09
プレ・クオリファイ


35階には、オレとリディを待つように二人の人物が立っていた。
一人はジーンズにシャツというラフな格好をしており、
もう一人は革製品で身を固めていて手袋も革製のを身に着けており、ほとんど素肌を出していない状態である。

 「お前ら、これは何のつもりだ?」

 「へ〜んな事を言うね?無事に会場に来いって言われなかったかい?」

この変な口調。まるでどこかのエリアドライバーのようだ。
違うとすれば、男か女かという事ぐらいだろうか。
オレは一瞬、リディとそのラフな格好の男と見比べた。

 「おい、リディ。
 この男は兄妹(きょうだい)か何かか?」

 『ちょっとリッ君。どこが似てるのよ』

 「いやいや。顔じゃなくてな・・・」

いつもの会話が始まってすぐにだが
そのラフな男が動いた。

 「あれ?
 もしかして君、リディさんじゃない?」

 『ん?うん。そう・・・だけど』

 「私はヴィル。エリアドライバーであるリディさんに憧れてるわけですよ〜」

 『え、えぇ?そ、そりゃ〜照れちゃうね』

 「もちろん、姿からその雰囲気も憧れるわけなんですよ〜はい」

 『うふふ。そんなに褒められても、何も出ませんよ〜』

何がうふふだ。そんなキャラじゃないだろ。
ソレよりも、革製品に身をまとった不気味な男が気になるな。
ふざけた二人を避けるように、オレはその革製品の男の方に向かう。


 「この階段を落としたのはお前だろ?」

 「ああ。ただでさえ人数が多いんだ。
 お前だって少しでも参加数を減らすのは合理的って思うだろ?」

 「・・・その考え方は否定はしないけどな。
 だが、やり方が気に入らない」

 「・・・。
 なんとなくお前は、俺と似ている気がするな。色々とな。
 似非正義チックな理想とか、昔の俺を見ているようでちょっと腹が立つね」

悪かったな。
さっきも似たような感じで説教ぽいのを食らったばかりだから
今はそういうのはお腹一杯だ。

 「お前は何度かこの大会に出ているのか?」

 「いや。俺はこれが初めてだ。
 賞金は要らないが、必要なエネジスがあるんでね」

 「教えてくれると思えんが一応聞いてやる。それは何だ?」

 「あぁ。もちろん教えないさ。
 というかお前も新種なら、それを探しているはずなんだけどな」

 「お前も?
 って、似ているってそういう意味か。
 生憎オレにはエリアスターの見分け方はわからないんだよ」

 「それは嘘だな。新種は例外なくマテルの使い方が雑だ。
 俺のマテルもこうやって革で手すら隠しておかないと手に負えなくなる」

 「話が逸れたな。
 マテルを見なければ、それではエリアスターかどうかわからないだろ」

 「それを言うならお前が話を逸らしたな。
 新種が探しているエネジスを本当に知らないのか?」

 「知らないから、話題に触れてもいないだろ?」

 「あぁ。それで益々俺とお前は似ていると確信するよ。
 実は、俺も知らないんだよ。【フェリス】ってエネジス」

 「フェリス?」

 「もちろん、ソレを教えるわけがないわけだが
 いずれお前もその存在を知ることになるだろうな」

 「いずれ分かるなら今知っても構わないだろう?」

それを聞いて革製品の男は両手で呆れたポーズを作り出す。
そのままオレを無視するように、もう片方の似た者同士のところへ進んだ。


 「・・・というわけで、リディさん。
 私がお手伝いいたしますよ」

 『折角のお助けの言葉だけど、私はすでに仲間を見つけてるから特にいらないよ〜』

 「誤解を生んだなら、謝まりますよ。
 私はリディさんに全面協力させて頂きますって事なんですよ。
 人数は多い方が良いでしょう?」

 『そりゃそうだけどね〜。
 でも、勝手に決めちゃうとリッ君が怒るからね』

 「それは、向こうの男の人ですか?
 リディさんにとってのギフトってことですか?」

 『う〜ん。わからないけど、今の所はそうかもね。
 ヴィル君は、警察関係者なの?』

 「違うよ。しいて言えばリディさんと・・・」

とヴィルが喋りかけた時、革製品の男が割り込んだ。

 「それ以上は無用だろ。
 アンタは女性を見ると見境なくコレなのか?」

 「ネルソン君。私は女性であれば誰も良いというわけではないのですよ。
 リディさんだから良いのです」

 「はいはい。
 わかったから二人共さっさと自分の階に戻ってくれ」

 「そういう言い方はないでしょ?
 それに私はここから移動出来ないのですから〜」

革製品の男は再び両手で呆れたポーズを作り出す。
リディはそれを不憫に思ったのか

 『じゃあ、私が連れて行ってあげるよ』

と提案する始末。
それにはさすがにオレが突っ込む。

 「おい、リディ。
 こいつらが勝手に階段落としたんだから、ほおっておけよ」

 『あら〜?
 もしかしてリッ君、焼きもち的なもの焼いてます?』

 「・・・。
 焼いてないから、さっさと自分の階に行け」

分かっちゃいるが、リディはこういう奴だ。
オレの反応にニヤケつつ、リディは軟派男と共に30階へ移動した。

もう大会が始まっているというのに、この緊張感の無さは流石というべきなのか。
というか、あいつらに構っている暇はない。
オレはこの男とある意味で争う必要がありそうだからな。


