを見て、彼女は涙ぐんでします。 8時起床朝食 9時から12時まで脚本の仕事 12時昼食 1時から3時脚本 3時から4時 休憩とアンジェリークと言葉の練習。 4時から6時 エッセイの仕事 6時から8時 夕食とアンジェリークと言葉の練習 9時アンジェリークを送る 11時から12時 小説を書く 12時就寝 「おまえの仕事は9時までだ。俺の仕事のファックスをとったり、流したり、パソコンも用意してるから、それに用件を打ち込んだりしてくれ。飯は俺が作るから、気にすんな」 アンジェリークは、それに首を振る。 そして手話で言う。 自分が作ると---- 「サンキュ。俺も手伝うからな?」 コクリと頷いて、アンジェリークは、アリオスに肩を抱かれた。 アンジェリークは、真剣にパソコンない向い次々と原稿を仕上げていくアリオスを見ながら、彼に頼まれた仕事を楽しんでこなすことができる。 喜びに包まれて、彼の仕事の手助けをすることがとても嬉しい。 アリオスも、また、アンジェリークが横で一生懸命仕事をしてくれることが嬉しくて、集中力が高まってゆく。 二人はお互いに良い影響を受けあって、仕事を続けていた。 そろそろ3時… ふと時計を見上げると良い時間になっていたので、アンジェリークは席から立ち上がり、そのままキッチンへと向った。 そこでアリオスのためだけにコーヒーを立て、自分にはホットミルクを淹れる。 さらには、昨日焼いたジンジャーマンクッキーを入れた。 食べてくれると良いな… そんな甘い期待を心の中に秘める。 彼女がセッティングが終わったのと同時に、アリオスがダイニングキッチンに入ってきた。 「美味そうなにおいがするな?」 それに、アンジェリークは笑顔で答える。 この笑顔だけが、俺を癒してくれる…。 こいつ以外に、俺は何にもいらない… アリオスがコーヒーがおいてある席に座ると、アンジェリークはその向かいに座る。 顔が付き合っているものの、アリオスは少し不満で。 「何だ…、おまえに触れられねえな…。もっと幅が狭い机を買うか」 そういうと、アンジェリークは恥ずかしそうにして、上目遣いで彼を見つめている。 そして、スケッチブックにはこう書いた。 "お料理しても置けないじゃない…” 「クッ、確かにそうだな?」 彼は、本当に楽しそうに笑う。 いつもは厳しい脚本家のアリオスがこんな表情をするとは、誰も思わないであろう。 「これ、おまえが焼いたのか?」 それにはアンジェリークは素直に頷く。 「サンキュ」 ごく自然に、彼は手を伸ばしてクッキーをとり、それを口に運ぶ。 味はとっても美味しいが、それよりもアンジェリークの愛情がたくさん入っていると思うと、アリオスは嬉しくて堪らなかった。 「凄く美味いぜ!」 彼が美味しそうに何個も食べるものだから、アンジェリークは本当に苦しいほど嬉しくて、アリオスにどうしようもなく恋をしている自分を感じてしまう。 「…さてと、クラヴィス先生に言われたように、練習するか?」 とたんにアンジェリークの顔が真剣になる。 彼女はしっかりと頷くと、アリオスを見つめ、礼をする。 ああ、一緒に頑張ろうな? 二人で力を合わせれば何でもできるからな? アンジェ?」 ぎゅっと手を握り締めてもらって、アンジェリークは彼に総てを預ける。 「俺の名は?」 「…アリ…オス・・・」 かなりなれてきたようで、彼女は上手く発音ができるようになっている。 「本当におまえは良い声だな?」 アンジェリークは、その嬉しさを伝えるために、一生懸命その想いを伝える。 「あり…が…とう…」 一生懸命、彼にその思いを伝えようとする彼女が、何よりも美しい。 誰よりも綺麗で崇高な存在のように、アリオスには思えた。 「…もっと、もっとおまえの声が聞きたいからな?」 もう、クラヴィスのプログラムなど関係なくて、アリオスはアンジェリークを思うあまりの言葉を、一生懸命囁く。 小さな彼女の手を握って、そのまま唇に持っていって口付ける。 愛しさが、もう爆発寸前だった。 「アリオス…、大…好き…」 拙くも彼に自分の想いを伝えようとするアンジェリークに、アリオスはもう愛しさに歯止めが利かないところに来ていた。 彼女の手を離すと、直ぐに背後に回り、抱き上げる。 「アリ・・オス?」 そのまま彼女を抱き上げて、寝室へと運んでいく。 ベッドが見えた瞬間、これから起こることが、彼女にも薄っすらとわかり頬を染める。 「おまえが欲しい…。 もう二度とはなれないように…」 アンジェリークは答える代わりに彼の首に腕を回す。 愛の嵐は二人を包み込んでいた---- |
TO BE CONTINUED…

コメント
『愛の劇場』第四弾は、話すことが出来ないアンジェリークと、言葉を紡ぐことを
生業としているアリオスです。
今回と次回は少し幸せな二人です。
試練はもう直ぐです…。
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