−騒動教室の日常−
「いやー、助かった。仕事を途中で放り出すってのは主義にあわないからな。」
クリフは彼の隣を歩いているクレノフに、暢気そうにそう言った。するとクレノフは顔をしかめながらクリフに言った。
「学院側としてもお前を失うのは痛手なんだ。それくらい分かっているだろう?」
「悪い・・・。」
クリフは苦笑する。
「それでなくてもお前には約一年分の減給があるんだ。ここを出ても返済の目処はつくまい。」
一年分の減給、その言葉にクリフは乾いた笑いを浮かべる。
「さらにだ、今回の事件の処理などで、お前の先一年の給料がなくなった。」
「???さらに減給って事か?」
「いや、そーじゃなくて・・・。ないんだって。一銭も。」
「・・・・・・・・・。」
「・・・・・・・・・。」
クリフは突然足を止める。そして二人の間に沈黙が走った。数瞬後、クリフはようやく我に返り、疲れたような声でクレノフに尋ねた。
「で、俺はどーやって飯を食っていけばいいわけだ?」
「知らんよ。そこまでは面倒みきれん。」
クレノフは微笑しながらそう言うと、クリフはひどく複雑な表情をしながら答える。
「はぁ。何でこーなるのかなぁ。」
と。そして彼はこれから始まるであろう貧窮の日々に頭を痛めていた。
そして、それに追い打ちをかけるように、突然クリフの後ろから明るい声が聞こえてきた。
「先生っ。」
そこには満面の笑みを浮かべたミーシアがいた。彼女がこの笑みを浮かべるときはろくな事が起きない。
「な、何だミーシア。」
クリフは嫌な予感を覚えながらも、後ろを振り向く。すると彼女はその笑みをさらに強め、嬉しそうに言った。
「大丈夫ですよ。私が養ってあげますから。」
クリフは、ミーシアの何の屈託もない笑顔に、最大級の疲れを覚えながら、ようやく彼の騒動の一日は幕を閉じた。
See you next Magic academy story
終章 魔導教師の苦悩の予感
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