クリスマスパーティのお知らせが全員に配られ、アンジェリークは規模の大きさに目を丸くした。 「アンジェは外部だから判らないだろうけど、高等部のお楽しみなの。うちのパーティはジュリアス理事長主催でさ、結構凄いんだよ! だってさ、このパーティが開かれるホテルも、理事長が持ってるんだ〜! 凄いでしょ!」 「うん!」 アンジェリークは随分と住む世界の違う人達もいるものだと、感じずにはいられない。 「ありたんももちろん参加だよ! お洒落しなくっちゃね! プレゼント交換会もあるし!」 「うん!」 益々クリスマスパーティが楽しみになる。 先生・・・。パーティで先生のプレゼントがあたるといいな・・・。 クリスマスまではもう余り時間はない。 アリオスに、この8か月の感謝を込めてモノトーンのマフラーを編み始めた。 個別にこっそりと渡そうと思う。 それとは別に、交換会のプレゼントを用意した。 レイチェルも似たようなもので、エルンストには、交換会と別のものを用意している。 一緒に交換会用のプレゼントを買いにいった時も、ふたりともつい恋する相手をイメージにして選んでしまう。 「やっぱりさ、この合理的な万年筆がいいと思うのよね〜! シルバーエッジが効いてるみたいな」 それを見るなり、アンジェリークはエルンストしか思い浮かばない。 「アンジェはどうすんの?」 「うん、このパスケースなんかいいかなって。モノトーンとシルバーの組み合わせがハードでクールかな」 レイチェルもまたそれを見るなり、アリオス以外は思い付かない。 お互いに顔を合わせてふたりは笑いあった。 恋する少女たちは無敵なのだ。 クリスマスパーティの前日、アリオスへのマフラーがようやく完成し、丁寧にラッピングをした。 先生・・・。喜んでくれると嬉しいな・・・。 アンジェリークは頬を染めながら、心を込めて一度だけマフラーを抱き締めた。 「大好き・・・」 迷惑だったら、自分で使おう・・・。 前日は、その他にもぱたぱたと色々な準備を始めた。 ドレスやローヒールの準備。 せめてこんな日だけでも、アンジェリークはアリオスに見せるためのお洒落をしたかった。 またその準備をするのがとても楽しかった。 翌日はドレスを着て荷物を持ちレイチェルの家に向かう。 ほんの少しだけ、お互いに背伸びをするために、薄く化粧をするのだ。 アンジェリークは、化粧をすることなど初めての経験のせいか、少しくすぐったい気がした。 ファンデーションなどを使うのではなく、眉の手入れや、肌の手入れ、睫をビューラーで上げ、唇は色付きのほんのり薬用リップを使うぐらいだ。 それだけでもかなりの変化をするせいか、アンジェリークは鏡をみてびっくりした。 「うん、アンジェ、いつもよりも綺麗だよ〜」 「レイチェルだって!」 お互いに褒め合うのは、乙女の証拠。 ふたりは鏡を覗きこんだりして、お互いを見つめあった。 「これでアリたんを誘惑出来るよ!」 「もう・・・」 恥ずかしそうに俯く。 だが、綺麗にしてもらうのはとても嬉しい。 アンジェリークは照れながら何度も鏡を見つめていた。 ふたりは時間になると、ゆっくりと会場のホテルに向かった。 クラスごとにクラス委員が受付に当たる。ここで交換用のプレゼントも一緒に回収する。 アンジェリークは、レイチェルと共に受付を手伝った。 遅刻は厳禁とアリオスが言っているせいか、ふたりのクラスはすぐに集まり、出席チェックとプレゼントを入れた段ボールを担任であるアリオスに渡した。 任意参加だが、豪華なパーティなだけあり、半数の生徒は参加するので、かなりの規模だ。 「サンキュ、ご苦労さん」 「はい!」 スーツ姿のアリオスは、くらくらするほど素敵で、名簿を渡しながらも、アンジェリークは夢中になって見つめる。 「アンジェ」 つんとレイチェルに肘でつつかれて、アンジェリークはようやく気がつく。 「あ、有り難う」 アンジェリークが真っ赤になって俯いている間、アリオスは名簿を持って職員席に行ってしまった。 レイチェルとふたりで大ホールの中に入り、始まるまでのしばらくの間喋っている。 いよいよ明かりが落とされ、アンジェリークとレイチェルは少しだけ緊張した。 スポットライトと共に、ノーブルな理事長ジュリア・スが登場し、話を始める。 彼の話はやはりらしく「お説教」。 それもかなり長く、アンジェリークはふらふらとするのを感じた。 急にふっと意識がなくなったかと思うと、力強い腕を肩に感じた。 「大丈夫か?」 「あ、はい」 振り返るとそこにはアリオスがいて、しっかりと支えてくれていた。 「有り難うございました」 「あんなに長い説教やってたら、貧血も起こすっていうの」 アリオスが顔をしかめるのがおかしくて、彼女はくすりと笑った。 「------である。では今宵のパーティを楽しんでくれたまえ! メリークリスマス!」 「メリークリスマス!」 この号令にようやくほっとして、誰もがメリークリスマスと叫んだ。 その後に歓談の時間が始まり、アリオスはさりげなくアンジェリークから離れた。 職員席に戻る前に女生徒に掴まり、楽しそうに話している。 レイチェルはエルンストを掴まえにいって、そのまま放さなかった。 アンジェリークは微笑ましそうに見た後、食事を取りに行くことにした。 クリーム系のパスタや、シチュー、サラダなどを取る。 「おい、それ美味そうか?」 ふりかえると、そこには先ほどまで他の生徒と話していたはずのアリオスがいた。 「先生・・・」 「食おうぜ?」 「はいっ!」 アリオスの笑顔にアンジェリークはしっかりと頷く、ふたりは一緒に食事を楽しみながら、色々と話をする。 クラブのこと、クラスのこと・・・。 本当の恋人同士のように、ふたりは色々と語り合った。 その様子をレイチェルは遠くから見守る。 よかったね、アンジェリーク・・・。 今までで、レイチェルはアンジェリークが一番可愛く見えた。 クリスマスの魔法が、アンジェリークを包み込むのは、後数分後に迫っている・・。 |
コメント 『ときメモGIRLS SIDE』アリアン版 クリスマス編です。 この後の特別な出来事は次回に!! しかし。 なんだか季節外れネタ〜(笑) |