
アランの車の発信機を頼りに、車は海辺の高級別荘街にたどり着いた。 この辺りはリゾートホテルも多い。 二人の車は海岸近くの見晴らしの良い場所に停まっていた。 「この近くにレウ゛ィアスが!?」 「ああ。あの崖の上の一際立派な別荘にな?」 アリオスは別荘を指差しながら、感情の感じられない声で、淡々と呟く。 「だったら、助けに行きましょう!!」 縋るように彼を見つめるアンジェリークは、女王ではなくひとりの母親としての表情そのもので 「待て、アンジェ。感情的になるな。あの屋敷のセキュリティだとか、調べなきゃならねえことが山ほどある」 アリオスは冴えたまなざしでアンジェリークを見つめ、彼女もまた信頼をもって頷いた。 相変わらず冷静だな、アリオスは・・・。 きっと彼も辛い思いをしてる・・・。 彼までも感情的になるわけにはいかないものね・・・。 いつも有り難う。 車が不意に動き出して、アンジェリークははっとする。 「どこに行くの?」 「あの別荘が一番見易いホテルに部屋を取る。今は閑散期だ、取れるだろう」 「うん」 しばらく走ると、古めかしいが素朴な感じのする小さなホテルが見えてきた。 「あれにするぞ」 「うん」 減速しホテルの駐車場に車を停め、中に入ってフロントに立ち寄る。 幸い空室があり、希望通りに、別荘側の部屋があいていた。 アンジェリークが手続きをしている間、アリオスは支配人に世間話感覚で話しかける。 「あの別荘は随分立派だな? 持ち主はいったいどんな方だ?」 「あの別荘は30年ほど前に建てられたものです。その頃最新だった技術を使って建てられ、所有者は、新聞者の社主を勤めていた方でしたよ。最近、その方が亡くなられたので、遠縁の方が相続されたらしいですが・・・」 「そうか・・・」 ルウ゛ァに調べさせる必要があるな・・・。 「では、お部屋にご案内致します」 「お願いします」 ふたりはボーイの後に付いていき、部屋へと案内された。 チップをボーイに渡し荷物を受け取った後、部屋に入る。 ボーイが引き上げたのを見計らって、アリオスは荷物から小さな箱を取り出し、部屋を歩き回った。 一通り調べ終わると、彼はようやく腰掛ける。 「盗聴はされていねえ」 「よかった」 取りあえず、アンジェリークはほっと息を吐いた。 だがアリオスは、息吐く暇がないようで、テーブルの上に小型のノートパソコンを置き、そこにCIA専用の通信カードを差し入れ、準備を整える。 彼はルウ゛ァに直接メールを打った。 『以下の位置に存在する別荘の所有者だったものと、アラン・クレマンとの関係を知りたい。また、その屋敷の地図も必要だ』 その問いにルウ゛ァはすぐに答えを返してきた。 『判りました。すぐに手配します。手配出来次第、直接、例の物と一緒にお届けいたします。4時には、そちらに着けると思います。どちらにいらっしゃいますか?』 『ホテルシースモーク』 『了解』 ここまでやり取りをした後、アリオスは時計を見た。 2時か・・・。 いったん立ち上がると、彼はアンジェリークの隣に腰掛けた。 「2時間ほど時間があく。今夜は徹夜になるかもしれねえから、少し、眠れ・・・」 艶やかなまなざしで見つめられて、頬に優しく手を当てられれば、今までの緊張が飛んで行くような気が、彼女はした。 「アリオスは・・・?」 澄んだ大きな瞳をアリオスに向け、アンジェリークは心配そうに見つめている。 「心配すんな?」 「だったら、添い寝して・・・」 ぎゅっと彼の腕を掴んで離さない彼女に、優しい笑みを零した。 「しょうがねえ女王様だ・・・。ほら、こい」 「うん」 アンジェリークはアリオスの胸の中に飛び込むと、そのまま瞳を閉じる。 そっとベッドに横たわると、彼女を包み込むように抱き締めてやった。 しばらくして、アンジェリークが寝息を立て始め、アリオスはもう一度しっかりと抱き締めてやってから、離れた。 眠る彼女を見つめ、アリオスは切なくなる。 無理もねえ、アンジェはまだ十代だ・・・。 普段は、女王として母として毅然として振るわなければならねえんだからな・・・。 アリオスは、柔らかなアンジェリークの頬にそっとくちづける。 「愛してる・・・。おまえを守ってやるから」 呟いて、アリオスはパソコンの前に戻った。 ルウ゛ァが来るまでの間、戦略を立てる準備をするために。 アラン・・・。おまえがした全てのことを、俺は洗いざらい暴いてやる。 --------------------------------- 「見取り図が見つかった!」 その頃、ルウ゛ァは本部で朗報を聞いていた。 「有り難うございます! ええ、取りに行きます」 ほっとして、スタンバイをしている仲間たちを見る。 「地図が見つかりました。ウ゛ィクトール、ランディ、オスカー!」 誰もの瞳が精悍に輝き、闘いへと備えている。 特にオスカーは怪我を押してのことであった。 どうしても婚約者であるリモージュをこの胸で抱きしめたかった。 それだけが彼のいまここにいる理由であった。 「では行きましょうか、皆さん」 現地までの運転手役のヴィクトールが声を掛ける。 四人は駐車場へと向う。 この時間との闘いが厳しいものだということは、誰にでも判っていた。 一行は、途中の町で同じ局員から地図を受け取り、アリオスの元に急いだ。 アリオスと同じホテルでチェックインのここに済ませた後、四人はアリオスの部屋に集結し始める。 用心のために、”冬はやっぱり””湯豆腐”という暗号を作り、部屋に入るために、このような原始的な方法を用いた。 「冬はやっぱり・・・」 「湯豆腐」 そう言って現れたオスカーにアリオスは息を飲む。 「身体は?」 「大丈夫です!」 オスカーの力強い言葉に、アリオスはもう何も言わない。 オスカーのリモージュへの愛情をくんでやったのだ。 全員が集まり、 別荘の見取り図をテーブルの上に大きく広げ、彼らはまさに、作戦会議を挙行しようとしていた---- 一人眠る少女を残して…。 「ルヴァ、アランと別荘のも主は?」 ルヴァは早速、報告を開始する。 「アリオス、やはり、アランはあの別荘の持ち主だった、ジャック・ダーシー氏とは血縁で、おばあさんの兄がダーシー氏でした・・・」 「そうか…、決まりだな…」 全員は見取図を凝視する。 彼らに残された時間は、後僅か…。 |
コメント
Lynne Sawamura様の『BAGDAD CAFE』開設記念のお祝いです。
リクエストは、「DESPERADO」の続編で、アリオスが、愛する妻子を護る為、
再び、ヴィクトール、オスカーたちと戦いに挑んでいく…。
ものの、第七回です。
いよいよ次回はカッコいいアリさん登場!
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