同人誌感想[3]


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マイブルーヘブン/池部ハナ子

 このひとのエロマンガは読んでいて楽しい。気持ちよい。理由はたぶん、ほんとに好きあっている登場人物を描いて、それがちゃんと描けているからじゃないかと思う。エロマンガであると同時に恋愛まんがでもありえているまんがって案外少ないような気がするけど、そういうまんが。(1999.5.16)

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DON’T STOP/西村竜(ちくちくNET)

 授業終了のチャイムと同時に、ダッシュで家へと向かう女子高生。息を切らしてバスに乗り込み、こともあろうに運ちゃんまでせかし、そこまでして急いだ理由はといえば‥
 ラスト、「あーあ、まだ4時じゃん。ヒマー。」と吐かしやがる主人公。馬鹿な娘とたんたんと会話をやりとりする母親が、これがまたいい。それだけといえばそれだけのまんがなんだけど、こういう日常のひとコマの切り取り方に磨きがかかってきたと思う。このまんま、どんどん行ってほしい。(1999.5.16)

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鉄のぎざぎざ/九紫奇寧+無氏名(METAL ZIGZAG)

 マッドサイエンティストが念願かなって作ったホムンクルス。しかし、作り出された彼女は、創造主に背いて彼を廃人にしまう。やがて寿命がつき崩れ去るホムンクルス、あとに残された廃人と、彼を慕い続ける女性‥‥というようにあらすじだけにして紹介してしまってはもうしわけないほどの労作。
 30ページ、ひとコマ足りとも手を抜かず、トーンも使わずの狂気じみた描きこみ。すごい、と思う。ストーリー自体の解釈はここでは措くけど、なにもかもなくなってしまったラストもいい。
 これを作るのにどれだけの時間がかかったかを考えると、次が読みたいなどと軽々しくは言えないけど。でも次が読みたい。(1999.5.16)

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LIVE WELL/TAGRO(PARKING「PARKING!5」)

 読む。頭を垂れる。もう一度読む。ためいきをつく。
 自殺志望の彼女。彼女と住んでいるのは、彼女のためならなにもいらないから、ではない。怠惰と打算。でもそれだから、彼女と住んでるのではない。

 テーマが重いから、ではない。まんがとしてできているから、ためいきが出る。
 
 商業誌掲載作と比べると絵に手間はかかってないけど、そういうことでもない。傑作だと思う。これが数百人の目にしか触れないのがもったいないくらい。または人に読ませるのがもったいないくらい。(1999.5.16)

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インナー・チャイルド/やじかちなみ(薔薇とチョップ)

 精神科医のもとに送られてきた少女は、双子の少年が死んだことによるショックで外界を拒絶していた。彼女を治療しようとする主人公の精神科医の精神もまた、かつて双子の兄弟を亡くし、なおかつ親に亡くなった兄弟として扱われてきた事実をささえられなくなっていた。自分がこれで少女をなおすことなんてできるのかと自問する主人公。それでも治療は続く。そして。
 個人的には好きな絵だけど、絵がすごいとか構図がすごいとか、そういうまんがではない。そういうまんがでなくても、淡々と進むストーリーとそこに描かれるテーマと描かれた登場人物たちがあれば、それだけでちゃんと読まれるべきまんがになるのだよという、そういうまんが。126ページの力作。(1999.9.26)

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うわの空で/入江アリ(アラビヤ魔人)

 好みのまんがを前にしてなんか書かないといけないとき、いったい何をどう書いたらいいもんだかと途方にくれることがある。絵?好み。はなし?好み。めっちゃ好み。ええやんそれで‥と投げたくなる。でもそれじゃ読んだほうがなんもわからんのだよなあ。とほ。

