海賊版資料
「狂気のONE PIECE全話解説」

元々、このサイトの資料ではない資料です。
ですのでこの資料については無断転載、複製禁止です。

狂気のONE PIECE全話解説
 ・以下の文章は 某所 での29条3項様の解説をほぼ原文で掲載させて頂いております。
 29条3項様には改めて御礼申し上げます。
巻二 「VERSUS!!バギー海賊団」

第9話 「”魔性の女”」

   バギー登場の回なのに、題名は「魔性の女」。その題通り、ナミのキャラクターの方が目立っている。

   しかし、バギーとて、その”デカッ鼻”のおかげで強烈な印象を与えているキャラクターである。

   さて、話の方だが、バギー登場からバギーの能力の公開、ナミの素性話、そしてナミの計略とルフィが捕まってゾロが到着するまで。
   かなり凝縮された回である。それでありながら無理な展開はない。
   かなり上手い話運びと言えるだろう。(まあ、20ページもあるというのもあるが…)

   ルフィとナミのやりとりも秀逸であり、ルフィがボけ、ナミがつっこむパターンを早くも確立している。
   また、「私が世界で一番嫌いなものはね!海賊なの!」という重要なセリフと一緒に「好きなものはお金とみかん!」
  なんてセリフを叩きこみ、マジな雰囲気に外しを入れて和らげている。

   このセンスがなかなか面白い。
   普段のシーンは極力柔らかく抑え、ポイントのシーンはシリアスに徹底する。このメリハリが上手いのだ

   しかもこの「お金とみかん」はのちに明かされるナミの秘密に関連するわけだから、このつくりの周到さには恐ろしさすら覚える。

   最後にちょっと気になるツッコミ。バギーが能力を使って、部下を殺してしまうシーン。
   バギーの能力はバラバラの実による体の分解である。テレキネシスで人を浮かべたり出来ないはずである。
   となると、この部下を浮かべてるシーンはどういうことなのか?

   考えられるのは、バギーは左手を飛ばし、部下の胸倉(首)をつかんで持ち上げている、という仮定である。
   バギーは全身が映るコマで、左手だけは見せておらず、部下が苦しむコマ(11ページ4コマ目)でも、
  右手は明らかに部下のものだが、左手はバギーの手(手袋)に見えなくもない。
   13ページの1コマ目でも、バギー自身は右手しか出していないから、この仮定は合っているように見える。

   ところが、同じ13ページ1コマ目、部下の首にはバギーの左手は明らかにない。ここで部下の左手をもっと上に描けば、
  バギーの左手はその裏に隠れていると解釈出来たのだが。

   というわけで、バギーが部下をどうやって浮かべていたのかは結局不明である。
   ここまで先の構想を考えながらストーリーの構成をしている作者が、この時点でバギーの超能力を決めていなかったとは
  考えにくいのだが…

   最後の可能性としては、13ページ1コマ目では、バギーの左手は部下の背中側に回って、
  チョッキを持って引き上げている、という方法か…?結構厳しいが、それくらいしかちょっと思い付かない。


第10話 「”酒場の一件”」

   この回では効果線による演出の使いこなしについて見てみよう。

   前半の盛りあがる酒盛り・バギー弾発射のシーンでは効果線引きまくりで、画面に騒々しさを出している。
   そこから一転してルフィを撃たなければならない、というヤバイ状況なると、ナミの血の気が引いて行くのとリンクするかのように
  海賊達の騒ぎ声が効果線無しの文字だけで「わーわー」と表記されるだけ。
   そこで「ナミ!!しらけさせんじゃねえ!」とバギーが叫び、我に帰った瞬間だけ、海賊達の騒ぎにまた効果線が入る。
   そしてルフィとのやりとりによって、ナミの心が落ち付いて行くと同時に再び効果線が入ってくる。

   この登場人物の心理状態と演出をきちんと使いこなしているところは、さすがである。


第11話 「”敗走”」

   ゴムゴムの実のルフィは打撃技が全く通用しないが、切断や刺す攻撃には弱い。
   しかしバラバラの実のバギーは逆に打撃には弱いが、切断は全く意味がないわけである。
   こういう色々の能力を設定することによって、敵味方いろいろの能力ごとの相性が生まれ、
  ただ強弱だけで決まらない、戦闘にバリエーションが出るわけだ。そして、それがバトルの面白さをうむのだ。

   しかし、バギーのナイフを食らっておきながら歯で噛み砕いてしまうルフィ、というのは少々やりすぎのような気がする…
  ゴムゴムの実の能力とは関係無いはずだから、説得力に欠ける。


第12話 「”犬”」

   この回の見所は、冒頭の
  「たかが3人の泥棒なんぞにナメられていいのか!?」
  「いけません!」
  「声が小せェ!もう一度!」
  「いけません!!!」
  「うるせぇ!!!」

