BEAUTIFUL THAT WAY

CHAPTER11


 その日、アンジェリークと金髪のアンジェリークの姉妹の対面が行われることとなった。
 アンジェリークはアリオスに付き添われて、金髪のアンジェリークはオスカーに病室に案内されて。
「妹はとても愛されているのが判ります」
 くすりと笑って、彼女は羨ましそうに言う。からりと晴れた青空のように、彼女は屈託がなかった。
 それがオスカーには清々しく映る。
「俺たち兄弟はみんなあいつに今まで支えてもらっていた。だから今度はそれを返してやる番だ。俺も・・・、兄貴も、弟たちも」
 そこまで言って、オスカーは押し黙ってしまった。

アンジェリーク、あなたは幸せものだわ・・・。

 ノックをオスカーがすると、中から可愛らしい声が響いてくる。
 それを合図に病室に入ると、そこには穏やかな表情をしたアンジェリークが、アリオスに支えられていた。その姿を見ていると、オスカーは胸が詰まる。

 きっと・・・、ふたりはどちらかがいなくなれば、生きては行けないだろう・・・。
 俺にはもう入り込む余地はない・・・。

 金髪のアンジェリークの姿を認めるなり、アンジェリークの表情は明るくなった。
「・・・お姉さん?」
 少し、幼さを残した妹に、彼女は柔らかい微笑みを浮かべながら、そっとベットに近づいた。
「初めまして、アンジェリーク。あなたと同じ名前の姉、アンジェリークです」
 すっと差し伸べられた優しい手をすり抜けて、彼女はそのまま姉の胸に飛び込んだ。
「お姉ちゃん!!!!」
 しっかりと華奢な体を受け取ってやる。
「有難う、お姉ちゃん…」
「アンジェ…」
 その胸で泣くアンジェリークに、姉は優しく撫でてやる。
 その絆を確かめるのに、最早、二人には言葉が必要ではなかった。
「有り難う、お姉ちゃん、痛いのに検査を受けてくれて・・・」
「あなたは三日に一回、あの検査を受けているんでしょ。それに比べたら、ね?」
 優しく、アンジェリークを抱き締める姉に、たっぷりと甘える。その様子に愛しげに見つめながら、アリオスは静かに側から離れた。
「オスカー」
「ああ」
 ふたりは申し合わせるかのように、病室を後にした。姉妹を水入らずにする為に。
「ね、ところで、お兄さんふたりとも凄く素敵ね? アリオスさんとあなたはとてもお似合いに見えるけど」
 含み笑いで言われて、アンジェリークは真っ赤になる。
「・・・大事な人?」
「・・・はい」
「だったら彼のためにも頑張らなきゃ」
 金色の髪の、自分と同じ名前を持つ姉の温かな言葉に、アンジェリークはしっかりと頷いた。
「そのためにも、私に小さなお手伝いをさせてね?」
「有り難う、お姉ちゃん」
涙ぐむ妹の背中を優しく撫でてやり、金髪のアンジェリークは慈悲深いオーラで包みこんでやった。

 その日から急激に姉妹の絆は深まっていった。
 もちろん、他の兄弟たちとも金髪のアンジェリークは打ち解けていった。
 学校の帰りに、必ず覗きに来る、ゼフェル、レイチェル、マルセルを交えて、談笑の輪を作り、ふたりのアンジェリークは大いに楽しんだ。

