文構造

(1) 文 = (主語)+ 述語 +(文修飾語)

        主語 = 名詞句
        述語 = 動詞句
        文修飾語 = 副詞句

(2) 動詞句 = {[動詞 +(目的語)+(目的語補語)+(間接目的語)]
          または[つなぎ動詞 + 補語]}
             +(動詞修飾語)

        目的語   = 名詞句 (+ 語尾n)
        目的語補語 = 名詞句 または 形容詞句
              または 前置詞句 または 不定詞句 または 分詞句
        間接目的語 = 前置詞句
        補語    = 名詞句 または 形容詞句 または 副詞句
        動詞修飾語 = 副詞句

(3) 名詞句  = [(限定詞)+(形容詞句)+ 名詞 ]
         または 従属句

(4) 形容詞句 = [(程度詞)+ 形容詞 +(補足語)]
         または 従属句

        補足語 = 前置詞句 または 不定詞句 または 接続詞句

(5) 副詞句  = [(程度詞)+ 副詞  +(補足語)]
         または 従属句

        補足語 = 前置詞句 または 不定詞句 または 接続詞句

(6) 従属句  =   前置詞句
         または 不定詞句
         または 分詞句
         または 接続詞句
         または 疑問・関係詞句

    前置詞句    = 前置詞 + 名詞句
    不定詞句    = 動詞句の動詞を不定詞語尾にする
    分詞句     = 動詞句の動詞を分詞語尾にする
    接続詞句    = 接続詞 + [ 文 または 不定詞句 または 名詞句 ]
    疑問・関係詞句 = 疑問・関係詞 +[ 文 または 不定詞句 または 名詞句 ]

(7) 相対句 : 先行詞 ・・・ 従属句

(8) その他
   1) de 抽象名詞  −> 形容詞句
   2) 副詞 da 名詞 −> 名詞句
   3) 前置詞 + 前置詞−> 前置詞
   4) 前置詞 + 副詞 −> 副詞句
   5) 副詞 + 前置詞 −> 前置詞
   6) 前置詞 + 接続詞−> 接続詞
   7) 副詞 + 接続詞 −> 接続詞
   8) 名詞 + 語尾n −> 前置詞句
      副詞 + 語尾n −> 副詞句
   9) la + 形容詞 または 分詞 −> 名詞句
  10) 複数の語の集まり −> 副詞句

(1)文

文 = (主語)+ 述語 +(文修飾語)

    主語 = 名詞句
    述語 = 動詞句
    文修飾語 = 副詞句
・文は主語と述語からなる。

・主語は名詞句。

・述語は動詞句。

・天候、寒暖、日付、時間などの非人称のものは主語が無い。
  例)Estas malvarme. 寒い。

・副詞句が文全体を修飾することがある。

(2)動詞句

動詞句 = {[動詞 +(目的語)+(目的語補語)+(間接目的語)]
      または[つなぎ動詞 + 補語]}
         +(動詞修飾語)

    目的語   = 名詞句 (+ 語尾n)
    目的語補語 = 名詞句 または 形容詞句
          または 前置詞句 または 不定詞句 または 分詞句
    間接目的語 = 前置詞句
    補語    = 名詞句 または 形容詞句 または 副詞句
    動詞修飾語 = 副詞句
・動詞には法・時制の語尾をつける。

  ・直説法
    ・現在時制は語尾asをつける。
      例)mi faras.(私がする)
    ・過去時制は語尾isをつける。
      例)li faris.(彼がした)
    ・未来時制は語尾osをつける。
      例)ili faros.(彼等がするだろう)
  ・仮定法は語尾usをつける。
    例)s^i farus.(彼女がすれば)
  ・意志法は語尾uをつける。
    例)ni faru.(私たちがしよう)

・動詞句には以下の種類がある。

  1.動詞
  2.動詞+目的語
  3.動詞+目的語+間接目的語
  4.動詞+目的語+目的語補語
  5.動詞+間接目的語
  6.つなぎ動詞+補語

・目的語

  名詞の場合、対格語尾nが付く。
  不定詞句、接続詞句の場合、対格語尾nはつかない。

・間接目的語

  前置詞を伴う目的語。
  例)Mi donis al li pomon. (私は彼にりんごを与えた)の al li (彼に)

・つなぎ動詞

  名詞や形容詞を補語に持つ動詞のことをつなぎ動詞という。
  存在や状態を述べるために名詞や形容詞を述語にしたいが、
  そのままでは、述語になれないので、つなぎ動詞(esti等)を使う。

