CHAPTER10

「国務省特別捜査官オリヴィエ、無事に、レヴィアス殿下とリモージュさんを保護しました・・、なんてね」
「助かったぜ? サンキュ」

 国家の…

 リモージュは今までのパズルがすべてぴったりとはまるような気がした。
 アンジェリークもまた、夫が影でいつも自分のために動いてくれてることを感じ涙が出そうになる

 有難う、アリオス…

 ゆっくりと、アンジェリークは我が子に視線を移す。
 感情があふれ出て、もう何も見えない。
「レヴィアス!!」
 アンジェリークは、レアンジェリークは、レウ゛ィアスの父親と同じ異色の瞳を見るなり、涙を浮かべ、我が子に手を差し延べる。
「陛下」
 リモージュももらい泣きしながら、アンジェリークにレウ゛ィアスを差し出した。
「有り難う」
 その腕に息子を抱き締め、アンジェリークは何度も頬擦りをしてやる。
「レウ゛ィアス、ママンよ。よく頑張ったわね」
 やはり母親に抱かれて嬉しいのだろう。父親そっくりのまなざしを喜びの余り輝かせている。
 二人を包み込むようにアンジェリークの肩を抱くアリオスを見ていると、完璧な家族像だと思わずにはいられない。
「リモージュもご苦労だった。オリウ゛ィエもサンキュ。おまえがたまたまヤツの横領について、潜入調査中だったから、助かった」
 艶やかに乱れた髪をもろともせず、アリオスは二人に心からの礼を言った。
「何言ってるの〜、大公が、国務省の不正会計とアランの横領と動きに気がついたから、私が派遣されたんでしょうが〜」
 ウィンクをしながら、アリオスを茶目っけたっぷりにオリウ゛ィエは見つめる。
 話が見えない、アンジェリークとリモージュの頭の周りには、クエスチョンマークが何個も飛び回り、違いに顔を見合わせた。
 それを察したように、アリオスは口を開く。
「そろそろここから移動せねばな。オリウ゛ィエ
! アランはどこにいる?」
「最上階のペントハウス。そこに恐らく、国務省の横領金がざっくざっく」
「サンキュ」
アンジェリークは察する。彼が自分一人でアランのところに行くつもりだと。
「リモージュさん、レウ゛ィアスを頼みます」
 ぎゅっともう一度息子を抱き締めて、アンジェリークはレウ゛ィアスをリモージュに差し出した。
 その行動でアリオスは総てを悟る。
 アンジェリークが付いていこうとしていることを。
「アンジェ・・・」
 レウ゛ィアスをリモージュが抱き取ったのを確認してから、アンジェリークは凛としたまなざしを夫に向ける。
「私も一緒に行くわ」
 アリオスはフッと笑う。
「ああ、一緒に行こう。おまえは俺の最高の相棒だからな」
 くしゃりと栗色の髪を撫でられ、アンジェリークは嬉しそうに微笑んだ。
「ふたりとも気をつけて、レウ゛ィアスを頼む」
 アリオスの信頼のまなざしに、オリウ゛ィエとリモージュが頷く。
「レウ゛ィアス、ママン・レーヌと一緒にパパはお仕事をしてくるからな? もう少しいい子にして待っていてくれ」
 アリオスは、愛しげに我が子を見つめると、その柔らかな頬に軽くキスした。
「レウ゛ィアス、もう少しだけ、辛抱してね・・・」
 アンジェリークもまた、アリオスと同じ場所にキスをする。
「後は頼んだ。一階フロアの階段は下にはオスカーとランディがいる」
 一瞬、リモージュの表情が明るくなったことを、アンジェリークは見逃さなかった。

