BODY AND SOUL

CHAPTER 5


「なあ、だから俺らは貧窮してんねんや〜」
「何を言ってる!? 宇宙一の海賊チームのくせに! 金はあるはずだ!」
「もう〜、最近は不景気なんやで〜!! 海賊言うても人の子や、調子のええ時と悪い時があるんや〜」
 店に入るなり、賑やかにも、店主とやり取りをするチャーリーの声が聞こえてきて、アンジェリークは楽しそうに目を丸くした。
「あれはあれで楽しんでやってるんだ。客寄せにもなるしな?」
 本当に楽しそうに微笑む彼女に、しばしアリオスは見惚れる。
 人工の表情かもしれない。
 だが、魅力的で輝いているように思える。

 アンジェの心はこもっているんだから、当然か・・・。

「なあええやん〜! まけて〜や〜! もうかってんねんやろ〜!! 哀れな美青年に、手を差し延べて〜な〜! 俺らお得意様やろ〜」
 余りにもしつこく言うものだから、店主もあきれがちになり、大きな溜め息を吐いた。
「判りました。2割引いときます」
 チャーリーのしつこさの勝利である。
「ほんなら、あの荷台に荷物乗せてくれへんか? 会計は明朗会計やで」
「はいはい」
 交渉がうまくいってほくほく顔のチャーリーと、少し苦笑いの店主の表情の対比がおかしくて、アンジェリークはくすくすと笑った。
 その柔らかな笑い声に、チャーリーは振り返る。
「アンジェちゃーん!! と、おまけのアリオスやん」
 アンジェリークには笑顔で素敵に答え、アリオスには邪険に言う。
「こんにちは! チャーリーさん」
「よお」
 わざと不機嫌そうにするアリオスに、くすくすと笑いながら、アンジェリークは小首を傾けて挨拶をした。
 ふたりの温かな雰囲気に、チャーリーは嬉しくなると同時に、少し切なくもなる。

 アンジェちゃんが精神体やのうて、実態もあったらよかったのにな・・・。

「これからデートすんの?」
「えっ!?」
 真っ赤になった彼女に、チャーリーは何度も嬉しそうに頷いてやる。
「今日は夕方まで時間があるからふたりでゆっくりし。買い出しもこれで終わるしな?」
 からかうようにチャーリーに言われて、アリオスは少しだけむすっとする。
「行くぞアンジェ。こんなバカほっといて」
「あ、待って! アリオス!!」
 そのままアンジェリークはアリオスの後を追って行き、チャーリーはニヤリと笑って、二人を見送った。
「本当に仲の良さそうなカップルですな。こっちが当てられる感じがしますね」
 店主もほのぼのとふたりの様子を見ていた。
「ねえ、いいの?」
 気を遣うようなまなざしを浮かべたので、アリオスは答えるように見つめる。
「夕方まで一緒にデートだ」
「うん! だったらどっか楽しいとこ連れていってね」
「ああ」
 アリオスはしっかりと答えてやるが、内心は少しやるせなかった。
 彼女が実体を伴っているのであれば、手を繋いでやったり、抱き締めてやれるのにと、思う。
 ふたりは取りあえず、惑星一の街にきているので、ぶらぶらとウィンドウショッピングを楽しむことにした。
 アンジェリークは、久々に楽しくてたまらなく、心が開放感に包まれる。
「アリオス、楽しいわ」
「俺もな」
 しばらく歩いていくと、急にアンジェリークが立ち止まり、アリオスもつられて止まった。
「アンジェ?」
「見て、アリオス・・・」
 彼女が指差す方向に目を向けると、そこはブティックで、ショーウィンドウには純白のドレスが飾られている。
「綺麗・・・」
 うっとりと見惚れる彼女に、アリオスはそれを買ってやりたい衝動に駆られた。
「入るぞ!」
「えっ!?」
 アンジェリークは明らかに動揺したように大きな瞳を見開いた。
「だって、私・・・」
 そこまで言いかけて、アンジェリークは戸惑いと寂しさを見せる。
「おまえの身体が見つかれば、幾らだってドレスを着れるが、買うチャンスはこれしかないかもしれないぜ」
 アリオスの言葉が胸を突く。
 心の中が熱くなるのが判る。
 アリオスの優しさが降りてきて、アンジェリークを潤ませる。
「アリオス…」
「着たら、俺に見せてくれ? いいな?」
 フッと笑う彼を感じて、アンジェリークは何度も頷いた。
 映像なのかもしれない。
 だが彼女が頷く姿は何よりもリアルだった。
 アリオスはアンジェリークを----詳しく言えば"精神体”だが----連れて、ブティックへと入っていった。
「いらっしゃいませ〜」
 中に入ると共に鈴のような声が聴こえた。
「すまねえが、ショーウィンドウに飾ってあるドレスを包んでくれ」
「はい…」
 と、金髪の店員がアンジェリークに目を止めたとき、彼女はその姿に息を飲む。
「あなたは…!!!」
 その驚愕と感動が入り混じった声に、アリオスもアンジェリークも顔を見合わせる。
「"眠れる森の天使”!!」
 その言葉にアリオスとアンジェリークはますますわけが判らない。

 どういうことだ…?

 

コメント

アリXアンのSFです。
お久し振りです(苦笑)
次回からようやく本題に入ります。
トモ様お待たせしまして申し訳ないです!!
また頑張って書いてゆきますね!!