Q)自由貨幣は地域通貨と同じものというイメージを持たれているが、
どう違うか。
A)自由貨幣と地域通貨は、もともと違う概念のものである。
自由貨幣は保有し続けると減価する貨幣である。
一方、地域通貨は、市町村や、非営利団体の限られた範囲内で
のみ通用する通貨である。
自由貨幣は、いきなり国家単位で導入することは難しいと
思われている。そこで、まず、非営利団体から、そして、
市町村から、自由貨幣を実施しているのである。
現在、国家単位の自由貨幣はないので、自由貨幣=地域通貨
というイメージができてしまっている。
しかし、自由貨幣の最終目標は国家での実施である。
Q)現在、世界的な不況にある。自由貨幣は不況対策には、
一番効果的と思われるのに、なかなか普及していない。
自由貨幣を普及させるには、どうすればよいか。
A)1929年にオーストリアのヴェルグルで実施されたときは、
30%の高い失業率がきっかけとなった。
日本では、政府の経済対策の効果もあって、このような高い
失業率には至っていない。そのため、自由貨幣の必要性が、
今のところ、感じられていないのである。
しかし、政府の借金の額が限度を超えると、財政支出での経済
対策は打てなくなる。そのときには、自由貨幣を実施せざるを
得ない状況になるだろう。
自由貨幣は、ヴェルグルの例を見ればわかるが、政府は支出を
することなく、通貨の循環量を増やすことができる。
しかし、いきなり全てを自由貨幣に切り替えると、大きな混乱
が起こるだろう。
だから、現在の貨幣を残したまま、別途、自由貨幣を法的に制
度化する。国民はどちらかを選択できるようにする。
自由貨幣を選びたくなるように、自由貨幣は所得税も消費税も
0%にする。その代わり保有税を1ヶ月ごとに5%徴収する。
一方、従来の貨幣は、所得税を25%に、消費税を25%に上
げ、確実に財源を確保できるようにする。
税金逃れを防ぐために、自由貨幣から従来貨幣に交換したとき
には25%の税を掛ける。逆の交換のときは掛けない。
自由貨幣の場合、1年後に保有税が引かれた残額は元の54%
になる。(0.95の12乗)
従来貨幣の場合、所得税と消費税が引かれた残額は元の56%
になる。(0.75×0.75)
税率としてはどちらも同率だ。どちらも税率は高いが、1ヶ月
で収入を使い切るような低所得者の場合、自由貨幣を選べば、
税の支払いはないことになる。
このようにして、自由貨幣を選ぶメリットを付け、自由貨幣を
普及させ、通貨の循環量を増やすことができるのである。
Q)自由貨幣の方式には、スタンプ(印紙)を貼り付ける方式と
取引当事者の間で互いに通帳に記入する方式がある。
スタンプ貼付方式は面倒なので、利用者は利用したがらない
のではないか。
通帳記入方式は、第三者の監視がないので、記入時に互いに
プラスを記入するなどの不正が行われるのではないか。
A)最近では、ICカードを利用した電子マネーが普及し始めて
いる。自由貨幣を発行する場合は、この方式を用いれば、
上記の欠点を克服することができる。1ヶ月ごとの減価は自
動で行える。機械がセキュリティ・チェックするので、不正
に残高を改ざんすることができない。
Q)自由貨幣と従来貨幣とは、どのような法的な違いを付けるべきか。
A)・自由貨幣は利子を排除すべきものなので、次の事項を禁止する。
・貸与するときに利子を取ること。
・利子の付く預金、国債、地方債、社債、金融商品の購入。
・株主配当のある株式の購入。
・外国貨幣との交換。(差益でもうけることを防ぐため)
・自由貨幣の贈与では、贈与税を徴収しない。
受け取った後に、保有税を徴収することになるから。
Q)自由貨幣は個人間の取引を想定しているように思われるが、
法人が絡んだ場合は、どういう扱いになるか。
A)・法人も従来貨幣と自由貨幣を両方扱える。
法人の保有する自由貨幣にも保有税をかける。
自由貨幣から従来貨幣への交換に税をかけるのも同じである。
しかし、所得税と消費税の扱いに注意が必要である。
・消費税については、もともと最終消費者が負担するものだ。
だから、従来貨幣で消費税を支払って仕入れたものを、
自由貨幣で、消費税を受け取らずに売り上げた場合、
消費税申告時に支払った消費税を還付するようにする。
つまり、自由貨幣での売り上げは、消費税は掛からないが、
申告時には課税売り上げ扱いすることになる。
・所得税は、法人の場合、法人税にあたる。
法人税は、損益計算書の利益をもとに計算されるが、利益の
