以前のページ 以後のページ あれこれ考える HOME
掲示板

あ れ こ れ 考 え る 50
 『親不孝通りディテクティブ』 青森の古本屋 『緋友禅』 『狐闇』 『狐罠』 『シェルター』 『蛇棺葬』 心を入れなおす日 『木島日記乞丐相』 『怪盗クイーンの優雅なバカンス』 『汝の名』

 『親不孝通りディテクティブ』 2003/9/27(土)

 新刊購入は、
『船木誠勝の真実』(2003年10月エンターブレイン)
 さっそく読了。たえず「セメント」にこだわり続けたレスラー船木誠勝の名著。プロレスを考えるうえでの必読書と思う。
 1985年、15歳で新日本プロレスのリングに最年少デビューしてから、新UWF、藤原組を経て、1993年完全実力主義のパンクラスを設立、2000年にヒクソン・グレーシーに敗戦、引退するまでの自伝。新日の前座時代に後輩の鈴木みのると、寮の2段ベッドでプロレスの理想像を話し合う。「こういうプロレスがあったらいいと思わない?打撃があって、投げがあって、関節技があって、それをセメントでやるプロレスって、どう?」 数年後にこの2人は、パンクラス設立で本当にその夢を実現してしまうのだ。


 またポケミスの復刊のうち、次のものを購入。
『旅人の首』ニコラス・ブレイク(1960年初版、2003年9月再版ハヤカワポケットミステリ)
『悪魔とベン・フランクリン』シオドア・マシスン(1962年初版、2003年9月再版ハヤカワポケットミステリ)
『美の秘密』ジョセフィン・テイ(1954年初版、2003年9月再版ハヤカワポケットミステリ)
 『美の秘密』は持ってるような気もするが、ここで買っておかないと将来さらなる困難をもたらすおそれがあると思うので購入。
 今回は持っていない本の復刊だったので歓迎といえるが、持ってる本の場合は、復刊はやはり嬉しくない。他人が持っていなくて探しているということで価値を感じる本も、復刊してしまうとその本を探している人がいなくなってしまうのだから。って、他人本位な価値観(^^;


 その他の新刊購入は、
『安吾探偵控』野崎六助(2003年9月創元クライム・クラブ)
『ミステリマガジン 2003年11月号』(早川書房)
 特集はロバート・フォン・ヒューリック、短編4編を集録。
『IN POCKET 2003年9月号』(講談社)
 スペシャル対談は、「京極夏彦×保阪正康 「妖怪」がわかれば「昭和」がわかる」


『親不孝通りディテクティブ』北森鴻(2001年実業之日本社)読了
 屋台業のテッキと結婚相談所調査員キュータのコンビによるハードボイルド連作集、6編収録。各編とも厳しい結末が待っているシリーズだからか、登場人物たちもそれに耐えることができるような一癖も二癖もあるような設定になっている。
 また、基本的に1章ごとにテッキとキュータが交互に語り手となることにより、読者から見て互いの友情と信頼を確認できることが、殺伐としたストーリーに対する救いにもなっているのだろう。
 それにしても博多署を「福岡中の阿呆ばっかり集めた組織やもん」とか結構悪く書いているけどいいのかな(^_^)


 青森の古本屋 2003/9/24(水)

 青森の古本屋さんから1冊だけ本が届く。
『海外ミステリ・ガイド』仁賀克雄(ソノラマ文庫海外シリーズ、帯付、蔵書印あり)400円
 よしださんの9月18日付日記から、この古本屋の目録が名古屋に届いたのは関東圏から1日遅れであることが判明している。しかもこの古本屋は早い者勝ちということですが、そうなの?この本は自分的には美味しい買い物かとも思ったのですが、すると蔵書印ありということで皆さん敬遠されてしまったのでしょうか。

 また「S」キーがキーボードからとれてしまった。アロンアルファも頼りがいがないぜ(;_;) 別の接着方法を考えないといかんのかなあ。もっともそんなキーがなくても、直接、配線盤を指で押したって入力はできるんだけど、何か体に悪そうな気もするし。