   ここに尽きるように思える。この頃から、余裕が出てきたのか、ギャグがちょくちょく顔を出す。
   ギャグもこの作品の特長なので、喜ばしい限りである。

   町長も個性的髪型とプードルという名前で、印象づきそうで、そうでもない。
   セリフに無駄に混ざっている「さながら」という単語が耳について、あまりいい印象にない。
   変なセリフ回しでキャラを印象づけようというのかもしれないが、上手くいっていない。
   そして作者もそのうち忘れたらしく、町長のセリフから「さながら」は消えてしまう。

   それよりも妙に長いシュシュの顔の方が印象的だったりする。


第13話 「”宝物”」

   感動的エピソードの一つ。店を護ろうとライオンに飛びかかるシュシュと、その仇を撃ちにゆくルフィ。
   ただ、怒りに燃えるルフィの表情・モージを殴り倒した瞬間のルフィの姿等、
  ちょっといつものニカニカと怒っているルフィとの格差が大きすぎる。
   アルビダぶっとばし→ルフィアップのところでは、「格差」が迫力を呼ぶ、と説明したが、やりすぎると今度は不自然になってしまうのだ。

   展開で読者の想像を裏切るのは良いが、ここまでの描写で確立して来た「こいつはこういうキャラだ」というイメージを裏切ると、
  読者はそのキャラクターが良くわからなくなり、リアリティを感じられなくなってしまう。
   今回のこの表現は、その悪い影響をに出しているように思う。
  (のちに似たようなシーンが何度か出てくるので、だんだん慣れていくが、個人的には後のベラミー戦の「朝までには戻る」みたいな、
  秘めた感じの怒りの方が、しっくり来るように思う。)

   また、一方のモージもいっぺんにギャグ顔になってしまったり、イマイチ悪役ぶりを徹底させていないため、
  それほどカタルシスが感じられない。この辺がギャグとシリアスのバランスの、難しい所である。


第14話 「”無謀っ!!”」

   町長出陣の巻。そしてルフィ達の反撃開始。それだけである。

   相変わらず「さながら」がセリフの中で耳につき、折角の町長が決めるべきシーンに水を差している
  結局この町長がいまいちで終ってしまうのは、この無駄な「さながら」が大きな要因になっているように思える。


第15話「”GONG”」

   前話に続き、繋ぎの回。町長プードルを助けに来たのに「邪魔!」と言い切り気絶させてしまうルフィの無茶さ加減が印象的な回。

   しかし、「ゴムゴムの風船」はちょっと無理があり過ぎる気がするのだが…肺活量はゴムゴムの実と関係無いと思うのだが。
   しかし、それを言って行くと、ルフィの格闘技の腕前は、ゴムゴムの実だけで説明がつくものではない。
   どうやってここまで強くなったのか等、ルフィには謎が多い。そして、その謎は全然語られていないのである。

   さて、カバジ登場であるが、カバジは町長がバギーに勝負を挑んだとき、「……」と意味深な反応をしている。
   また町長の方もカバジが姿を現すと「……」と、無言の反応を見せており、
  これはどう考えても「カバジと町長の間にはなんらかの特別な関係がある」ことを暗示する演出としか思えない。
   にも関わらず、結局最後までそんな事実の存在は明らかにされず、全く無意味に流されている。

   キャラクターに無駄に意味深な態度を取らせるのは、どうかと思うのだが


第16話 「”VERSUS!!バギー海賊団”」

   VERSUSバギー海賊団、といいつつ、内容はゾロVSカバジ。

   しかし、カバジはいくら何でも変過ぎる気がする。左側だけ長髪で、右側には3本の禿げが入っている。
   しかも曲芸・一輪車。一輪車で蹴りをかましたりすれば、絶対バランスを崩すのではなかろうか?
   164ページのはともかく、167ページのキックは右に傾いている。これでは、絶対重心が戻らず、倒れる筈である…

   でもまあ、この変なデザインゆえにここまでセリフもなかったキャラながら強烈な印象を残したといえなくもないから、
  意外といいデザインなのかも知れない。


第17話「”格”」

   どうでもいいが、やけに回の冒頭がカラーだったり2色だったりが目立つ。これは、連載中に人気が出て来て、
  雑誌掲載時に巻頭カラーやセンターカラーを与えられている証拠である。

   さて、内容はゾロとカバジの戦いの決着である。戦いにふさわしく、迫力ある構図やパース盛り沢山である。

   しかし、ゾロの必殺技の「鬼斬り」というのは、凄いネーミングセンスである。最初はどうかと思ったが、
  その作画迫力で、辛うじてギャグとシリアスのギリギリのラインを保ててはいる。このセンスがなんとも凄い。
   設定の滑稽さを絵で説得してしまう。力技である。願わくは、このテンションを保ち続けてもらいたいものである。


巻一へ戻る

巻三へ進む

戻る