BODY AND SOUL

CHAPTER 7


「あれが・・・、アルテミス・・・」
 アンジェリークは、宇宙の海に光る美しい星をうっとりと見つめる。
「あの星の森の奥に私が・・・」
「もうすぐ旅の目的を遂げられるな・・・?」
 アリオスの愛情に大きく包まれながら、アンジェリークは頷いた。
 その横顔には、これから起り得る困難への決意が漲っている。
「着陸体制に入る」
 凛として響くアリオスの声に、アンジェリークたちはしっかりと頷いた。
 しっかりとシートベルトを締め、着陸体制に入る。
 宇宙船は緩やかな旋回をした後、ゆっくりと着陸をした。
「アンジェ、姿を消せ」
「うん」
 上陸する際、アンジェリークは自らの立体影像を消し、アリオスのスーツのポケットに隠れる。
 後で、元に戻るのだ。


 閉口したくなるような検問の後、アンジェリークは、ようやく影像を付けることができた。
「やっぱ、新婚旅行の星やわ〜! いっぱいカップルおってめっさ暑いわ〜!!」
 チャーリーは、冷やかしたように言い、アンジェリークにはそれが楽しくて笑う。
「何、笑ってんのアンジェちゃん。あんたも充分、アリオスと船ん中を暑くしとるがな〜!」
 真っ赤になるアンジェリークに、そこにいる誰もが微笑ましくて笑う。
「俺とアンジェは、ここにいるカップルたちより燃えてるぜ? な?」
 ぎゅっと抱き締めてくるアリオスに、アンジェリークは益々真っ赤になるのであった。



 一行は休息を取ったのも束の間、ゼフェル特製のジェットカーを使って、シュウ゛ァルツウ゛ァルトへと向かう。
 ”黒い森”として有名な場所である。
 そこまでは観光飛行機とバスを乗り継いで行かなければならないが、彼らは比較的早いルートである、アウトバーンを選択した。
 運転手はアリオスとオスカー。
 ゼフェル曰く、これを乗りこなせるのは、このふたりしかいないとのことだった。
 車内にいる間、他のものもしゃかしゃかと準備をしていた。
 ゼフェルは武器の点検と整備を、エルンストはデータの解析、チャーリーは物資の点検と、コンパクトに詰め込む。
 ただセイランだけはマイペースに詩などを創作していた。

 森が広がりを見せ始めた。

 あの森に、私がいる・・・。

 アンジェリークの表情も自ずからひき締まっていく。
 森は深く、飲み込まれそうな気すらする。
 ジェットカーは、静かに駐車場に到着した。
 眼下に広がる森は、彼らを圧倒した。
「この森には、観光の為に開発されたルートがあり、ほとんどの人がそれを使います。後は獣道がありますが、それは磁石が使えないので何とも・・・」
 エルンストは、頭を捻りながら、森を見つめる。
「そんなことだろ〜と思ってよ、俺様自慢の方位磁石があるぜ!」
 ゼフェルの力強い一言に、彼らの表情は明るくなった。
「だったら磁石を使って安心して獣道にいけるな」
 オスカーも頼もしいとばかりに頷いている。

 本当に私は良いひとたちに出会うことができた・・・。
 嬉しい・・・。

「さあ、行くぜ?」
 アリオスはアンジェリークを優しく見つめた。
「これでようやくおまえは、旅の目的が果たせるな?」
「うん・・・」
 アリオスの優しく頼りになる視線が少しだけ、アンジェリークにはくすぐったかった。
「エルンスト、獣道はどっちだ!?」
「はい、こちらです」
 エルンストは、データを参考に指差す。
「アンジェ、行こう」
「うん」
 アリオスの後を、アンジェリークはしっかりと着いていく。
「はぐれるなよ!?」
「大丈夫! アリオスにぴったりと着いていくから」
 大丈夫だと彼女は精一杯の笑顔を向けた。