 絵。トーンとカケアミを併用してる。わりと白っぽい。清涼感がある。女の子がかわいい(これかよ)。ついでに男の子もかわいい。にらんだり困ったり驚いたりする主人公の少年の表情がいい。いいじゃわからんか。セリフがなくても感情が伝わるのよ。なおかつオーバーアクションでもなく。少年を外の世界に連れ出す隣のお姉さんの、少し笑った顔がいい(またこれかよ)。いやそうじゃなくて、そういう顔ができるバックグラウンドのしての人格が好もしい。というよりそういう人格が描いてあることに対する好感か。人ばっかじゃなくって、レンガでできた街や道や、窓から差し込む月明かりがいい。いいってなにがいいかというと、そういう景色が好きなのだ。
 はなし。高い塀で碁盤目上に区切られた街とそこに住む人による異世界ファンタジー。主人公はある日見上げた塀の上を歩いている子供に驚いて、隣のお姉さんに連れ出されてこわごわと歩いてみる。おなじように歩く大人たちや子供たちを知る。最後がちょっと尻切れとんぼなのは続編含みでしょう。こういう静かでゆっくりした物語は好き。こどものはなしも好き。続き読みたい。この感じで。

 ほとんど自動筆記だけど許してください。これをきれいに整形してしれっと感想書くと、自分にうそついてるみたいになるんで。もしくはそういうことができるほどまだ文章が達者じゃないんで。よいのです、とても。(1999.9.26)

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どこへ、遠くへ/入江アリ(アラビヤ魔人)

 小学生のとき登れなかった高い樹。やがて樹は切られ、そこには樹よりも高い3階建の家が立ち、そこに越してきたのは昔越していった、戻ってきた小学校の友達。むかし樹のうえから見えた景色に近いであろう、そいつの家の窓から見た景色。遠くに見えたもっと高い樹。以下上記参照。2回やるとあほなので。(1999.9.26)

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てのひらの虹/入江アリ(アラビヤ魔人)

 年取らぬ旅人とその道連れの子供と、旅人をおもい続けるお嬢さんとお嬢さんに誰知らずおもいを寄せる若い執事(なのかなあ)と。そんな話。

 作者みずから書いてるとおり絵もまだこなれてない(いやこれはこれで好きですが)し話のつながりもいまいちだけど、雰囲気なのよなあ。その人の持ってる雰囲気というのがその人のちょっとしたしぐさや癖や表情のことならば、このまんがのしぐさや癖や表情が好きなのだ。このまんがの「登場人物の」しぐさや癖や表情、というのではなく。(1999.9.26)

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kidology 1999/西村竜(ちくちくNET)

 まとまりました1冊に。コピー本5冊−TRUMPERY・コンビニエンス・東京・ブラザーズ・DON’T STOP−プラス描きおろし(?)「STST」。  3話形式になっていて、すれてなくていささか天然っぽいめがね少年が、ヤローみたいな女に惚れた設定のこの話、例によってなにがどうなるわけでもないけれど、いままでの5冊以上によくできてると思う。いやこの設定で10回でも20回でも続けてほしいくらい。
 知り合いの何人かをまぜこにしたらこういう女になりそうなので、雰囲気はよくわかります。リーヅモ一発ウラ6はいかんよ。(1999.9.26)

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風呂/紅茶羊羹(大深海水淵亭「大深海水淵亭なつやすみの友」)

 ちらし1Pまんが。風呂はいい。足延ばしたい。だからって洗い場のほうに水を張ったらとか考えつくか。いや大事なのは考えつくことではなく実践すべく考察することなのだ。そしてそれをまんがにすることなのだ。ほんとか?(1999.9.26)

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五月雨奇譚/なかせよしみ(メタ・パラダイム「ひとつ 5号」)

 雨の中、頼まれ物を持ってきてくれた弟を隠れて驚かせる姉。天気図の絵を受けとり、びんに入れてふたをし、やおら踊り出す。「うんじゃかじゃかじゃか ほい じゃんじゃん/えんやかやかやか よい がんがん」‥‥
 むかしばなしに出てきそうなおはなしを換骨奪胎。しくじればしょうもない話に陥りそうなところを鮮やかに脱しているのは、姉のキャラクターと歌のリズムがなせるわざ。よくできた童話のような掌品です。(1999.10.17)

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宇宙の戦士/夙川夏樹(昼寝堂「MAGURO FACTORY 7」)

