光が曲がる現象(屈折と回折)

・光は基本的に直進する性質がある。
・しかし、ときどき曲がる現象が見られる。
 屈折と回折という2種類の現象がある。

・屈折
  ・光が進行速度が違う場所をまたがって進む場合、
   光が遅く進む方向に曲がる。(図1)
  ・これは車の両輪のたとえでよく説明がされる。
   車の右側が遅い場所、左側が速い場所を進むと、
   右側に曲がる。(図2)
  ・蜃気楼はこの現象である。
   大気の温度の違う中を進むと、
   暖かい空気(密度が薄い、光の速度が速い)と
   冷たい空気(密度が濃い、光の速度が遅い)との間で、
   冷たい空気の側に曲がる。
   曲がってから目に入った光は、直進して来たものと感じ
   られ、実際とは違った場所に見える。(図3)
  ・空気中から水に入った光が曲がるのも、この現象である。
   空気と水を比べると、空気中の速度が速く、水中の速度が
   遅い。
   光が左斜めから入った場合、光の右側が先に、速度の遅い
   水に到達するので、右に曲がる。
   これも両輪の車に例えてみた。(図4)

・屈折のたとえに対する疑問への答え
 Q)両輪の車のたとえでは、右と左の車輪の間に幅があるので、
   わかるが、幅がない光線では、このたとえでは説明できない。
 A)「光の粒と波の性質を直感で理解する」でも説明したが、
   光の粒は直進して来たように見えて、実は、いろんな経路を
   通ってきている。上記の記事の図9で説明すると、
   Iにある光の粒は、F-E-F-G-H-Iという経路を
   通ったかも知れないし、F-G-F-G-H-Iという
   経路を通ったかも知れない。
   だから、幅がない光線に見えても、実は、幅のある経路を
   通った結果、直線の光に見えているのである。

・重力によって光が曲がることへの適用
  ・重力によって光が曲がることも、これに似た現象である。
  ・重力があると、空間にひずみが生じる。
   つまり、空間の密度に濃淡が生じる。
  ・重力のある側の空間密度が高くなる。
  ・密度が大きい方が光の速度が遅くなる。(図1)
  ・その結果、速度が遅い方に光が曲がる。(図2)
  ・光の粒の存在確率が空間の濃い方に偏るのである。

・波長が短い光は屈折しやすい
  ・「光と物質」でも説明したが、
   物質を通る光は、原子の中を素通りするのではなく、
   原子の電子に光が吸収され、電子の振動となって伝わる。
  ・波長が短いということは、振動数が多い。
  ・電子は質量があるので、速い振動に付いていくのに
   時間がかかる。
  ・速い振動ほど、時間がかかるので、波長の短い光ほど、
   進む速度が遅くなる。
  ・物質間の速度の差が大きくなるので、屈折率も大きくなる。
  ・光の波長の屈折率の違いによる現象
    ・プリズムによる分光
    ・虹

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・回折
  ・回折とは、直進してきた波が、スリットの狭い穴を通るとき、
   スリットの影になる部分に波が回り込む現象である。(図5)
   これは、水面の波など、波全般に見られる。
   光(電磁波)でも起こる。
  ・光の粒は進んで来た方向に関係なく、あらゆる方向に移動する。
   図6では、スリットを抜けた100粒(図6-1)が、
   次の瞬間、あらゆる方向に散らばる。(図6-2)
   そして、さらに散らばり続ける(図6-3)
   これが回折が起こる仕組みである。

・波長が短い光は回折しにくい
  ・波長が短い波ほど、回折が起こりにくい性質がある。
  ・スリットにも幅があり、波長が短いほど、相対的にスリット
   が広いということになる。
  ・幅があるとスリットを通った波同士で干渉を起こす。
  ・図7では、進行方向では、波の重ね合わせで、波が強め合うが、
   進行方向の直角方向では、波の重ね合わせで、波が弱め合う。
   これが回折が起こりにくくなる仕組みである。

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