少女の体を、パラライザーの光線は突き抜け、壁を撃ち破った。 「おまえ」 アリオスは、怪訝そうに眉根を寄せ少女の体に触れようとする。 「危ない!!」 少女の鬼気迫る声に、アリオスはすぐさま振り返り、パラライザーのトリガーを男に向けて正確に引いた。 「うあわああっ!!」 男は、全身を小刻みに震わせると、そのまま音を立てて倒れこんだ。 「…死んだの?」 慎重な眼差しを少女は向ける。 「・・いや・・・。体が痺れて動けないだけだ…。大丈夫だろう。2,3時間すれば目覚める…」 「そう…」 そう言ったきり、少女はすっかり押し黙ってしまった。 「おい!! 大丈夫か!?」 オスカーを筆頭に、チャーリー、ゼフェル、エルンストが駆け寄ってくる。 セイランは相変わらずマイペースで、後ろからついてくる。 「ああ、皆…。平気だ…」 駆け寄ってきて、仲間たちは少女がいることに度肝を抜かれた。 「あんた〜、いつの間にこの宇宙船に入ったんや〜!?」 チャーリーは、それこそ腰を抜かさんばかりに驚いている。 それもそのはずで、この宇宙船は、”トレジャーハンター”という生業なせいか、セキュリティだけは自慢なのだ。 ましてや、華奢な体をした少女である。 俄かに信じられないと想っているのは、チャーリーのみならず他のメンバーも同様だ。 「とにかくこの男から先に退散してもらわなきゃな」 「判った。さっきの係員呼んできて何とかしてもらうよ」 セイランは、アリオスの言葉を受けて、宇宙船の入り口付近にいる係員を呼びに行く。 暫くして係員がやってきて、男を担架で運んでゆき、取りあえずは落ち着きを取り戻した。 ----少女の存在以外は。 静まり返った船内で、最初に口を開いたのは、やはりアリオスだった。 「-----おまえ…、なぜここに来た? それに・・・」 そこで言葉を濁した彼に代わって、彼女はにこりと微笑みながら呟いた。 「私の体を、銃の光線が突き抜けて壁にあたったこと?」 何事でもないかのように呟く彼女に、誰もが顔色を変えた。 「体を突き抜けたって…、お嬢ちゃん」 オスカーは耳を疑い、アリオスを探るように見つめた。 「本当だ。俺はこの目で見たからな…」 少女は穏やかに微笑んで頷いた。 「アリオスさんこのままじっとしていてくれますか?」 「ああ」 「有難う…」 決意を秘めた凛とした荘厳な眼差しを、彼女はアリオスに向けると、彼に向って足を一歩筒踏み出す。 目の前に彼がいても、決して怯むことはなく真っ直ぐ。 「私が近づいても、決して動かないで下さい」 「判った」 少女の言葉が余りにも有無を言わせぬものがあったから、アリオスはそれを黙って従う。 いったい…。 この少女は何を考えているんだ… そのまま彼女はどんどん彼に近づいてゆく。 体が触れそうになった、まさにその瞬間----- 誰もがその衝撃に息を飲む。 「・……!!!!」 少女の体は、アリオスの体を駆け抜けたのだ---- 誰もが驚愕の表情を浮かべ、背筋には冷たいものを感じている。 だが少女は、二コリと太陽のような微笑を浮かべただけだった。 「私の体は、立体映像で出来ています…」 その告白は余りにも衝撃的だった。 少女の表情はとてもリアルで、瞬時に変って、それが人工的なものだとはわからない。 「信じられねえ…」 技術屋のゼフェルは、まじまじと少女の表情を見ることしか出来ない。 「そうだと思います…。私は"精神体”として、今、存在しています。 この姿は、私の補佐官が、私の姿そっくりに作ってくれたものです…」 「補佐官って!?」 眼鏡がずり落ちるのを、何とか持ちこたえて、エルンストは少女に尋ねた。 少女は、フッと微笑と、彼らをじっと見た。 「----私は、惑星アルカディアの女王アンジェリークの精神体です・・」 何だと!? アルカディアといえば、女王が統べる宇宙位置の豊かで美しい楽園として知られている。 