 姿を消した飼い犬を探して5日め、少女の前に変な男が現れて告げる。「彼なら今 遠い宇宙で凶悪な宇宙人と戦っています」それから1週間後、無事に帰ってきて飼い犬にえさをやりながら、少女は問いかける。「ねえ 悪い宇宙人と戦ってたの?」
 ひょっこり帰ってきた人はどこでなにをやってきたか語るけど、あるいは言葉を濁して語らないけれど、犬はなにも言わない。ただえさをほおばるのみ。あたりまえの話だけど。(1999.10.17)

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ゼレーナの涙/PLU(PLU’S98)

 タイトルはこうじゃないかもしれない。フォントが特殊でよくわかんねえのです。違ってたらごめんなさい。
 タイトルだけでなく、内容もなに描いてあるのかよくわかんない。たぶん作者の中ではつながってるのだろうけど、羅列されたコマとセリフはつなぎ目を外されて理解をこばむ。だから読み手は自分の力でコマをつなぎ、おはなしを作らないといけないのかもしれない。そのコマにセリフにイメージにひかれるものがあったなら。(1999.10.17)

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ヨタカの星(未完成版)/志賀彰(憂貧局)

 そこにいますは一人の女神、女神といってもやさしく慈愛にみちたそれではなく、奔放で自由で魅力にあふれた女神。そぞろ歩く夜の楽しさ、でも星の見えない空。キャラクターがとても魅力的です。続きは完成版で。(1999.10.17)

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徹底して純粋無垢なる1000のガラクタと化した日。/無氏名(METAL ZIGZAG「METAL ZIGZAG VER2.99」)

 壊れた世界と壊れた人間、執拗な描きこみと異様な造形。それがありがちな耽美系に堕していないのは、それを美としてとらえずただ壊れたものとして描き壊れたものとして愛すればこそだろう。ふつうの人にとっては胸くそ悪くなるしろものかもしれないけど、そこにあるのは確かに愛なのである。それがフィクションの中にとどまっているから読んでよろこんでいられるのだという限定は、忘れてはいけないにしても。(1999.10.17)

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liberation from Fujikura/藤倉和音(SELFISH GENE)

 正味30ページ。薄くて高価で、とてもきれいな本。
 単なる画集ではない。そこにはデザインも文章もふくめてひとつの「作品」を造ろうという意志が見てとれるから。アワーズに掲載されたまんがも収録して、でもそのままではなくて解体して再構成して。
 たぶん好ききらいの分かれそうな本だけど、わたしは好きです。ページを眺めて得られる豊かな情報が、快い刺激が。なおliberation=解放です。(1999.11.08)

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としごろとしこ/小田智(みりめとる)

 暖かなまなざしをベースに持ちながら、ふだんは大量の雑多な莢雑物にあふれた作者のまんが世界を、蒸留して煮詰めて結晶させた、完成されたまんが。完璧。(1999.11.08)

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外人のなり方/小田智(みりめとる)

 でもってこれはほとんど莢雑物のみでつくられたまんが。巻頭の8Pまんがはこんな絵も描けるんだ的なかわいい絵ながら、本全体のテーマが「撲殺」。ちなみに外人のなり方は、生粋の日本人がプードル犬を用意して(中略)もう1回撲殺して(中略)苦情殺到だそうな。まじめな人のブーイングが聞こえそうな本。でもこれはこれでいいのだ。(1999.11.08)

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塔・灯/やじかちなみ(薔薇とチョップ「light」)

 塔に住み着いた魔物、塔の光とひきかえに1年にいけにえ、選ばれたヨハンは天真爛漫で無邪気で能天気で悟っていて。だから魔物は彼を食えない。街のひとはヨハンを外に出さない。食べ物はない‥
 ヨハンの造形がこのまんがのすべて、と言いたいくらい。あとは絵が好み、というのもあるかな。(1999.11.08)

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花男/こがわみさき(オヨグネコ「光の泡+」)

 小惑星に住まうわけだから、そこにはけったいな住人たちがいるのだし、母ちゃんは慣れないけどわたしは慣れたし。でもその人は、人間の男の顔をしたその人は、ある日わたしの庭から生えていた。驚いてとまどって、でもやがてなじんで話をして。そしてある日いなくなって、もう会えないと思って。
 読み口のさわやかな小品。ちょっと不思議な味がして。童話みたい。(1999.11.08)

