あ れ こ れ 考 え る 49 |
『安楽椅子探偵アーチー』 『殺人の門』 マッチメーカー雑感 『親切がいっぱい』 『葉桜の季節に君を想うということ』 『顔のない男』 『あやかし修学旅行』 『忘却の船に流れは光』 『マッチメイク』 『陰摩羅鬼の瑕』 『木島日記』 『くもはち』 損して得とれ 『くらのかみ』 『新世界』 |
『安楽椅子探偵アーチー』 2003/8/31(日) ノートパソコンのキーボードの上に物を落としてしまい、パカーンという音とともに、「S」のキーと「Shift」キーがはずれてとんでいってしまった! 「Shift」キーはもう一つあるし、いつもはそのもう一つのキーの方を使っているから問題はないとしても、「S」キーの方はそうはいかない。今はキーをそっと乗せただけのままでキータッチしているが、これではとんでもなく不安定だし、となりの「A」のキーを強く打っただけでも「S」キーがとんでいってしまうというような状態なので、そのうち別のキーボードを買ってきて取り付けるしかないようだ。でもノートパソコンにキーボードをつけてもかなり使いにくそうだし、とほほだ。 本日の古本購入は、 『《猿の惑星》隠された真実』エリック・グリーン(2001年8月扶桑社)600円 『楕円の鏡 幻想短編集』渡辺恒人(1982年近代文藝社)800円 『安楽椅子探偵アーチー』松尾由美(2003年8月創元クライム・クラブ)読了 小学5年生の及川衛がアンティーク店から手に入れた安楽椅子が次々と謎を解く、正真正銘の安楽椅子探偵連作集、4編収録。 やはり松尾由美はおもしろい。登場人物が魅力的なことがおもしろい小説の基本であることを再認識させられます。安楽椅子を探偵役にすることによって内容が古典的な推理ものになればなるだけおかしみが増すし、これはもうアイデアの勝利でしょう。4編で一応物語は完結しているけれど、ぜひ続編を期待したいものです。 |
『殺人の門』 2003/8/30(土) 今日は名古屋古書会館即売会の2日目。会場に到着した時は午後5時半を過ぎており、閉館は6時なので一見すごく忙しいようだが、実際には30分もあれば充分なんだよね、とほほ。それでやっぱり1冊も買うものがない。 帰りに鶴舞にも寄ってみる。すると、今まで「休業中」の貼り紙がしてあった日進堂書店の店舗が「ローソン」に替わっていた!9月上旬開店と書いてあるが、ここって、すぐ隣にコンビニがあったんじゃなかったっけ?と思ったら、やっぱり1軒挟んだ隣も「ローソン」だった。10メートルも離れてないのだが、2軒で営業する気なのか。 古本購入は、 『幽霊軍団にギブアップ』ミスター高橋(1984年ベースボール・マガジン)100円 まだミスター高橋が能天気だったときに書かれた1冊。レスラーが遭遇した怪談話をまとめたもの。 『日本型悪平等起源論』対談 島田荘司/笠井潔(1994年光文社カッパノベルス)100円 『仮想現実の殺人』羽場博行(1994年講談社ノベルス)100円 新刊購入は、 『安楽椅子探偵アーチー』松尾由美(2003年8月創元クライム・クラブ) 「安楽椅子」が探偵役の、正真正銘の安楽椅子探偵連作集。 『スモールボーン氏は不在』マイケル・ギルバート(2003年9月小学館) 創元の『捕虜収容所の死』に続いて、またマイケル・ギルバートの初訳 『20世紀日本怪異文学誌 ドッペルゲンガー文学考』山下武(2003年9月実業之日本社) 「幻想文学」第37号(1993年)から67号(2003年)に連載された「ドッペルゲンガー文学考」の単行本化。ドッペルゲンガーを扱った国内作品に関する評論。取り上げられている作家は、森鴎外、芥川龍之介、三橋一夫、渡辺啓助、海野十三、香山滋、平井呈一、泉鏡花、山田風太郎、江戸川乱歩など多彩。 『殺人の門』東野圭吾(平15年9月角川書店)読了 案の定、また重いテーマの作品。予想を裏切らない展開、これでもか、これでもかと、だめを押すような進行は、『手紙』と共通するものがある。 また、本書の主人公は、『手紙』の主人公のような一方的な被害者ではなく、加害者的な面も多分に持つため、さらに暗鬱とさせられる。文学としては傑作といってもいいと思うがエンターテインメントとしては微妙なところ。 |