 「似非正義だと言われても構わんが、
 階段を崩すって言うのは、そこに人が居ても構わないって事か?」

 「居ない方が良いに決まってる。
 だが、俺には選択できるほど余裕がない」

 「それは確かに、オレと似ているな。
 ただ、そんなに焦っているように見えないけどな」

 「あぁ。焦ってなんかいないさ。
 だが、未知数の奴らを多く残す必要はないってだけだ。
 お前も感じてるだろうけど、この世界は何か嘘っぽいだろ?」

この男、本当にオレの考えに近いのか?
それとも実は心を読む的なのが本来のマテルで、階段を壊したのは軟派男かもしれない。
こんな大会じゃなくて、こんな世界じゃなければ友達になれたかもしれないぐらい
この男の考え方はオレに似ている。

 「この世界って・・・お前は記憶を持っているのか?」

わざと言葉を選んだが、この男ならオレの予想通りの回答を返すはずだ。

 「ソコは・・・あえて言わなくていいだろ。
 お前と話しするのは嫌じゃないが、お喋りをしにここに来たわけじゃないからな。
 次があるからまたな」

やはり言わないか。
だが、それがオレと同じく記憶を失っていない証拠でもある。
そしてオレよりも多くの情報をこの男は得ている。
オレには次はないんだ。

ん?次?


 「待てよ。
 次って言われてそのまま見逃す、似非正義のオレじゃないぞ」

 「いや、見逃すね。
 その方が楽になる事をお前は知っているからな」

・・・。
方法によっては見逃すだろうな。そういう生き方をしてきたのがオレだからな。

その男とオレは会場の入り口と別に廊下が続いている道を進んだ。
進んだ先には3つのエレベータが並んで待っていた。
予想は出来ていたがこの男、次はエレベータを壊す気でいるらしい。

 「一応言っておくが、邪魔をするなら先にお前を攻撃するぞ」

 「こちらも一応言っておくが、エレベータは壊させないぞ」

オレはエレベータを背にしてその男の前に立ちふさがった。
しかし、それは本気で止めるという形ではなかった。

ソレが時間稼ぎになったのか、出来上がった音が後ろから響いた。
後ろから声がするのと同時にその男の表情が渋く変わった。


 「本当に喋りすぎたみたいだな。今回はもう何もしない。
 ・・・一応、最後に名前を聞いておく。
 俺はネルソン。お前は?」

 「何もできないの間違いだろ?
 オレはリクだ。
 予備予選が何かは知らないが、ネルソンとは決戦まで戦いたくないものだ」

 「嘘だな。叩くなら今のうちって思ってるだろ?
 俺もそう思ってるからな」

 「やめようぜ。オレは場外バトルは好きじゃないんだ」

お互いに顔を背け、それぞれが不気味な笑みを作った。

ああ言ったが、ネルソンとは戦いたくないというのは本音だ。
かといってネルソンがオレ以外に負けるのも嫌だ。
かといってオレの手で叩こうとも思わない。

この一時だけで、ある意味、恋人より大切な存在になった事を実感する。
このくすぐったい感情は経験しなければ味わう事がない、不思議な気持ちだ。

ネルソンはエレベータの人から逃げるように会場へと消えていく。
オレも人混みにややまぎれながら、会場へと向かった。


 「リクさんですよね?」

後ろから聞き覚えのある声がした。

 「ん?お前はキユウだっけ」

 「はい。覚えて下さっていて光栄です」

この好青年は、ラッシュに行く途中のバスで同席となった男である。
そういえばキユウも町興しの為にエネジスを探しているとか言っていたが
もしかしなくても、それはフェリスなのかもしれないな。
理由はないけど、キユウもエリアスターな気がしてならない。

この世界の住人じゃないからか、気が合うように感じてしまうのか
ネルソンの前ではわからないといったが、
実はエリアスターの見分け方を実感しているのかもしれない。


 「前に言ってた事だけど、キユウの探してるエネジスって、もしかして」

 「リクさん。それは言葉にしない方が良いですよ。
 それよりもここから下の階段がなくなってるのは凄いですね。
 まさか、リクさんの仕業ですか?」

 「それはないよ。オレはこんな派手なことしないからね」

 「そうですよね。
 変に目立っちゃうと色々やりにくくなりそうですしね」

いや、階段を落とさなくても、十分目立った行動はしてたけどな・・・。

それにしても、フェリスのことを聞こうと思ったら、これだ。
という事はジュリに聞いても似たような反応って事なのかね。
どちらにしても合流したら聞いておかないといけないけどな。




キユウの言っていた事はそれこそ杞憂だったのかもしれない。
会場に着いたオレらを持っていたのは受験会場の様な机がずらっと並んだ、堅苦しい場所だった。


そこには机といすが一人分ずつ均等に配置されている。
椅子の背もたれ部分に記号と数字が書かれており、それが座席場所を示していた。
F13と書かれた椅子の前に立ち、机を確認する。
机には右上と左上に枠のようなもの付けられており、真ん中には5つのボタンと液晶モニターがついている。

