03
【マテル】
マテルの使用禁止はデックスの町の中だけなのか
デックスを含むその地域の事なのか、今のオレには知る由も無かった。
デックスの町から外に出てみると軍隊ぽい奴が居ない事もあり
そこで、一つ試してみることにした。
移動のマテル。
魔法なのだから何かそれっぽい名前でもつけようかと思ったが
さすがにそれは子供くさいか。
理屈で説明するのは難しそうだが
このマテルの効果は移動スピードを早くするというよりは
一歩を踏み出すごとに目標となる目に見える場所へワープするように移動できるモノらしい。
感覚的には、ものすごく遠くへ跳躍出来る一歩ということだろうか。
コレを使えば簡単に移動できる気はする。
しかし、魔法のようなものであれば使用回数とかが必ずあるはず。
たいがい魔法と言えば、精神力に関わる事が多いイメージ。
おそらくマテルもそうなるのだろうけど
一度の使用でどこまで移動できるのか、その一度でどれだけの精神力を使うことになるのか
そういう部分を理解しておく必要が今後のためにも必要なはずだ。
足に集中する。
熱とも違う熱さが足を覆い、その状態で足を一歩踏み出した。
足を上げた瞬間、周りの景色が一変する。
目標だけはくっきり見えるが、他は漫画の効果線のように直線に流れて見えた。
乗った事はないが、F1マシンか戦闘機に乗っている雰囲気である。
目標を遠くにし過ぎたのか、踏みおろすまでに軸足がフラフラになっているのがわかる。
それでも力を振り絞り足を地につけた。
目標はやや遠くに見えた森にしていたのだが着いた地点はその森の中の様だった。
コレは目標どおりなのか、オレのマテルの使い方がなっていないのかはわからなかったが
1回でフラフラになるという事は、答えはおそらく後者であろう。
せっかく便利なマテルがあっても、使いこなせなければただの無駄使いになってしまう。
オレは近くの木によしかかり休みをとることにした。
☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆
冷・・・たい?
何か冷たいものが頬にある。
というか何時の間にか寝てしまっていたようだ。
・・・いや、「ようだ」じゃない!
一気に目を開けて、この状況を確認しなくては・・・
って、何だ?この状況。
今さっきどこかで見た制服の人達がオレの周りを囲んでいる。
頬に当たっていた冷たいものは、よく切れそうな鋭い剣だった。
「ちょ・・・あんたら、な、何しに」
頭の中が真っ白になっていた。
今使ったマテルのせいか?それともデックスで探されていたのはオレだったのか?
ここはまだデックスの中なのか?
混乱につぐ混乱に、突きつけられている剣の存在で、オレには冷静な判断は無理だった。
「お前がエリアスターであることはわかっている。
だが、デックス地方でマテルを使うことは何事があっても禁止事項だ。
とりあえず私達と共に来てもらおうか」
「オ、オレをどうするつもりだ!処刑にでもするのか!冗談じゃない!」
剣を無心で振り払うと、そのまま真っ直ぐエリア警察機構の部隊に突っ込んだ。
一人を吹き飛ばしたが、すぐさま他の者達に取り押さえられる。
地面に顔をつけられ両腕を空に持ち上げられている。
顔を抑えている者、肩を抑える者、両腕を持つ者、腰を抑える者、足を掴む者
少なくとも5人がかりでオレは動けなくされていた。
体力に自身があるモノでも、この包囲網は解けないであろう。
「抵抗は止した方がいい。お前はそれまでのモノだっただけの話だ」
「うるさい!オレが死んだら、他の地球の人達もいなくなるんだろ?!
どんな理由があってお前らに無関係な命を奪う権利があるんだ!」
「マテル犯罪者の声を聞く必要は無い。捕獲して連れて行け」
おそらく一番の上司なのだろうが、今までとは違う慎重な声が命じ
オレの両腕、両足には手錠とおもられる何かが取り付けられた。
そのまま目隠しもされ、オレは自由に動くことも出来なくなり何かに載せられた。
目隠しをされたことで混乱状態はさらに酷くなる。
どうやってマテルを使った事を、こいつらはわかったんだ?
あの移動はそんなに目立つ動きだったのか?
もし仮にここでエネジスを奪われたら、オレはこの世界では完全に孤立するぞ。
そもそも、禁止されているだけで、こいつらもマテルを使えるのか?
どうやったらここから逃げられる?
もう、夢なら覚めてくれ!