 良かったわね…。リモージュさん・…。
 もうすぐ彼に逢えるわよ…。

「やつらとそこで合流してくれ。エレベーターは装置を取って使えば希望の階に行ける」
「オッケ! 大公、またね!」
「またな?」
「陛下お気をつけて…。
 大公…。アランは"王"になりたがって今回のようなことをしました…。どうか、彼を…」
 リモージュの不安と心配の入り混じった表情は、アリオスに彼女の気持ちを充分理解させる。
「判った…」
 オリウ゛ィエは、リモージュとレウ゛ィアスを連れてエレベーターに乗り込んだ。
 二人が軽く会釈をした後、エレベーターのドアが閉まり、上へと上がっていく。
「ルウ゛ァ、アランの”ペントハウス”までナビを頼む」
 アリオスは左耳に付けている、男性用ピアスに触れ、話し出す。
「判りました。ではまず階段で2階まで上がって下さい。そこでまた呼び出して下さい。
-----それと、先ほどわかった情報です。アランの隠し口座から、パロス伯暗殺の犯人にお金が振り込まれていました。やはり、彼が、女王陛下に注目させるために、仕組んだことのようです」
「サンキュ、また後でな?」
「グッドラック、アリオス」
 そこで通信機を切ると、話を聞いていたアンジェリークは目を丸くする。
「アランは・・・ 」
 アンジェリークの手を握ると、アリオスは階段に向かって歩き始める。
「アランは確かに国務省のエリートだった。だが、やつの野心はそれだでは納まらなかった。アルカディアの頂点に立ちたいと願うようになった。そうなると邪魔な人間がいる。判るな?」
「・・・私たち・・・」
 ぽつりと力なく彼女は囁く。
「そう俺たち王族だ。やつは先ず最初に巧みに横領したお金を、反王室組織に援助し始め、恩を売り始めた。そして自分が作る世界は素晴らしいと説くためにな・・・」
「そんな…」
 アンジェリークは唇を噛み締めて、辛そうに俯く。
 その表情が見たくなくて、アリオスはことを水面下で進めていたのだが、結果的に"レヴィアス誘拐”で彼女の知ることとなってしまった。
「やつは"生まれながらの王"である、レヴィアスが憎かったんだろう…」
 アリオスは、じっとアンジェリークを見つめる。
「だが忘れないでくれ…。どんな悪意があろうとも、俺はおまえとレヴィアスは守るから」
「…うん…!! 私もあなたとレヴィアスは守るわ」
 二人は軽くキスをする。
「行くぜ?」
「うん!」
 しっかりと手を取り合って、二人は階段を登り始めた----

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 その頃、オスカーとランディ組は、次々に襲い掛かってくる刺客たちを、銃で撃ち落としていた。
「うわああああっ!」
 彼らが行く先に転がるのは、負傷者の山。
 やはりきちっと訓練を受け、修羅場を潜り抜けている彼らにとっては動作ないことである。
「聴こえますか? オスカー」
 通信型ピアスからルヴァの声が聞こえる。
「ああ聴こえるぜ?」
「リモージュさんと、レヴィアス電化、オリヴィエさんが階段の下にきますので、迎えに行ってあげてください」

 アンジェリーク…!!!

 その名前を聞いて、オスカーの胸は嬉しさと切なさがこみ上げてくる。
「行くぜ、ランディ」
「はい」
 オスカーは愛するフィアンセとのために、今、階段下へと全速力で向っていた。


 裏口もまた、ヴィクトールが完全に制圧し、二階部分へと向う。
 彼もまたピアスを使って連絡を取った。
「二階部分は俺に任せてくれ…」

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 下の騒ぎを感じる…。
 このままでは…。

 アランは大きなスーツケースを持って立ち上がる。

 潮時だね…。
 悪いけど僕はひと足早く出させてもらうよ?

 彼はそのまま、本箱に向ってリモコンのスイッチを入れる。
 するとそこが開き、彼はその奥へと消えていった----



 アラン…。
 俺はおまえをゆるさねえ・・。

 アリオスとアンジェリークは二階の踊り場まできていた----
TO BE CONTINUED…

コメント

Lynne Sawamura様の『BAGDAD CAFE』開設記念のお祝いです。
リクエストは、「DESPERADO」の続編で、アリオスが、愛する妻子を護る為、
再び、ヴィクトール、オスカーたちと戦いに挑んでいく…。
ものの、第十回です。
いよいよ二桁!
マグナムアリオスは次回に持ち越し。
出し惜しみ(笑)