・補語

  意味上の述語となる名詞や形容詞。
  主語が無いときや、主語が不定詞句や接続詞句の場合、
  形容詞の代わりに副詞を使う。

・目的語補語

  つなぎ動詞の補語とは役割が違う。
  動詞のあとに続く目的語+目的語補語が1つの文になっている。
  意味上、目的語が主語、目的語補語が述語になっている。
  目的語補語部分には、名詞、形容詞、前置詞句、不定詞句、分詞句がくる。
  目的語補語は正式な述語ではないので名詞や形容詞がきた場合には
  estasは要らない。

  ・目的語補語部分が名詞の場合
    La patrino nomis la bebon Taro.
    (母親はその赤ちゃんをタロウと名づけた。)
    「目的語+目的語補語」の部分が la bebon estas Taro という
    文にとらえる事ができる。

  ・目的語補語部分が形容詞の場合
    Tio faris min felic^a.(そのことは私を幸せにした。)
    「目的語+目的語補語」の部分が mi estas felic^a という
    文にとらえる事ができる。

  ・目的語補語部分が不定詞句の場合
    Mi vidis la turon fali.(私は塔が倒れるのを見た。)
    「目的語+目的語補語」の部分が la turon falas という
    文にとらえる事ができる。

・「動詞」の例
  Mi sidas.(私は座っている。)

・「動詞+目的語」の例
  Mi legas libron.(私は本を読む)

・「動詞+目的語+間接目的語」の例

  目的語は語尾にnが付き、間接目的語は前置詞が付く。

  doni 物 al 人   ((人)に(物)を与える)
  rakonti 物 al 人  ((人)に(物)を告げる)
  raporti 物 al 人  ((人)に(物)を告げる)
  prunti 物 al 人  ((人)に(物)を貸す)
  sendi 物 al 人   ((人)に(物)を送る)
  montri 物 al 人  ((人)に(物)を示す)
  transdoni 物 al 人 ((人)に(物)を渡す)
  pagi 物 al 人   ((人)に(物)を支払う)
  oferti 物 al 人  ((人)に(物)を提供する)
  promesi 物 al 人  ((人)に(物)を約束する)
  alporti 物 al 人  ((人)に(物)を持ってくる)

  ac^eti 物 por 人  ((人)のために(物)を買う)
  fari 物 por 人   ((人)のために(物)を作る)
  fari 事 por 人   ((人)のために(事)をしてやる)
  akiri 物 por 人  ((人)のために(物)を得る)
  postlasi 物 por 人 ((人)のために(物)を残す)
  mendi 物 por 人  ((人)のために(物)を注文する)
  elekti 物 por 人  ((人)のために(物)を選ぶ)
  kuiri 物 por 人  ((人)のために(物)を料理する)

  danki 人 pro 事  ((人)に(事)を感謝する)
  demandi 人 pri 事 ((人)に(事)をたずねる)
  respondi 人 pri 事 ((人)に(事)を答える)
  envii 人 pri 事  ((人)に(事)をうらやむ)
  pardoni 人 pri 事 ((人)に(事)を赦す)
  informi 人 pri 事 ((人)に(事)を伝える)
  interesi 人 pri 事 ((人)に(事)の興味を持たせる)

  preferi A al B  (BよりAを好む)

・「動詞+目的語+目的語補語」の例

  目的語と目的語補語が意味上の主語、述語の関係にある。

  nomi ... ---   (...を---と名づける)
  elekti ... ---  (...を---に選ぶ)
  konsideri ... --- (...を---と思う)
  opini ... ---   (...を---と思う)
  kredi ... ---   (...を---と信じる)
  senti ... ---   (...を---と感じる)
  trovi ... ---   (...を---とわかる)
  remarki ... ---  (...を---とわかる)
  teni ... ---   (...を---にしておく)
  fari ... ---   (...を---にする)
  vidi ... ---   (...が---するのを見る)
  au^di ... ---   (...が---するのを聞く
  igi ... ---    (...に---させる)
  lasi ... ---   (...に自由に---させる)
  helpi ... ---   (...が---するのを手伝う)
  g^eni ... ---   (...が---するのをじゃまする)