 「ワタシも自分の席に行きますね」

ここまで一緒に居た事を一瞬忘れていたが
キユウも自分の座席の方に向かって行った。

それにしても、コレは何かの5択クイズでもするつもりなのか?
マテルを使う必要がなさそうな予備予選だな。
オレは肉体系の大会を想像していたから、この展開には正直肩透かしを食らった。

少し気が楽になったのか、座席に着こうと一瞬周りを見てみる。
何かの理由なのか、見た感じ、席に座っていないのが気になったオレは
机に腰掛けて周り少し観察していた。
会場にいる人はほとんど誰とも会話することなく、オレと似たように周りを観察する人が大半だった。

その中、ネルソンは普通に椅子に座ってるな。
どうやら、特に椅子に座る事のペナルティはなさそうだな。
安心して席に座ると、それに反応してか机の液晶モニターが反応した。

そこには

 【ようこそ。
 ダイア・トゥ・マスター参加ありがとうございます。
 この着席を持ちまして予備予選参加を承認いたします。
 なお、いかなる事情があろうとも、予備予選突破するまでは離席を禁止いたします。
 離席された場合棄権とみなされますのでご注意ください。
 なお、これはチーム全体の連帯責任となりますので、重ねて注意してください】

と、表示されていた。
どうやら・・・もう席を立つことはできないという事らしい。
ほとんどの人が座っていない事には、やはり理由があったという事なのか。

と、なると席を立たないといけない理由でも出来るという事なのか?
どちらにしても厄介な条件だ。
予備予選の説明が始まるまで寝たふりでもしているか。




小一時間程寝たふりをしていると
目覚まし音のような非常ベルの音で目を覚まされた。

 「これから、ダイア・トゥ・マスター予備予選を行います。
 出場選手の皆さんはこれよりルール説明までにご着席されない場合
 棄権として扱いますので、ご注意ください。
 なお、ルールは液晶モニターにて表示いたします。
 会場入りする時にお持ちになっていたレコードカードを、机左上のカード置き場へ置いて下さい・・・」

上から音声ガイダンスの様な説明が始まった。
聞きなれないレコードカードというモノだが、つまりレコカの正式名のようだな。
レコカを左上に置くと、確かに液晶モニターに説明文が出てきた。


 【―ダイア・トゥ・マスター予備予選ルール―
 
 右上より1枚のカードが出てきます。そのカードの裏側に書かれている記号を当てるだけです。
 カードの種類はこのモニターに表示されますので、下のボタンを押すと選択できます。
 選択後、カードは自動的に裏返り、正答か誤答かを選手の皆さんも見ることができます。
 裏返ったカードを取り外すと、自動的に次のカードが出てくる仕組みです。
 その記号当てを10枚1セットとして行います。
  
 なお、今大会は3人一組ですので3人の総合ポイント数で予選進出が決まります。
 1枚正答すると1ポイント。合計30ポイント以上を取ると予選進出です。
 このポイント数はチーム内でも知ることはできません。自分のポイントのみがわかるようになっています。
 途中で30ポイントを超えても10枚1セットが終わるまでは続けなければなりません。
 
 予選突破チーム数は75組となっていますが
 セットによっては75組以上が30ポイントを得ることも十分に考えられます。
 その時は総合ポイント数にて順位が決められます。
 ポイント数が同じ時は30ポイントを得たのが早い方からとなり
 それが同時の場合はチーム同士のポイントの獲得数順でポイントを比べて多い方となり
 それも同じ場合は、回答の選択時間が短いチームが上位になります。
 順位は予選において意味がありますので、なるべく早く予選進出を決める方が有利になります。

 カードには触れて良いですが、勝手に裏返す行為をしたら即刻失格となります。
 隣の人の回答を真似するのは構いませんが、各自、別種類の正答になっていますので意味がありません。
 回答時間に時間制限はありませんが、遅くなる程、順位決めで不利になります】


数ページに分けて説明が表示されている。
それはガイダンスが始まって10秒もしないうちの事である。

 「以上でルール説明終えます。
 参加チーム数285。予選進出数75で行います」

液晶モニターにはまだルール説明が流れているが
予備予選締め切りが終わったようである。
流石に着席に間に合わず棄権扱いになっているモノはここには居ないようであるが・・・

いや、何人かが青い制服の人に声をかけられ、席を立っている。
席を立つことは棄権扱いになるので、つまりはチームのメンバーが時間に間に合わなかったという事だろう。

・・・
まさかとは思うが、リディやジュリは間に合わないって事はないだろうな。
ジュリはいいとしても、リディはわからない。
始まる前から終わるなんて最悪な落ちはやめてくれよ。




な、なんという女だ。
ウチは着席してるからどうにもできなかったけど、この時点で着席出来なかったのは
20人近くは居るぞ。

 「こんなことありか?あの女っ!」

着席出来なかった一人の大男が、その原因を作った女に食って掛かろうとしている。
全体的にしだれの様な髪形をしており、表情が全く読み取れないが、その女は薄ら笑っているように見えた。
大男が拳を出すが、女を守るように張られているような水の膜を弾き飛ばしているだけで
女には何もダメージはない。
この女、水のマテルを持っているみたいだな。

