やはり、精神体とはいえ、女性の存在があるということはいいことで、旅に張り合いが出てきたような気が、彼らにはしていた。 アンジェリークは精神体なので、食事を食べたりはしないのだが、食事中に、楽しげに話す姿などは、旅を続ける彼らの心を癒してくれる。 「でも、みなさん、とっても仲がよさそうだけれど・・・」 「そんなわけないやんか〜」 アンジェリークの素朴な言葉に、チャーリーはぶるぶると首を振り、仲間を指を指しながら、話し始めた。 「アンジェちゃん、よ〜見てみ? 先ずエルンスト。こんな堅物と、俺やオスカー、アリオスの遊び人がやななあ、気合うと思うか〜?」 「合いたくもないですが、私は」 きっぱりといって、チャーリーをエルンストは睨みつける。 「何で、俺が"遊び人なんだ"!? ったく、そこらじゅうの惑星に"俺のお嬢ちゃん”がいるやつといっしょにしないでくれ」 不機嫌そうにするのはアリオスも同様で、彼は魅力的な金と翡翠の瞳を曇らせた。 「ケッ、何言いやがる! オスカーと二人して、女のとこに言ってて遅刻したくせに!」 的確なゼフェルの突っ込みに、アリオスは返す言葉がなくて。 「あ〜、ホンマや! 俺とゼフェルがこいつらの分まで準備したんやで〜」 チャーリーはアンジェリークに同情を求めるように見る。 そうすると、彼女はくすりと苦笑いする。 その表情一つを取ってみても、彼女が"精神体"だけで、実体の伴わない映像だとはとてもでないが思えない。 「何を、ガキにそんなことは言われたくない。この間の惑星で、お前がエアバイクブーブー鳴らして迷惑をかけた時も、謝りに言ったのは、俺とアリオスだ」 やはりオスカーも負けずに応戦してきた。 「ったく、君たちといたら退屈しないよ・・・・」 セイランがフッと笑って、挑戦的に仲間を見る。 「だいたいあなたはどうして"輪"を乱すのですか!」 再びエルンストに戻り、このバトルは堂堂巡りなのだった。 アンジェリークは、そんな彼らのやり取りがとても楽しくて、大好きであった。 一番心が休まる時間・・・。 今、ここにいる彼女はあくまで"精神体”なので、精神が休まる時間こそが、最も重要なのだ。 この人たちにたどり着いてよかった・・・。 頭脳明晰でデータを綿密に分背j記してくれるエルンストさん・・・。 その確かな剣や銃の腕で頼もしいオスカーさん・・・。 エンジニアで、若くても頼りになるゼフェルさん。 お金の計算はお手の物のチャーリーさん。買物上手みたい・・・。 その感性で物事を的確に判断しているセイランさん・・・。 そして・・・。 私の精神体が夢に飛び、ずっと長い間から知り合い立ったような、最高の腕と頭脳を持つ"トレジャーハンター”アリオス。 私が無意識に追ってしまう男性・・・。 ずっと・・・。 こうしていれればいいのに・・・・ 決して受け入れられぬ願いだとは判ってはいても、アンジェリークにはそう願わずに入られなくて。 「ほら、アンジェちゃん判ったやろ? 俺らの仲の悪さ! ホンマさっぱりわややわ」 チャーリーの言葉に、誰もが瞳に笑みを湛えている。 ずっと、こうしていられれば・・・ ----------------------------------------------- 宇宙船は静かに宇宙ステーションに着陸した。 その惑星は、豊富な武器やトレジャーハンティングには必要な道具を格安で、しかもいいものを買うことができる惑星だった。 だが、この星は、そのような安くいいものを置いているせいか、訪問者がたたないため、今はライセンスを持った商人のいる宇宙船のみに、着陸、及び商品の購入件を与えているのだ。 アリオスたちの船にはチャーリーがいるから、可能なのである。 「こういうときにはお前は役に立つな♪」 「そればっかりやないで〜オスカー」 がやがやと楽しそうに彼らは宇宙船から出て行く。 だが例外はいる。 アンジェリークである。 彼女は、その存在の特殊性と、なにも買物が必要でないということも手伝って、宇宙船に留守番ということになった。 これには彼女は少しご不満なようで、少し寂しそうな表情をしている。 「さあ! 俺の番やで! いっぱいいっぱい値切ってやるで〜!!!!」 「頼むよ? 僕は絵の具でも買おうかな・・・」 「俺は部品関係!」 誰もが楽しそうなのだが、アリオスだけはアンジェリークの寂しさが気になって、浮かれてはいなかった。 「アンジェ・・・。すまねえな? また一緒に行こうな?」 「・・・うん・・・。仕方ないわ・・・。いつか連れて行ってね?」 強請るように上目使いで見つめる彼女が可愛くて、アリオスの唇にも深い笑みが零れる。 まるでそこにいるみたいなのにな・・・ 「アリオス〜、行くで!!!」 入り口から、すっかり張り切ったチャーリーの声が聞こえて、アリオスははっとする。 「今すぐ行く! そう返事をしてから彼女に向き直る。 「今度連れて行ってやるからな・・・?」 「うん・・・」 無意識に、アリオスは、アンジェリークのほおに手を触れようとした。 だが、彼女は彼の指先から零れ落ちてしまう。 「あ・・・」 彼は少し気まずそうに手を引っ込めると、すまなそうに彼女を見る。 「すまねえ・・・」 「気にしないで?」 明るく微笑む彼女が救いで、彼はほっとした。 「花でも買ってきてやるよ? だったら見れるだろ?」 「うん・・・有難う・・・」 いつもは、彼女をそんなに構わない彼ではあるが、本当は優しいのだと感じて、アンジェリークの胸の奥はさらに熱くなってゆく。 「いってらっしゃい、アリオス!!」 「ああ」 手を振る姿も、やはり、映像とは思えない。 少し、後ろ髪を惹かれる思いで、アリオスは仲間の後を急いだ。 宇宙船のハッチが閉じる音がして、アンジェリークは少し切なくなった。 あ〜あ、早く帰ってきて欲しいな〜 少し寂しくて、アンジェリークは宇宙船を歩き回った。 ・・・・・・・・・・!!!! 不意に彼女は誰かの気配を感じて、はっとする。 振り返ると、そこには、どす黒い思念を持つ、男が立っていた。 「探した・・・女王アンジェリーク・・・・」 アリオス!!! 助けて!!!! ------------------------------------ アンジェリークの声が聞こえたような気がして、アリオスははっと息を飲んだ。 「どうしたんや? アリオス。 何や、俺の華麗なる値切りテクニックは息を飲むほどよかったやろ?」 アンジェ・・・。 アンジェに何かあったのか!? 「なあ、アリオス! きいとんのかい!!」 横で突っ込みを入れるチャーリーを無視して、アリオスは神経を集中させる アンジェ!!! 「悪い、チャーリー、勝手に買物しといてくれ!」 そのままアリオスは宇宙船に向って疾走し始める。 「なあ、何があったんや〜、アリオス!!!!」 無事でいろ、アンジェ! アリオスの頭には、最早何も考えられず、ただ、ステーションまでを疾走していた------- |