
「ルートがあるとすれば、3つです」 ルウ゛ァはじっと見取り図を見ながら、全員の顔を見つめた。 彼は見取り図を指差し、丁寧に説明して行く。 誰もがルウ゛ァの指先の動きに集中する。 アリオス、オスカー、ヴィクトール、ランディ、そしてルヴァと英知がいま結集される。 「まず、正面から車で突っ込み騒ぎを起こし、その騒ぎに便乗する形で、裏口から侵入してさらに騒ぎを拡大する。そして、実際に最初に侵入を計る第三のルート」 ルウ゛ァは一坪程度の小さな平らな屋根を示す。 「第三のルートは厄介です。ここには、まず、飲料水用の球体の大きなタンクが横にありますからそれによじ登って下さい。そこから横の屋根に飛び移る。そこに人一人が入れるぐらいのエレベーターの換気孔がありますから、そこを開けて、さらにエレベーターの箱を開けて中に入って下さい。このエレベーターは地下に続いています・・・。恐らくこの地下室に、ふたりは閉じ込められていると思われます」 アリオスは煙草を片手に、じっと見取り図を見つめたまま、顔色ひとつ変えない。 「地下室だ、ルヴァ。報告でそう聞いてる。 後は屋上のセキュリティは・・・」 感情のない声。 しかも煙草を吸いながら、アリオスは真を突いてきた。 「270秒に1回、セキュリティ照明が回ってきます」 「時間は余りねえな・・・」 少し考え込むようにして、アリオスは目を閉じた。 「このエレベータールートは俺が行く。正面ルートはオスカーとランディ、裏口ルートはウ゛ィクトールが適任だろう」 「私もそう思います。それが一番だと…」 ルヴァも冷静に呟いた。 耳に男の人たちの声が聞こえる。 アンジェリークは耳障りの良いアリオスの声を聞き分け、ゆっくりと目を開けた。 「アリオス?」 ベッドから体を起こしてその名を呼べば、アリオスはすぐに傍にやってくる。 「目、覚めたか?」 「うん…」 二人の様子を見ていると、とても"女王と大公"には見えない。 そこには愛し合う二人に姿だけがある。 「今、戦略を練っていた。おまえも加わるか?」 「ええ」 彼女がテーブルに付くと、今までのことをアリオスが話してやった。 「私は?」 ぎゅっと腕を掴み、縋るようなまなざしで見つめてくる妻に、アリオスは少し厳しい視線を投げ掛ける。 「おまえは、ルウ゛ァと一緒に車で待機しておいてくれ」 「いやっ!」 泣いて嫌がる彼女に、アリオスは困ったような顔をした。 その表情は、誰にも見せないような、とても魅力的なものだ。 「アンジェ、おまえに何かあったら困る・・・」 「私が女王だから!?」 泣きながら上目遣いで見る彼女の表情に、アリオスはからきし弱い。 「いや・・・。俺が困る。おまえは一番大事だから」 「アリオス」 緊迫した中に、甘く微笑ましい空気が流れ、誰もがひと息を吐く。 「一緒に行きたいか?」 「うん」 決意を秘めたように頷く彼女は、凛としていて、揺るがない。 「判った。じゃあ一緒に行こう」 頷きながら晴れた表情をするアンジェリークが、アリオスには誇らしい。 「ルウ゛ァ、このことをふまえて、作戦だ・・・」 「判りました」 温かな雰囲気が一転して、緊迫した雰囲気を醸し出している。 再び、見取り図に基づいて、作戦を練り始めてた。 -------------------------- 夜が降り始めた。 アンジェリークはアリオスの車に乗って、別荘近くまで来た。 不安と緊張が彼女を覆い、落ち着きなく両手を組んでいる。 「大丈夫か?」 「うん・・・、何とか・・・」 時々、忘れていることがある。 アンジェがまだ十代の子供だってことを・・・。 女王として、母親として、そして俺の妻としても、よくやっている・・・。 だからこそ弱い部分を忘れちまう・・・ 「おまじないだ」 「あっ・・・」 強く抱き締められ、彼女はその温かさにあえぐ。 彼の温もりが勇気となって身体に注ぎこまれて来るのが判る。 「おまえは何があっても俺が守ってやる!」 「うん・・・、有り難う・・・。でもね、アリオス」 「何だ」 優しく声を掛けられ、二人は見つめ合う。 「私もアリオスを守るんだから」 「頼もしいな、頼りにしてるぜ?」 強い輝きを持ったまなざしをアリオスは受け止め、微笑んだ。 「頼りにしてるぜ」 「うん」 二人はどちらからともなく唇を重ねて想いを伝え合う。 唇を離した後、アリオスはアンジェリークに銃を差し出した。 「これは・・・!」 アンジェリークはその銃を見て目を見張る。 それはかつてアリオスがアンジェリークに護身用にと与えた”レミントンデリンジャー"だった。 小口径ながらも至近距離には威力を発揮するものだ。 「ルヴァに持ってきてもらった…」 「うん」 アンジェリークは懐かしそうにその銃を握り締めた後、白いブラウスのポケットに直す。 アリオスとレヴィ明日のためなら、私は何でも出来る… 「万が一のときは、それで身を守るんだぞ」 「わかった!」 彼女がしっかりつうなずくのを確認すると、アリオスは車を降りた。 アンジェリークもそれに続く。 「給水タンクの近くまで行って、セキュリティ照明が一回通り過ぎたら、登るぞ」 「はい」 緊張にアンジェリークの顔は歪むが、アリオスはやはり修羅場を乗り越えてきた強さか、全く動じていない。 アンジェリークの小さな手をぐいっと引っ張る。 「行くぜ?」 「うん」 そのまま二人は、球体の給水タンクの下まで行き、合図を待つ----- -------------------------- そろそろか… 車の中で時計を見つめているのは、第一ルート----つまり正面から堂々と侵入する野が担当の、オスカーとランディである。 「よしランディ、行くぜ」 「はい、オスカーさん!」 オスカーは、秒針が”12”の所に来たのと同時に、車のエンジンを思い切りかける。 「掴まってろ!」 「はいっ!!」 そのまま車に助走をつけると、オスカーは正面の立派な鉄の門に向かって、車を体当たりする。 爆音とともに、車は宙を飛び、門突破して、屋敷に侵入する。 合図だ…!! その音を合図に、ヴィクトールは裏口からバズーカ砲を片手に侵入し、そして、アンジェリークは給水タンクの梯子を上り始めた---- 始まったね…。 私もそろそろ準備しなくちゃね… 折ヴィえは、精悍な表情を一瞬だけ浮かべ、そのまま銃を手に取った。 |
コメント
Lynne Sawamura様の『BAGDAD CAFE』開設記念のお祝いです。
リクエストは、「DESPERADO」の続編で、アリオスが、愛する妻子を護る為、
再び、ヴィクトール、オスカーたちと戦いに挑んでいく…。
ものの、第八回です。
今度こそカッコいいアリオスさんです…。
いろいろやります
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