いろんな思考が一度にオレを襲っている。
こんな状況で落ち着いて考える方が無理というものだ。
当然オレには何もすることが出来なかった。
色んな思考が巡っているのが収まったのは
載せられていた乗り物が急に止まった瞬間だった。
外ではエリア警察機構と何者達が争っているらしく
助けが来た訳でもないのに、何故かそんな気分になっていた。
どうやらオレを護衛していた奴らも外に出て行ったらしく、誰もこの中には居ないようだ。
外では鈍い鉄の音が響いている。
おそらくこれが剣音と呼ばれる音なのだろう。
剣音のおかげで、オレは一気に冷静さを取り戻した。
この襲撃者達が何を目的にしているかはわからんが
仲間を奪いに来たと思われても仕方ない状況だ。
この襲撃が失敗した場合、間違いなくオレの立場は更に悪くなるだろう。
何もできないオレは襲撃者達が勝つのをただ祈るしかない。
ただ、襲撃者が勝ったとしても他の目的であった場合、
オレもエリア警察機構のモノと共に消される可能性も大きい。
けしてオレの状況は良い方向ではないはずなのに、それでも落ち着いていられた。
理由のわからない感覚に戸惑いを覚えたが、同時に喜びも感じていた。
それがエネジスから得た知識なのかどうかはわからないけども。
オレの思考と同様に、外の戦いもすっかり落ち着いていた。
さて、これからどうなることやら。
自分事なのに、何故か他人事のように感じてしまう。
この落ち着きは、ある意味で諦めなのかもしれない。
ドアが開いた音がする。
目隠しはされているが光が漏れている印象を受けた。
「おーおー。こりゃけったいな格好にさせられてんな」
「誰だ?」
「特に名乗る名前はねぇな。ただ・・・」
オレの目隠しをソイツに奪われた。
光が慣れるまでやや時間をかけたが、その巨躯な風貌だけはすぐに理解できた。
「同じお仲間だと言うことで、今回は助けてやんよ」
同じ?
まさか、この巨躯、エリアスターなのか?
「おっと、余計なことは言うなよ。
この世界のはみ出しモノなんだからよ。変に自己アピールはしない方がいいぜ」
巨躯なりの忠告なのだろうと、思うことにした。
手下のような仲間がオレの手錠を鉄のハンマーのようなもので破壊する。
先程の剣音といい、ここもどうやらデックス地方ということなのだろうな。
マテルは使えないか。
「ありがとうな。どこの誰かもわからないが感謝するよ」
ようやく目が慣れてきて、巨躯たちの風貌も見えてきた。
一般の人というよりは、どこかの盗賊団といった方がシックリくる感じである。
巨躯な奴は言葉使いとは裏腹に、意外に2枚目な顔立ちをしていた。
そして、オレはどうやら大きな護送車のようなものに乗せられていたらしい。
「感謝するなら、一つ置いて行ってもらいてぇモノがあるんだよなぁ」
なるほど。
助けたから金目の物を寄こせって事か。
生憎、オレには1ダイアも所持金が無いわけなんだが。
「金目のものは何も持ってないぞ」
「ハハハ。そりゃそうだ。
マテルの使い方もまともになってないはみ出しモノが金目の物を持ってるとは思わねぇよ」
なんなんだ?コイツの狙いは。
って
オレがエリアスターって事を知っているって事は、狙いはエネジスってことか。
「お前・・・」
「おっと、それ以上は言うなって言ってんだろ?
兄ちゃんはなかなか洞察力がありそうだから忠告しておくが
失っても別に死ぬわけじゃないんだからよ。
ここで生き延びたければ素直に差出とくべきだぜぇ?」
確かに、言葉やマテルが使えなくなるだけで
エネジスを失った所でそれ以外に影響があるわけでもなさそうだな。
なによりオレには・・・
『はい、そこの盗賊さん大人しくしてね〜』
な、なんだ?
外からなにやら嫌な声がする。
そもそも、この護送車自体何か嫌な感じがしていたのだが。
「ちぃ、マスターの登場のようだ。
今回の借りは今度必ず貰うぜぇ。じゃあな」
巨躯な奴はそのまま出口から一目散に逃走した。
仲間の奴らが時間稼ぎをして、全員が外の声の主に抑えられた訳ではない様だ。
それよりも、その外の声の主を確認しなければならない。
『まだ中に乗ってる人出てきてくれない?』
言われなくても出て行くさ。
そして出て行って確認してやるか。
『はい。犯罪者君こんにちは』
「何が"こんにちは"だ。お前は他のエリアスターを見つけに行っているんじゃなかったのか?」
『え?・・・』
それは見覚えがないわけがない桃色の髪の女。
リディだった。
しかし、リディはなぜか驚いた表情をしている。
「なんだ?