 古本購入は、
『死に急ぐ奴らの街』火浦功(1987年徳間ノベルス)100円
 火浦功のハードボイルド連作集、6編収録。シリアスな作品らしい。

 新刊購入は、
『一騎主義 イッキズム』池田啓晶(2003年9月実業之日本社)
 梶原一騎のマンガ原作の奥義に迫る労作。
 プロローグではいきなり日垣隆の、『巨人の星』が汗と忍耐と根性を至上の善とし、それがとりわけ学校課外スポーツに罪深い影響力を与えた、という主張に噛み付く。
 著者は言う。なるほど『巨人の星』は主人公飛馬の「汗と忍耐と根性」をテーマにした作品である。しかし、「汗と忍耐と根性」が「至上の善」などと誰が言った。
 父一徹は言っているのではないか。「こういう父と子もあった!それだけのこと!よそさまとくらべて、いいだの悪いだのとは、おこがましいし、こそばゆいわいっ」
 また作品中でも、この父と子はしばしば、「変人」「非常識で浮いている人」と評されていることからも日垣の言うことが勘違いであることははっきりしている。

『少年名探偵虹北恭介の冒険 高校編』原作はやみねかおる/漫画やまさきもへじ(2003年9月講談社マガジンZ)
 さっと読了、5編収録。中には小説でも読んだ作品がありましたが、この5編についてはコミックスの方がオリジナルだったんですね。


 『緋友禅』 2003/9/21(日)

 久しぶりに猫又さんの店へ。
「ますます本が増えてますね」
「買ってばっかりで、ちっとも売れないからね。これも今日買ったんだけどね」
 見ると、角川文庫のジュブナイルSFだとかサンリオSF文庫などが積んである。
「なかなか小粒揃いじゃないですか」
「本の整理中だという人がいて、毎週売りにくるんだよね」と、まんざらでもなさそう。
やっぱり本を買うのが好きなのね。

 古本購入は、刊行時に買いもらしていたと思われる『めまい』ボワロー・ナルスジャック(2000年パロル社)800円。ほんとは当時買ったのかもしれないが今となっては確かめようもない。
 もっとも一般的にいっても、持ってるかどうかわからない本については、持ってることは見つかりさえすれば確認できるが、持ってないことを確認することはできないのだけれど。

 新刊購入は、
『陰陽師徹底解剖 陰陽夜話安倍晴明の世界』夢枕獏編(2003年9月朝日文庫)
 2001年刊行『陰陽夜話』の改訂増補版。
『やつあたり俳句入門』中村裕(2003年9月文春新書)
 現代の俳句がどうしてこんなにつまらないのかを実作者の立場から探る刺激的な書。著者はその原因を高浜虚子の家元制度におく。有季定型は経営の天才虚子が思いついた指導方針にすぎず、本来の俳句は季語のない無季の句であってもなんら差し支えないという。

『緋友禅』北森鴻(平15年1月文藝春秋)読了
 旗師冬狐堂シリーズの連作集、3編収録。
 「奇縁円空」では『狐罠』で活躍した練馬署の根岸、四阿コンビが登場。また名前は出てこないが蓮丈那智も事件の解決に一役買うのはいつものサービス。
 このシリーズを読むと、素人が骨董に手を出すのは無理だとしみじみ思う。どこまで騙されても、それは本人の目が利かなかったことが原因とされる世界なのだから。いや、趣味が古本の雑本集めぐらいでほんとによかった(^^;


 『狐闇』 2003/9/18(木)

 古本購入は、
『東海の殺人拳』安藤昇(1982年徳間ドキュメントシリーズ)300円
 東海の殺人拳のあだ名をとる水谷征夫は、ボクサー、武術家、相撲、レスラー、あらゆる格闘技家に挑戦状を送る。しかし誰も「よし」と立ち向かう男はいなかった。そして昭和55年、アントニオ猪木がその挑戦を受ける。(でも実際には闘いは行われない)
 裏カバーには、水谷征夫、アントニオ猪木、新間寿の3人が握手している写真が掲載。