マッチメーカー雑感 2003/8/26(火) 今日の新刊購入は、 『殺人の門』東野圭吾(平15年9月角川書店) またまた重そうなテーマだ。 『汝の名』明野照葉(2003年8月中央公論社) 明野照葉は今のところデフォルト買いの作家。 『美食探偵』火坂雅志(2003年8月講談社文庫) 2000年に刊行された単行本の文庫化。なお火坂雅志の本は1冊たりとも読んだことがありません。 『僕たちの好きな京極夏彦』別冊宝島858(2003年9月宝島社) パラパラとめくったところでは、評論集ではなく浅めの紹介本のようです。 『ミステリマガジン2003年10月号』(早川書房) 特集は、「作家特集エドワード・ホック」 不知火京介『マッチメイク』のあっさりしたプロレス観に不満が残り、巻末の参考文献に上がっているミスター高橋本のうち『流血の魔術 最強の演技』を再読、また『マッチメーカー』も買ってきて読んでみた。結論としては、かなり異論を感じる主張ではあるのだが、それでも高橋本の方がよほどおもしろい。 もちろんミスター高橋のマッチメーカー中心主義の考え方には疑問がある。高橋は言う、プロレスの面白さはマッチメーカーが作る筋書きで決まる。優れたマッチメーカーが一人いれば、選手はそこそこであっても構わない。 そんなわけはないだろう。力道山や馬場と猪木なしで日本のプロレスが語れるはずはないし、マッチメークは選手の後からついてくるものだと思う。プロレスを動かすのは一義的には選手だろう。(そういう意味ではミスター高橋を批判して、プロレスを動かすのはマッチメーカーではなく観客とするターザン山本の意見にも同意はできない。) そこで、高橋のマッチメーカー中心主義の考え方を忠実になぞっているかに見える不知火の小説にも首をかしげてしまうのだが、実は高橋の主張はそれほど一貫したものではない。1冊の本の中でもいくつも矛盾した記述をしているのだ。そこにかえってリアリティが生じて面白いのだ。 新日本プロレス創立期には外人招聘のパイプがなくて、実力のある選手を呼ぶことができず、アングルもストーリーも作りようがなかったとの苦労話が随所に現れている。優れたマッチメーカーが一人いれば選手はそこそこであっても構わないという当初の主張を自ら否定しているのだ。やはりあたりまえのことだが選手の実力が先決なのだといっているのである。 結局、不知火は高橋本の誇張した一面のみをうのみにして作品を書いてしまったのではないだろうか。勝敗の決まっている試合で、主人公が、「適当に相手の技をセールして負けるだけの楽な仕事」という認識を最後まで改めないところにもそれが現れている。もちろんプロレスがそんな単純なものではないことは、高橋本を読んだだけでもわかるはずなのだ。 |
『親切がいっぱい』 2003/8/23(土) 今日買った古本は、 『らくだこぶ書房21世紀古書目録』クラフト・エヴィング商會/写真坂本真典(2000年筑摩書房)1080円 帯には「なつかしい未来の書物たち」。どういう本か気になったが、あいにくビニールがかかっていてわからない。もちろん店の人に聞いても無駄だろうから買ってしまうことにした。 ある日、西暦2052年の未来から古書目録が届く。注文してみると、21世紀に出版された古書が次々と送られてきた。 なるほど、たまにみかける、架空の書籍を紹介する類の本だったのね。目次を写しておきます。なお、最後の「らくだこぶ書房21世紀古書目録」は本書全体の仕掛けを兼ねています。 