元から妙な顔をしている奴だと思っていたが、更に妙な顔になっているな」
『・・・ねぇ、もしかして・・・私のこと覚えてる?とか?』
「なんだ?忘れていた方が良かったか?」
何なんだ一体。
元からおかしな奴だと思っていたが、再会後はまた輪をかけておかしなことになっているな。
それと同時に護送車も変化をし、いつもの光景に戻りつつあった。
だが、その護送車の変形は奴とは少し異なっていた。
マントや触覚や、肩の辺りでフラフラクルクルしているのは同じだが
顔というべき部分の模様が異なる。
そこでようやく、オレは事の変化に気がついた。
「リディ。特例条項が出ているようだ。
このエリアスターはなんだかの影響でそのままになっている」
『こんなこともあるんだね。ビックリした』
何だか胡散臭い会話をしているな。
「で、何の話か聞かせてもらえるかい?リディさんとナビ職の人」
『うん。い・・・』
「リディ。守秘義務違反だ」
何だか、このナビ職はやけに業務的だな。
あのトリノが例外的なのかもしれんが。
「ナビ職の人は今までの状況を見ているだろうからわかると思うんだけど
オレはやはりエリア警察機構に連れて行かれるのか?」
「マテル犯罪者の声を聞く必要は無い」
なんかこの声を聞いたような気がしていたが
オレを捕まえるように指示していたあの慎重な声の主のようだ。
「犯罪者って言ったって、オレはこのエリアのことほとんど知らないんだしさ
それで仮に処刑されたら、それまでってことなのかよ」
「そうだ。お前らは本来そういう扱いだ」
「ふざけるなよ。そんな理由で、簡単に消されてたまるか」
『本来、こう呼ぶべきじゃないんだけど、
リッ君達は・・・』
「リディ。守秘義務違反だ。しかも2度目だ」
このナビ職はやけにリディに発言させたがらないな。
というより、なんだかの核心を突いているのかも知れんな。
「なぁ、どうせオレは犯罪者として裁かれんだろ?
それなら別に隠す必要も無いだろ?」
「マテル犯罪者の声を聞く必要は無い」
また、それかよ。
しかし、このままだとオレは確実に消されるって事だ。
リディも立場的にオレには協力できなさそうだしな。
さて、どう切り出すか。
「リディ。
喋らないでいいから一つだけ教えて欲しいんだが
エネジスは一つだけじゃないんだな?」
「リディ。行動したら守秘義務違反で処分するぞ」
この糞ボールが!いちいち邪魔をするなよ。
そもそも、リディはオレを捕まえに来ているのか?
エリアスターを見つける以外は、ただの一般人と変わらないはずだが。
「リディ。特例業務だが、このエリアスターを連行しろ」
「そうきたか。
じゃあ。どうせ犯罪者扱いならここでマテルを使って逃走させて貰ってもかまわんよな?」
「リディ。早くコイツに錠をつけろ」
マテルで逃走と言ったのは狂言ではあるが
それはこのナビ職に行動をさせるためでもあった。
少なくともリディはオレのことを疑っている様子ではない以上
最善の策はこのナビ職を何とかするだけだ。
オレが手を出すだけなら少なくともリディには危害は無いはずだ。
ま、犯罪者なら犯罪者らしくマテルを使わせていただくか。
睡眠のマテル
オレはいまだにナビ職が生命体だとは信じてはいなかったから
こういうマテルは有効だと思っていた。
ナビ職は完全な睡眠をしない。
なので普通に考えると、このマテルは無効のはず。
しかし、オレはその裏を考え付いていた。
ナビ職を掴み、その手にマテルを発動させる。
この行動の際、ナビ職に抵抗攻撃される可能性もあったが
攻撃が出来るのなら、盗賊団に襲われている時にオレが中にいたとはいえ
護送車の変形をといて応戦していたはずだ。
それをしていなかった以上、少なくともこのナビ職には攻撃が出来るマテルは無いという事だろう。
その確信があったからこそ、オレはためらいもなくナビ職にマテルを使用した。
オレの予想通りというべきか、ナビ職は固まって動かなくなった。
実際には動けないというのが正しいのだろうけどな。
その光景を見て驚いているリディを見て、少しだけオレは笑った。
☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆
『これは・・・ちょっと大変なことをしちゃったかもよ。リッ君』
「どちらにしても、今のオレは犯罪者扱いなんだろ?
足掻けるだけ足掻く事にしたよ」
『私は、独立したエリアスターの手助けは出来ないことになってる。
しかも、リッ君は私との記憶を失ってない。
コレは独立してからはありえないことなんだよ』
「記憶?」
『うん。詳しくは後で話すけど・・・どうやって動けなくしたの?』
「後でかよ。
というか、お前はオレを捕まえる立場でなくていいのか?」
『うん。ただのエリアスターなら捕まえないとダメだけど
リッ君は選ばれたエリアスターってことだからね』
選ばれた?