 各地から未読王購書日記の休載を惜しむ声が聞こえてくる。
「ミドク、ミドク、ミドク、ミドク...... 」
 ここで未読コールだ
 ファンの表情に過激なセンチメンタリズムが渦巻いている
 乾ききった時代におくる
 まるで雨乞いの儀式のように
 未読王への熱い声援が飛んでいる
 (実況:古館伊知郎)


『狐闇』北森鴻(2002年講談社)読了
 旗師冬狐堂シリーズの第2作。この作品では別のシリーズの主人公、蓮丈那智が主要な登場人物として登場する。それだけではない。この作品は蓮丈那智シリーズの1作目『凶笑面』所収の「双死神」と裏表の関係の話なのだ。
 「双死面」で蓮丈那智の助手、内藤三國の視点から語られた同じ事件が、本作では宇佐見陶子の視点で語られる。別のシリーズの短編と長編が表裏一体の物語になっているという趣向が面白い。
 「双死面」の初出が「小説新潮」の平成11年10月号、その話が含まれる単行本『凶笑面』の刊行は平成12年5月。一方、『狐闇』の初出は愛媛新聞平成12年10月〜平成13年7月連載、本書単行本の刊行は平成14年5月。したがって、単行本刊行時に加筆修正などがあったとしても、少なくとも『凶笑面』刊行の平成12年にはすでに本書『狐闇』の骨格はできあがっていたことになるのでしょう。もしそうでなかったら、「双死神」という短編が、『狐闇』という作品を予言した奇跡の作品ということになるわけだけど。


 『狐罠』 2003/9/14(日)

 今日は、日本中のスポーツファンが名古屋に注目したに違いない。世界の荒鷲、坂口征二(61)が11年ぶりにリングに上がるのである。
 坂口憲二がセコンドにつくこともあわせて話題になっているようだ。もっとも私には、彼が坂口征二の息子だということぐらいしかわからないのだが。

 坂口征二が登場するのは第8試合。しかし、それに先立つ第6試合、安田忠夫が登場する6人タッグに特別レフィリーとして山本小鉄がリングに上がる。
 最近の安田の手抜きファイトに業を煮やしての登場なのか。ところが安田とやりあった結果、急遽、参戦を決めてしまう。もともと6人タッグだったところに山本小鉄が加わったため、変則7人タッグとなってしまったが、もちろん観客は大喜びだ。

 そして第8試合。会場はいやがうえにも盛り上がる。坂口征二が今になってこれだけ注目されることになるとは誰が予想したでしょう。
 いや、本日突如参戦した山本小鉄や、魔界倶楽部を率いる星野勘太郎など、引退選手の活用が最近の新日のブームなのかもしれない。
 坂口の試合内容は言ってみればジャイアント馬場風(馬場の16文キックそっくりに決めている場面まであった)というところではありましたが、今日は坂口だけでなく山本小鉄の活躍まで見れたのだから、充分満足。

 他の写真はやや重いので別のページへ →新日本プロレス2003年9月14日(日)名古屋レインボーホール 
 では興奮覚めやらぬ中、名古屋レインボーホールより、さようなら


『狐罠』北森鴻(1997年講談社)読了
 旗師冬狐堂シリーズの第1作。これは傑作。
 橘薫(きくん)堂から目利き殺しを仕掛けられ、贋作の硝子碗を売りつけられた宇佐美陶子は、リベンジとして橘に目利き殺しを仕掛け返そうとする。しかし、着々と準備が進む中、自分の仕掛けとは別の歯車が廻っているらしいことに気付き、不安が重なっていく。
 陶子が仕掛ける目利き殺しが成功するのか。物語はサスペンスドラマ的に展開しながら、最後は本格推理としてきっちり決まる。あっそうか、全く気付かなかった。やられました。


 『シェルター』 2003/9/12(金)

 今日は名古屋古書会館即売会の初日。閉館時間は午後6時なので、それに間に合うように行くためには、万障繰り合わせて職場を出なければならない。
 明日から3連休なので、本来なら今週の仕事を互いにねぎらいつつ、名残を惜しむような別れの挨拶を交わしたいところだが、とてもそんな悠長なことはしておれない。「あばよ」の一言を残して古書会館まで向かう。
 矢場町駅に着いたのは5時半ごろ。そこから古書会館まで徒歩で10分(10分で行くためにはたびたび小走りが必要)。ようやく5時40分ごろに古書会館到着。20分しかないが、実はそれだけあれば充分なんだよね。