「茶柱」「老アルゴス師と百の眼鏡の物語」「世界なんて、まだ終わらないというのに」「羊羹トイウ名ノ闇」「絶対に当たらない裸足占い・2049年版」「A」「7/3横分けの修辞学」「卓球台の上で書かれた5つの詩片」「岡村食堂御品書帖」「あたらしいくだもの/なつかしいくだもの」「月天承知之介・巻之一」「屋上登攀記」「Water/Door/Big」「大丸先生傑作黒板集成・第1板」「大いなる来訪者」「SMOKING AREA」「その話は、もう3回きいた」「羊典」「魂の剥製に関する手稿」「出前」「最後に一つ○を書くということ」「らくだこぶ書房21世紀古書目録」 『親切がいっぱい』神林長平(2003年8月ハヤカワ文庫JA)読了 元版は1990年刊行の光文社文庫。すべての職業が国の許可制になり、泥棒や地上げ屋さえもが免許を持つという世界を舞台にしたもの。 親切をしたい人がいっぱいいるため、主人公たちの職場をボランティア斡旋所にしたという設定にしたつもりなのだろうが、残念ながらその設定はあまり生かされていない。ボランティア斡旋所を訪れる人も、ボランティアに来て助けてほしいという相談者だけで、最後まで読んでも親切の押し売りをする人など一人も現れない。これなら今の世界と大差なく、これでどうして「親切がいっぱい」というタイトルになるのか不明だ。 さらに、すべての職業が国の許可制になっている世界という設定もほとんど生きておらず、失敗作としか思えないのだが? |
『葉桜の季節に君を想うということ』 2003/8/22(金) 読みかけの本を、今朝、喫茶店で読み終えてしまったので、どうしても新刊書店に寄らねばならない。 まず目に付いたのが、水野雅士『シャーロック・ホームズと99人の賢者』(2003年8月青弓社)。しかしその内容は、ホームズ物語に名前が登場するだけの世界の偉人たち、ソロモンやダンテ、ミケランジェロ、デカルトやロックなどを広く紹介するだけの本のようなので、パス。 ブラウン・マーリーン『パトリシア・コーンウェルの食卓』(2003年2月講談社)も買いもらしていたかと思った本。内容は、各作品に出てくる料理のレシピ。それじゃあやっぱりパスだ。 結局購入したのは、 『親切がいっぱい』神林長平(2003年8月ハヤカワ文庫JA) の1冊だけだが、葵さんが紹介されている火坂雅志『美食探偵』(2003年8月講談社文庫)も今思えば面白そう。見かけたんだから買っとくべきだった。新刊書だからいいようなものの、古本だったらこういうミスがとんでもない苦労につながることだってあるのだから。 『葉桜の季節に君を想うということ』歌野晶午(2003年3月文藝春秋)読了 この前のオフの際に、あからさまではないにしろメイントリックを匂わされてしまっていたので、真相は見当がついていた。 最近、類似の趣向を持った作品も出ている。作品のテーマのバランスが取れているのは本書の方だが、真相を隠す必然性があるのはもうひとつの作品の方。どちらがいいかは個人の好みということになるのかもしれないが、私は、より効果的なサプライズを用意したという点で、もう一つの作品の方に軍配を挙げておく。 |
『顔のない男』 2003/8/20(水) このごろ朝はベルヘラルドという店に入ることが多い。私はチケットを持っているが、チケットがなくてもモーニングサービスでは飲み物399円(税込)でサンドイッチ等のパンとゆで卵が(今の時期はヨーグルトも)食べ放題なのである。 ところが昨日は店の入り口に若者たちが、店に入るでもなく数人でたむろしていた。並んでいるわけでもなさそうなので先に店に入って席を確保。パンをとろうとしている時に、彼らが入ってきて、いきなりハンディ型のビデオカメラを向けられた。 あわててサンドイッチとヨーグルトを取って席に戻る。それと前後してライトが照らされ、モデルらしい女性が何度もパンを取るポーズをとり続ける。ひょっとしてテレビ撮影?危なくもう少しでパンを確保しそこなくところだったぜ、ほっ。