愛するということ≪U≫


クライヴは一人森の奥で修行をしていた。
あれから何日たっただろう。彼が任務を終えた後、
ラビエルは消えるように彼の前から姿を消した。

 (言わなければよかった。)
ふと、彼の脳裏にその言葉が浮かんだ。
 (言わなければ、彼女を失わずに済んだのだろう。いや、どっちにしろ彼女は天使で、
 この混乱が
治まれば天界へ帰る。遅かれ早かれこうなることは決まっていた・・・。)
そう自分に言い聞かせて、修行に集中しようとした。
しかし、ラビエルの顔が次から次ぎへと浮かんでくる。

 「くそっ!!」
『ガシャン!!』と、剣を地面に叩きつけた。そして、ゆっくりと顔に片手を当て、
木にもたれかかった。

(会いたい。もう一度彼女に会いたい・・・。)


その頃、ラビエルはアイリーンに同行していた。
 「ねぇ、ラビエルは誰かを好きになったことある?」
 「えっ、どうしてですか。」
不意をつかれ、少々戸惑ったラビエルを見てアイリーンは、
 「へぇ―。あるんだ。で、どんな人?」
と、意地悪そうに聞いてきた。
 「背が高い方で、私はいつも見上げていました。その方の笑顔は優しくって、
 暖かかったのです。
だから、私その方のこと大好きでした。」
嬉しそうに語るラビエルを見ていたアイリーンだったが、ひとつひっかかることがあった。
 「ねぇ、どうして全部過去形なの。」
その言葉に、ラビエルは異常な反応を表した。ラビエルの顔は見る見る青ざめていった。
 「・・・亡くなったんです。」
それは、今にも消えてしまいそうな感じの声だった。ラビエルの体が震えているのに、
アイリーンは気づいて
慌てて話をそらした。
 「あれ、ココさっきも来たよね。」
その言葉を聞いて、ラビエルは我に返った。
 「えっ、あっそうですね。」
 「おかしいな〜。こういうことは魔術師しか使えないのに。ねぇ、空から見て来てくれない。
 多分魔法陣浮き出
てきてるはずだから。」
 「えぇ、いいですよ。」
と、いって、ラビエルは空高く舞い上がった。
 (この手の話はラビエルに禁句なのね。)
アイリーンはそう思い、深くため息をつた。
 「アイリーン。見えましたよ。魔方陣が光ってます。」
 「その魔法陣を、解除できる?ラビエル。」
 「えぇ、この程度の魔法陣なら、すぐに出来ますわ。」
そういうと、彼女の翼が光り始めた。その、眩しさにアイリーンは目を細めた。
 「天より力を受けしモノ。この大地に埋められし邪悪な力、無に返さん。リカバー!!」
その瞬間、翼に集まっていた光が広範囲に広がった。
森の向こうでその光に気付いたものがいた。そう、クライヴだ。
 (あの光・・・、もしかして、ラビエル・・・。)
クライヴは走った。光に向かって走り続けた。
あの光がラビエルが発したものとは限らないのに・・・、

 (会いたい。)
というその気持ちだけを持って。




一方、魔界では、2メートルを超す大男と、黒い服の女が、何やら話している。
 「俺たちの同胞が次々に殺されていっているらしいぜ。」
 「ああ、知っている。天使たちの仕業だよ。」
 「あいつら、許さねえ。俺たちの仲間を殺しやがって!!殺してやる!!」
 「まあ、待てよ。私にいい考えがあるんだ。」
 「いい考えとは、何なんだよ。世界ごと消し去るってか。」
 「おまえは強いが頭が足りんようだな。耳を貸せ。」
女は男を座らせ耳打ちをした。
 「へぇ―、いい考えじゃないか。で、準備は出来てるのか。」
 「もちろん。抜かりは無いよ。なんて言ったって私は完璧主義者なんだから。」
と、冷たく微笑んだ。
 「よかったぜ。おまえの仲間で。お前のような奴、敵に回したら厄介だからな。
 全く、元天使とは
思えないな。」
 「誉め言葉として受けっておくよ。待ってな、ラビエル。あの時の怨み返させてもらうよ。」
顔にある大きな傷を押さえて、狂ったように大声で笑い出した。



暗闇の中、茶髪の男が立ち尽くしている。
 (ココは、何処だ。俺は確かにあの時、死んだはず・・・・。)
その姿には何処か見覚えがあった。そう、それは死んだはずのレイヴ。
 (ラビエル。君は、無事なのか。)
何も無い真っ黒な空を見上げ、レイヴは空へ手を伸ばした。
  (この手でもう一度君を抱きたい。もう一度会えたら・・・。)
開いていた手を強く握りしめて、
  (二度と放さないからな。待っててくれ、ラビエル。)



 「まったく、何でするならするって言わないのよ。いきなり、羽根が光り始めるから
 びっくりしたじゃない。」

 「すみません。」
 「もう、今度からちゃんとしてよ。」
 「えぇ、分りました。」
ハァ〜と深いため息をついたアイリーンを申し上げなさそうに見つめていたラビエルは、
誰かに呼ばれた
感じがした。
 「ラビエル!!」

後ろを振り返ると、そこにはクライヴの姿があった。
 「クライヴ・・・。」
どうして良いのかわからず、不安が込み上げてきた。
ラビエルは、たまらず近くにいたアイリーンの後ろに
隠れた。
 「ラビエル、君に聞いて欲しいことがあるんだ。」
今までの出来事が嘘のように静けさが森全体が包みこんだ。

≪つづく≫



(コメント)
レイヴがとうとう出てきました。 出したかったんです。
クライヴとラビエルがどうなるのか私にもわかりません。(わかれよ!)

この小説は私の気分次第に変わっていっています。
感想をよければ聞かせてください。待っています。
                                   翼人


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