72 HOURS OF THE ANGEL

Chapter3


 この2時間・・・。私はどう過ごしたらいいの・・・!?

 周りの人間全てが敵に思えてしまう。
 猜疑心の塊になりながら、アンジェリークはニューヨークの街を彷徨った。

「オペレーションセンターから、ニューヨーク支部長へ。第17課で事件発生。”エンジェル”より報告があり」
 摩天楼の一室で第一報を受けた支部長は、厳しい、眼差しで宙を見つめていた。
 彼は電話を取ると、すぐに処理を始める。
「もう一人を探し、予定通りに動け」

 アンジェリークは、元来の優しさからか、もうひとりの同僚の安否が気になっていた。
 ニューヨーク支部第17課のもう一人の同僚、キャンディス・ハイデッガー。
 本日はたまたま公休だった。

 無事でいてキャンディス・・・!!

 彼女は歩いて20分ほどのキャンディスのアパートに向かう。
 その後を銀の髪の青年が続く。
 彼は木枯らしに吹かれながら、優雅に上等なコートを揺らしていた。
 彼は煙草を吸いながら、厳しさの混じった冷酷な眼差しをアンジェリークに向けている。
 紫煙をひとつ噴出すと、青年は無表情のままさらにアンジェリークを付けていった。

 キャンディスのアパートに入った時、アンジェリークの足は震えた。
 だがそれを押して、彼女は古めかしい階段を登って、キャンディスの部屋の前に辿り着く。
「キャンディス?」
 ノックをしながら、震える声で名前を呼んでみる。
 だが、一向に返答はなかった。
「キャンディス・・・」
 ドアノブに手を掛けると、すでに開いている。
 恐怖が喉元まで上がってきた。
 それを振り切るかのように、何とかドアを開ける。
 目の前の視界が広がった瞬間、目を覆いたくなる惨状を突き付けられた。
「キャンディス・・・」
 そこには胸を撃ち抜かれて果てている同僚の姿があった。
 アンジェリークは目を逸らせると、唇を血が滲むまでかみ締める。
 信じられずに表情をゆがめ、彼女は何度も首を振る。
 不意に誰かの足音がした。
 アンジェリークは、はっとして、慌てて部屋の外に出る。
 ここで掴まってはならないと、彼女は足早に階段を降りた。

 どうして・・・、どうしてこんなことばかりが起こってしまうの?

 泣きたくても、心の緊張の余り泣けない。
 恐怖感が先行し、アパートから出ても、アンジェリークは震えが治まらなかった。
 早くこの場を立ち去らなければならない。
 そのことが頭の中で多くを締め、アンジェリークは小走りで立ち去る。
 これが夢だと思いたい。
 無意識に彼女は、自分のアパートに向かった。
 とにかく今は落ち着きたい------
 その思いが自然と足を自宅に向かわせた。
「ちょこまかとよく動く女だな・・・」
 彼はぴったりとアンジェリークを見ている。
 男はふっと笑うとアンジェリークの後に着いていった。
 優雅に銀の髪を靡かせながら。

 ようやく、アンジェリークはアパートの前に帰り着いた。
 早く部屋に帰って熱いバスに入りたい。
 今はそんな気分だ。
「ちょっと、アンジェちゃん」
 アパートの中に入ろうとして、彼女は、玄関を掃除していた管理人に呼び止められた。
「何ですか? ジルさん」
「さっきあんたの”友達”が尋ねてきてね、寒いのも何だから部屋の中に入れたよ」
「・・・!!」
 ”友達”-------
 それだけでアンジェリークの表情が強張った。
 今日の一連の事件が答えを導き出してくれる。

 次は私の番…。

 自然とそういう考えが浮かぶ。
 彼女は強く地位さん名手を握り締めると、力の宿った眼差しで冬の空を見上げる。

 ここで私が殺されるわけには行かない…!!
 皆の敵を取るためにも、ことの真相を知るためにも…!!

 彼女の青緑の眼差しには、強い意志が溢れる。
「有り難う、ジルさん!」
 アンジェリークは手短に礼を言うと、再び走り出した。
「ちょっと! アンジェちゃんっ!」

 真実を知らなければならない・・・。
 私たちはただの文書分析係。
 一日中、本を読み、それを分析報告をアナリストにするだけの仕事。
 下部組織の私たちが、狙われるなんて考えられない・・・。
 何が起こってしまったの・・・?

 小走りにアパートから逃げ出すアンジェリークを、再び青年は追跡を始めていた------


その頃、全米文学史協会ビルの前に、一台のクリーン・サービスのバンが停まった。
 どこから見てもクリーンスタッフに見える男達が、次々に建物の中に入っていく。
 中に入るなり、彼らはすぐさま遺体の様子を検証する。
 導き出した答えは誰も同じだった。
 彼らは顔を見合わせ頷きあうと、代表者が携帯電話を手にする。
「支部長、10課の”ウィング”です」
 携帯の相手は、彼らに直接命令をだしたニューヨーク支部長であった。
「状況を話せ」
「プロの仕業です。あれほどのことは素人ではできません」
「どれぐらいの腕の持ち主だ」
「完璧です。あれ以上の腕では中々捜してもいないでしょう。熟練技です」
 支部長は冷静に、第10課からの報告に頷きながら聞き入っている。
「完璧か。ご苦労だった」
 彼は電話を切ると、手元にあるアンジェリークの書類を見つめた。
 その眼差しはどこか険しい。
「アンジェリーク・コレット。
 ニューヨーク支部第17課局員。
 読書分析係。
 マンガを好む-------か」
 彼は声を上げてデータを読み上げると時計を覗き込んだ------


 約束の時間まで、あと40分ほどになった。
 だが、アンジェリークにとっては、とてつもなく長い時間であった。
 落ち着くために、スタンドでマシュマロ入りのチョコレートを買って飲んだり、ギャラリーにいって絵を見たりして、時間をつぶす。
 だが、どの人物も自分を狙っているのではないかと感じるあまり、いき苦しくなっていった。
 ようやく5分前になり、アンジェリークは近くの公衆電話から、再び、オペレーションセンターに電話をかける。
 緊張のあまり息が詰まる。
「”少佐”、”エンジェル”です」
「”少佐”に繋ぎます」
 オペレーターがすぐさま対応してくれる。
 ほんのわずかな時間にも拘らず、アンジェリークはやきもきしていた。
「”少佐”だ」
 電話に出たのは、低い声をした「重厚な雰囲気の男だった。
「あなたはどなたなの?」
「ニューヨーク支部長だ」
「ニューヨーク支部長…」
 自分の直属の上司である。
 それにも拘らず、アンジェリークは、猜疑心からか、彼を信じることは出来なかった------

 アンジェリークの様子を、まだ青年は追っていた。

 ・・・・賽は投げられた・・・

 TO BE CONTINUED…
  

コメント

ハードボイルドサスペンスです。
アリさん次回は大活躍のはずです!!
皆様待望のシーンもある予定ですので(笑)
ご期待くださいまし〜。
ああ。書いてて楽しい、ハードボイルド。

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