海賊版資料
「狂気のONE PIECE全話解説」

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狂気のONE PIECE全話解説
 ・以下の文章は 某所 での29条3項様の解説をほぼ原文で掲載させて頂いております。
 29条3項様には改めて御礼申し上げます。
巻十三「”大丈夫!!!”」

第109話 「”責任問題”」

   尾田氏ノリノリのゾロ大活躍3話目。Mr9とウェンズデーがひたすらボケをカマし続ける。
   単なるマジ戦闘よりもギャグが冴え渡っている分、遥かに面白い。
   また「あ…」とアクロバットで落ちていくMr9やイガラッパッパで狙われ、Mr9をゾロが引っ張り上げた瞬間のシルエットだけのコマ、
  イガラムを斬ったコマなど、効果線ナシの静止画で動きを見事なまでに表現するお得意の手法が炸裂している。

   超カルガモ「カルー」という安易すぎるネーミングも本作にピッタリで◎。


第110話 「”夜は終らない”」

   Mr5とバレンタイン登場の回。そしてミスウェンズデーがビビへと変化して行く回。

   とりあえず、キャラデザイン的に言えばMr5や9は直接体のどこかにその数字が書いてあり、
  Mr8は髪型で「8」を現すなど、これでもか、というほどキャラを分かりやすく強烈に印象付ける。
   一歩間違えば「ダサイ」以外の何ものでもないのだが、この微妙なバランス感覚もこの作品の魅力である事は間違いないだろう。

   そして、さらにキャラデザインを言うならば、美形キャラばかりにしない、ということが本作の魅力の一つとして挙げられて良いだろう。
   とりあえずMr5でいうならばタラコ唇だし、Mr8もMr9も決して外見カッコ良いキャラクターではない。しかし、「行動で魅せる」

   世の中にいる人々は、当然ながら美男美女ばかりではない(むしろそっちの方が少ない)。
   しかし彼ら・彼女らも性格と行動如何によってはカッコ良くもなるし可愛くもなる。色んな意味で魅力的になる。
   それを描写しているからこそ、本作が多くの「フツーの」人々に受けるのではなかろうか。

   あ、でも男はともかく女は美人の比率の方が高いかな…
  (美人じゃないのはアルビダ/マンデー/ゴールデンウィーク/メリークリスマスだけ?)


第111話 「”秘密犯罪会社”」

   ここでこれから100話以上にわたる「アラバスタ編」の設定が明らかにされる。
  「理想国家」…ここからやけに「国」というものを意識させ、考えさせる展開になって行く
   奇しくも日本は経済的にも政治的にも文化的にも行き詰まり、国際社会で立ち位置を見失っている。
   戦前の軍国主義への反省から、戦後はあまり「国」というものについて考えないでいたツケが回っている。

   一体国とはなんだろうか。それを考えなければならない今の時代にフィットしたこのテーマこそが、
  ワンピを大人にも楽しませる要素の一つとなっているのでなかろうか。

   ジャンプ黄金時代の漫画は、個人の力が非常に強かった。
   悟空がいれば、ケンシロウがいれば、翼がいれば、遼がいれば、どんなピンチも解決していた。
   しかしワンピ世界はそうではない。ルフィ一人では何も出来ない。
   いくらゾロやサンジが強くても、ザコに邪魔されて首を斬られるルフィを救えない。
   いくらビビが国を想っても、反乱は止まらない。個人の力には限界があるのだ。

   それをしっかり意識した上で、では組織の最大単位である「国」とはなんだろうか?その本質を考えてみる。
   その作業をエンターテインメントの中でやって見せてくれる。そんな内容の奥深さがワンピの魅力の一つである事は間違いあるまい。


第112話 「”ルフィVSゾロ”」

   てっきりMr5・バレンタインとの戦いになると思っていた読者の予想を綺麗に裏切ってくれた回。
   腹が巨大なルフィはなんともシュールで面白い。このセンスもまた本作の大きな魅力であろう。