 閉館まぎわとはいえ客が少ない。私を合わせて3人しかおらんがな。
レジ当番の2人はすでに、売った本からはがした値段票を店ごとに分けて、今日の売り上げを集計している。
「4500円しかないんだからな」
「今日一日で?」
「こんなんじゃ、どうしょうもないぜ」
 ひょっとして、ご自分のお店の売り上げのことなのでしょうか。そうだとしたらお気の毒なことです。

 私もいつもなら手ぶらで帰るところなのだが、最近はとにかく買うことを目標にしているので、今まで即売会に何度も出品されていたが当然のようにパスしてきた次の本を、意を決して購入。
『双頭の犬・ラジオ』(中三グリーン文庫)500円
 中三時代昭和42年9月号の付録。64ページという薄い本の中にクイーンとクリスティの作品2編を押し込んだもの。でも500円はやっぱり高いわな(^^;


 新刊購入は、
『本の雑誌 2003年10月号』(本の雑誌社)
 王様の文章が載っていると思って買ったのだがどこにも見当たらない。それで王様の日記を読み返してみたら、掲載されるのは11月号だったようだ。
『十二国記 アニメ脚本集3』脚色會川昇/原作小野不由美(講談社X文庫)
 十二国記は、原作、アニメ脚本集、コミックスのいずれも、まだ1行たりとも読んだことがない。このうちコミックスの購入は断念しているが、このアニメ脚本集版なら今から読み始めてもなんとか追いつきそう。でも正道はやはり原作から読むことなんだろうね。


 この前、アロンアルファで貼り付けたキーボードのうち、「Shift」キーの方が早々と剥がれてしまった。なんだよ、象が踏んでも大丈夫じゃなかったのかよ。(違うかも)


『シェルター』近藤史恵(平15年9月祥伝社)読了。
 整体師合田力シリーズの3作目。
 歩は、姉の恵が「中国に行く」と言いながら部屋にパスポートが置きっぱなしだったことから、恵が蒸発したことを知る。その頃姉の恵は東京で、映画の準主役に抜擢されながら逃げ出してきた出水梨央に頼られる。一方、歩の恋人の小松崎は、その映画の取材のため大阪から東京へ出張し、たまたま恵と遭遇する。
 本作では恵・歩姉妹の過去が明かされるのにあわせて、新しい登場人物、小杉の出現で合田の過去も徐々に明らかにされていく。癒しの物語には相違ないが、誰が誰に癒されるのかが混沌として一筋縄ではいかないうちに大団円を迎える。やはりいくら癒しの物語であってもエンターテインメントなら大団円こそがよく似合う。


 『蛇棺葬』 2003/9/10(水)

 先月、本が雪崩を起こしてパソコンのキーボードの上にも落ちてきたため、おそらく本の角が当たったのだと思うが、その衝撃で「S」と「Shift」のキーがはずれて飛んでいってしまい、その後は仕方なく、キーを所定の位置に置いた状態で打っていたのだが、隣の「A」のキーを打つたびに「S」のキーが飛んでいってしまう、すぐに位置がずれてしまい「S」が空打ちになってしまうなど、不便このうえなかった。
 そこで意を決してアロンアルファを買ってきて、キーを2つともその位置に貼り付けてしまったのだ。他のキーのような弾力がなくなるため、ひょっとしたら全く入力できなくなるかもしれないとも思ったが、ご覧のように一応は打てているのでとりあえず満足すべきなのだろう。


 昨日は職場で「月と火星を見る集い」を決行。いや、ただのビールパーティなのだが、幹事のオレがもたもたしているうちに9月になってしまったので苦し紛れにつけたネーミングだったが、どうやらたまたま昨日は月と火星が大接近した日で、結果的にはグッドタイミングだったようだな。唯一惜しかったのは、それを知ったのが今日になってからだったということだ。まあどうせ知っていても、店の中から空が見えるわけでもなかったから同じことだったが。