着席出来なかった人達は共通して座席が水浸しになっており、
座ったところで机の画面が動く状態でも無かったように見えた。
現に、座ろうとしても座席に水の膜が覆っているみたいで、着席の合図となる液晶の画面表示が行われていなかったようだ。
ウチは先に着席していたから被害を受けずに済んだようだけど、
その女はウチの斜め前の座席にいて、その女の周りの座席の者は全て着席できていなかった。

結局の所、大男は拳ひとつ返せないまま退場を命じられていた。
それにしても、
こういう場でマテルを見せびらかしても何の得にもならないと思うんだが
階段を壊すマテルを使った者も居るみたいだし、この大会はただのカード当てにはならないって事だな。

それは兎も角、ウチの方に青い制服の人が来ないって事は、リクやマスターも無事着席できたという事か。
階段の崩壊にリク達も絡んでいると思っていたんだが、思い過ごしだったようだな。
右上に1枚目のカードが出てきた様なので、早速始めるとするぞ。
でも、ウチはこういう運試しの様な遊びは苦手だな。

選択できる記号は【○】【□】【+】【≡】【☆】の5種類みたいだな。
それぞれ、【まる】【しかく】【ぷらす】【なみ】【ほし】と読むみたいだけど
【なみ】は無理があるように見えるのはウチだけなのか?




35階、33階、30階と別々に別れたオレ達は
とりあえず、予備予選を問題なく参加出来ているようだ。

それにしても、この選択記号。
ESPカードって事みたいだな。超能力テストで使われる5種類の記号が描かれてるカード。
マテルが魔法っていうか超能力って考えると、
使いこなせてる奴程、正答率が上がるって仕組みなんじゃないのか?

オレの様なエリアスターとかは不利としか思えんな。
だとすると、リディ頼みという事か?

先程までは違うと思ってたが、しっかりマテルに絡んだイベントって事らしいな。
運も実力のうちとは何処かの誰かが言っていた気もするが
運だけで乗り越えられるのか?

と、考えていても始まらないので
まず1枚目。適当にやってみるか。


【☆】を予想してみるが、正答は【≡】
元々超能力など縁の無いオレに、いきなり正解しろっていうのが無理な話だ。

2枚目。
同じく【☆】を予想する。というか当たるまで【☆】で通すつもりだ。
理由はないが、オレは超能力も透視能力もあるわけでもないのだから
下手にバラバラな選択をするのは、確率的にも分が悪いと思い込んでいたからな。
ちなみに正答は【□】だった。
そんなやり方で、4枚目でようやく【☆】を引き当てた。

さて、ここまでだが
【≡】、【□】、【≡】、【☆】という結果だ。
この次に【☆】という選択をし難いのが人間の心理ってもので、ここはなんとなく【○】を選択してみる。

運なのか実力なのか【○】が正答だった。何気に2連勝。
たった2連勝なのだが、こうなると次もいけそうな気がしてくる。
ここまで全く登場していない【+】を選んでみる。

しかし、これが現実というモノで【□】が正答だった。
残り4枚。
流石に【+】は1枚ぐらい出るだろう。
そう思いたくなるのは、確立としてという先入観があるからだろうな。

しかし、7枚目は【☆】だった。
残り3枚。
次こそは【+】が出るだろうと思っていたが、ここまで出ていないという事は
逆にこのセットは出ない可能性もある。
オレが出題側なら、【+】はあえてこのセットで登場させない。

かといって、他の選択肢も選択し難い。
初心に帰って【☆】を選んでみるが、こういう時というのは不思議と前者が正解になるみたいで
【+】が正答だった。

・・・と
ここでオレじゃなくても気がついただろう。
残り2枚はどちらかしかないという事だ。
いや、そう思わせて全く別の記号って事もある。
1セット目で予選進出は3人とも答えを知っていない限り不可能だから、
ここは捨ててでも法則を見つける方がいいのかもしれん。

偶然なのかもしれないが、
このセットは【○】と【+】以外はそれぞれ2枚が正答で、この2つはそれぞれ1枚が正答になっている。
もし法則があるのだとすれば、5種類のカードを2パック使用して1セット10枚となっている可能性があるわけだ。

普通なら、前回が【+】で次も【+】というのは選び難い選択だ。
しかし、残りが【○】と【+】しかないなら、確率は50%なので前回の結果は関係ないはず。

もちろん、5種類2パックなんて考えが当たっているかどうかも分からないが
適当にやるよりは、万が一外れても納得できるってモノだ。
ここは【+】を選択する。

法則は当たっているのかもしれない。
正答は【○】だったが、最後は【+】だという可能性も一気に高まった。
10枚目は迷うことなく【+】を選択し、正答を確認する。

【+】だった。


偶然というにはあまりにも綺麗に出来すぎた5種類2パックの正答。
この法則が間違いないのであれば、10枚1セットのうち最後だけは間違いなく正答することは出来そうだな。

だが、そんなことでは30ポイント、つまり30枚の正答には程遠い道のりだな。
それに、今回だけが偶然5種類2パックだったという可能性もあるわけだから
ほとんど何もわかっていないに近い。

