BODY AND SOUL

CHAPTER 2


 少女の体を、パラライザーの光線は突き抜け、壁を撃ち破った。
「おまえ」
 アリオスは、怪訝そうに眉根を寄せ少女の体に触れようとする。
「危ない!!」
 少女の鬼気迫る声に、アリオスはすぐさま振り返り、パラライザーのトリガーを男に向けて正確に引いた。
「うあわああっ!!」
 男は、全身を小刻みに震わせると、そのまま音を立てて倒れこんだ。
「…死んだの?」
 慎重な眼差しを少女は向ける。
「・・いや・・・。体が痺れて動けないだけだ…。大丈夫だろう。2,3時間すれば目覚める…」
「そう…」
 そう言ったきり、少女はすっかり押し黙ってしまった。
「おい!! 大丈夫か!?」
 オスカーを筆頭に、チャーリー、ゼフェル、エルンストが駆け寄ってくる。
 セイランは相変わらずマイペースで、後ろからついてくる。
「ああ、皆…。平気だ…」
 駆け寄ってきて、仲間たちは少女がいることに度肝を抜かれた。
「あんた〜、いつの間にこの宇宙船に入ったんや〜!?」
 チャーリーは、それこそ腰を抜かさんばかりに驚いている。
 それもそのはずで、この宇宙船は、”トレジャーハンター”という生業なせいか、セキュリティだけは自慢なのだ。
 ましてや、華奢な体をした少女である。
 俄かに信じられないと想っているのは、チャーリーのみならず他のメンバーも同様だ。
「とにかくこの男から先に退散してもらわなきゃな」
「判った。さっきの係員呼んできて何とかしてもらうよ」
 セイランは、アリオスの言葉を受けて、宇宙船の入り口付近にいる係員を呼びに行く。
 暫くして係員がやってきて、男を担架で運んでゆき、取りあえずは落ち着きを取り戻した。
 ----少女の存在以外は。
 静まり返った船内で、最初に口を開いたのは、やはりアリオスだった。
「-----おまえ…、なぜここに来た? それに・・・」
 そこで言葉を濁した彼に代わって、彼女はにこりと微笑みながら呟いた。
「私の体を、銃の光線が突き抜けて壁にあたったこと?」
 何事でもないかのように呟く彼女に、誰もが顔色を変えた。
「体を突き抜けたって…、お嬢ちゃん」
 オスカーは耳を疑い、アリオスを探るように見つめた。
「本当だ。俺はこの目で見たからな…」
 少女は穏やかに微笑んで頷いた。
「アリオスさんこのままじっとしていてくれますか?」
「ああ」
「有難う…」
 決意を秘めた凛とした荘厳な眼差しを、彼女はアリオスに向けると、彼に向って足を一歩筒踏み出す。
 目の前に彼がいても、決して怯むことはなく真っ直ぐ。
「私が近づいても、決して動かないで下さい」
「判った」
 少女の言葉が余りにも有無を言わせぬものがあったから、アリオスはそれを黙って従う。

 いったい…。
 この少女は何を考えているんだ…

 そのまま彼女はどんどん彼に近づいてゆく。
 体が触れそうになった、まさにその瞬間-----
 誰もがその衝撃に息を飲む。
「・……!!!!」
 少女の体は、アリオスの体を駆け抜けたのだ----
 誰もが驚愕の表情を浮かべ、背筋には冷たいものを感じている。
 だが少女は、二コリと太陽のような微笑を浮かべただけだった。
「私の体は、立体映像で出来ています…」
 その告白は余りにも衝撃的だった。
 少女の表情はとてもリアルで、瞬時に変って、それが人工的なものだとはわからない。
「信じられねえ…」
 技術屋のゼフェルは、まじまじと少女の表情を見ることしか出来ない。
「そうだと思います…。私は"精神体”として、今、存在しています。
 この姿は、私の補佐官が、私の姿そっくりに作ってくれたものです…」
「補佐官って!?」
 眼鏡がずり落ちるのを、何とか持ちこたえて、エルンストは少女に尋ねた。
 少女は、フッと微笑と、彼らをじっと見た。
「----私は、惑星アルカディアの女王アンジェリークの精神体です・・」

 何だと!?

