キャトラン・ドーレ・・・彼らの中の一人ポワントール・ポウ・ポーは、水晶の森にいつもの水晶狩りにやって来ました。

 この水晶の森は、昔はうっそうとした木々が茂る自然豊な森だったのです。しかしいつの頃からか、緑の木々にとって変わって巨大な銀水晶が出現し、さらに大地からはさびがにじみ出てきて、ついには冷たく光る銀水晶と赤さびた大地に覆われてしまいました。

 時がたつにつれこの赤さびた大地は森から染み出すように広がっていくと、今ではほとんどの陸地を飲みつくすほどの勢いで、ただそこには冷たくしんとした静寂の世界を残すばかりになっていったのです。

 ポウ・ポーは水晶の森の近く、赤さびと砕けたくず水晶の大地に暮らしていました。そして透明で光り輝く高価な「蛍水晶」の採れるこの森に入っては水晶狩りをするのが日課となっていたのです。

              

 その日も、朝早くからこの森で水晶狩りをしていましたが、なぜか不思議と透明な月明かりをまとった蛍水晶ばかりがどうしても見つからないのでした。

 ポウ・ポーは水晶森のいつもは行かない奥深くにまでわけ入って探してみました。しかし一つも見つかりません。気がつくといつしか陽は傾き、ついには来た方向もわからなくなってしまい完全に迷いの淵にはまっていたのです。

 迷路を進む不安な目は、似たような景色をデジャブのように繰り返しながら記憶ある道のかけらを見出そうと必死でした。蒼然としたくず水晶のシルエットがやがて夕日を銀色に混ぜ込んで作られた巨大な水晶に姿を変えていく頃、そしてそれらがいくつも立ち並ぶその先、それはこつぜんと目の前に現われたのです・・・視界に入りきらないほどの大きな大きな建造物!どうやらそれは古い時代に建てられた遺跡のようでした。突然の出現に
ポウ・ポーは息をのみ立ち尽くしてしまいましたが、しだいにその遺跡の中に入ってみようかと思い始めたのです。

・・・水晶の森・・・

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・・・キャトラン・ドーレは猫の姿と心をもつ妖精人のこと、でも今の彼らは妖精人というよりも昔の人に近い・・・