そこの女王と聞いただけで、誰もが、顔を見合わせた。 アリオスの、異色の不思議な眼差しが、深いところで同様に揺れる。 「…じゃあ…おまえの体は…」 頷いて、少女は、根分魅するかのように”トレジャーハンター"たちを見つめた。 「私の身体は行方不明になっています」 「行方不明って…」 そんなことが合って良いのかとばかりに、セイランは首を振る。 誰もが、信じられない話とばかりに頭を抱えていた。 「行方不明になったのは、三ヶ月前です。惑星の意思”アルフォンシア”が、何者かによって、黒い意志を送られて動けなくなっていました。そこで、その思念を打ち破るために、私はサクリアを限界まで駆使し、 アルフォンシアを救いました…。 -----アルフォンシアから思念をたたき出すことに成功しましたが…、私の精神と身体があまりにもの強い力によっては慣れてしまい、身体だけがどこかに飛ばされました…。 どこにいってしまって、判らなくなってしまって…、探し始めたんですが、見つかりませんでした。 そんなときにあなた方の噂を聞きました。 最強の”トレジャーハンターチーム”だと…。アリオスは特に腕利きだと…」 「で、俺たちを訪ねてきて、身体探しを頼んだというわけか…」 間髪いれずに言うアリオスに、アンジェリークはしっかりと頷いた。 「そうです…」 「じゃあ、さっきの男は!?」 オスカーは的確なことを尋ねた。 ほんの一瞬、少女の横顔が憂いを増す。 「----先ほどの男は私の叔父の手によるものです。 叔父は王位を虎視眈々と狙っていて、私の精神体の消滅と、身体の消滅を狙っています…」 そこで切なげに、アンジェリークは言葉を切った。 「…まさか…、どちらかが消滅したら…」 全くこの男はどこまで勘が鋭いのだろうと、アンジェリークは想う。 アリオスの鋭い問いに少女は全く持って深く頷く。 「ええ。それは私の”死”を意味します…」 緊張が、船内を走り抜ける。 「ですから、お願いです!! 私と一緒に”身体”を探してください! お願いします!!!」 彼女は心からそういい、映像ではあるが深々と頭を垂れた。 「…お嬢ちゃんの願い、オスカーは聞きたい」 「俺もやで〜!」 チャーリーである。 「面白そうだね。賛成だよ」 セイランは少し興味本位に。 「まっ、どー瀬旅だし、おまけで連れて行けば」 ゼフェルがそれらしい答えで言う。 残りは、アリオス。 少し考える不利をして、彼は彼女を見た。 「いいだろ…。俺たちが協力する!!!」 「…!!!!!!」 映像とはいえ、アンジェリークは本当に嬉しそうな表情をしたかと想うと、ぽろぽろと涙を零し始めた。 それが映像とは思えないほどリアルで魅力的で…。 「本当に有難うございました!!」 少女の心からの態度に、誰もが心を温かくする。 「俺はオスカーだ。よろしくな?」 「はい」 「俺はチャーリー! 買出しが得意や!」 「よろしくお願いします」 「僕はセイラン。これで退屈しないね…」 「ありがとうございます」 「まあ、そうじゃねえか。俺はゼフェルな。メカ担当だ!」 「よろしくお願いします」 「私はエルンストです。分析が本業です」 「はい」 そして---- 最後は銀髪の青年。 「アリオスだ。よろしく」 「はい! よろしく!!!」 簡潔な挨拶を好ましく想いながら、彼女は笑顔で答える。 「さあ、そうと決まりましたら、皆様船の出発準備を始めてください!」 エルンストの号令の元、全員が持ち場に着き始める。 精神体の少女とともに、身体を探すたびは、こうして幕を開けた----- |
コメント
アリXアンのSFです。
アンジェリークの正体編です
書いてて楽しいです。
早くチャーリーの握りシーンが書きたい〜!!
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