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レプリカ/伊東朔巳(渦巻蝶蝶)

 つよそうに見える人は、ほんとうにつよいのだとつい思ってしまう。それが年端もいかぬ少女でも、父から母の名で呼ばれていて自分の名も知らないで、父の気持ちを思いやるかのようにそれを受け入れて、こちらを見透かすような笑みまで浮かべれば、やっぱりそう思ってしまう。でも、ほんとうに?ほんとなんてどこにもないのかもしれないけど、でも。
 残されたものはわずかなのかもしれないけど、でも確実に存在して。かわりばえのしない日常のなかの、忘れがたい物語。(1999.11.08)

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隣星1.3パーセク/粟竹高弘(あわたけ)

 これ、「カラフル萬福星」という雑誌に連載されていたのをまとめた本なんだけど。エロマンガのふりしてごりごりのSFというこれを、いったいだれが読んでいたのか‥というとこういうの好きなひとが読んでいたんだろうなあやっぱし。このひとのまんがはいつもこういう感じで、これまで短編読んでわからんなあと思いつつまとまったの読めばわかるのかなと思ってたけどやっぱりわからんなあ。むーん‥
 というわけで、わからん部分はだれが説明してくれるわけでなし、自分で補って読むのです。ごりごりと考えて。そういう楽しみ方をする本、できる本。(1999.11.28)

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mentalgrafix1999/中治初(海聲堂本舗)

 何者かになりたいと思うのはだれしもよくあることだけど、多くの人はそのうち現実とおりあいをつけて、おさまるところにおさまっていく。残されるのはひとにぎりの「なれた」人と、なれないままなりたいと思い続ける人。たぶんなれないかもしれないのがわからないほど馬鹿ではなくて、まわりの忠告を聞き入れるほど利口ではなくて、わがままだと言われればそのとおりだと思って、でも思いを断ち切ることはできずに。
 それは肯定や否定のできるものではなく、災難だと思ってあきらめるしかない類いのことなのかもしれない。その中から世に出る人や物が確かにあるのだから。背後には数多くの屍と迷惑が置き去りにされているのだけど。(1999.11.28)

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すこやかな食卓/大西彩(すこやかな大西)

 コカバの旬は1月で、少年は鞄を食って涙を流し、魚たちはコップの底で息絶えて、作者はシェフと殴り合ってまんがを描く。シュールをばかばかしくでろでろと。ごく一部の人にとってもわかりやすくおすすめ的まんが。(1999.11.28)

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変な日/有賀忠(日本漫画党「GEKI-MAN 1999 No.3」)

 いつもの学校の授業で、やってきた先生はいつもと違う先生だった。一見して妙な先生に連れ出され、マンホールに入り地下鉄に乗り野原を歩き、やがて連れてこられた墓場。どうせ夢だし変なひとだしとへらへらしてた主人公に、先生は唐突に告げる。「あなたは‥」

 自分はじいさんばあさんになるのだと、ごく当たり前に思っているのだ。人は。わたしを含めて。明日のこともわからないというのに。(1999.11.28)

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さみしがり屋のポックリ/九紫奇寧+無氏名(METAL ZIGZAG)

 いろんな絵のかける作家さんだけど、今回のは絵本みたいでかわいらしくていい感じなのです。おはなしもお留守番の切なさをおぼえている人ならよくわかる、いい感じの話なのです、途中までは。あーあ。
 こどもったら残酷で‥(1999.12.12)

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あ/九紫奇寧+無氏名(METAL ZIGZAG)

 リバーシブル本。リバーシブル本はときどきあるけど、ラストページを共有してるのは初めて。右開きは8人兄弟の物語で8人が入り乱れてもうなにがなんだかで、そのどったんばったん物音が左開きの隣の部屋に聞こえてくる。らしい。らしい、というのはまだそこまで確かめてないから。というかこれじっくり読んだら半日かかるですぜ。24ページなのに。
 パズルみたいなまんが、でもまんが。思いついたのもえらいし実行したのもえらいけど、それをこの密度でというのがすごいです。会心作じゃないかなあ。(2000.2.20)