 本日の新刊購入は、
『『陰陽師』読本 平安の闇に、ようこそ』夢枕獏編(2003年9月文春文庫)
 夢枕獏・野村萬斎の対談や映画『陰陽師U』の第1稿と第4稿の併載など
『対談 笑いの世界』桂米朝×筒井康隆(2003年9月朝日選書)
 もとは朝日新聞大阪支社の正月紙面用の企画だったところが、お互いに語り手を得て、延々と喋り続けた対談記録とのこと。両者とも序談及びあとがきで面白かったと口を揃える。
『「エロティック・ミステリ」傑作選 甦る推理雑誌8』ミステリー文学資料館編(2003年9月光文社文庫)
『ホラー映画の魅力 ファンダメンタル・ホラー宣言』小中千昭(2003年9月岩波アクティブ新書)


『蛇棺葬』三津井信三(2003年9月講談社ノベルス)読了
 帯には「地方の旧家に伝わる葬送儀礼を舞台に起きた密室殺人!」とあるので、本格推理と思われる方もいらっしゃるかもしれません。また途中では合理的な推理と真相暴露の場面もあるにはあるのだが、やはり本作はホラー小説と呼ぶしかないものでしょう。しかも、この著者のホラー小説は「怖い小説」というよりは「イヤな小説」なのである。前作の『作者未詳』や『ホラー作家の棲む家』は著者自身の体験談という構成をとっているため、そのイヤさを著者と読者で共有することになるのだ。
 本書は著者の体験談ではなく、著者が語り手に聞いた話という構成になっているが、帯の記述によれば、11月刊行予定の本書の続編、『百蛇堂 怪談作家の語る話』は、「本書『蛇棺葬』の刊行を巡って続発する怪異の顛末を綴ったもうひとつの物語」とあるように、再び著者を主人公にした物語になりそうである。うーん、次作はまたイヤな作品になりそう。


 心を入れなおす日 2003/9/7(日)

 最近古本を買う意欲を失っていたのだが、王様の「人は一日でどれだけたくさんの本を買うことができるか」という8月29日付日記を読んで目から鱗が落ちた気がした。
 そうか、やはりまずは買うことが先決だよな。宝くじだって買わなきゃ当たらないわけだし。(それでいいのか?)まあ、あまり細かいことは気にせず、とにかく買いましょう。ということで古本屋へ。

 上前津の店に行くと、おかみさんが「あら、お久しぶりですね」と迎えてくれる。それどころか「あなた、○○さんよ」と、わざわざご主人まで呼んでくれた。そんなにごぶさたしてましたか?そうでしたか。これからはまた心を入れなおして廻らせていただきますので、はい。
 もっともここで買ったのは下の1冊だけ。すまん。

『プロレス小説 仕事師たちの哀歌』夢枕獏(1989年集英社)100円
 夢枕獏が最初に書いたプロレス小説、5編収録。
 今年、江戸川乱歩賞を受賞した『マッチメイク』は、高橋レフィリーのカミングアウトに触発されたところが大きいのだが、何もプロレスのカミングアウトは今に始まったことじゃない。その昔、佐山聡は『ケーフェイ』(ナユタ出版)の中で、相手の協力なしではかからない技を列挙し、そのカミングアウトは各方面に衝撃を与えた。本書は冒頭でその『ケーフェイ』を引用していることからも、そこから触発された作品群であることがわかる。

 次の店では、買ったばかりの講談社ノベルス『新本格謎夜会』綾辻行人+有栖川有栖と、『黒娘 アウトサイダー・フィメール』牧野修がそれぞれ300円で売っているのを発見。って、おい、ちょっと早すぎるよ!

