かくれた名作36 2007/8/19
自然科学の革命 マイナスの科学 手書き原本
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志の高さの程度がわかる帯 自費出版だけあって、味も素っ気もない装丁。特に帯は興ざめ。内容はノストラダムスとは全く関係ないのに、この帯じゃあノストラダムス便乗本と思われてもしょうがない。 出版社からの要請で仕方なくというならまだしも、自費出版なのにこの惹句。著者の志の高さの程度が透けて見えてくる帯だ。 原本と活字本、並列出版の怪 手書きの原稿をそのまま印刷した本であることはわかるが、だからといってタイトルにわざわざ「手書き原本」と付ける意味がわからん。 しかも巻末には、「この「手書き原本」の他に、出版社マルジュ社から「マイナスの科学」が発刊されております。」とある。 ますますわからん。なんで両方、出版しないといかんの。手書き原本というからには、内容は同じか、それともマルジュ社の方が決定稿なんだろ。違うの? 調べてみると、マルジュ社版の発行は1979年。この手書き版の初版発行は1978年。本書が第5版で1980年の発行だから、やはり活字版が出た後も手書き版の重版を続けていることになる。 なぜだ?修正のため? でも手書き原版を直すのは、活字原版を直すのより、はるかに手間がかかりそうな気がするんだけど。いや、この頃はまだ活版印刷の時代だったかもしれん。だとすると活字原版の修正の方が楽とは一概にはいえんのだろうか。それでもやっぱり手書き原版を直す方がたいへんなような気がするなあ。 延々と続く推薦文 扉にはいきなり「ノーベル賞候補小林久時博士からの手紙」 「御高著の言々句々、全頁にわたって、全面的に賛成でございます。(以下略)」 肩書きが「ノーベル賞候補」のみというだけあって、推薦文もストレートだ。 さらに何人もの推薦文が延々と続く。「毒ダンゴの歌」なんかまで載せている人もいる。3段組で3ページ半も続く、汽笛一声の次ぐらいに長い歌だ。おそらく皆互いに著書を推薦しあっている間柄なのであろう。 マイナスの科学とは ここで真面目に内容を紹介すると、従来、科学は疑う姿勢から、宗教は信じる姿勢から生まれると思われていたが、実は、宗教にも信じる宗教(「マイナスの宗教」)と疑う宗教(「プラスの宗教」)があるように、科学にも疑う科学(「プラスの科学」)と、信じる科学(「マイナスの科学」)があるのだ。だから、今後は科学も宗教もプラスとマイナスの両面をあわせ持たなければならない。 なぜ、そんなことが言えるのか。 「プラスは科学的、マイナスは非科学的というのであれば、男は人間、女は非人間となり、磁石もプラスから見れば磁石、マイナスから見れば非磁石と言わなければならない」からだ。 わからん。なんでそれで論証したことになるのか、いや、そもそもいったい何を論証しようとしているのかすら、さっぱりわからん。 著者は呼びかける。 今、日本人がやるべきことは、全国の有権者が、地球人類主義政党を創り、とりあえずまず4人の候補者を選挙に立てることだ。(なぜ4人?) 本編に共鳴した学生は、全国の学校で、マイナスの科学に関する提言と質問を一斉に開始しよう、と。 こんな質問されても、誰も答えられんがな。 |
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