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ふわふわ/山名沢湖(突撃蝶々「へなチョコ」)

 ふたりでいるのはとてもしあわせだけど、ひとりでいる気持ちの良さは逃げてしまう。どっちもは、たぶん、できない。どっちつかずならできるけど。まあ、でも、いっか。そんなまんが。ひとりでいるのは好きですか?(2000.2.20)

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おはよう船長/淵(すこやかな船長)

 船長が親友と2人で核戦争滅亡的地球から月へのがれて、キャンディなめて女になった親友をむりやりはらませさせられて(これで正しい日本語なんだろうか)、生まれた子供はまっくろくろすけみたいでどんどん大きくなってやがて月全体を覆いつくして‥というはなしと、隣の部屋の前向きな友人が実は新興宗教の教祖で、それを知った船長が「僕をマインド・コントロールしてくれ!!」つってしてもらって幸せ‥という話の2本だて。船長というのはたいこ腹で思い悩み苦しむ中年男なのだ。見るからに船長な。
 描線はわりとシンプルながら、ニヒルなまんが。この内容で船長を主人公をすえたところがみそ。(2000.2.20)

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迎撃/紅茶羊羹(大深海水淵亭)

 いつものとはうって変わったダークSF。破滅後の地球が舞台で、それでも人間はなんとかがんばって‥というよくある話では決してない。救いはない。
 物語と展開される世界が、SFとして魅力的だと思う。素直になじめるというか。SF好きか救いのないはなしが好きか、どっちかなら読むが吉。どっちもならなおさら。わたしはどっちものくち。(2000.2.20)

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賢者のとおりみち/伊東朔巳(渦巻蝶蝶)

 一部ストーリーとセリフにつじつまが‥というのは実はどうでもよくって。広い空に浮かぶ雲、地平線に続く道と草原。知らない言葉を話す人。バス停といつまでたってもこないバス。これって日本じゃないよなあ。一般的には中国なのかなあ。
 こどものころにこういう国‥正確にはこういう景色のある国の都会だけど‥にいたせいなのか、この世界はなんだか気持ちがよいです。ラストも含めて、そのままで絵本になりそうなはなし。こどもにゃこんなのわからんと言う人もいるかもしれないけど、案外そうでもないもんです。(2000.2.20)

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一九九九年世界は終わる。/水原賢治(幻灯会)

 幻想的かつ映像的なまんが。その幻想も静かに夢見るものではなくて、うだる夏に見せられる白濁した幻。世界はもう終わっているのではないかという幻。
 こどものころにノストラダムスの予言に揺さぶられた世代は、どのくらいの広きにわたるのだろうか。なんということもなく7月が過ぎて、あたりまえのように今日を生きていて、それでも2000年という数字にほんのかすかな違和感を覚える、そういう世代。あるいはそういう個人の多く存在する世代。
 ほんとうは世紀末の混乱より、その後の虚脱のほうがこわいのかもしれない。ふとそんなことを思ったり。好ききらいは分かれるかもしれないけど、まじめで技巧的で意欲的なまんがです。(2000.2.20)

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花の音/夙川夏樹(昼寝堂)

 わりと正統的な少女まんが、かなと思う。絵柄は独特のままであるけれど。
 ラスト前の見開きが圧巻。人によっては手抜きの極致と怒るかもしれないけど、これは省略でしょう。坂田靖子の得意とするような。女の子と黄色以外はなにも存在しない、そういう風景。よくできた、なんということもない話。(2000.2.20)

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欠けた月/江月響(桜楓舎「MOONLIGHTER」)

