-魔導師クリフの試合-
終章 本当の目標
私は、この3日間ずっと考えていた。自分は何をすればいいのかということを。 今まではクリフ先生に対抗することで頭がいっぱいだった。けどそれはアーバンに全部ぶちまけてしまったことや、久しぶりにお姉様のあの笑顔を見たことで、どうでも良いことに思えてしまっていた。 つまり私は目標を失ってしまったのだ。バーグ教室時代はお姉様の後ろ姿を追い、その後はクリフ先生を追っていた。 だけど、先生に敵対する意志が無くなってしまった今、私はどうすればいいのだろう。私には新しい目標が欲しかった。だから私は考えた。答えはまだ見つかっていない。
「ありがとうございます。」 と。 私は先生を認めなかったことによって、周りの事を見ることができなかったのだろう。フォールスが言った「勝てなかった理由」、それは私が相手を正確に見れなかった事を言っていたのだと思う。 前回の試合もそうだ。相手にならなかったのは何も実力の差だけではないはずだ。相手が私と同等前後の術式構成能力があるのにすぐに気づけば戦いはもっと意味のある物になっていたはずである。もちろんそれは推測であるし、本当に相手になるのかは疑問だけれど・・・。 兎に角、私はその事を気づかせてくれた事について礼を言いたかった。そして謝らなければいけない。だが私が何か口にしようとしたその前に先生は口を開いた。 「まだ、納得していないだろう?」 先生は苦笑いを浮かべながらそう言った。 「なら、まだ終わっちゃいない。こう見えても結構律儀な性格でな。引き受けた仕事は、なるべく最後まですることにしている。」 先生の言っていることの意味はすぐに分かった。 「取りあえず、言いたいことがあるのならその後にでも聞くさ。」 先生のその言葉に私は黙って一礼だけをし、部屋を出た。 ありがたかった。どうせお礼や詫びを言うのであれば、本当にすっきりしてから言いたいのが本心だった。私は、そのまま部屋に戻って準備に取りかかった。次の試合に向けて。
(今度こそ人の影を追うわけじゃなく、本当の目標を見つけてみせるんだから。) と。 失ったものは取り戻せばいい。幸い、私には卒業までにまだ時間はあるのだから。 決して長い時間ではない。けれど生徒である内に気付くことができたことは幸せだったのだろう。 取りあえず私の今の目標は、新しい目標を見つけることである。
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