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 いよいよ、明日は金髪のアンジェリークの骨髄摂取日となり、兄弟たちとふたりのアンジェリークは病室に集まっていた。
「二人のお姉ちゃんに、素敵なプレゼントがあるの」
 言い出したのはレイチェルだった。
 誇らしげに、少しそのきつい眼差しが明るく輝いている。
「プレゼントって、何かしら、ね?アンジェ」
「そうね、何かしら、お姉ちゃん」
 二人のアンジェリークは、互いに顔を見合わせて笑いあう。
 そこには仲の良い”姉妹”像があった。
「僕も手伝ったんだよ!」
 末弟のマルセルが自慢げに離す姿もほほえましくて、二人のアンジェリークからは笑顔が絶えない。
「じゃあ、ゼフェルお兄ちゃん」
「おう!」
 ゼフェルは、持ってきた包みを大事そうに開けると、可愛くラッピングがされている箱を二つ取り出した。
「これ…、姉ちゃんたちに」
 少し照れくさそうにして、ゼフェルはぶっきらぼうにも、姉たちにそれを差し出す。
「有難う」
「有難う・…」
 金の髪のアンジェリークは嬉しそうに笑ったが、アンジェリークはそのまま嬉しくて泣いてしまう。
「ほら、アンジェ、折角お揃いで作ってもらったものだから、一緒に見ましょうね?」
「うん、うん」
 ないている彼女の華奢な体を抱いて、姉は優しく慰めてくれた。
 二人は、一緒に包みを開け、その心のこもった贈り物に、胸が熱くなる。
 それはおそろいの天使のオルゴール。
 姉のアンジェリークは金髪の天使が、妹のアンジェリークには栗色の髪の天使が、それぞれ乗っている。
「回してみて?」
 レイチェルに促されて、二人は同時にオルゴールのばねを回す。
「わあ」
 流れてきたのは、”天使のワルツ”。
「設計とか細かい作業はゼフェルお兄ちゃんがやって、ワタシとマルセルで色塗りとニスを塗ったの!」
「そう!」
 兄弟三人は本当に嬉しそうに笑い、二人の姉を見つめている。
「…もう…三人とも・…」
 そのままアンジェリークは泣きじゃくってしまい、 三人は少し困った顔をする。
「アンジェ…、三人とも困ってるわ…」
「うん、うん」
 彼女はようやく顔を上げて、涙でいっぱいに潤んだ瞳で、兄弟たちを見る。
「みんな来て…」
 優しく言われて、三人はアンジェリークに近づいた。
「みんな大好きよ・…」
「お姉ちゃん!!」
「姉貴!!」
「お姉ちゃん!!」
 口々に名前を呼び合って、三人はお互いを確かめる。
 三人に手を伸ばして、彼らを強く抱き合う。
 その姿はとても強固で、もう、誰にも入る余地すらない。

 あなたたちは本当の兄弟以上に兄弟だわ…

 金髪のアンジェリークはその絆が羨ましく思わずには、いられなかった。

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 翌日、金髪のアンジェリークからの骨髄摂取の手術が行われた。
 担当医はアリオス。
 全身麻酔を施され、彼女にとってはかなり大掛かりな手術となった。
 その手術には、オスカーも付き添った。
 二人が最近仲良く話していることをアリオスも知っており、彼は少し嬉しくもあった。


 骨髄摂取が行われている間、アンジェリークも骨髄移植に向けての、治療が始まっていた。
 かなり苦痛の伴う治療であったが、彼女はそれにじっと耐え抜いていた。
 その間も、姉の体のことを思いやる彼女だった。

 お姉ちゃん…。
 有難う…。
 お姉ちゃんお体が、ちゃんと元に戻りますように…


 治療が終わり、少しうとうとしていたアンジェリークが、気配を感じて目を覚ますと、そこにはアリオスが居た。
「お兄ちゃん…」
「治療、頑張ってみてるみたいだな…」
「うん…。お姉ちゃんは?」
 自分もかなり辛いくせに、姉のことを心配するアンジェリークに、アリオスは愛がこみ上げてきてしまう。
「大丈夫だ…。手術は成功だ。
 後はおまえの頑張りだ…」
「うん・…」
 アリオスは、優しく言って、彼女の手をしっかりと包み込む。
「一緒に、頑張ろうな?」
「うん!!!」
 二人はしっかりと手を握り合って、お互いの愛と決意を確認した------

TO BE CONTINUED…



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