 高校時代に仲良しだった少女三人。そのひとりは卒業して2年目に自殺し、その命日に残り二人が顔を合わせる。
 彼女がなぜ、なにを考えて自殺したかはわからない。残るひとりの友人は素直でなくて本音を容易に吐かなくて、なにを思っているのかよくわからない。ふたりとも大事な友達で。でもそこに「埋められないもの」があって。
 すぐに本音を語り合う間柄より、実際にはずっと多いはずの関係。友達だけど語り合えない。でも大事な友達。そういう関係しかとれない人と、そういう関係がもどかしい人と。そういうのをまんができれいにリアルにすくい取ったのは意外と少ないと思う。そういう意味でとても新鮮でもありました。(2000.2.20)

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Another Day/江月響(STRANGE ANIMAL)

 あした世界が滅びるときに‥というまんがはときどきあるけど、これはすこし違う話。あした世界は滅びないけど、わたしは死ぬ。きょう腕に生えてきたカビが、明日になれば体中に生えて。そういう話。
 朝起きると、腕にカビが生えている。街にはカビにおおわれた死体がたくさんころがっている。いったんカビが生えだすと、1日で増殖しきって命を奪う。街に出て知り合いの家を訪ねて他愛もない話をして、思いがけない約束をしてもらって、家にかえって横になる。明日のことを考えながら。
 そういう話。あくまで淡々と描かれた、最後の一日の。(2000.2.20)

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パパママボクの家/朋田のえ(郷民)

 ぼくのパパはスイスから来た人。夏のあいだはスイスにいて、冬だけ日本でママとボクと3人で暮らす。ある日、ほんとはスイスに別の嫁さんがいるなんて、学校で言われて落ち込んでたぼくに、パパは秘密を教えてくれたんだけど‥
 ネタバレ避けて伏せておくけど、一歩でも間違えばギャグマンガになるこの設定で、アットホームなおはなしを描ききった腕力はすごいと思う。はじめてのまんがということで、確かに展開上気になるところはあるけれど、それは小さなこと。いい話です。(2000.2.20)

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Winter Child/檜木和世(あまちゃづる三昧)

 たぶん、ペンは入ってないのかな。そういう意味で未完成なまんが。にもかかわらず、雪降り積む夜を描いたこのまんが、暗く深い空もほの白く光る雪も、ちゃんと見えるのだ。本来の色を持って、まるで現実のように。
 これ、完成させてください。きっちりと。きっちり完成した暁には、忘れえぬまんががひとつ増えるかもしれないと期待してしまいます。この段階でこれだけいいのだから。(2000.2.27)

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太陽特使ガガ/佐藤直大(エレキ天国)

 雨が降らなくなって一年。政府は12年ぶりに太陽特使の派遣を決定した。人類最高の名誉である特使に選ばれたのは、ぼくの隣の席の女の子だった‥
 という大きな設定だけど、まんがはほのぼのと進む。12歳の少年少女らしく、お互いの心にある風景の話などしながら。だから読むほうはそういうものかと思って読み進んで、最後に気づくのだ。それまで読み進んで来た道が突然消えて、自分が中空に立っているのを。
 基本的に突然終わる話は好きなのだけど。そういう話が好きな人なら、これは必読。傑作でしょう。(2000.2.27)

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可愛いかばんは寝せるの?/長谷川哲也(月刊とり総集編3)

 なんか、変なまんがです。屋上で会話する、(たぶん)高校生の少年と少女。少年の手には血塗りのバット。それを見て少女は、二日前に偶然見た、少年がおばさんをビール瓶で殴り倒したシーンを難じて。少年は弁解して、少女は挑発して、少年はどぎまぎして。で、結局なにもない。少女の視線の死角には撲殺死体が転がっていて、少女もたぶんそれに気づいているというに。
 変なまんがというより変な人のまんがなのかな。非日常的な状況と、日常的な会話のずれがもたらす不条理さがなんともいえない。それはさておきタイトルはどういう意味なんだろう。(2000.2.27)

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touch/白井弓子(メタ・パラダイム)

 美大が舞台。主人公には好きな同級生がいて、でも彼には彼女がいて、打ち明けられなくて。そういう苦しい気持ちをゆっくりと、ほんとにていねいに描いてます。文句なしにいいまんが。
 「世界の壊れる音は聞こえてこなかった」ラストがとても好きです。夜の静かな大学で、スケッチの音だけ聞こえてきそうで。(2000.3.5)

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