そして、オレの考える法則を無視した事例が起こる。


 「皆さんどうでしたでしょうか。
 まず1セット目ですので、まだ予選進出チームは登場いたしませんが
 次のセットで進出される可能性もあるチームがいくつかあります。
 これは一例ですが、こういう正答もあるという事を液晶モニターで認識してください」


再びの音声ガイダンスが上から聞こえる。
そして、液晶モニターを見て愕然とする。
マテルなんてふざけたモノがある世界だから、こういう奴が居てもおかしくはないのだろうけども
コレはいくらなんでもおかしい。


【○】【○】【○】【○】【○】【○】【○】【○】【○】【○】


全ての正答が【○】なのである。しかも、回答した選手は全て正答を選んだらしい。
明らかな不正としか思えない正答だが、そういうのもアリって事を言いたいのだろう。
かと言って
解除的なマテルを使いこなせると診断されたオレには、こんな不正はまず無理だ。

この回答を見せたのは、参加者に動揺を与えるだけだとオレは確信した。

見た所でオレは何も変えるつもりはない。
いや、アレを見た所で変えようがないのだから。


2セット目が始まる。

5種類2パックが本当だったとして、オレには最後しか確実に正解できないわけだから
実のところあまり役に立たない法則ではある。

他に考えられる法則ぽいモノはないだろうか。
そういえば、ルールの説明で
隣の人の回答を真似しても、各自、別種類の正答になっているとあったが、本当にそうなのか?
次はそれを確かめて見ようと、周りの人物の正答を確認してからやってみる事とした。

適当にやるよりは、幾分かマシだろうからな。


左隣は【☆】が正答、右隣は【□】。
前方は背中に隠れて見え難かったが【≡】に見えた。
左斜め前が【○】、右斜め前は完全に人とかぶっていて見る事は出来なかった。

確かにカンニングをしたところで正答にはありつけない気がしたが
ここでふと、誰も正答がかぶっていないことに気付いた。
いや、かぶっていないにしろ、5種類しかないんだからどこかで被る可能性の方が高い。

ん。いや、そうとは限らない。
上下左右で全てバラバラになっている法則となれば可能性があるからだ。
後ろを見る事は出来ないが、左右と上は確認済みだ。
それでいくと【○】と【+】が出てきていない事になり、どちらかがオレのカードである可能性がある。
さらに、左斜め前の事を考えると、オレのカードは一つに絞られ【+】という事になる。

左斜め前が【○】になっている為、左隣を中心で考えると
前と右隣が【○】になるのはおかしいからだ。
もちろんこの場合の右隣はオレという事になる。

果たして、この法則が当たっているのかはわからないが
やってみる価値はあるだろうと、【+】を選択する。
そして、見事1枚目で正答を得る。

これはカンニングに意味はあるという事だ。
ここまで綺麗に決まっていると偶然とは言い切れない偶然だと確信できる。


ただ、オレはこの法則を発見した一瞬の喜びでミスを犯す。
周りのモノの次の正答を見逃したからだ。
当然ながら、回答速度も人によってまちまちだ。
左隣はもう4枚目だが、右隣はまだ3枚目のようである。
前に至っては何枚目かもわからない。

仮にこの法則が正解だとしても
これは1枚目と10枚目だけを確実に正答できる法則になっていた。
オレは周り4人の正答をきちんと覚えられるほど、脳味噌の出来が良いわけではない。
理屈だけわかっても、覚えきれないのでは話にならない。

何回かカンニングを試みて、5択より選択肢を減らすことには成功していたものの
2枚目以降は実に見事に正答を外し、最後の【□】だけを正答しただけで
あとは全て外してしまった。

この時点でオレは5ポイントしか取れていない。
ジュリもおそらくオレと似た程度のポイント数だとすると、リディがどれだけ稼いでいるかによるな。
一応この世界の住人でマテルを持っているのだから、オレ達よりはポイントを稼いでいると信じて
低く見ても12、3ポイントは得ていると思いたかった。
そうするとオレらは現在23ポイント前後という事になる。

思ったより、30ポイントに到達できるのは早いわけだ。
3セット目で予選進出もありえる。
しかし、これは全て仮定での結果なので、これ以下という事も十分あり得る。
3セット目はなるべく取りこぼしがないようにしないといけないな。


 「皆さん、2セット目お疲れ様です。
 ここで、早速予選通過チームが出ました。
 おめでとうございます」

三度、音声ガイダンスが上から聞こえた。
どうやら、ご丁寧にセット毎に説明をしてくれるようだ。

液晶モニターには、その予選突破チームの一人の正答が出ていたが
この人物はきちんとやっているようで、5種類2パックの正答が映し出されていた。
これで、5種類2パックの法則はアリという事だけは確定的になった。
更にこれまた驚くことに、この人物も10枚全てを正答しているという。

 「付け加えるなら、この選手は1セット目も全問正答しております」

全てが【○】の奴も異常だが、
こいつはこいつで透視能力がある選手という事だろうか。
どちらにしろこの階の会場からは誰も動きはないため、どういう選手のチームかはわからずしまいだな。



当然の事ながらリクは知らなかったのだが、
この会場にはその予選進出チームの選手がきちんと居たのである。
その選手は予選突破を決めても次のセットのカードが出てきた事に疑問を持ち、
あえて会場を出ない選択をしていたのである。
下手に動いて他の選手に顔を見られるデメリットを、咄嗟に無くしたとも言える。