それ以上に記憶と言う部分も気にかかる。
リディの話で、このエリアが胡散臭い理由が少しわかってくる気がした。
だが、その前に先ずは解答編と致しますか。
☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆
睡眠のマテルには、生命体を眠らせる効果の他に、睡眠を解く効果もある。
今回オレが使ったのは睡眠を解く方のマテルだ。
このマテルには
"睡眠をしているモノ"にしか効果がないため、
当然の事ながら睡眠をしていないモノには睡眠を解く方のマテルは効果が無い。
逆に、眠らせる方のマテルも"起きているモノ"にしか効果は無い。
ところが、トリノ自身の説明が正しければ、"常に起きて寝ている状態"なのがナビ職の"設定"になる。
オレはソレが"設定"であって、生命体としての性質だとは思ってはいない。
というわけで、オレが予想した通りに、ナビ職が生命というのを創造したモノであるなら
ナビ職に睡眠を解く方のマテルを使用すると、睡眠をしている部分を起こそうとする行動を起こす事になるが
常に一部だけを活動させて、一部を休ませるという特殊な"設定"があるのなら
休んでいる部分を強制的に起こそうとすれば、現在活動している部分を強制的に眠らせようとする活動が行われるはずだ。
更にいうなら、"睡眠をしているモノ"の睡眠状態が確定しない限り、睡眠のマテルは解除されないという性質があり
ナビ職の場合は上記の"設定"のせいで常に全てを起こす事ができないため
永遠と起こす動作を繰り返す事になり、行動の自由がきかない状態
例えるなら、パソコンでいうフリーズ状態に陥るはずだと推測出来たのだ。
もし本当の生命体だった場合は、同様の現象が起こるだけではなく
最終的に睡眠そのものが出来なくなるわけで、命に関わってくる事にもなるだろう。
仮に、このナビ職に睡眠を解除するマテルがあったとしても、使用する余裕はないとふんでいた。
トリノがナビ職にも脳のような組織があると言っていた事も大きいが
どちらにしても脳という部分は、何かをする行動の指令地点であるはずだ。
ソコが睡眠障害という異常をきたしている状態では、他の動作をまともに出来るとは思えなかった。
そして、今回それが予想通りの結果となった。
今回、眠らせる方のマテルを使わなかった理由は
眠らせて休ませ続けるより、起こして稼動させ続ける方が確実にフリーズし続けると考えていたからである。
フリーズさせるという事だけを考えると、どちらの睡眠のマテルを使っていても同じ結果になるとは思うが
それでも睡眠を解く方を使ったのは、オレには睡眠をするという欲求があるからだろうな。
リディにはかなり噛み砕いて説明したのだが、半分ぐらいしか理解できていないようである。
「じゃあ、今度はこちらの質問だが、選ばれたエリアスターというのは何だ?
エリアスター自体が選ばれた存在じゃないのか?」
『そーなんですよ。
私が選んだエリアスターの中で選ばれた人って事なんですよ。
リッ君みたいにエネジスを得ても記憶を失わない人もその一人になるって事ね』
「・・・ということは、普通のエリアスターはエネジスを得た時点で記憶を失っているという事か?」
『う、うん。』
なにやら妙にリディの歯切れが悪い気はしたが、オレの後ろに何かが居る気配でその理由を察した。
「計画通りには行かなかったようだな。野球ボール?」
オレは後ろを振り向きこそしなかったが、そこには予想通りトリノがいた。
トリノはオレを通り越えリディの肩の辺りまでフラフラと移動した。
肩に着くなり、触覚のような部分が伸び、リディの頭を軽く叩く。
「お前はほおっておくと、どこまでも喋りそうだな」
『でも、例外なんだし、しょうがないじゃない』
「例外か・・・。
とりあえず、リディが何を言ったかは知らんが、こうなった以上はお前も監視下に置かないといけなくなった」
監視か。
リディの話や以前のトリノの話からするに
あのエネジスからマテルなどの知識を得る時に、それまでの記憶を失うというのが本来の形のようだ。
図書館での時には、全く別の世界の知識を詰め込む作業をしていたと思われるから
余分な記憶を排除して、このエリアの知識を入れやすくしたということか。
それにしても記憶まで消したり変えたり出来るって、滅茶苦茶にも程があるな。
「どうやら、過去の記憶が残っていると都合が悪いようだな?」
「いや、問題はない。
ただ、お前は苦しむことになるかもしれんがな」
「苦しむ?副作用みたいなモノが出るということか」
「肉体的というよりは精神的に、だな。
ところで、リディ。残りはどれぐらい残っている?」
『あと10ぐらいかな?