・「動詞+間接目的語」の例

  間接目的語(前置詞付きの目的語)だけをとる動詞がある。

  alig^i  al ...    (...に申し込む)
  c^agrenig^i  pri ... (...を悩む)
  fieri  pri ...    (...を自慢する)
  konatig^i  kun ...  (...と知り合う)
  konsisti  en ...   (...に本質がある)
  partopreni en ...   (...に参加する)
  suferi  pro ...    (...で苦しむ)
  aparteni  al ...   (...に属する)
  dependi  de ...    (...に依存する)
  interesig^i  pri ... (...に興味を持つ)
  konsisti  el ...   (...から成り立つ)
  manki  al ...     (...に欠けている)
  temi  pri ...     (...を話題にする)
  edzig^i  al ...    (...と結婚する(夫になる))
  edzinig^i  al ...   (...と結婚する(妻になる))
  rekontig^i  kun ...  (...と出会う)

  物が主語になす動詞もある。

  物 plac^i al 人  ((物)が(人)のお気に入りである)
  物 necesi por 人 ((人)には(物)が必要である)

・「つなぎ動詞+補語+(補足語)」の例

  esti ...  (...である)
  s^ajni ... (...のようである)
  aperi ...  (...のようである)
  farig^i ... (...になる)
  ig^i ...  (...になる)
  aspekti ... (...に見える)
  resti ...  (...の状態にとどまる)

  形容詞を補足する前置詞句、不定詞句、接続詞句をとる場合

  esti favora al ...   (...に好意的だ)
  esti diferenca de ... (...と違う)
  esti kapabla por ...  (...する能力がある)
  esti certa pri ...   (...に確信がある)
  esti facila por ...i  (...しやすい)
  esti kapabla ...i   (...する能力がある)
  esti preta ...i    (...する準備ができている)
  esti ema ...i     (...しがちだ)
  esti g^oja , ke ...  (...ことをうれしく思う)
  esti certa , ke ...  (...ことに確信がある)

・副詞句が動詞を修飾することがある。

(3)名詞句

名詞句  = [(限定詞)+(形容詞句)+ 名詞 ]
     または 従属句

・ここでいう名詞には、語尾に -o が付く普通の名詞のほかに、
 人称代名詞、語尾 -o,-u が付く相関詞が含まれる。

・限定詞

  冠詞(la)、語尾 -u,-es が付く相関詞(tiu 等)、代名詞の所有形(mia 等)は
  限定詞と呼ばれる。
  名詞を特定のものに限定する働きがある。

・形容詞句が名詞を修飾する。

・従属句も名詞的な意味をもつことがある。下記6参照。

(4)形容詞句(5)副詞句

形容詞句 = [(程度詞)+ 形容詞 +(補足語)]
     または 従属句

副詞句  = [(程度詞)+ 副詞  +(補足語)]
     または 従属句

    補足語 = 前置詞句 または 不定詞句 または 接続詞句

・ここでいう形容詞には、語尾に -a が付く普通の形容詞のほかに、
 数詞、語尾 -a が付く相関詞が含まれる。

・ここでいう副詞には、語尾に -e が付く普通の副詞のほかに、
 本来副詞、語尾 -e, -am, -al, -el, -om が付く相関詞が含まれる。

・程度詞

  副詞は主に動詞を修飾するものだが、形容詞や副詞も修飾するものがある。
  これを程度詞と呼ぶ。程度詞には次のものがある。

    plej, pli, tre, tro, ju pli, des pli, 語尾 -el, -om が付く相関詞

・本来副詞のうち、次のものは、形容詞的に名詞を修飾するが、
 つなぎ動詞の補語にならない。

    ne, ankau^, nur, ec^, almenau^

・形容詞の目的語

  形容詞は直接に目的語を持つことができないので、補足語という形で目的語を持つ。
  前置詞句、不定詞句、接続詞句が補足語になる。
  例)esti certa pri ...     (...に確信がある)
    esti kapabla ...-i     (...する能力がある)
    esti g^oja , ke ...    (...ことをうれしく思う)

・特別な働きをする副詞

  疑問文に関するものの例
    c^u(〜か?) 
    C^u vi estas infano?(あなたは子供か。)
    jes(はい) 
    ne(〜でない)

  名詞も修飾するもの例
    nur(〜だけ)
    Li estas nur infano.(彼はただの子供だ。)

  間投詞的なもの例
    jen(そらここに)
    Jen estas libro.(ほら、本がある。)

  その他の例
    c^i(近接を示す) 
    tiu(あの) > tiu c^i(この)