 彼らは、木をわけいって、森の中に進んでいく。
 昼間だと言うのに、森には薄日しか射さず、気温も低く思える。
「なあ、エルンスト、いったいこの森はどれぐらいの広さがある?」
 3時間も歩いているのにも関わらず、全く変わらない景色に、オスカーは少しうんざりして言った。
「そうですね、ひとつの市は入るでしょうか」
 エルンストは、なんでもないことのように涼しげな声で呟く。
「げっ! そんなにデカイのかよ!」
 一番若いゼフェルですらも、閉口した。
「だが確実に進んではいるんだろ?」
 アリオスは、アンジェリークに希望を持たせるためにも、ゼフェルに訊く。
「待ってくれ・・・、ああ、進んでるぜ?」
 方位磁石を確認して、得意げにゼフェルは呟いた。
「よかった!」
 アンジェリークは安堵をしたかのように息を吐く。
「少し、休みませんか? これから長いと思いますし」
 優しいアンジェリークならではの配慮だった。
 彼女は精神体なので、疲れは知らない。
「そうだな? 昼飯を食って休憩してからにするか・・・」
 アリオスは彼女の気遣いを素直に受け取り、他のメンバーもそれに続く。束の間の休息を、彼らは楽しむことにした。

「アンジェ」
「アリオス」
 切り株に小さくなって座っているアンジェリークの横に、アリオスは腰掛ける。
「どうだ? もうすぐ身体に逢える感想は・・・?」
「嬉しいのと、ちゃんと封印がとけるのか、心配・・・」
 複雑な笑顔に、アリオスは彼女の切ない心根を理解した。
「・・・ね、私の身体が元に戻ったら、ちゃんて抱き締めて・・・、キスしてくれる?」
 はにかんだ表情がとても可愛い。
 手を延ばせば実体があるというのは、とても素晴らしいことのように、アリオスには思えた。
「ああ、もちろんだアンジェ」
 二人は互いの表情を見合わせて笑う。
 幸せそうなふたりの姿を見ながら、仲間たちは疲れが吹っ飛んでくるのを感じていた。



 再び、アリオスたちは歩き出す。
 薄日が射していたのが、段々、時間が経つに連れて暗くなって行くのを感じた。
「日が沈んできたなゼフェル、今、どのあたりだ」
「待ってくれ、アリオス」
 方位磁石をゼフェルは取り出し、眺める。
「あれ」
 彼は頭を捻りもう一度磁石を見つめる。何度見ても同じ結果に、ゼフェルは背中に冷たいものが流れるのを感じる。
「俺たち…迷っちまったかも知れねえ…。方位磁石がきかねえ!!!」

 何だと…!?

 彼らの中不安が渦巻き、暫くの間、誰も話すことが出来ないでいた------

 私のせいで…

「ねえ、その磁石、きっと腐ってんだよ…?」
 気まずい雰囲気の中で声を上げたのはセイラン。
「腐ってなんか!」
 ムキになるゼフェルの磁石を、セイランは簡単に取り上げてしまった。
「こんなんに頼らなくても、僕らは切り抜けられる…。そうだろ? アリオス」
 セイランの気まぐれだが、その気遣いがアリオスはとても嬉しかった。
 彼も喉を鳴らして笑うとセイランを見る。
「だな? 道に迷うのは、俺たちには日常茶飯事だ」
 アリオスが言えば、オスカーもチャーリーもその通りだと言うように頷き、ゼフェルも頭をかいた。
「確かに、ジャンクやのおっさんに半額にしてもらった材料を使った…」
 その瞬間、やんやのブーイングがゼフェルには向けられた。
 それはアンジェリークが自分を責めないようにと、彼らならではの思いやり。
 彼女はそれが嬉しくてたらない。

 皆さん…。
 どうも有り難う・…。
 私のためにこうやって気を遣ってくださる・…。
 あんたたちは、このたびの私が手に入れた最高の宝だわ…

 アンジェリークは、泣き笑いの表情を浮かべながら、彼らの様子を見つめていた-----

コメント

アリXアンのSFです。
お久し振りです(苦笑)
惑星アルテミス。
森の冒険はまだまだ続く〜