
「さあ、お二人ともお疲れでしょ! お茶でも飲みながら、少し、落ち着いて下さいね〜」 アナリストと紹介された男の余りにもの緊張感のなさに、アンジェリークは思わず和んでしまう。「そうですね。私たちも少し落ち着かなければなりませんね・・・」 力なく笑うと、アンジェリークはアリオスをじっと見た。 「そうだな。ここは腰を据えて話をしなくちゃならねえからな」 「そのソファに掛けてくれ」 ジュリアスが口を開くと、途端に緊張感に包まれ、ぴりりとした空気が流れる。 二人が、促されたソファに座ると、ルウ゛ァがお茶を差し出さしてくれる。 「サンキュ」 「有り難うございます」 二人は軽く礼を言ったが、お茶を飲もうとはしなかった。 「このお茶はとても美味しいですよ〜。お茶はリラックスさせてくれますから、お飲みになって下さいね〜」 確かにルウ゛ァの言うことには一理あり、アンジェリークはカップに口を付ける。 「本当に美味しい」 事情が事情だけに、完全にリラックス出来たわけではなかったが、少しは気が紛れたような気がした。 「煙草、構わねえか?」 ちらりとルウ゛ァを見ながら、アリオスは胸ポケットから煙草を取り出す。 「どうぞ」 「サンキュ」 煙草を口に銜え、アリオスはライターでそれに火をつける。 ライターは、煙草を吸う彼にと、アンジェリークが贈った物。 炎が彼の精悍な横顔を照らし、幻想的に照らしている。 アリオスが煙草を燻らす横顔に、アンジェリークは、暫し、見惚れる。 私が妊娠をして、レヴィアスが生まれてから、アリオスは煙草を止めてくれた・・・。 久し振りだな・・・。 彼のこんな表情。素敵だと思ってしまう・・・。 「それでは落ち着いたところで、はじめましょうかね」 ルウ゛ァは先程までのおっとりとした表情から、怜悧な光をまなざしに落とす。 「昨日のアルカディアでのフィリップ公派の殺害は、国民の女王陛下への不信感を煽るだけのものというのは、お判りでしょう」 誰もが頷き、神妙な顔つきになる。 「フィリップ公派がいなくなっても、痛くないものがいますね?」 「反王室の奴等だろ?」 間髪入れずに、アリオスは言う。 「ええ。1年半前、モナコであなた方を襲ったものたちのデータを、昨日アルカディアから送って頂きましてね、そこから我々のデータと照らし合わせて、昨夜一晩で情報を分析させて頂きました」 そこで、ルウ゛ァは大きな溜め息を吐く。 「行き着いた人物は、レウ゛ィアス殿下のナニー、アンジェリーク・リモージュの従兄弟である、アランです・・・」 アンジェリークは驚愕したようにアリオスを見つめたが、彼は表情ひとつ変えない。 「リモージュは恐らく、関与はしちゃいねえだろう」 「確信は・・・、あるのか・・・」 あくまでも冷静なジュリアスである。 「ああ。部屋だ。あらされた跡はなかったが、ベビーベッドの横に一発の銃弾が威嚇するかのように撃ち込んであった。リモージュが抵抗した証だ・・・・」 アリオスの冷静な判断に、誰もが唸らずにはいられなかった。 「そうでしょうね・・・。 それと、アリオス、あなたが車に投げつけてくれた発信機ですが・・・、やはり、アランの親が所有する別荘へと消えたことが報告されています・・・。これは、我々の報告を裏付けることになります」 アンジェリークはその報告を聞くたびに身体を何度もびくりとさせているのが、アリオスには痛いほど判る。 「----アランのご両親は親王室はとしても知られています・・・。それなのに・・・、なぜ・・・・」 信じられないとばかりに、アンジェリークは手を組むと、じっと祈るように俯いた。 「人間、金と権力に左右されないやつは中々いない・・・。 おまえには辛いだろうがな・・・・」 アリオスは、一瞬考え込むような表情をすると、ルヴァを横目でちらりと見た。 「ルヴァ、悪ィが分析結果を見せてくれ」 「判りました」 ルヴァは、すぐさまアリオスの前にパソコンを置き、彼が望むデータを引き出してやる。 アリオスはすぐさまそのデータをじっと見つめ、一瞬考え込んだ。 自分では手を下していないか・・・。 何人も人間を介在しやがって・・・・。 誠に用意周到だ・・・。 「アランの最近の動きなどを知りたい、すぐに情報を頼む。どんな小さな動きでもかまわねえ」 「判りました」 ルヴァは即動き出し、コンピューターを叩き始める。 「なるべく早く頼む。 俺たちは、今からその別荘に乗り込む。 分析が出来たら連絡をくれ」 「はい」 アリオスはアンジェリークの手を握り立ち上がる。 「先に下見とやらに行ってくる」 彼はそう言うと、そっと妻の手を強く握り返した。 それは何よりもの信頼の証。 「行きましょうアリオス」 アンジェリークも凛として答えた。 二人は、ほんの一瞬だけ見つめ合うと、そのまま長官室を出てゆく。 二人の後姿を見つめながら、その絆の強さに、ジュリアスろルヴァは、感心せずにはいられなかった。 「アリオス!!」 突然ドアが開き、慌てた形相のヴィクトールがやって来る。 「どうした!?」 「オスカーが負傷した!!」 何だって!? 長官室に緊張が駆け抜けた----- |
コメント
Lynne Sawamura様の『BAGDAD CAFE』開設記念のお祝いです。
リクエストは、「DESPERADO」の続編で、アリオスが、愛する妻子を護る為、
再び、ヴィクトール、オスカーたちと戦いに挑んでいく…。
ものの、第四回です。
今回は説明っぽくなっちゃった・・・・
ごめんなさい・・・・
今回は何だか最悪・・・・。
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