美しい森の空気は澄みやかに冴え渡り、そこにいる誰をもの心を清らかにしてくれる。 湖にゆっくりと近付き、彼らは吸い寄せられるような気分になった。 「おまえがいるかもしれねえんだよな?」 「うん」 誰もの顔も緊張感に漲り、歩みをすすめていた。 アンジェリークは、アリオスの腕のなかにぴったりと寄り添いながら、まだ見ぬ自分の身体に、緊張感を抱えていた。 不安はどうしようもなくある。 自分の身体がすでに朽ちていたらどうしようか。 そんな思いすらよぎる。 そんな不安を払拭してくれるのは、やはり、アリオスだった。 彼は、彼女の魂を包み込むかのように、優しく側にいてくれる。 温かな彼の心に触れるだけで、アンジェリークは癒されるような気がした。 神秘的な光が帯び始め、誰もが落ち着かなく、きょろきょろとし始める。 「これは超自然現象でしょうか!?」 エルンストは自然科学に造詣が深いこともあり、フレームを指で押さえながら、きょろきょろしている。 「新種のレーザーかよ!?」 ゼフェルも、機械フェチらしいひとことを言う。 「素晴らしく綺麗やな・・・」 チャーリーのストレートなひとことには、誰もが頷いてみせた。 それぞれに思いが満ち足りてくる不思議な空間が、そこにはある。 『ようこそ、待っていました・・・』 優しい温かな声が降りてくる。 「誰だ!?」 アリオスは緊張感と鋭さの混じった声で、訴えかけた。 『わたしは、天使を護るもの。さあ、わたしの後に着いてきて下さい』 声が響いたかと思うと、ぼんやりとした光が現れ、照らしている。 優しい力であることは、誰にも判る。 だがここまで来て、失敗の轍を踏みたくないのも、また事実で。 「行きましょう!」 凛とした声で返事をしたのはアンジェリークだった。 彼女はまっすぐと澄んだ光で、光を見つめている。 「信じられる、温かな光だわ」 アンジェリークの言葉は確信に満ち溢れていた。 「俺は信じるぜ」 揺るぎない言葉をくれたのは、やはりアリオスだった。 「有り難う」 アンジェリークは嬉しかった。 アリオスが自分を信じてくれることを肌で感じ、心が潤む。 「いつも一緒だからな?」 「うん」 しばらく、他の仲間は黙っていたが、オスカーが口火を切った。 「愛のチカラを信じるぜ?」 「愛の力か〜! ええこっちゃ!」 チャーリーは何度も頷き、二人を見る。 「いいね、おもしろそうだし、僕も付き合おう」 セイランは、おかしそうに口許に笑みを浮かべた。 「光に付いて知りたいことがございますから、着いていきましょう!」 エルンストも研究者らしく乗り気だ。 「しゃーねーな。行ってやるよ」 ゼフェルはまんざらでもなかったが、わざと仕方ないかのように言った。 「アンジェ、怯むことはねえぜ。行くぞ?」 「うん!」 あなたたちの心が、何よりも武器になるわ・・・。 光は彼らの気持ちを汲んだかのように光ると、ナビゲーションするために動き始めた。 「行きましょう」 「ああ」 アリオスたちは少しずつ光と共に歩き始める。 進むにつれ、湖はどんどん近付いてくる。 「ここには純粋な人しか来ることが出来ないわ。あなたがたより前にきたのは、綺麗な心をもった、ブティックのお針子よ」 アンジェリークとアリオスは思わず顔を見合わせた。 あの店員だわ・・・!! そうなると、彼女の希望はさらにたかまる。 胸がさらに高まりをおぼえ、自然と歩くのも早くなる。 十五分ぐらい歩いた後、明かりが湖の上に止まった。 それを合図に光まで、アリオスたちは走り出す。 神様、どうか何も危険なことはありませんように・・・! アンジェリークの体がちゃんと残っているように・・・! 頼むぜ! 俺にとっては最高の宝物だ・・・ アンジェリークもアリオスも最早祈ることしか出来なかった。 景色が急に広がり、光がより鮮明に見える。 光は丸だったものが、不思議なことに今や妖精のかたちになり、湖に浮かぶ花畑の上を飛んでいる。 その幻影的な美しさに、誰もが息を飲む。 薄暗いのにそこだけが優しく輝き、花々は鮮やかな色を見せている。 「きれいだわ・・・」 「ああ」 アリオスがアンジェリークを連れて花畑を覗き込む。 『・・・・・!!!!!!」 彼らは目の前に繰り広げられる光景に、思わず息を呑んだ。 続く、オスカー、チャーリー、セイラン、ゼフェルも、思わず立ち止まる。 美しい・・・・ アリオスは言葉を失う。 そこには、光のヴェールに包まれた、白いドレスに身を包んだ”アンジェリーク”が無心に目を閉じていた--- |