・従属句も形容詞的、副詞的な意味をもつことがある。下記6参照。

(6)従属句

従属句  =   前置詞句
     または 不定詞句
     または 分詞句
     または 接続詞句
     または 疑問・関係詞句

前置詞句    = 前置詞 + 名詞句
不定詞句    = 動詞句の動詞を不定詞語尾にする
分詞句     = 動詞句の動詞を分詞語尾にする
接続詞句    = 接続詞 + [ 文 または 不定詞句 または 名詞句 ]
疑問・関係詞句 = 疑問・関係詞 +[ 文 または 不定詞句 または 名詞句 ]

・従属句とは、文の中に文を持たせたりする役割がある。
 また、語と語、語と文、文と文をつなげる働きを持っている。

・従属句は名詞的、形容詞的、副詞的な役割を演じる。

・従属句は前置詞、不定詞、分詞、接続詞、疑問・関係詞によって作られる。

・対応表

       前置詞句 不定詞句 分詞句 接続詞句 疑問・関係詞句
  名詞句   ×    ○    ○   ○    ○
  形容詞句  ○    ○    ○   ○    ○
  副詞句   ○    ○    ○   ○    ○

・前置詞句

  前置詞は、名詞で他の語を修飾したい場合に、
  その名詞の前に置いて用いる。
  前置詞句は形容詞的、副詞的に他の語を修飾する。

  ・形容詞的な前置詞句

    例)de(〜の)
      G^i estas libro de Sato.(これは佐藤の本だ。)

  ・副詞的な前置詞句

    例)al(〜へ)
      Li iras al lernejo.(彼は学校に行く。)

・不定詞句

  不定詞とは動詞から法・時制の要素を取り去った形。
  不定詞は通常の動詞と同様に目的語などを持つことができる。
  動詞の語尾をiにする。
  不定詞は文の述語とはならずに、文の中で、名詞的、形容詞的、副詞的な役割をする。

  ・名詞的な不定詞句

    例)ludas(演奏する) > ludi(演奏すること)
      Li amas ludi pianon.(彼はピアノを弾くことが好きだ。)

  ・形容詞的な不定詞句

    エスペラントの不定詞には原則として形容詞用法はないが、
    同格として、名詞を修飾することができる。(〜するという〜)
    同格とは名詞や名詞句が名詞を修飾すること。

    例)komprenas(理解する)> kompreni(理解する〜)
      la kapablo kompreni vian ordonon
      (あなたの命じることを理解する能力)

  ・副詞的な不定詞句

    エスペラントの不定詞には原則として副詞用法はないが、
    移動を表す iri, veni, kuri など動詞を補足する語になることがある。

    例)ac^etas(買う)> ac^eti(買いに)
      Mi iris ac^eti.(私は買い物に行った。)

    前置詞 por を不定詞の前に付けることによって、「〜するための」
    「〜するために」形容詞用法、副詞用法の意味を作ることができる。

    例)Mi rajdis la trajnon por iri al S^inj^uku.
      私は新宿に行く列車に乗った。

  ・不定詞句の意味上の主語は、それが属している文の主語、目的語、前置詞を伴った
   名詞のどれかである。

    例)不定詞句の意味上の主語が、属している文の主語の場合
        Li amas ludi pianon.(彼はピアノを弾くことが好きだ)
        ~~      ~~~~~~~~~~~
      不定詞句の意味上の主語が、属している文の目的語の場合
        Mi vidis lin ludi pianon.(私は彼がピアノを弾くのを見た)
                 ~~~ ~~~~~~~~~~~
      不定詞句の意味上の主語が、属している文の前置詞句の場合
        Estas malfacile por mi ludi pianon.
                        ~~~~~~ ~~~~~~~~~~~
        (私にとってピアノを弾くことは難しい)
・分詞句

  分詞は不定詞と同様に、文の中で、名詞的、形容詞的、副詞的な役割をする。
  不定詞と違って時間の要素を持っている。
  エスペラントでは、6種類の分詞があり、それぞれ、名詞、形容詞、副詞の
  語尾を付けることができる。

    現在能動分詞 −ant−
    現在受動分詞 −at−
    過去能動分詞 −int−
    過去受動分詞 −it−
    未来能動分詞 −ont−
    未来受動分詞 −ot−

  ・形容詞的な分詞句

    動詞の語尾をantaにすることで分詞形容詞を作る。

    例)kuras(走る) > kuranta(走っている〜)
      Mi vidis viron kuranta en la parko.
      (私は公園で走っている男の人を見ました。)

  ・副詞的な分詞句

    動詞の語尾をanteにすることで分詞副詞を作る。

    例)sidas(座っている) > sidante(座って)
      Mi legis libron, sidante en la parko.
      (公園で座って、私は本を読んだ。)