 別の店で、他には次のものを購入。
『横浜幻燈館 俥屋おりん事件簿』山崎洋子(1992年新潮社)500円
 フェリス英和女学院に通うおりんが人力車を駆っての痛快ディテクティヴとのこと。4編収録。
『猫と車イス 思い出の仁木悦子』後藤安彦(1992年早川書房)100円
『不知火の化粧まわし』有明夏夫(昭63年講談社文庫)100円
『蔵屋敷の怪事件』有明夏夫(昭63年講談社文庫)200円
『脱獄囚を追え』有明夏夫(昭63年講談社文庫)200円
『東海道星取表』有明夏夫(1984年文春文庫)100円

 まあリハビリとしてはこんなところか(^^;


 『木島日記乞丐相』 2003/9/6(土)

 あいかわらず古本は買うものがない。目録でも注文するものがないし、ちょっと目先の変った店にでも行ってみたい気分だ。

 新刊購入は、
『蛇棺葬』三津井信三(2003年9月講談社ノベルス)
 待ちに待った、『作者未詳』の著者三津井信三氏の新作。しかも11月には本書の続編『百蛇堂 怪談作家の語る話』も刊行予定だというので、そちらも楽しみ。
『新本格謎夜会』監修・綾辻行人+有栖川有栖(2003年9月講談社ノベルス)
 昨年催された新本格誕生15周年記念イベントの再現。推理劇やトークショーなど、楽しそうな内容。
『黒娘 アウトサイダー・フィメール』牧野修(2003年9月講談社ノベルス)
『ファウスト 2003OCT Vol.1』(講談社)
 講談社が新たな新人賞として「ファウスト賞」を設立。書き手は80年以降生まれに限るとのこと。ふーん、年齢制限とは新しい試みだね。とりあえず舞城王太郎の作品を読むために購入。
『大極宮2』大沢在昌/京極夏彦/宮部みゆき(平15年8月角川文庫)


『木島日記乞丐相』大塚英志(平13年11月角川書店)読了
 『小島日記』の続編。民俗学者折口信夫が、この世にあってはならないものとそうでないものの仕分けを仕事とする小島平八郎と関わっていた時期に、次々と遭遇するあってはならない物語。3編収録。
 コミック版は読んでいないのだが、著者あとがきに拠ると、コミックの方が原作で本シリーズはそのノベライズらしい。小説版がコミック版と決定的に違うのは語り手の「ぼく」の存在なのだという。この「ぼく」の導入によって、物語全体があやふやで不安定さを増しており、小説版にはふさわしい設定だったと思う。というか、現実として書くにはあまりに折口信夫を無能に書きすぎ(^^;
 表題作の「乞丐相」(こつがいそう)とは、折口信夫の鼻梁にある青インキの染みのような痣で、「兄弟ヲコロシテ家ヲウバウ相」のこと。この表題作は最後まで木島が登場しないので、折口が木島に翻弄されることはないのだが、そのためかえって、美蘭、土玉氏、安江大佐、藤井春洋などのすべての登場人物に翻弄されてしまう折口信夫の情けなさが際立つ作品になっている。
 なにか折口信夫に恨みでもあるのか?>大塚英志


 『怪盗クイーンの優雅なバカンス』 2003/9/4(木)

 各サイトで話題になっていた、神月堂さん刊行の高木彬光復刻本『骸骨島』(2002年)と『夜の皇帝/深夜の魔王』(2003年8月)を、私も注文して送っていただきました。
 「骸骨島」は「小学六年生」及び「中学生の友」(昭和26年〜27年)に、「夜の皇帝」は「冒険王」(昭和31年〜32年)、「深夜の魔王」は「中学1年コース」(昭和34年〜35年)にそれぞれ連載されていた小説とのこと。どれも貴重な作品だと思います。ありがとうございました。


 新刊購入は、
『シェルター』近藤史恵(平15年9月祥伝社)
 『カナリヤは眠れない』、『茨姫はたたかう』に続く、整体師合田力シリーズの3作目。これまでの2冊は文庫だったが本作はソフトカバーでの刊行。
『裁判官に気をつけろ!』日垣隆(平15年8月角川書店)


『怪盗クイーンの優雅なバカンス』はやみねかおる(2003年4月講談社青い鳥文庫)読了
 子供の頃夢中で読んだ物語を、今読んでもおそらく同じような興奮を味わうことはできないでしょう。そこで本作はその頃のわくわく感を思い出させてくれる傑作。
 豪華客船に展示された宝石「サッチモ・コレクション」、怪盗クイーンの名を使った犯行予告、宝石を奪還しようとする王女、クイーンを捕らえようとする探偵卿、そしてクイーンを狙う暗殺者集団「初楼(ういろう)」。作者は、古典的なおもしろい話の道具立てを使って、現代的なセンスで新しい物語を編んでいく。赤外線警備システムに対抗する俊逸のアイディアには感心した。