どちらにしろ、リクは法則を見逃さないようにする事に集中していて
それどころではなかったのではあるが。
ちなみにリク達の総合ポイントはこの時点で20であった。
ポイント予想的にはそこそこ良い線をいっていたのだが、一つだけ誤算もあった。




 「・・・む」

ど、どういう事かさっぱりわからないぞ。
20回。
もう20回もやっているんだ。
1枚ぐらい当たっていてもおかしくはないはずだぞ。

20枚選択して、正答0枚。
このままではリク達に申し訳が立たないぞ・・・。



ジュリレスターはある意味全問正解より難しいと思われる、全問不正解という記録を作っていた。
こういう表現は失礼だが、単純であるが故に、法則がある事にも気が付かず
ただ闇雲に、自分の勘だけを信じて選択を続けた結果である。

3セット目は逆に、自分の勘でそうじゃないと思った記号を選択する事に決めたようだ。
この結果、リクが思っていた以上にリディは正答をしているという事になった。
それを知ることになるのは、やや先の話になるのではあるが。



3セット目が始まったぞ。

ウチは【○】が来ると思っていた。だから【○】はないな。
逆にないと思ったのは【☆】だ。
つまり1枚目は、【☆】を選択するぞ。

しかし
カードは【○】が正答だった・・・。
ウチの運の無さは折り紙つきのようだな。

格闘系ならウチも活躍できるはずなんだが、このままでは足を引っ張って終わりって事になるぞ。
どうにもならないけど、何とかしなければいけないな。

次は目をつぶって選択しよう。



そう思ってジュリレスターが選択したのは【□】。実際の正答は【☆】であった。
見事に22連敗である。

この後も色々やってみるのだが、正答が逃げていくかのように誤答が続いていく。
ここまで正答がないのは出場者でジュリレスターただ一人であった。

リクとは言うと、3セット目で2連続正答をするのだが
3枚目で左隣にいた人物がリクの動きを不審に思い、カードを隠すようになった。
これによって正答確率が一気に下がり10枚目まで正答なしとなる。
リクもジュリレスターと同じく、ある意味運に見放された人と言えよう。

ここでリディも運が途切れてきたのか、半分の正答率になってしまう。
つまり総合で28ポイント。3セットを終えてなお予選進出とはならなかったのである。
これは実は危機的状況であった。



 「この正答率じゃ予選突破は厳しいな・・・」

そう呟いてガックリと肩を落としたリクの前に、一人の人物が現れていた。

 「頑張ってください。まだ75チームが予選進出したわけではないようです」

キユウがそこには居た。

 「ん?キユウ。
 予選進出決めた・・・のか?」

 「はい。ワタシはほとんど何もしてなかったんですけどね」

 「へぇ〜。良い仲間に恵まれてるんだな。
 オレの方はまだみたいだ。オレも全然正答ないしな」

 「きっと、4セット目で突破できますよ。
 焦らず選択できればきっとリクさんなら出来ます」

微妙にバカにされているような気もしたが、
キユウの口調の柔らかさに騙されてか悪い気はしなかった。
女性なら、癒し系になれそうな言葉使いだな。

って、なんの話だ。
キユウは勝者の余裕という感じで会場を出て行った。
やはり、微妙じゃなく結構腹が立ってきた。
と、キユウにあたってもしょうがない。


オレの正答率でも4セット目でチームとして30ポイントになるのは多分間違いはずだ。
ジュリかリディがオレ以上にポイントを取れてないようなら危険なのだが
オレはここまで8ポイント。
3人が平均して10ポイント獲得できれば突破できる計算である以上
そして、オレの左右と前と左斜め前の人がまだ会場に残っている以上
オレが累計10ポイントを確保できるのは間違いない。
左隣は3セット目でオレを警戒していたようだが、今回は何も警戒していないように見える。
おそらくというか間違いなくだが、予選進出を決めたのだろう。
それでも、ここに残って選択を続けてくれている事はオレにとっては助け舟である。

そんな理由もあって、30ポイント以上は大丈夫だろうと思うのだが
そこで出てくる問題は4セット終了後に75チーム以上が該当になった時の条件だ。

【1】まずは総合ポイント数にて順位が決まる事。

【2】1が同じであれば30ポイントを得たのが早い方からとなる事。

【3】2も同じであればチーム同士のポイントの獲得数順でポイントを比べて多い方となる事。
  これは、例えばリディが15P、ジュリが14Pでオレが11Pで、
  対象となるチームがそれぞれAが14、Bが13、Cも13だとすると
  リディがAと、ジュリがBかCと、オレがCかBと比べる事となり
  そうなると、リディとジュリは勝ちなので、オレ達のチームが勝つという事になるわけだ。

最後に
【4】3も同じ(引き分け)であれば、回答の選択時間が短いチームが勝つという事。

【4】にまでになるとは思えないのだが
【3】になった時でも、リディかジュリが飛び抜けてポイントを取っていたとすると
不利になる事には変わりない。


オレが不安になっているのは、ジュリがオレよりもポイントを取れてない可能性が高いという事だ。
考え難いのだが、そうなるとリディがオレらのポイントを稼いでいるという事になる。
そうだったとして、【3】の条件にまでなってしまうと、こちらが不利なのだ。