・接続詞句

  従属接続詞は、文全体を他の文の名詞的、副詞的な語として用いたい場合、
  その文の前に置いて用いる。

  ・名詞的な接続詞句

    例)ke(〜すること)
      Ni scias ke la terglobo estas bula.
      (私たちは地球が青いことを知っている。)

  ・副詞的な接続詞句

    例)se(もし〜なら)
      Mi ne iros, se pluvos.
      (もし雨が降るなら、私は行かないでしょう。)

・疑問詞・関係詞句

  疑問詞・関係詞句の中では、主文の対象となる語と、
  従属文の疑問詞・関係詞が同一のものをあらわす。
  主文の対象となる語のことを先行詞という。
  主文の先行詞を従属文の疑問詞・関係詞が代名詞(代形容詞、代副詞)の
  ようにして受けとり、その先行詞の詳細な説明を従属文の中で行なう。
  関係詞とは、代名詞(代形容詞、代副詞)と接続詞を兼ねたものと
  考えることができる。
  先行詞は省略される場合が多い。
  以下の例では、省略された先行詞を括弧の語で補って説明する。

  ・名詞的な疑問詞句(間接疑問文)

    例)kiam(いつ)
      Li scias (tion), kiam s^i s^telis monon.
      (彼は彼女がいつ金を盗んだのか知っている。)

    主文の先行詞 tio を 従属文が疑問詞 kiam で受け詳細を説明する。
    「彼は tio(何か)を知っていて、それは kiam(何かの時)であり、
    その時とは彼女がお金を盗んだ時」。

  ・形容詞的な関係詞句

    例)kiu(〜する〜)
      Mi vidis viron, kiu kuris en la parko.
      (私は公園で走っている男を見ました。)

    主文の先行詞 viro を 従属文が疑問詞 kiu で受け詳細を説明する。
    「私は viro(男)を見て、それは kiu(誰か)というと、
    公園で走っていた人」。

  ・副詞的な関係詞句

    例)kiam(〜するとき)
      Mi dormis (tiam), kiam li venis.
      (彼が来たとき、私は寝ていました。)

    主文の先行詞 tiam を 従属文が疑問詞 kiam で受け詳細を説明する。
    「私は tiam(ある時に)眠っていて、それは kiam(何かの時に)であり、
    その時とは彼が来た時」。

(7)相対句

相対句 : 先行詞 ・・・ 従属句
相対句とは先行詞の詳細内容がその語の後ろの従属句に説明されている
というものである。

特に関係詞の文がこれに相当する。
関係詞の文では、2つの文が先行詞と関係詞で結ばれている。
先行詞を含む文と関係詞を含む文があり、
先行詞の詳細内容を、関係詞を含む文が説明する。
先行詞には主に普通名詞や指示詞(tiu tio等)が用いられる。
日本語の場合、指示詞の表す内容は、指示詞が出てくる前しかない。
エスペラントや英語の場合、指示詞の後ろに出てくる場合がある。
これは、日本語にはない、ヨーロッパの言葉の大きな特徴である。

次の文は一般的な関係詞の文である。

  Mi vidis tiun , kiu kuris en parko.
  (私は公園で走っている人を見ました。)

  Mi vidis viron , kiu kuris en parko.
  (私は公園で走っている男を見ました。)

tiu, viro が先行詞、kiuが関係詞である。
tiu は「その人」という指示詞だが、
それが指している内容が kiu 以降の文に表されている。

比較文も関係詞文の一つの形である。

  Mi estas tiom alta, kiom li. (私は彼と同じくらい背が高い。)

まず先行詞 tiom で、「それくらい高い」と言っておいて、
「それくらい」の具体的内容を、その後の kiom の句で
「彼くらい」と述べている。

また次のような接続詞 kiam も関係詞文と考えることができる。

  Mi dormis (tiam), kiam li venis.
  (彼が来たとき、私は寝ていました。)

つまり先行詞 tiam が省略されていると考える。

接続詞として使われる関係詞には次のものがある。

  kiam(〜する時)
  kie (〜する所に)
  kiel(〜するように)
  kiom(〜するだけ)

間接疑問文も関係詞文と考えることがでる。

  Mi scias (tion), kiam li venis.
  (彼がいつ来たか、私は知っている。)

