磁力の正体

前回の記事からの続き。

・前回の記事で、「磁場とは運動する電荷の作る電場の歪み」と述べた。
  ・この歪みは、どのようにできるのだろうか。
  ・この歪みは、アインシュタインの特殊相対性理論で説明される。

・特殊相対性理論では、運動する物体は長さが短くなる。
  (短くなる割合は下記のローレンツ収縮を参照)
  ・そのことによって、電気力線の密度が大きくなる。
  ・これが電場の歪みをもたらす原因である。

・平行した導線で、同じ向きに同じ電流を流すと、
 導線同士が引き合うという、例と使って説明する。
  ・これらは、電流を流すことによって生じた、磁力によって
   力が起きたと説明されるものである。
   これを今回、電気力だけで説明する。
  ・片方の導線を自分、もう片方の導線を相手とする。
  ・自分側の動いている電子の視点でみると、
   相手側の電子は、同じ速度で動いているので、静止して見える。
   なので、長さの収縮はない。
  ・相手側の陽子は静止しているのだが、動いている電子の視点
   では、反対方向に動いているので、長さの収縮が起こり、
   プラスの電気力線の密度が大きくなる。
  ・よって、マイナスの電気より、プラスの電気が大きくなり、
   相手側の導線がプラスに帯電しているように見える。
  ・これによって、自分側の電子が、相手側の導線に引き寄せられる。

・平行した導線で、反対向きに電流を流すと、
 導線同士が反発する例も説明しよう。
  ・自分側の動いている電子の視点でみると、
   相手側の電子は、反対方向に2倍速で動いているので、
   長さの収縮は2倍速分起こる。
   2倍速分のマイナスの電気が強くなる。
  ・相手側の陽子はが、反対方向に1倍速で動いているので、
   長さの収縮が1倍速分起こり、
   1倍速分のプラスの電気が強くなる。
  ・よって、プラスの電気より、マイナスの電気が大きくなり、
   相手側の導線がマイナスに帯電しているように見える。
  ・これによって、自分側の電子が、相手側の導線と反発する。

・ローレンツ収縮
  ・収縮率 = √(1-v2/c2)
     v:速度 c:光速
     光の速度の10%で、0.99
     光の速度の50%で、0.89
     光の速度の80%で、0.6
     光の速度の90%で、0.44
     光の速度の99%で、0.14

・ローレンツ収縮による補正
  ・電線中の電子の平均速度はだいたい0.01cm/sである。
   従って、ローレンツ収縮による補正は10-25くらいになる。
   これは無視できるほどの小さな補正のように思える。
  ・しかし、2つの鉄1kgの電子だけ取り出してかたまりにして、
   それぞれ1メートル離して置いたときのクーロン力は、
   1.82×1025 N もある。
   (これは地球の質量を3m/s2で加速できる力)
  ・普段は、電子と陽子の電荷が打ち消し合って、
   この大きな値は表に出て来ない。
  ・しかし、電子が運動することによって、
   ローレンツ収縮の微々たる補正の差が
   無視できない量で現れてくる。

・永久磁石
  ・電磁石の磁力の生じる仕組みは上記の通りだが、
   永久磁石の磁力の生じる仕組みは違っている。
   永久磁石の中で、電子が円電流を起こしているのではない。
  ・永久磁石の磁力は、電子そのもの磁石的性質から来る。
   この性質をスピンという。

・鉄はなぜ磁石になるのか。
  ・鉄の原子の電子の3d軌道には5つの軌道がある。
   各軌道には上下スピンの2つ1組の電子が入る。
  ・鉄は、その1つの軌道に上下のスピンの電子の組が入り、
   のこり4つの軌道には1つのスピンの電子しか入っていない。
   4つのスピンの方向がそろうと強い磁石になる。
  ・一方、銅は5つ全ての軌道に上下のスピンの電子の組が
   入っているので、全てのスピンの方向が打ち消し合い、
   磁力を帯びない。

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