   しかしゾロの剣を素手とサンダルで止めてしまうルフィは只者ではない…

第113話 「”大丈夫!!!”」

   前話の続きで回転しながら飛んで行く、1コマ目の5&バレンタイン。
   ここで回転している効果線は全く入っていないのだが、飛んでいく血の方向、流れる涙の方向、それにアングルなどで動きを表している。
   画面をゴチャゴチャさせないためのこういった手法は見事である。

   しかし、ミス・ウェンズデーは完全にネフェルタリ・ビビという別人物に変わってしまっている
   髪型が変わり、言葉遣いが変わり、性格も変化して、目つきも全く違う。
  「ミス・ウェンズデー」はビビであることがバレないための別人格の演技だったと見れないこともないのだが
  後になるほどビビのキャラクターが「心優しい王女」になりすぎて、演技とはいえ殺し屋稼業が出来る性格とは思えなくなってしまう。

   もう少し伏線として、前に王女の一面を感じさせるシーンを入れるなり、変化を少なくしておいたほうが
  自然だったのではないかと思うのだが。

   あと、イガラム撃沈後のルフィの「立派だった!」は、表情と勢いでギャグみたいに見えてしまうのが難点か。


第114話 「”進路”」

   ミス・オールサンデー登場。女性キャラを描きわけるため、相当苦労して生み出したあとがにじみ出ている。
   円らな瞳の美少女キャラは、出し過ぎて区別が微妙になっていたから、この選択は正解であろう。

   浜崎あゆみがモデルであることは一目瞭然なのだが、この系統の顔を使いこなせるようになれば、
  おそらくキャラデザインにも幅が出て、さらに良くなることは間違いない。
   短編集「WANTED!」を見ても、この系統の顔は一人も登場していないので新境地開拓というところであろう。

   またオールサンデーが麦わら海賊団をあしらうが、その描写はギリギリで「ハナハナの実」で説明できるものになっているのもポイント
  (ウソップ・サンジは手摺りから伸ばした手で胸倉をつかみ、引き落とす。
  ゾロとナミはそれぞれの背中から手を生やし、余所見しているところを武器だけ叩き落とす。
  ルフィの帽子はテレキネシスではなく、後ろの柱から手を伸ばし、掴んで投げる。
  ルフィの後ろには誰もいないので手が伸びても分からない。ウソップは影に隠れているので手が伸びても見えない。)
   ここらへんをしっかりしてくれないと今までの長い伏線やストーリー構成を台無しにしてしまうので、重要な描写である。

   ちなみにアニメ版では、尾田氏が折角ネタバレせずに、しかも説明が付くキワドイバランスで描いたこの描写を、
  いとも簡単に真似ようとして全然説明がつかないようにしてしまっているので見る価値なし。


第115話 「”冒険のリトルガーデン”」

   最後のシーンで落ちる一冊の本、「Brag Men」。Menは当然Man(男)の複数形。
   一方Bragとは[動詞] 自慢する(鼻持ちならない感じ) [名詞] 自慢屋 ということで、
  お互い「エルバフ最強の戦士」と称するドリー&ブロギーを指すのだろう。

   さて、それはともかく、ここでもまたゾロとサンジが張り合うが…
  折角なのでサンジ関連のゾロとの対比に関する総まとめをしてしまおうと思う。

   ファンの愛情度は別として、素直にこの作品を読んでいくと、明らかにサンジはゾロと比べてキャラが引き立っておらず、
  確立されていない。(少なくともこの時点では)
   その理由の一部はこれまで書いて来たが、最後にゾロとの対比、という観点からまとめておきたい。

  ・ルフィ海賊団内で、彼は戦闘面ではゾロと共にルフィの両脇を支える実力者である
  ・通常時には、基本的にゾロ同様ルフィやウソップが騒いでいるのを後ろでスカして見守っている
  ・イメージ的にもゾロと二人で「不良兄貴チーム」である
  ・普段のやり取りではルフィやウソップの「ボケチーム」に対する「ツッコミチーム」の一員。(ゾロも同様)
  ・しかし、ナミに対すると「ボケ」役になってしまう(ゾロも同様)
  ・そして、なにかというとゾロと張り合う