 アルカディアといえば、女王が統べる宇宙位置の豊かで美しい楽園として知られている。
 そこの女王と聞いただけで、誰もが、顔を見合わせた。
 アリオスの、異色の不思議な眼差しが、深いところで同様に揺れる。
「…じゃあ…おまえの体は…」
 頷いて、少女は、根分魅するかのように”トレジャーハンター"たちを見つめた。
「私の身体は行方不明になっています」
「行方不明って…」
 そんなことが合って良いのかとばかりに、セイランは首を振る。
 誰もが、信じられない話とばかりに頭を抱えていた。
「行方不明になったのは、三ヶ月前です。惑星の意思”アルフォンシア”が、何者かによって、黒い意志を送られて動けなくなっていました。そこで、その思念を打ち破るために、私はサクリアを限界まで駆使し、 アルフォンシアを救いました…。
 -----アルフォンシアから思念をたたき出すことに成功しましたが…、私の精神と身体があまりにもの強い力によっては慣れてしまい、身体だけがどこかに飛ばされました…。
 どこにいってしまって、判らなくなってしまって…、探し始めたんですが、見つかりませんでした。
 そんなときにあなた方の噂を聞きました。
 最強の”トレジャーハンターチーム”だと…。アリオスは特に腕利きだと…」
「で、俺たちを訪ねてきて、身体探しを頼んだというわけか…」
 間髪いれずに言うアリオスに、アンジェリークはしっかりと頷いた。
「そうです…」
「じゃあ、さっきの男は!?」
 オスカーは的確なことを尋ねた。
 ほんの一瞬、少女の横顔が憂いを増す。
「----先ほどの男は私の叔父の手によるものです。
 叔父は王位を虎視眈々と狙っていて、私の精神体の消滅と、身体の消滅を狙っています…」
 そこで切なげに、アンジェリークは言葉を切った。
「…まさか…、どちらかが消滅したら…」
 全くこの男はどこまで勘が鋭いのだろうと、アンジェリークは想う。
 アリオスの鋭い問いに少女は全く持って深く頷く。
「ええ。それは私の”死”を意味します…」
 緊張が、船内を走り抜ける。
「ですから、お願いです!! 私と一緒に”身体”を探してください! お願いします!!!」
 彼女は心からそういい、映像ではあるが深々と頭を垂れた。
「…お嬢ちゃんの願い、オスカーは聞きたい」
「俺もやで〜!」
 チャーリーである。
「面白そうだね。賛成だよ」
 セイランは少し興味本位に。
「まっ、どー瀬旅だし、おまけで連れて行けば」
 ゼフェルがそれらしい答えで言う。
 残りは、アリオス。
 少し考える不利をして、彼は彼女を見た。
「いいだろ…。俺たちが協力する!!!」
「…!!!!!!」
 映像とはいえ、アンジェリークは本当に嬉しそうな表情をしたかと想うと、ぽろぽろと涙を零し始めた。
 それが映像とは思えないほどリアルで魅力的で…。
「本当に有難うございました!!」
 少女の心からの態度に、誰もが心を温かくする。
「俺はオスカーだ。よろしくな?」
「はい」
「俺はチャーリー! 買出しが得意や!」
「よろしくお願いします」
「僕はセイラン。これで退屈しないね…」
「ありがとうございます」
「まあ、そうじゃねえか。俺はゼフェルな。メカ担当だ!」
「よろしくお願いします」
「私はエルンストです。分析が本業です」
「はい」
 そして----
 最後は銀髪の青年。
「アリオスだ。よろしく」
「はい! よろしく!!!」
 簡潔な挨拶を好ましく想いながら、彼女は笑顔で答える。
「さあ、そうと決まりましたら、皆様船の出発準備を始めてください!」
 エルンストの号令の元、全員が持ち場に着き始める。

 精神体の少女とともに、身体を探すたびは、こうして幕を開けた-----

コメント

アリXアンのSFです。
アンジェリークの正体編です
書いてて楽しいです。
早くチャーリーの握りシーンが書きたい〜!!