そのために、このセットは多くのポイントが必要になる。
先程も言ったが、3人が平均して10ポイントを取れば予選進出できる計算なので
ほとんどのチームが、よっぽどの悪運がない限りこの4セット目で30ポイントを超える計算になる。
そうなると、やはり総合ポイントが多い方という事になる。

本当ならば、3セット目で予選突破を決めていなければいけなかったわけだ。
オレの運の無さから考えても、予備予選参加チームが300近く居る事からしても
4セット目まで残ったのは非常に厳しいラインにいるという事になる。

こんな運試しみたいな予備予選で、ダイアだけ払って終わりという結末じゃ
あまりにもお粗末すぎる。


最悪の展開になっていない事を祈るばかりだが
オレは少しでも多くのポイントを稼ぐ事に集中するしかない。
まさか今の所オレが一番多くポイントを得てるというはあり得ないだろうしな。
かと言って
オレが一番少ない可能性も実はあまりない

オレは8ポイントを獲得しているので、
そうなる可能性があるとすれば、リディとジュリがそれぞれ9か10ポイント、
もしくは片方が11ポイント獲得している時となる。
しかし、オレの予想通りでいけば、リディはもう少しポイント獲得しているはずだ。

それはマテルを使いこなせてる奴程、正答率が上がるって仕組みとだと
思い込んでいる所に理由があるのだが
それが事実だとすると、3セットで予選突破できなかったオレらのポイント配分は
ジュリが圧倒的に少なるなるからだ。

ジュリがマテルを使いこなせてないというのも納得はできない部分なので
もしかすると逆もありえるとは思うが、ソコはエリアスターという部分が影響しているんだろうと
オレは勝手に思い込んでいた。


なんにせよ繰り返すが、多くのポイントを稼がないといけない事に変わりはない。

1枚目はカンニングにより特定できたため【□】を選択し、見事正答する。
問題はこれからで、2枚目もなんとか推測できる範囲で【≡】を選択。これも正答になる。

3枚目あたりから、周りの回答スピードが変わり、判別が難しくなる。
【☆】か【≡】の2択の予想になるが、【≡】の連続はないだろうと読んで【☆】を選択する。
しかし、これが外れて【≡】が正答。
だが、選択肢が一つ減った。

しかし、3セット目でも同じ状況になっていた事だが、4枚目あたりになると周りの回答がほとんど分からなくなっていた。
一応回答しながらも、周りの回答を見るように目を配っていたのだが、
3人を見るのも実は厳しい。
とりあえず左斜め前だけはずっと目で追えていたので、ソコだけに注目してやるしかなかった。


【□】【≡】【≡】【☆】【○】【□】【+】

という流れで、ここまで3ポイント獲得できている。
残り3種類という展開は3セット目と同じなのだが、その時は10枚目の1ポイントしか獲得できなかったオレの運の悪さは相当なのだろうか。
同じミスだけはしまいと、ここで左斜め前の正答を思い出してみる。


【○】【+】【+】【□】【≡】【○】【☆】

となっており、今頃だが法則がある事に気が付いた。
もう、これ以下のポイントは落とせない。

左斜め前の次の正答が【☆】だったので、オレの選択は当然【+】である。
そして、それは当然に正答だった。
このまま行けると思い始めて、残り2枚となった所で
左斜め前の人物が思いがけない行動に出た。


突如立ち上がったのだ。
・・・
コレは想定外の出来事だった。

とはいえ、正答率は50%か100%なので1ポイントは確実だ。
しかし、ここはしっかり2ポイントを得ておきたい。

【○】か【☆】

右隣を見ると、どうやら【+】であるが、全ての正答を見ていないのでどちらにしてもお話にならない。
前に至ってはすでに終わっている。
左隣は、すでにめくれている【○】のカードを机に右側に重ねて混乱させようとしている。
視線を感じていたので間違いないが、このセットではオレの正答を全て覗き見していたからな。
その【○】は正答を示しているのかもしれんが、どちらにしろ見知らぬ人をあてにはできない。

もう後がないと感じたオレがとった行動は、実にとんでもなかった。
後ろを向いて完全にカンニングを行ったのだ。

なぜこの時に後ろを見たのか、一瞬の思いつきだったので覚えてはいない。
後ろの人物の驚いた顔と、【☆】が表になっている事しか目に映らなかった。

時間だけが過ぎてもしょうがない。
後ろを見るという愚策をしてまで得た情報を信じてオレは【○】を選択する。
もちろん後ろの人物が9枚目だという保証は全くないわけだが
こうなった以上は偶然でも何でもいい。正答さえすれば。


・・・
とりあえず6ポイントはオレ的には上出来だ。
あとは総合ポイントの結果待ちという事になる。
3連勝で終えたオレは、一つ大きなため息をついた。

4セット目を終えて聞きなれた音声ガイダンスが上から聞こえる。

 「皆さん、4セット目お疲れ様でした。
 75組以上の突破が認められましたので、これで予備予選を終了させていただきます。
 なお、予選突破のチームは液晶モニターに表示されております。
 ポイント数、順位などの詳細については一切お答えできません」


答えないって、それじゃ不正をしてますって言ってるようなもんだと思うんだが。
確かに、ナビ職のトリノもこの大会は胡散臭いって言ってた気がしたな。
なんにせよ、ソレよりも結果だ。




リク、マスター・・・すまん。
ウチのせいで負けたかもしれない。

いくらなんでも40枚選択して、1枚も、1枚も正答が無いっておかしいんだ。
ウチがこんなに運が悪いとは知らなかったぞ。
仮に予選進出になったとしても顔向けができないぞ。

思えばウエブに来てから
メレオンが盗まれたり、リクのエアポケット破壊したり、この40連敗だったり
明らかに悪い事だらけだ。
ウチ・・・このままで大丈夫なのか?

