中国 青海・チベット・雲南省 6000キロの旅


   東洋の桃源郷 香格里拉(シャングリラ)

2009年8月初旬取材






 中国政府のラサ騒乱対策規制により陸路を断たれ、コンガ空港から雲南省のヂヨンデイエン(シャングリラ)に飛ぶ。厳しい搭乗チェックを経て40分遅れの2時間のフライトになる。

 雲の合間に5000mを越えるヒマラヤ山脈が見える。切り立つ頂を持つ山脈は万年雪に覆われ時おり原始の森と蒼き湖を見せ連綿と続く。右手前方に国境のミャンマーが雲に浮かぶ 。得がたい光景に我を忘れカメラを構えた2時間である。

 初めて訪れる雲南省は中国の西南に位置する内陸部で南の国境ベトナム、ラオス、ミャンマーと接する辺境の地で殆どが山岳地帯である。日本とほぼ同じ面積に中国少数民族55のうち26民族が地形複雑な山岳地帯の住み分け多様な生活習慣、固有の文化をもって暮らしている。平均標高2000m近い高原の省で気候は温暖、過ごしやすい照葉樹林の緑多いところである。かって雲南は日本の古代文化のルーツだと照葉樹林文化論で主張されたように、日本の文化と似通っていると聞く。雲南の名前の由来は雲嶺(四川省との境)の南から来ているとあるが険しい山々を見るにつけ雲の南を実感する。

 東南アジア有数の長江、メコン、サルウィン川はチベット高原を源流として三河併流し豊かな自然を形成している。

 眼下にシャングリラを見る。あの荒涼としたラサの町と一変、緑の絨毯が広がる日本を旅たって久しぶりに緑の歓迎を受ける。小さな空港から町の中心まで僅か10分。兵士の監視も無い明るい町がある。 

 シャングリラは雲南省最北部にあるデチェンチベット族自治州の州都で海抜約3000m。地名は英国の作 家ジェームスヒルトンが書いた「失われた地平線」の中で、チベットの伝説の桃源郷として描かれた。
 そこは5000mの万年雪山に囲まれた山奥にある村で原始の森に高山植物が咲き乱れ人々が助け合って生きる桃源郷である。2000年より町は観光客誘致に力を入れはじめ、国内外からトレッキングを楽しむ客が増え、過疎の村も最近は賑わいを見せるようになったという。明るい表情、人懐こい人達、輝く草原、緑の風、まさに中国では別世界である。

旧市街地には古い木造建築も多く長閑さもあり余生の生活の条件を考えさせられる。
チベット人、白族、漢族の人たちは民族を越え皆親切である。これも自然環境のなせる業なのだろうか。

 夕方当雄から陸路を来たレン運転手兼ガイドと助手のシャオワン嬢と四日ぶりに再会する。悪路の山越えを走り続けた彼らの労を称え屋台で閉店の11時まで高山病予防の禁酒を解き白酒で痛飲する。明日からどんな出会いや光景を目にするだろうか。車を使った雲南の本格的な旅がはじまる。

       次回は“ロゴフーに今も残る女の国 通婚”を予定しています。

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機上から ヒマヤラ山脈の展望


機上からのシャングリラの家並み


水路が張りめぐらされている




ヤクの角の魔除けが商店の玄関にかかる


民家の庭先に咲く高山植物


マフラーを織りながらその場で売る、屈託のない明るさをもつ若奥さん



あくせくせず店先でのんびりと談笑するのが楽しみという


日本の屋台に似ている焼物のお店、愛想の良い女主人


7月が旬の松茸。一皿200円(日本円)相当と安いが、香りはいまひとつ



辺境で貧しく生活が大変だったと昔を語る老婆

旧市街の広場では日本の盆踊りを思わせる歓迎の踊りが遅くまで行われる



雲南省最大のチベット寺院。シャングリラの観光名所で金箔の本殿を持つ松賛林寺


シャングリラ最大の湖、ナバ海草原 放牧のヤク、馬がのんびりと草を食む


豊かな農村風景



整った近郊の村落
右手前にチベットの霊塔ストパーを見る


長江の源流 金沙河は135度方向を転換して“長江第一湾”となる


シャングリラへの陸路は険しく連なる4000m級の山を越えていく



4000m級の山で放牧されているチベット馬 首に付けられた鈴が静寂な山並みにこだまする


高山で凛々しく走る強靭なチベット馬


悠然と流れる長江源流金沙河
左の山腹の道はかつて雲南から茶、チベットから馬・塩を運んだ茶馬街道が沿っている

チベット自治区 聖地ラサ(1)

チベット自治区 聖地ラサ(2)

チベット自治区 聖地ラサ(3)