   このように、位置的には非常にゾロに近い存在である。
   それゆえに「キャラ被り」が起きており、自然とどちらかが立てばどちらかが立たない、という状況になっていく。

   しかしその一方で
  ・戦闘面ではルフィとゾロは同格として描かれている→自然、ゾロの方が地位が上
  ・ゾロはいつもスカして見守っている方だが、サンジは一緒になって騒いでいることもある
   (ウィスキーピーク(3バカ…のシーン)など)→自然、ゾロの方がキャラが一貫する
  ・ゾロに対するとサンジがボケ、ゾロがツッコミになる…つまり並べると
   (ツッコミ) ナミ→ゾロ→サンジ→ウソップ→ルフィ (ボケ) となり、サンジがド真ん中になる。
    →自然、一貫しないため両方の印象が中途半端になり、一番キャラが薄く感じることになる

   その上、ゾロは当初からルフィ海賊団の一員であるがサンジは途中参加。
   しかも仲間になる時ルフィとしか関係がなく、メンバーに(この時点では)一番溶け込めていない。

   そして極めつけとして作者の愛情に明らかな格差がある。
   サンジと比べ、ゾロの方が明らかに見せ場を沢山もらっており、読者に強烈に印象付ける。相対的にサンジの印象は薄れていく。

   これらの原因により、哀れサンジはキャラ立たぬままここまでズルズルと来てしまっているのだ。

   さらにサンジはここから暫く登場しなくなる。存在までなくなってしまっては、キャラをアピールしようもない。
   実際、私は初読時、15巻でサンジが再登場した時「あ、こんなやついたっけ…そういえば」と思ってしまったものである。

   麦わら海賊団料理人サンジ。キャラの非一貫的描写ゾロとのキャラ被り作者の愛情不足
   メインキャラでありながら、これだけキャラが立たない要素を持たされた不幸な境遇
   にもかかわらず、それに負けずに強烈に個性を発揮し続ける姿が、多くのサンジファンを惹きつける魅力なのかも知れない。


第116話 「”でっけェ”」

   ドリーとブロギー登場である。巨人の登場により、また一つ世界観が広がった感じである。
   バラエティ溢れるワンピ世界に、また一つ魅力的な花が添えられたと言えるだろう。

   しかし、巨人がすんなり受け入れて感じられるのは一度違和感を覚えつつも、魚人が登場しているからである。
   この世界には「人間並みの知能と能力のある人間以外の存在」も存在するのだ、
  という世界観を作っていたがために、すんなり受け入れられるのだ。

   ルフィの強さにしろ、人間以外も同居する世界観にしろ、初めから伏線や構成によって自然に見せるのではなく、
  最初強引に出してしまって、それに慣れさせていく。こういう手法が取れるのも長編ゆえの強みと言えるだろう。


第117話 「”ドリーとブロギー”」

   ドリーとブロギーは「ガバババ!」「ゲギャギャギャ!」という個性的な笑い声を持っている。
   しかし良く考えてみると本作のキャラクターたちには個性的な笑い声を持つ者が多い。

   ルフィは「しししし!」、
   アーロンは「シャハハハハハ!」、
   ネズミ大佐は「チチチチ」、
   ミスバレンタインは「キャハハハハ」、
   ワポルは「まっはっはっは」、
   ヒルルクは「エッエッエッエ」、
   Drくれはは「ヒッヒッヒッヒ」、
   クロコダイルは「クハハ
   Mr4は「フォーーーフォーーーフォーーー」…

   など。日常で良く聞けば、笑い方と言うのは人によって随分違うものである。
   こういうところに着眼し、しかもそれをキャラ描写に生かすところは、さすが、である。
   普通の作品では使われないような要素まで使ってキャラクタを描き分ける。
   この徹底さが子供にも分かりやすく人気が出る理由の一つと言えるだろう。


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