そんなわけで、液晶モニターを見る勇気が全くなかった。
頭を抱えて机の上でうずくまっていたぞ。


数分しか経っていないと思うけど、周りが静かになった。
ウチしかここには残ってないみたいだ。
でも、顔を上げる気力がない。
ここまで弱気になる事は生れて初めてかもしれないな。
ただの運試しで、ここまでショックを受けるとは思ってもみなかったぞ。


更に数分経った気がする。
その時、ウチの肩に誰かが手を触れたみたいだ。

 「予備予選は終了しましたよ。起きて下さい」

顔を上げると青い制服を着た人がウチの目の前に立っていた。

 「予選参加者はこの部屋奥のエレベータから地下にお進み下さい。
 敗退者は出口からお帰り下さい」

・・・敗退者。
そうか、ウチのせいで負けたのか。
リクには何と言えばいい。雑貨屋の店主にエネジスを持って行けなくなったぞ。

また、ウチは・・・


む??

目を液晶モニターに映した瞬間、ウチは混乱状態になった。

 【予選進出。F13】


ウチは、予選突破していたのか?
リクとマスターが頑張ったのか。
そうか・・・。

でも、行く勇気がないぞ・・・。

ウチはどんな顔をして二人に再会すればいい?


フラフラな状態で立ち上がると、
部屋の奥にあるエレベーターに吸い込まれるように進んでいく。

 「ちょっと待ってください。レコカをお持ちになって下さい」

青い制服の人からレコカを受け取った事も、夢の様な状態のまま
エレベーターに乗り込んだ。




ここは、地下5階らしいな。
そこで扉が開くと、また青い制服の人が待っていた。

 「レコカを出してください」

ウチは、言われるがままにレコカを差し出した。

予備予選と同じようなスキャナーがそこにもあって、ウチのカードを読み込んでいるみたいだ。
数秒後、取り出したカードを渡された。

 「これが予選用のレコカになります。
 本選に進む為の大切なレコカですので、無くさないように気を付けてください。
 なお、予選開始は今から10分後です。
 目の前の扉にレコカを差し込んで中にお入り下さい。
 中に入らなかった時点で棄権扱いになります」

そう言われるとエレベーターと反対側に一つの扉があった。
そこにレコカを差し込める機械が設置されている。

レコカを差し込まないと扉が開かない仕組みのようで
差し込むと、レコカが中に吸い込まれた。
それと同時に鍵が開いた音が響く。

 「む。カードが出て来ないぞ?」

 「心配しないで下さい。中に入るとカードは戻ってきますよ」

青い制服の人がそう言うので、それに従うようにウチは中に入った。
扉が勝手にしまった事に一瞬驚いたが、ソコは壁が牢屋の様な作りになっていた。
閉まった扉は檻に見えるようになっていて、それはまるでマジックミラーのようだった。
レコカはというと、その扉の横に飛び出ている状態であった。
もちろんと言うべきなのか、檻の扉を開けようとしても開かない。
レコカを取ってみてもそれは一緒だった。

仕方なく中を見てみると、そこにはエネジスが埋め込まれている腕輪と、1枚の紙と2枚のレコカが机に置かれており
紙には腕輪をはめると予選会場の扉が開くと書かれていた。
レコカは予選で使用しますとしか書かれていなかった。

 「ウチは、閉じ込められたのか?
 予選進出はウソで、騙されたって事か?」

説明文の紙を見てもウチはやや混乱していた。
それでも、扉が出てくることを祈って腕輪をはめた。
しっかりとはまったようで、この腕輪を外せるようには見えなかったが
エネジスが埋まっている事から、今度はこの腕輪を奪いあうのかもと想像した。

それと同時に、先程と同じく鍵が開いた音が響いた。
扉と言っても檻にしか見えない先程の出口しかないんだけど
もう一度ウチはその檻に手を触れた。

今度はきちんと檻が開いた。




ソコは、先程のエレベータがあった場所ではなかった。
地下の筈なのに、草原と幾つかの住居のある空間が広がっている。

 「ウチは一体・・・何処に居るんだ?」

混乱が混乱を上回って、どうして良いのかわからなくなっていた。
誰もここには居ないのか?
もう一度、檻の部屋に戻って落ち着いてみようかと思い後ろを見たが
そこには扉はなく、同じような草原と住居のある空間が広がっているだけだった。


ここが予選会場なのか?
ウチは半信半疑ながら、ここで予選の説明を受ける事になったんだ。





前の話 目次 次の話