72 HOURS OF THE ANGEL

Chapter4


 受話器を握り締めながら、アンジェリークは僅かに震える。
「信用できません・・・。私はあなたの顔も知らないんですから」
 受話器の奥から”仕方がない”とばかりに溜め息が零れた。
「判った・・・。信用が出来るように何か考えよう・・・。
 そうだ、君と同期の経理課のレイチェルとニューヨーク支部の人間をそっちに寄こそう。
 だったら信用出来るだろう?」
 少しだけ、アンジェリークの表情が和らいだ。
 レイチェルなら、組織教育の時に一緒だったし、飛び級で通った大学も同窓生だ。
 彼女なら安心できる。
 アンジェリークは、ようやく「疑心暗鬼」のウ゛ェールを脱ぎ捨てた。
「彼女なら、安心出来ます・・・」
 電話口の支社長は、安心したように溜め息を吐く。
「コレット、君の安全を確保するために、待ち合わせ場所は目立たない場所を使おう。
 今から一時間後、ホテルアルテミスの勝手口の前で。
 ホテルの正面玄関横の路地裏にある。非常階段が見えるから、判るだろう」
「はい・・・」
 彼女はしっかりと頷くと、明らかに心にあった重いものがなくなるような気がする。
「では今から一時間後に逢おう」
「はい」
 電話を切らずにそこから離れた瞬間、アンジェリークは大きな安堵の溜め息を吐いた。
 同時に身体から力が抜けるのを感じる。
 だがまだきちんと保護されたわけではない。
 彼女は気持ちを引き締めると、この一時間を過ごすために、再び、街中に出ていった。

 やれやれ・・・。忙しいことだな・・・。

 先程からアンジェリークを見ていた長身の青年は、煙草を灰皿でもみ消した後、再び彼女を追いかけていく。
 冬の冷たい風が寂しくも吹き渡っていた-------

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 ニューヨーク支部本部では、レイチェルが地下の射撃場に呼ばれていた。
 彼女は防弾チョッキを見るなり、目を丸くする。
「これは? 私は友達に逢いに行くだけですよ?」
「いいから、これを着けなさい」
 支部長付きの上層部の男に有無言わせぬように言われて、レイチェルは不思議に思いながらも、言うとおりにするしかなかった。
「最近、物騒になってきているからな?」
「今朝の事件のように?」
 一瞬、男は苦虫を潰したような表情をしたが、すぐに穏やかな表情に戻った。
「念のためだ」
「はい」
 男は、兵器係のカウンターに行き、声を掛ける。
「銃を一丁頼む」
「38、45、どっちの口径ですか?」
「45口径だ」
「判りました」
 薄暗い射撃場で出された銃は、不気味に黒光りしている。
 レイチェルはその光に思わず息を呑んだ。
「こんなものをどうして…」
 彼女は益々不信そうに眉根を寄せながら、上司がスーツのポケットに銃を入れるのを見つめる。
「おまえは何も考えなくていい」
 レイチェルはそれ以上言葉を繋ぐことが出来なかった。
 ただ、言いようのない不安が心を襲ってくるのを感じる。

 どうか。どうか、アンジェが無事でありますように・・・・

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 保護されるまでの時間が、どうしようもなく長く感じられる。
 美術館に行ったり、町をぶらぶらしたりと、いつもなら一時間をつぶすのにこんなに時間はかからない。
 スターバックスでコーヒーを飲んでも、いつものように「ゆったり」とした気持ちにはなれなかった。

 あと少しだから・・・。

 やっとの思いで、約束の時間の10分前まで時間をつぶし、アンジェリークは約束の場所に向かう。
 もちろん、その後ろには銀の髪の青年がきっちりとガードするかのようについているが、アンジェリークはもちろん気がつかなかった。

 少し早く場所に着き、落ち着かないようにアンジェリークはあたりをきょろきょろとする。
 背中には冷たいものが流れ落ち、彼女は妙に落ち着かなかった。
 その様子を、青年は落ち着いた眼差しでじっと見ていた。
 人影が見えた。
 アンジェリークは事態を見据えるために、じっと遠くを見詰める。
 心臓が強い高まりを見せている。
 輪郭が見えてくる。
 人影gは確認できた瞬間、アンジェリークは大きな瞳を大きく見開いた。
「アンジェ!!!」
「レイチェル!!!」
 人影は待ち人であるレイチェル、その人であった。
 アンジェリークは、少し引き攣っていたが、幾分かほっとして笑顔すらこぼれる。
 その後ろには中年の男性。
 恐らくは保護しにきてくれたCIAの局員だ。
 アンジェリークはゆっくりと友人に向かって歩いていく。
 その瞬間-------
「・・・!!!!!」
 一発の銃弾がアンジェリークに向かって、男から放たれた。
 アンジェリークは、一瞬、自分はこのまま撃たれて死んでしまうのではないかと思う。
 だが。
「・・・・!!!!!」
 次の瞬間には躰が宙を舞っていた。
 俊敏に、まるで獣の様に華麗に舞っている。
「今はどうしてこうなっているか、考える余裕も、見る余裕もない。
 ただ、誰かが自分を助けてくれているのしか判らない。
 しっかりと支えてくれる腕は、とても心地が良かった。
 次々に銃弾が発射される。
 それを胸の広い誰かが巧みに避けてくれた。
「これはどういううことなの!?」
 最初にパニックに陥ったのは、発砲を一部始終見ていたレイチェルだった。
「アンジェは・・・!!!!!」
 男は舌打ちをした。
 次の瞬間、レイチェルと一緒にいた男は、こともあろうか彼女に向かって銃口を向ける。
「レイチェル!!!」
 声にならない悲鳴を上げたのはアンジェリーク。
「…!!!!!」
 青年は咄嗟に男の額に銃口を向け、すぐさまトリガーを引いた。
「ああああっ!!」
 男の額に銃弾は命中し、彼は地を流してそのまま倒れこむ。
 男の腕の中で、アンジェリークは一瞬何が起こっているかわからなかった。
 彼はすぐさまアンジェリークを立たせる。
 そのときになって、彼女はようやく、彼の髪が銀色で、黄金と翡翠の瞳を持った整った容貌だということに、気がついた。
「行くぞ!! ここから直ぐに離れろ」
 手を強引に引っ張られるが、彼女はレイチェルが気になって仕方がない。
「レイチェルは!?」
「彼女にはすぐ助けが来る。おまえはここから逃げることが先決だ」
「だって…!!!」
「いいから!!」
 青年に強く手を握られて引っ張られていく。
 アンジェリークは頭の中が更にパニックになるのを感じていた-------

 TO BE CONTINUED…
  

コメント

ハードボイルドサスペンスです。
ようやくありさんちょこっとだけ活躍。
コレからどんどん活躍していきますので、
カッコいいアリさんのファンの方お楽しみになさってください。
さて次回はどうなりますかいの〜

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