
アンジェリークは、久し振りにあの夢を見た。 母が殺され、アリオスに助けられたあの日の夢を---- 精悍な背中に自分の命を預けたあの日。 あれほど頼りになる背中は今までなかった。 アリオス・・・。時が経つにつれてあなたへの想いが深くなっている。 白い大きな背中に乗り、眩しいほどの光が見えたとき、アンジェリークは目が覚めた。 「あ・・・」 目を開けると、そこには広い背中が夢と同じようにあった。 「アリオス・・・」 「目が覚めたか?」 ベッドの上に腰掛けていた彼は、ゆっくりと振り向き、優しいまなざしを彼女に落とす。 「気分は・・・?」 すっと、繊細な指で頬を撫でられて、アンジェリークはその感触に深く溺れた。 「うん・・・、少しはましみたい・・・」 「そうか」 そのまま、彼は彼女の唇に軽く甘いキスをして、優しく宥めてやる。 「ねえ、抱き締めて」 潤んだ瞳で懇願されると、アリオスには一溜まりもなかった。 愛しくて、可愛くてたまらない妻を、アリオスはふわりと包みこんでやる。 ふたりきりの時は、彼女は女王ではなく、ただの女になる。 愛する男性に愛を捧げる、どうしようもなく可愛い女に。 アンジェリークは、アリオスの広い背中に腕を回して、しっかりと男らしい香りと、温かさを肌に写した。 そうしなければ崩れてしまいそうだったから。 「今夜は、ずっとこうしておいてやるから」 「うん・・・、有り難う、アリオス。安心する」 優しく甘く微笑んで、アリオスはアンジェリークを抱き締める腕に力を込めてやった。 彼女もまた、彼の背中に回す腕に力を込める。 「ひとりにしないでね・・・」 「ああ。おまえがもう俺なんかいらねえって言っても、離してやらねえから」 「私も絶対あなたを離さないから」 二人は絆を確かめるかのように、強く抱き合った。 不意に、アンジェリークは胸に痛みを覚え、みじろぐ。 「どうした?」 少し顔をしかめた彼女に、彼は身体を撫でながら、言う。 「胸が張って痛いの・・・」 泣きながら、アンジェリークは震える肩を彼に押しつける。 「レウ゛ィアスのおっぱいの時間だもの・・・。朝とこの時間だけが、おっぱいを上げられる唯一の時間だから・・・」 「アンジェ…」 「きっとレウ゛ィアス、おっぱい欲しくて泣いてる・・・!!!」 身体を震わせて泣く彼女に、アリオスは宥めるように背中を何度も擦り、額に優しくキスをした。「レウ゛ィアスはきっと無事だ。みんなが探してくれているからな」 「うん、うん。ごめんね、レウ゛ィアスがいなくなって辛いのは私だけじゃないのに・・・。あなたも辛いのに・・・」 強く抱き締めてやって、カッターシャツを開いて精悍な胸を露にすると、彼女が安心するように、まるで幼子のように胸の鼓動を聴かせてやる。 「安心するわ…」 「そうか。な、アンジェ、まだ胸は痛むか?」 彼女は目を閉じながら、僅かに頷いた。 「後で搾乳するから。ほっておくと乳腺炎になっちゃうから・・・」 母としての辛さから、アンジェリークは少ししんみりとなる。 「俺が搾乳してやる」 「ん・・・」 二人は、深く唇を重ね合い、お互いの失われた心を補う。 互いが一人ではないことを確かめ合うかのように激しく愛を求め合った。 ---------------------------------- 翌朝、ヴィクトールに手渡された新聞を見て、アリオスは予感した事態が起りつつあることわ感じた。 『女王派パロス伯爵を殺害か!?』 このような見出しに躍らされ、、中身も辛辣な事が書かれている。 「犯人は女王に喜ばれたいためにやったと供述しており、今後のアルカディア王国のスポークスマンの報告が待たれる…」 このように締めくくられている生地を見るなり、アリオスは新聞を握りつぶした。 「恐らく、マスコミがホテルには駆けつけるだろう。今のうち裏口から逃げろ。車と衣服は用意している。そのままジュリアス長官のところを向ってくれ・…。そこにアナリストがいるはずだ。そこで情報を分析しているから」 「ああ、すぐに支度をする」 「下で待ってる」 緊張感が再び覆いはじめる。 張り詰めた空気が、辺りを引き裂いてゆく。 「アンジェ、アンジェ、起きろ!」 彼に何度も体をゆすられて、アンジェリークはようやく目を開けた。 「アリオス…」 瞳に写った彼の表情が精悍に引き締まり、緊張感が彼女の身体に戻ってくる。 「着替えはバスルームに置いてある。すぐにシャワーを浴びて支度しろ」 有無言わせぬ彼の口調に、アンジェリークは慌てて飛び起きる。 明らかに空気が張り詰めている。 「わかった準備する」 「俺も横のバスルームで準備をするから」 ぼんやりとしていた頭が急にしゃきっとする。 アンジェリークは手早くシャワーを浴び、髪を乾かすと、置いてある衣服に着替える。 ジーンズとブラウスというシンプルな服に、スニーカーがおいてある…。 この国にいたとき、こんな格好をしてたな… 服を着ようとして、彼女は再び胸の張りを感じる。 それは、朝のおっぱいの時間であることを、彼女に知らせている。 レヴィアス・…。ママンは絶対助けるから…。 パパと一緒に!!! ぐっと姿勢を正して、アンジェリークは決意を秘めたようにバスルームを開けた。 「待ってた」 そこには既に身支度を終えたアリオスが立っており、彼女の手をぐいっと引っ張る。 「行くぜ」 「うん」 二人は、そのまま非常階段を使って、地下の駐車場へと向う。 「これから、また、苦しくなるが・…」 「大丈夫、アリオスがいるから…」 「ああ、どこまでも守ってやるぜ?」 二人はヴィクトールが用意してくれた車に乗り込み、アリオスがエンジンを掛けたときだった。 「-----!!!」 アリオスの研ぎ澄まされた感覚が、再び呼び覚まされる。 「掴まってろ!、アンジェリーク!!!!」 「えっ!?」 アンジェリークが驚くまもなく、車は乱暴に発車される。 それと同時に、銃弾がこだまし、バックミラーにはライフルを持った男の不審な車が映っている。 レヴィアス…。 待っていてね…。 ママとパパが助けてあげるから… アンジェ、レヴィアス…。 俺はおまえたちを絶対に守るから。 この命をかけても。 スピードが上がる。 再び、運命が動き出した---- |
コメント
Lynne Sawamura様の『BAGDAD CAFE』開設記念のお祝いです。
リクエストは、「DESPERADO」の続編で、アリオスが、愛する妻子を護る為、
再び、ヴィクトール、オスカーたちと戦いに挑んでいく…。
ものの、第ニ回です。
ああ、どんどん、へぼくなっている…
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