かくれた名作35 2004/1/21

 古舘伊知郎の実況用語

 生きている間は、決して出会うことのなかったマグロとお米

 葵さんの1月4日の日記「古舘の語彙」に反応して、葵さんの掲示板でやりとりした際に、記憶を頼りに寿司屋の実況として「生きている間は、決して出会うことのなかったマグロとお米」というフレーズを紹介しました。しかしその後、自分でもその出典が気になって古舘の初期本を紐解いているのですが...... 見つからん。
 いや、初期本の全部が出てきたわけじゃない。山本小鉄との共著『愛してるぜ!プロレス』のように、2,3冊持ってるはずだがそのうちの1冊も出てこないというような本もある。でもそんな本には載ってないよね?>すし屋の実況

 でもせっかく調べたので、いくつかのフレーズを「古舘伊知郎の実況用語」と称して、ここに記しておきましょう。

(参考文献)
 『過激でどーもすいません』(昭58年テレビ朝日)「すみません」と略
 『おぉーっと!掟破りの言いたい呆題』(昭59年テレビ朝日)「掟破り」と略
 『おーっと過激だ古舘だ!』(1984年五月社)「過激だ」と略
 『くちびるにガムテープ』(平元日本文芸社)「くちびる」と略
 『おーっとフル・タッチ』作古舘伊知郎/画小林よしのり(昭59年光文社ジャストコミック)「フル・タッチ」と略

フレーズ 説明 出典
阿鼻叫喚の地獄絵! 様々な場面で使える汎用語 「掟破り」
アンチ管理社会の抒情詩 プロレスのこと。馬場や猪木などの社長を、平社員が平気で殴り蹴る世界を表現したもの。 「掟破り」
一寸法師の極意の戦いもよう アンドレ・ザ・ジャイアントに対した猪木の戦い 「過激だ」
田舎者にとっては大きな一歩 カフェバーにはじめて入る田舎者の実況。 「掟破り」
今起きたわけであります 朝から自分の一日を自分で実況することの実践 「掟破り」
おーっと!無人のカメラが動いたっ! ニュース・スタジオでは数台のカメラがコンピュータ操作で動いている。「10時をまわりました。ニュースの時間です」と言うところで、カメラがひとりでにキュッキュッと動く。思わず出る台詞がこれ。 「掟破り」
大隈重信公の末裔たち 早稲田の学生 「掟破り」
おのれの最後の必殺技 これが泣いても笑っても最後であります。今 山本小鉄自分自身確かめるようにかみしめるように飛びましたーっ 昭和55年4月4日、山本小鉄引退興行でダイビングプレスを決行。この日を境に山本小鉄は解説者専門になる。(しかし実際にはその後も何かことがあるたびに解説席を離れリングに駆け上がっている) 「フル・タッチ」
音感のならず者 音痴の歌手のこと 「掟破り」
温故知新の小売店 駄菓子屋 「掟破り」
風に対していっさい抵抗せずに、風のパワーを利用してくるくるまわるという風車。つまりは、自分の身体を死に体にしておいて、相手のパワーを空まわりさせ、そのスキを突いていくという風車の理論 有名な風車の理論 「掟破り」
かつて、この紙面を前にして、森鴎外は苦悶し、太宰治は入水自殺に追い込まれ、川端康成はノーベル賞を受賞し、田山花袋は蒲団となり 原稿用紙のこと。 「掟破り」
神様が気まぐれになせるいたずらか、古今東西、万古不変、はかなくもかなしくも女に美人とブスがいるように、くり返しおとずれる朝というやつも、毎日毎日ちがった顔をしているものだ。 第1回IWGP統一チャンピオン決定戦で、猪木がハルク・ホーガンのアックス・ボンバーを受け、「舌出し失神」した、昭和58年6月2日の朝 「すみません」
韓国の小島にモーゼの十戒を見た。 古舘が駆け出しの頃、「水曜スペシャル 川口浩探検隊シリーズ」でリポーターとして、韓国の太仁島をリポートしたときの台詞 「くちびる」
極限の肉体表現 プロレスのこと 「過激だ」
煙が徐々に上がってまいりました!
その煙にいざなわれて、無意識のうちに店の中に吸い込まれてしまうという実に心憎い焼き鳥屋ならではの演出の原点がここにあるわけであります。
焼き鳥屋 「掟破り」
ごらんください、このバイオリン軍団の機械的な動き、あの寄せては返し、返しては寄せる波の動きにも似て、さらにはまた、押してもだめなら引いてみな、引いてもだめなら押してみなという、ここに恐るべき人生の駆け引きがあります。
こちらの男性にご注目ください。とにかく数少ない一発一発に、己れの人生のすべてを賭ける、いぶし銀のファイターであります。
オーケストラの実況 「掟破り」
実況するナルシズム 古舘自身のこと 「すみません」
修行が足りない! 様々な場面で使える汎用語 「掟破り」
青春のひたむきさにおいては、プロ野球の巨人戦をはるかに凌駕すると言われております東京六大学野球、なかでもすさまじいエリート意識に裏打ちされたあの早慶戦 早慶戦 「掟破り」
卒業までの時限付き青春謳歌 学生時代のこと 「掟破り」
ただ今帰ったわけであります。さあ風呂は沸いて・・・・・・沸いていない、早くも夫婦間に亀裂が生じたのかっ 夫婦生活の実況 「掟破り」
闘いの吟遊詩人 アントニオ猪木のこと。各地に巡業し、人々を闘いの中にのめりこませてきた。 「掟破り」
男女七歳にして席を同じくしてきた現代教育のひずみがここに出ている 男女共学のこと 「掟破り」
小さな肉片を、さらに三口にわけて食べるという、ささやかにもいじましい贅沢 焼き鳥のこと 「掟破り」
千葉のクリスタルなビッグ・ステーション、千葉県のビバリーヒルズと言われます、柏駅前 千葉県柏駅前からの実況 「掟破り」
トワイライトタイム 金曜夜八時、かつてのプロレス中継の時間帯のこと 「過激だ」
左足と右足が交互に出ております。 歩いている場面を実況 「過激だ」
ひとり民族大移動 アンドレ・ザ・ジャイアントのこと。一人でも民族大移動のようだというおおげさな表現。
ガリバーシンドロームともいう。
「過激だ」
「まさにビビッド・カラーの闘い模様であります。山本さん、ビビッド・カラーですね」
「はい、ビビッドです」
わけがわからないなりに、なんとか答えようとする、人のいい山本小鉄 「掟破り」
四次元のプロレス タイガーマスクの空中殺法をあらわす表現。三次元に上空を加えて四次元という理屈だが、空中を入れても三次元のはずとの指摘もある。 「過激だ」



『過激でどーもすいません』
(昭58年テレビ朝日)

『おぉーっと!掟破りの
言いたい呆題』
(昭59年テレビ朝日)


『おーっと過激だ古舘だ!』
(1984年五月社)

『くちびるにガムテープ』
(平元日本文芸社)

『おーっとフル・タッチ』
作古舘伊知郎
画小林よしのり
(昭59年光文社
ジャストコミック)

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