この2時間・・・。私はどう過ごしたらいいの・・・!? 周りの人間全てが敵に思えてしまう。 猜疑心の塊になりながら、アンジェリークはニューヨークの街を彷徨った。 「オペレーションセンターから、ニューヨーク支部長へ。第17課で事件発生。”エンジェル”より報告があり」 摩天楼の一室で第一報を受けた支部長は、厳しい、眼差しで宙を見つめていた。 彼は電話を取ると、すぐに処理を始める。 「もう一人を探し、予定通りに動け」 アンジェリークは、元来の優しさからか、もうひとりの同僚の安否が気になっていた。 ニューヨーク支部第17課のもう一人の同僚、キャンディス・ハイデッガー。 本日はたまたま公休だった。 無事でいてキャンディス・・・!! 彼女は歩いて20分ほどのキャンディスのアパートに向かう。 その後を銀の髪の青年が続く。 彼は木枯らしに吹かれながら、優雅に上等なコートを揺らしていた。 彼は煙草を吸いながら、厳しさの混じった冷酷な眼差しをアンジェリークに向けている。 紫煙をひとつ噴出すと、青年は無表情のままさらにアンジェリークを付けていった。 キャンディスのアパートに入った時、アンジェリークの足は震えた。 だがそれを押して、彼女は古めかしい階段を登って、キャンディスの部屋の前に辿り着く。 「キャンディス?」 ノックをしながら、震える声で名前を呼んでみる。 だが、一向に返答はなかった。 「キャンディス・・・」 ドアノブに手を掛けると、すでに開いている。 恐怖が喉元まで上がってきた。 それを振り切るかのように、何とかドアを開ける。 目の前の視界が広がった瞬間、目を覆いたくなる惨状を突き付けられた。 「キャンディス・・・」 そこには胸を撃ち抜かれて果てている同僚の姿があった。 アンジェリークは目を逸らせると、唇を血が滲むまでかみ締める。 信じられずに表情をゆがめ、彼女は何度も首を振る。 不意に誰かの足音がした。 アンジェリークは、はっとして、慌てて部屋の外に出る。 ここで掴まってはならないと、彼女は足早に階段を降りた。 どうして・・・、どうしてこんなことばかりが起こってしまうの? 泣きたくても、心の緊張の余り泣けない。 恐怖感が先行し、アパートから出ても、アンジェリークは震えが治まらなかった。 早くこの場を立ち去らなければならない。 そのことが頭の中で多くを締め、アンジェリークは小走りで立ち去る。 これが夢だと思いたい。 無意識に彼女は、自分のアパートに向かった。 とにかく今は落ち着きたい------ その思いが自然と足を自宅に向かわせた。 「ちょこまかとよく動く女だな・・・」 彼はぴったりとアンジェリークを見ている。 男はふっと笑うとアンジェリークの後に着いていった。 優雅に銀の髪を靡かせながら。 ようやく、アンジェリークはアパートの前に帰り着いた。 早く部屋に帰って熱いバスに入りたい。 今はそんな気分だ。 「ちょっと、アンジェちゃん」 アパートの中に入ろうとして、彼女は、玄関を掃除していた管理人に呼び止められた。 「何ですか? ジルさん」 「さっきあんたの”友達”が尋ねてきてね、寒いのも何だから部屋の中に入れたよ」 「・・・!!」 ”友達”------- それだけでアンジェリークの表情が強張った。 今日の一連の事件が答えを導き出してくれる。 次は私の番…。 自然とそういう考えが浮かぶ。 彼女は強く地位さん名手を握り締めると、力の宿った眼差しで冬の空を見上げる。 ここで私が殺されるわけには行かない…!! 皆の敵を取るためにも、ことの真相を知るためにも…!! 彼女の青緑の眼差しには、強い意志が溢れる。 「有り難う、ジルさん!」 アンジェリークは手短に礼を言うと、再び走り出した。 「ちょっと! アンジェちゃんっ!」 真実を知らなければならない・・・。 私たちはただの文書分析係。 一日中、本を読み、それを分析報告をアナリストにするだけの仕事。 下部組織の私たちが、狙われるなんて考えられない・・・。 何が起こってしまったの・・・? 小走りにアパートから逃げ出すアンジェリークを、再び青年は追跡を始めていた------ その頃、全米文学史協会ビルの前に、一台のクリーン・サービスのバンが停まった。 どこから見てもクリーンスタッフに見える男達が、次々に建物の中に入っていく。 中に入るなり、彼らはすぐさま遺体の様子を検証する。 導き出した答えは誰も同じだった。 彼らは顔を見合わせ頷きあうと、代表者が携帯電話を手にする。 「支部長、10課の”ウィング”です」 携帯の相手は、彼らに直接命令をだしたニューヨーク支部長であった。 「状況を話せ」 「プロの仕業です。あれほどのことは素人ではできません」 「どれぐらいの腕の持ち主だ」 「完璧です。あれ以上の腕では中々捜してもいないでしょう。熟練技です」 支部長は冷静に、第10課からの報告に頷きながら聞き入っている。 「完璧か。ご苦労だった」 彼は電話を切ると、手元にあるアンジェリークの書類を見つめた。 その眼差しはどこか険しい。 「アンジェリーク・コレット。 ニューヨーク支部第17課局員。 読書分析係。 マンガを好む-------か」 彼は声を上げてデータを読み上げると時計を覗き込んだ------ 約束の時間まで、あと40分ほどになった。 だが、アンジェリークにとっては、とてつもなく長い時間であった。 落ち着くために、スタンドでマシュマロ入りのチョコレートを買って飲んだり、ギャラリーにいって絵を見たりして、時間をつぶす。 だが、どの人物も自分を狙っているのではないかと感じるあまり、いき苦しくなっていった。 ようやく5分前になり、アンジェリークは近くの公衆電話から、再び、オペレーションセンターに電話をかける。 緊張のあまり息が詰まる。 「”少佐”、”エンジェル”です」 「”少佐”に繋ぎます」 オペレーターがすぐさま対応してくれる。 ほんのわずかな時間にも拘らず、アンジェリークはやきもきしていた。 「”少佐”だ」 電話に出たのは、低い声をした「重厚な雰囲気の男だった。 「あなたはどなたなの?」 「ニューヨーク支部長だ」 「ニューヨーク支部長…」 自分の直属の上司である。 それにも拘らず、アンジェリークは、猜疑心からか、彼を信じることは出来なかった------ アンジェリークの様子を、まだ青年は追っていた。 ・・・・賽は投げられた・・・ TO BE CONTINUED… |
コメント ハードボイルドサスペンスです。 アリさん次回は大活躍のはずです!! 皆様待望のシーンもある予定ですので(笑) ご期待くださいまし〜。 ああ。書いてて楽しい、ハードボイルド。 |