でも、またしばらくお休みって事でしょ?』
「どこまで残るか分からんが、しっかりサポートしてやれ」
いくつか分からない会話が続いたが、この流れだと
どうやらトリノの監視という名目でリディと共に行動をしなくてはいけないようだ。
一応聞いておくか。
「監視といったが、オレが断ったらどうなるんだ?」
「断るのは不可能だろうな。
先ずはそこで行動不能になっている【アトラン】を正常に戻した上で、
全世界のエリア警察機構に指名手配がかかる。
はっきりって今のお前なら速攻で捕まるな」
またしても、こちらに選択肢はなしということか。
諦めたように左手を軽く上げて、了解のポーズをとっておいた。
そういえば、話の途中でリディがオレの事で何か言おうとしていた気もしたが
トリノがいる以上はソレも答えてくれないだろうな。
さて、エリアドライバーといわれるリディとナビ職のトリノ。
今の状況は思ったよりも悪くはなさそうだ。
何より、トリノは同じナビ職の味方ではなさそうだしな。
いや、この場合、リディが言っていた「選ばれたエリアスター」に該当しているからなのかもしれないな。
「この後の行動もお前らに規制されるわけか?」
「いや、それはない。
お前の思うように行動すればいいが、ソレによって身を危うくしても俺は手助けはしない」
『でも、私が居ないとリッ君は捕まるから、9割方は私が進行する形になるよ』
「捕まる?この件の事か?」
『もちろん。
リッ君はマテル犯罪者になってるから、名目上リノちゃんが連行している形なのと、
私が居る事でとりあえず捕まらずに済んでるんだよ』
「トリノは分かるが、何でリディが関係する?」
『フフフ。それだけエリアドライバーは凄いんですよ』
確かに凄いのだろうと思うよ。待遇のされ方からしてもな。
結局、オレが犯罪者扱いなのは変わっていないという事か。
リディの言う通りならオレはリディから離れる事が不可能って事になるな。
面倒な制約を受けてしまったものだ。
「進行役には悪いんが、先ずオレには獲ておかないといけないモノがあるんだが?」
『なんだい?言ってみなさい』
非常に腹が立つ問い掛けだが、犯罪者扱いの今は、変にリディに逆らわない方がいいだろう。
「オレにはダイアがない。何かダイアを得るための方法はないか?」
『あーそりゃ、そうだね。
私のダイアを貸してあげてもいいけど、利子は高くつくよ』
端から借りる気はないが、なんという金欲体質な奴だ。
コレなら敵側のほうがマシかもしれんと一瞬だけ思った。
「安くても借りんよ。このエリアである程度生活するには、基本的な部分がないとダメだろ?」
『お、リッ君。中々分かってますなぁ。お金は大事だよ〜♪』
どこの金貸し屋の広告だよ。と思いつつも、確かに大事な事ではある。
犯罪者扱いとなった今では、職でダイアを稼ぐことも出来ないだろうしな。
「まともな働き口はないだろうけど、収入を得る事ができる所はないのか?」
『うーん。
安定したところは無理だけど、一攫千金を狙うなら【ウエブ】の町にいくのが手っ取り早いかな』
一攫千金は狙ってはいないんだが、ここは話についていくしかなさそうだな。
「そのウエブには何があるんだ?」
『フフフ。行って見れば分かるさー』
なんだそりゃ。
とはいえ、付いて行くしかないんだろうな。と、諦めるように首を動かした。
「トリノは何か知ってないか?」
「お前の好きにすればいい」
何だか、トリノには嫌われたようだな。
そりゃ、お仲間を行動不能にしてる張本人なわけだから、当然かもしれんが。
二人の会話を遮る様にリディがお約束でトリノを掴み、車に変形させた。
それに乗り込むと、デックスから南の方にあるウエブに向かった。
「そういえば、オレが言う事じゃないが仲間のナビ職は大丈夫なのか?」
"そのうち援軍が到着するはずだ。お前が心配する事はない"
回答は"家の時"同様に建物内から声が響いた。
「って、援軍って事は、あのままあの場所に居たらオレは捕まっていたのか?」
『多分・・・大丈夫だったと思うよ』
「多分って、怪しいもんだな」
『いえ。大丈夫です!』
何故か最後は自信満々に言い放ったリディを見て、深く考えるのはやめにしようと思った。
| 前の話 | 目次 | 次の話 |