先行詞 tio が省略されていると考える。

エスペラントで便利なのは、接続詞か間接疑問文かどちらかあいまいなときに、
省略されていいる先行詞を補うことで、あいまいさを解決できる。
上の例で言うと、tiam だと接続詞、tion だと間接疑問文だとわかる。

相対句は関係詞文以外もある。
従属句に ke, c^u の文も含むと考えると、
次の文も相対句の文と見なすことができる。

  Mi estis tiom laca, ke mi ne iris al lernejo.
  (私は学校に行くことができなかったほど、疲れていた。)

tiom が指す詳細を ke 以降で説明している。
上の文は次ように直訳できる。

  私はその程度疲れていた。
  「その程度」とは「学校に行けない程度」だった。

相対句の文には次のようなものがある。

  先行詞      従属句
  tia ...     kia --- (---のような...だ)
  tia ...     ke ---  (---するような...だ)
  tial ...    kial ---(---なので...だ)
  tial ...    ke ---  (---するので...だ)
  tial        ke ---  (---するので)
  tiel ...    kiel ---(---のように...だ)
  (tiel)      kiel ---(---のように)
  tiel ...    ke ---  (---するように...だ)
  tiel        ke ---  (---するように)
  tiom ...    kiom ---(---ほど...だ)
  (tiom)      kiom ---(---ほど)
  tiom ...    ke ---  (---するほど...だ)
  tiom        ke ---  (---するほど)
  la sama ... kiel ---(---と同じ...だ)

tio ... ke ... も相対句の文に当てはめることができる。

  Tio estas malfacila, ke mi uzas komputilo.
  (私がコンピュータを使うのは難しい。)

さらに次のようなものも相対句に含まれる。

  先行詞      従属句
  pli ...     ol ---    (---よりは、もっと...だ)
  tro ...     -i ---    (---するには、あまりに...すぎる)
  des pli ... ju pli ---(---であるほど、もっと...だ)

(8)その他

1) de 抽象名詞  −> 形容詞句

  「de 名詞句」は形容詞的意味を持つ
  例)G^i estas de bona kvalito.(bonkvalita)(それは良い品質だ。)

2) 副詞 da 名詞 −> 名詞句

  「副詞 da 名詞」は名詞的意味を持つ
  例)Kelke da serpentoj 何匹かのヘビ

3) 前置詞 + 前置詞−> 前置詞

  de, el, g^is とほかの前置詞を組み合わせて、
  移動の起点、到達点を表す前置詞句を構成する。
  例)el sub 〜のしたから

4) 前置詞 + 副詞 −> 副詞句

  de, el と場所を表す副詞を組み合わせて、
  移動の起点を表す副詞句を構成する。
  例)de malproksime 遠くから

5) 副詞 + 前置詞 −> 前置詞

  副詞と前置詞を組み合わせて、前置詞を構成する。
  例)fine de 〜の終わりに

6) 前置詞 + 接続詞−> 接続詞

  前置詞と接続詞を組み合わせて、接続詞を構成する。
  例)antau^ ol 〜する前に
    post kiam 〜した後で
    de kiam 〜したときから
    por ke 〜するために
    krom ke 〜するほかに
    krom se 〜する場合を除いては

7) 副詞 + 接続詞 −> 接続詞

  副詞と接続詞を組み合わせて、接続詞を構成する。
  例)tuj kiam 〜するとすぐ
    nun kiam 今や〜したからには
    c^iufoje kiam 〜するたびに
    escepte ke 〜するほかに
    escepte se 〜する場合を除いては

8) 名詞 + 語尾n −> 前置詞句
   副詞 + 語尾n −> 副詞句

  語尾nの特別な使いかた。

  ・前置詞 al の代わり。
    例)Mi iris al la lernejo. -> Mi iris la lernejon.
      私は学校へ行った。

  ・前置詞 dum の代わり。(期間の長さ)
    例)Mi lernas Esperanton dum 3 monatoj. 
     ->Mi lernas Esperanton 3 monatojn.
      私はエスペラントを3ヶ月間学んでいる。

  ・前置詞 en の代わり。(日付)
    例)Taro iris al Ameriko en la 22a de januaro.
     ->Taro iris al Ameriko la 22an de januaro.
      タロウは1月22日にアメリカへ行った。

  ・前置詞 je の代わり。(関係、時刻、回数、数量)
    例)S^i kredas je dio.
     ->S^i kredas dion.
      彼女は神を信じている。

