闇に映える<U>


「・・・用か?」
部屋の中に自分とは異なった気配を感じ、クライヴは口を開く。
目を向けられた者は唇の端を軽く横に伸ばし、天使特有の笑みを浮かべて見せた。
「こんばんは、クライヴ。今夜は月が綺麗ですよ。」


クライヴが勇者になる事を承諾してから7日が過ぎていた。
天使"アイラ"はほぼ毎晩訪問してきて、他愛ない会話をしてくる。

「ヴァンパイアハンターとは何なのですか?」
「闇を怖く感じた事はありませんか?」
「小さい頃は何を?」

端から見たら、単なる質問攻めに見えるのだろう。
クライヴはその質問一つ一つに律儀に答えてはいるが、対人関係の事を聞かれると
流石にあまり良い顔は出来ない。
この前も、"ハンターとは辛くないか?"と聞かれて
「・・・そんな言葉は聞きたくない・・・」
と、一言残してアイラの前から消えてしまった。
ただ、一人残された天使は仕方なく何処かへと飛んで行ってしまう。

こんな事はもう2回ほど繰り返されているのだろうか?

・・・天使という存在は容易く理解できるものでは無い・・


「クライヴ!大変です!!」
明け方近くに訪れて来た天使は何やら焦っていて、修行しているクライヴの元へと
降り立った。
「・・どうした?そんなに慌てて・・・」
いつもとは違う穏やかな表情をアイラはしていたので、クライヴも警戒する。
「はい、デーバ地方のテルエルでゾンビが出現しました。
 テルエルへ向かって頂けますか?」
「ゾンビ・・・」

自分の中で、怒りの感情が沸沸と湧き上がってくるのが手に取るように判る。

俺ニトッテハ憎キ存在。
俺カラ全テヲ奪ッタ・・・

「・・そうか、判った。それは俺の仕事だ・・。俺が行こう・・・」
「ありがとうございます。では、早速向かいましょう!」

取りあえずは感情を押さえ、目的地へと向かう。
数歩後ろの方では、早く着くようにとアイラが祝福を掛けてくれている。


・・今はソレで、怒りが押さえられているような気がした・・・


目的地に着いたのは2日経ってからだった。
辺りは人影も無く、家屋はもぬけの殻になっている。
「住民の皆さんはどうやら避難したようですね。」
「あぁ・・・そのようだな。」
家のあちらこちらにはゾンビに襲撃されたのか窓は割られ、ドアも蹴破られたような跡がある。
「・・・酷い、有り様・・・」
「・・奴らの手口はいつもこんなものだ。理性を失い、破壊の衝動に駆られるまま人間を襲ってい  
 る。」

そして、今もピリピリとした空気が元に戻らない・・・

「・・・・アイラ・・・離れて居ろ・・来た。」
瞬時に刀を抜き構えていると、うめき声のような音と共に2体のゾンビが姿を現した。
目標を発見すると、ソレ目掛けて突進してくる。
「・・俺の刀のサビとなれ。」
ゾンビは2体同時に仕掛けて来たが、クライヴは避けながら斬撃を繰り返す。
敵は元々素早くはないので、スキを突いて決着は早く付いた。
「流石ですね。アンデットを速く倒すコツとかあるのですか?」
「・・いや。ただ、奴らを倒す事しか考えていない内に大体終る・・・」

"怒り"という感情に任せて・・・・

「はぁ・・・そうなんですか・・・ でも、アンデットは小回りが効かないので
 素早く動く事が大切ですよね。あと、必要があれば炎系を使うとか。」
「まぁな・・・・・以外と奴らの事を知っているんだな・・」
「・・・ええ、少しは・・・」

そう言うとアイラは空を仰いだ。
その横顔は何処か寂しそうで・・・

「・・・ねぇ、クライヴ?」
ふと、自分の名前を呼ばれた方に顔を向ける。
「・・なぜ、貴方は夜にしか行動しないのです?
  陽の当たる場所はとても気持ちがいいのに・・・」
「・・・・簡単な事だ。奴らはそんな世界に出はしない。この闇に包まれた世界だけが俺達の居場
 所だ・・・」
「・・・・・・・」

「・・・俺は宿に戻る。お前も天界に帰るといい・・」
アイラが振り返った時は既に人影は見えなくなっていた。
足音だけが微かに聞えて。

消えていく音を聞きながら、天使は軽く息を吐く。
「・・・・最初の内は皆、こんな感じでしたね・・・・やっぱり、地上に降りると思い出してしま 
 います・・・」

再び天を見つめる一人の天使は、事件が発生したと言う妖精の報告で一度天界に戻る。
その脳裏の片隅には、時の離れた出来事を鮮やかに映し出しながら・・・







  (コメント)

 やっと2話目が終りました。
 それにしてもペースが遅い!!(爆)
 でも、ちょっと短かったでしょうか????

 とりあえず一番最初の事件は書いておこうと思って
 こんな感じで
仕上がりました。
 何気にクライヴが冷たい・・・

 今後の展開はどうしようかと考え中です。
 何か、勢いのまま始まって、勢いのまま終るような・・・ 
 少しでも纏まりのある話しにしようと努力します。



闇に映える< I >へ 秘蔵書庫へ 闇に映える< III >へ