■春の靖国神社

●「靖国神社」を先に見る。

この機会に参拝も。拝殿も春の陽差しを受け美しく靖国の風景を彩る。

満開のソメイヨシノ。「オトウサマハリッパニタタカッテアノサクラニナッタノデスヨ」。そう信じている人達をくさすのは、サンタを信じている子供に現実を教えることより数倍も無粋だ。

名物白い鳩たちもお花見しながら語り合う。

「春の梢に、咲いて会おう」。第二次大戦の戦死者だけでも約200万人、仮に境内に100本の桜の木があり、その木に2万の花が咲いていたすれば、一輪一輪が戦死者と数えられる。とほうもない数だ。

この機に思い出話にも花を咲かせようと集う。「残りがすくなくなったなあ」とおっしゃっていた方も。戦いにたおれた友のもとへ、ひとり、またひとりと旅立ってゆく。

昼を過ぎると、今が見頃と慌てて出てきたのか、参拝客で込みあってきた。ほとんどの人たちにとってこの場所は花見の名所以外の何でもないのかも知れない。

牛ヶ淵の桜も堀の緑と溶け合って艶やかな美しさだ。その一輪が戦没者の微笑みに見えなかったとしても、九段の桜の美しさは訪れる人たちの胸に冴えざえと刻まれてゆくことだろう(この項終わり)。