  ・場所を表す副詞に語尾nをつけることによって、
   その場所への移動を表す副詞句になる。
    例)hejmen 家へ
      kien どこへ

9) la + 形容詞 または 分詞 −> 名詞句

  形容詞にlaをつけると名詞的な意味を持つ。
  例)la mia  私のもの
  例)la morta 死者

10) 複数の語の集まり −> 副詞句

  複数の語の集まりで副詞的な意味を持つことがある。
  例)unu al la alia お互いに
    mano en mano 手に手をとって

文の変形

・一般的な倒置の文

  強調したい語を文の先頭に持っていく。

  例)Libron legas li. 本だよ、彼が読んでいるのは。

・疑問文・関係代名詞文

  質問したい・関係させたい語を疑問・関係詞にして、文の先頭に持っていく。
  文全体を質問したい場合は、文の先頭に c^u を置く。

  例)C^u li legas libron. 彼は本を読みますか。
    Kion li legas. 彼は何を読みますか。
    Tio estas libro, kiun li legas. それは彼が読んでいる本です。

・受身文・複合時制文

  述語動詞を分詞形容詞にし、estiを前に置き、述語動詞の持っていた法・時制の
  語尾をestiに付ける。
  受身文の行為者は de という前置詞で示される。

  例)Li estas leganta libron. 彼は本を読んでいる。
    Libro estas legata de li. 本は彼に読まれている。

・命令文

  主語が2人称の場合は、主語が省略される。

  例)Legu libron. 本を読みさい。

・感嘆文

  強調したい語の前に疑問・関係詞を置き、文の先頭に持っていく。

  例)Kian bonan libron li legas!
     なんて良い本を彼は読んでいるんだろう。
    Kiel bona la libro estas!
     なんて良いんだ、この本は。

補足事項

品詞について

ここで用いられる品詞の分類と、エスペラントの標準の品詞の分類が、
少し違うので、ここで対応表をつくった。
縦が標準の分類、横はここでの分類。
  名詞 動詞 限定詞 形容詞 程度詞 副詞 前置詞 接続詞 疑問・関係詞 間投詞
決まった語尾を持つもの 名詞                  
動詞                  
形容詞                  
派生副詞                  
決まった語尾を持たないもの 人称代名詞   所有形(-a)              
冠詞                  
数詞                  
相関詞 -o,-u が付くもの   -u,-es が付くもの -a が付くもの -el,-om が付くもの -e,-am,-al,-el,-om が付くもの     ki-で始まるもの  
本来副詞         plej,pli,tre,tro        
前置詞                  
接続詞                  
間投詞                  
等位接続詞について

接続詞には、等位接続詞と従属接続詞の2つのものがある。

従属接続詞は、従属句のところで説明したが、文・句・語を主従関係で
結びつけ、従属句をつくる。次のものがある。

  ol(〜よりも)
  c^ar(〜だから)
  ke(〜ということ)
  se(〜ならば)
  kvankam(〜だけれども)

一方、等位接続詞は文・句・語を対等な関係で結びつける。
次のものがある。

  kaj(〜と〜、そして)
  au^(〜か〜、または)
  nek(〜でもない)
  sed(しかし)
助動詞について

エスペラントには助動詞がない。
英語の助動詞に相当するものは、次の3つのいずれかに当てはまる。

1.動詞の語尾

  未来を表す場合、英語では will を使うが、
  エスペラントでは、動詞の語尾を -os にする。
    Estos pluvo.(雨が降るでしょう。 It will be rain.)

  意志を表す場合、英語では shall を使うが、
  エスペラントでは、動詞の語尾を -u にする。
    C^u ni dancu?(踊りましょうか。 Shall we dance?)

  仮定を表す場合、英語では would 等を使うが、
  エスペラントでは、動詞の語尾を -us にする。
    Se mi estus juna, mi irus kun vi.
    (私が若ければ、あなたと一緒に行くのだが。
     If I were young, I would go with you.

2.動詞+不定詞

  可能を表す場合、povi を用いる。
    Mi povas nag^i.(私は泳ぐことができる。 I can swim.)

  断定、義務す場合、devi を用いる。
    Mi devas iri tien.
    (私はそこへ行かなければなりません。
     I must go there.)