どの分が自由貨幣から得られたものなのか判別が難しい。
そこで、利益は自由貨幣の取扱額とは無関係に計算し、
そこから算出された納税額から、保有税額と自由貨幣から
従来貨幣への交換税額を控除して納税することとする。
控除した結果がマイナスとなる場合は、納税額は0とする。
・法人と個人間
・法人は自由貨幣での代金受け取りを拒否してはいけない。
・法人は個人に報酬や給与を支払うとき、相手が自由貨幣
での受け取りを望む場合、それを拒否してはいけない。
・自由貨幣で寄付した場合、個人は所得税の寄付金控除を
受けられない。
・法人間
・法人間でも自由貨幣では消費税が掛からない。
Q)自由貨幣は政府が運営するのか。
A)・運営は地方自治体、NPO、電子マネー運営業者などに任せ
る方が良いだろう。政府は法的な制度を整えるだけで良い。
・政府が行うのは次の点である。
・自由貨幣の存在を法的に認めること。
・自由貨幣には、所得税、消費税、贈与税が掛からないこと、
保有税を掛けることを法的に定めること。
・自由貨幣の参入団体・業者を認可すること。
・自由貨幣の参入団体・業者が行なうのは次の点である。
・残高が不正に改ざんされないよう監視すること。
・保有税を代理徴収して、政府に納めること。
・電子マネー運営業者に任せることによって、政府は自由貨幣
のために新たにインフラ整備する費用を抑えることができる。
業者も保有税を減価する仕組みと、消費税分を割り引く仕組
みを追加するだけで良いので、参入し安いだろう。
・財政難のため、政府は今後、消費税や所得税を上げざるを得
なくなるだろう。しかし、所得税や消費税の掛からない自由
貨幣を同時に提案することで、国民の納得が得られるだろう。
しかも、運営を任せることで、あまり費用も掛からない。
電子マネー業者も顧客の確保のため、積極的に参入して来る
と思われる。
・従来貨幣から自由貨幣への交換は、電子マネーへのチャージ
という簡単な手続きで行える。
・政府は自由貨幣というお金を発行するわけではない。
Q)高い税率を掛けると、高額所得のある法人や個人が、税率の
低い海外に逃げてしまうのではないか。
A)・前述で自由貨幣は外貨に変換できないようにすべきと述べた。
日本で手に入れた自由貨幣を海外に持ち出す場合、一度、従
来貨幣に交換してから、外貨に交換しなくてはならない。従
来貨幣に交換するときに、高い税率が掛かるので、海外に逃
れても税の負担から逃れられない。
・また、これは国外に貨幣が流出することも防ぐことができる。
リーマンショック前、日本が戦後最長の好景気であったのに、
国民が豊かさを実感できなかったのは、企業がもうけた貨幣
が、国外の金利の高い金融商品や投資、安い労働力や商品に
行ってしまい、国内に貨幣が循環しなかったからである。
国外に出る貨幣にペナルティを課すことにより、貨幣が国内
の投資、労働力、商品に使われるようになり、国民が好景気
を実感できるようになる。
Q)自由貨幣が消費税なしになると、ほとんどが自由貨幣に切り替
えられてしまい、従来貨幣からの消費税の税収がほとんどなく
なってしまうのではないか。
A)・むしろ、それによって自由貨幣への完全切り替えが達成できる。
・現在、日本で流通している貨幣は72兆円ほどある。これが、
すべて自由貨幣になった場合、月額5%の保有税だと、年間、
約43兆円ほどの税収が得られる。所得税や消費税は、生産や
消費活動の活発の度合いに税収が左右されるが、保有税の場
合は、それに関係なく、72兆円は必ず誰かが持っているので、
必ず43兆円が徴収できるのである。現在の消費税の収入が約
9兆円なので、約5倍の税収が見込める。もう国債を発行しな
くて良い額である。
・今回の例では、消費税率を北欧並の25%に設定して、それに
釣り合う保有税率を月額5%にしたが、消費税が5%の場合は、
保有税率は月額1%が釣り合うことになる。国債の発行なしで
やっていくには、消費税率が25%、保有税率が月額5%必要
になるだろう。
・社会保障費が年々上昇しているため、所得税や消費税の場合、
税収を増やすため、定期的に税率を見直さなければならない。
しかし、社会保障費を自由貨幣で支出すれば、支出分だけ、
世に出回る自由貨幣が増え、その結果、保有税収入はそれに
連動して自動的に増えることになる。
つまり、面倒な税率の見直し作業が不要になる。
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