その日も、朝早くからこの森で水晶狩りをしていましたが、なぜか不思議と透明な月明かりをまとった蛍水晶ばかりがどうしても見つからないのでした。
ポウ・ポーは水晶森のいつもは行かない奥深くにまでわけ入って探してみました。しかし一つも見つかりません。気がつくといつしか陽は傾き、ついには来た方向もわからなくなってしまい完全に迷いの淵にはまっていたのです。
迷路を進む不安な目は、似たような景色をデジャブのように繰り返しながら記憶ある道のかけらを見出そうと必死でした。蒼然としたくず水晶のシルエットがやがて夕日を銀色に混ぜ込んで作られた巨大な水晶に姿を変えていく頃、そしてそれらがいくつも立ち並ぶその先、それはこつぜんと目の前に現われたのです・・・視界に入りきらないほどの大きな大きな建造物!どうやらそれは古い時代に建てられた遺跡のようでした。突然の出現にポウ・ポーは息をのみ立ち尽くしてしまいましたが、しだいにその遺跡の中に入ってみようかと思い始めたのです。
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・・・キャトラン・ドーレは猫の姿と心をもつ妖精人のこと、でも今の彼らは妖精人というよりも昔の人に近い・・・