 『汝の名』 2003/9/2(火)

 本日の新刊購入は、

『文学の墓場 〜20世紀文学の最終目録』フレデリック・ベグベデ(2003年9月角川書店)
 著者はフランスのコピーライター、小説家。代表作は『99F』(邦題は『999円』角川書店)
 本書は、1999年に衛星テレビのスポット番組で放送された、「フランス人6千人が選ぶ20世紀の名作50」を著者が自分勝手に論評したものを、単行本にまとめたもの。
 13位にはサルトルの『存在と無』がエントリーされているが、著者は、この本に投票した人間全員が『存在と無』を理解したとはどうしても思えない、読んだかどうかも怪しいものだ、と斬りかかる。楽しそうな1冊。

 さらに、『僕たちの好きな宮部みゆき』(2003年10月宝島社)という本が目に付く。このシリーズでは最近『僕たちの好きな京極夏彦』を買ったばかりだし、内容も薄そうなんだけど、言われるとおり宮部みゆきも好きだからやはり買ってしまうんだよな。でもこんな本ばかり続々出すつもりなのか。そういえばこのシリーズで村上龍の本も見たことがあるし、他にもいろいろ出てるのだろうかと思い、紀伊国屋書店のHPで検索してみました。
 結果は以下のとおり。
僕たちの好きな宮部みゆき、僕たちの好きな巨大ロボット2003/09出版、僕たちの好きな京極夏彦 2003/09出版、僕たちの好きなあしたのジョー 2003/09出版、僕たちの好きな水滸伝 2003/09出版、僕たちの好きなマジンガーZ 2003/09出版、僕たちの好きな村上龍 2003/08出版、僕たちの好きなサンダーバード 2003/08出版、僕たちの好きな「マリオ」と「ゼルダ」 2003/07出版、僕たちの好きなガンダム『機動戦士Zガンダム』全キャラ 2003/07出版、僕たちの好きな鉄腕アトム 2003/07出版、僕たちの好きな科学忍者隊ガッチャマン 2003/06出版、僕たちの好きなTVゲーム 2003/06出版、僕たちの好きな巨人の星 2003/06出版、僕たちの好きなタイムボカンシリーズ 2003/05出版、僕たちの好きな三国志 2003/05出版、僕たちの好きなガンダム『機動戦士Zガンダム』全エピソード 2003/04出版、僕たちの好きなウルトラマン 2003/04出版、僕たちの好きな村上春樹 2003/03出版、僕たちの好きなガンダム 全モビルス−ツ&メカニック徹底2003/01出版、僕たちの好きな北斗の拳 2003/01出版、僕たちの好きなウルトラマン 2003/01出版、僕たちの好きなファイナルファンタジー 2002/12出版、僕たちの好きなガンダム 全登場キャラクター徹底解析編 2002/11出版、僕たちの好きなガンダム TV版『機動戦士ガンダム』全エピソード解析 2002/07出版

 ぜい、ぜい。このシリーズが始まったのは今から約1年前位でその間に25冊発行。特に『僕たちの好きなガンダム』なんかよく見かけると思っていましたが、なんと5種類も出てたんですね。こんなペースで発行されてるんじゃ集める気なくした(^^;


『汝の名』明野照葉(2003年8月中央公論社)読了
 タイトルからは叙述トリック的な印象を受けるし、そういう趣向もないわけではないが、主眼は、手段を選ばず人生の「勝ち組」になろうとする女たちの異常な執念を描こうとしたものなのでしょう。復讐劇もかなり陰湿なはずなのだがなぜか読後感はそれほど悪くない。ここまでいけばかえって爽やかさを感じるぐらいだが、これも作者の力量あってのことでしょう。
 でも、タイトルはあまり効いてないような気がするな。


以前のページ 以後のページ あれこれ考える HOME
掲示板