3.esti+分詞形容詞

  受け身の文を作る時は esti を前に置き、
  動詞の語尾を受動分詞の形容詞 -ata の形にする。
    Mi estis vidata de tiu homo. 
    (私はあの人に見られた。
     I was seen by that man.)
間投詞について

  間投詞とは感動、応答、呼掛けを表す語である。
  また主語、述語、修飾語となることがなく、
  他の語に修飾されることもない。
  つまり他の語と文法上の関連を持たない品詞である。

  次のようなものがある。
    ha(ああ)ho(まあ)ve(ああ)u^a(ワァ)fi(チェッ)
    uf(ふう)fm(うーむ)ba(へえ、まさか)
    he(おーい)hej(おーい)nu(さて)
    adiau^(さようなら)bis(アンコール)hura(万歳)

  本来は間投詞でないものも、間投詞的に使われることがある。

  人に対する呼びかけ

    Ludoviko, donu al mi panon.
    ルドビク、私にパンを下さい。

  あいさつ

    Bonan matenon!
    おはよう。

  応答の ne, jes

    Ne, vi eraras.
    いいえ、あなたは間違っている。

  応答的な副詞

    Tre volonte, mia bona.
    喜んで。私の良い人よ。
「〜にある」という意味の esti

  esti は、名詞や形容詞を伴って「〜は〜だ」ということを表わすが、
  その他にも、esti は、場所を表す副詞句を伴って、「〜は〜にある」と
  いうことを表すことができる。

    La libro estas sur la tablo.
    その本はテーブルの上にある。

    Jen estas pomo.
    ほらここに、リンゴがある。

    Kie estas la libro kaj krajono?
    どこに、その本と鉛筆があるか?

  Jen や kie のときには、主語が esti の後に来るのが、一般的である。
名詞の省略

    形容詞の後の名詞を省略することがある。

    El s^iaj multaj infanoj unuj estas bonaj 
    kaj aliaj estas malbonaj.
    彼女の多くの子供たちの中で、ある者は良くて、
    他の者は悪い。

    unuj homoj(ある人々), aliaj homoj(他の人々)の
    homoj が省略されている。

    En tiuj c^i boteletoj sin trovas diversaj acidoj: 
    vinagro, sulfuracido, azotacido kaj aliaj.
    これらの小びんの中に様々な酸がある。
    酢、硫酸、硝酸、その他。

    aliaj objektoj(他の物)の objektoj が省略されている。
限定詞の省略

  la, mia などの限定詞は反復の省略がよく行なわれる。

    mia frato kaj fratino estas la bogefratoj de mia edzino.
    私の兄弟と姉妹は私の妻の義兄弟姉妹である。

    mia frato kaj fratino の mia が複数になっていないのは、
    fratino の前のmia が省略されていると考える。

    la hundo kaj kato その犬とその猫
数詞の名詞的用法

  数詞は形容詞的に使われるのが普通だが、
  次のように名詞的に使われることがある。

    Kvin kaj sep faras dek du.
    5と7で12になる。

    この場合、目的語になっても語尾nは付かない。
hodiau^, hierau^, morgau^ の名詞的用法

    hodiau^(今日), hierau^(昨日), morgau^(明日)は
    名詞ではなく、副詞である。
    形容詞的に使われる場合は、語尾aを付けて、hodiau^a
    (今日の)という形にする。
    しかし、名詞的に使う場合は、語尾oを付けるよりも、
    そのままで使うことが一般的である。

    Hodiau~ estas la dudek-sepa (tago) de Marto.
    今日は、3月27日だ。

    Hodiau~ estas bela frosta vetero, 
    今日は美しい厳寒な天候である。

    C^u hodiau~ estas varme au~ malvarme?
    今日は暖かいか寒いか。

    hodiau^ は名詞的に使われても、やはり副詞なので、
    esti に続く語は形容詞でなく、副詞になる。
同格修飾

  同格修飾とは、名詞が名詞を修飾することである。
  先の名詞(句)の詳細説明を後の名詞(句)が行う。
  「〜という〜」という感じ。

    Eestas plej necesa antau^ c^io unu kondic^o:
    la ekzistado de Fundamento de la lingvo.
    何より先に、言語の基礎の存在という
    一つの条件がもっとも必要である。

    unu kondic^o を 後の名詞句が詳しく説明しています。

    La sufikso "um" ne havas difinitan signifon.
    "um" という接尾辞は決まった意味を持たない。

    sufikso を "um" が詳しく説明しています。

  下の2つは普通名詞、固有名詞のパターン。

    al Lia Grafa Mos^to, Sinjoro P. 
    伯爵閣下、P様へ

    la monto Fuj^i
    富士山

  下は抽象名詞、不定詞のパターン。

    la kapablo kompreni vian ordonon
    あなたの命じることを理解するという能力

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エスペラント、英語、日本語の文の共通構造


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