でもそんなことなど気にせず、パンを取りにいく人たちもやっぱり存在するのでした。(ずっとパンのそばから離れない女性をモデルと気付かず、カメラの前にもかかわらず、パンの取り合いをしてるつもりだった人もいるかも) 最近、多くの古本屋で未知谷の『国枝史郎伝奇全集』を見かける。しかも並んでいるのは決まって「4」〜「6」と「EXTRA」の4冊だけなのだ。おそらくいっせいに流れたのだろうけど、こんな中途半端なことなどせずに、「1」〜「3」も合わせて流した方がよほど売れると思うがなあ。 『顔のない男』北森鴻(平12年文藝春秋)読了 犯人の目星はかなり前から付いていたけれど、真相がこんなにシンプルで、さらにこれだけ痛快な最終場面が待っているとは思いませんでした。この痛快な最終場面への布石もかなり前から打たれていたのには驚き。こういう意外な結末というのもあるんですね。娯楽ミステリーとしてお薦めできる1冊です。 続いて、この前のオフで教えてもらった歌野晶午『葉桜の季節に君を想うということ』を読み始めました。でもオフの時にメイントリックを、あからさまではないにしてもかなり匂わされてしまったので、だいたい見当は付いてるんだけどね(;_;) |
『あやかし修学旅行』 2003/8/17(日) 鶴舞の古本屋を廻ってみるも、買う本なし。以前は鶴舞や上前津でも、均一本あたりにほしい本がいろいろと混ざってたりもしていたが、最近は拾える頻度が極端に少なくなった。今からミステリーを集めようとするとかなり苦労しなければならないのではと懸念してみたりもするが、ほんとはそういうわけでもないんだろうね。 『あやかし修学旅行』はやみねかおる(2003年7月講談社青い鳥文庫)読了 あいかわらず、読者層の子どもたちにはわかりそうもないような大人用のネタも満載。『未確認動物捕獲隊』サークルの隊長川口君のテーマ曲が、『ゆけゆけ川口くん』というのは笑った。内容はもちろん本格推理。「修学旅行のしおり」まで付いてて楽しい一冊。 |
『忘却の船に流れは光』 2003/8/16(土) 甲影会から『別冊シャレード』が届きました。今回注文したのは『No.72 太田忠司』『No.73 氷川 透』『No.74 天城一 9』『No.76 天城一 10』の4冊。天城一で10冊続けたというのがすごいですね。 今日も古本屋には行ったものの収穫なし。手ぶらはつらいぜ。 『忘却の船に流れは光』田中啓文(2003年7月ハヤカワSFシリーズJコレクション)読了 帯に「もはや駄洒落の余地もない」とあるように、シリアスなSF。 やはり騙されたということなのだろうか、素直にミスリードされてしまった。そんな伏線あったっけ、と思って読み返してみると、確かに伏線らしき記述は随所に散らばってはいるんだよな。でもやっぱりこんな真相は見破れるわけないよ(^_^) |
『マッチメイク』 2003/8/15(金) 今年も「笑っていいとも」で黙祷するのかどうかを見逃してしまった。こんなことほとんどの人は知っているんだろうけど、私の周りの人だけは誰も知らないんだよな。また来年への宿題だ。 今日の新刊購入は、 『あやかし修学旅行』はやみねかおる(2003年7月講談社青い鳥文庫) 買いもらしていた、はやみねかおるの最新作。 『ダカーポ 2003年8月20日号』 特集は、「「怖〜い小説」を読もう ミステリー、ホラー、SF、怪談 etc ……」 レスラーの渕正信や講談師の一流斎貞水、自由党・社民党・共産党の各氏が選ぶ怖い本を紹介。 『マッチメイク』不知火京介(2003年8月講談社)読了 あえてプロレスを舞台にミステリーを書いてくれたのなら、よくある裏話で終わるのではなく主人公たちにプロレスの理想像を託してほしかった。 ミステリーとして見ればうすい話だがそれはさほど問題ではない。若い二人が謎を解くだけで、団体のかなり時代遅れのプロレス観に従っているだけというのが物足りないのだ。現在のK-1やPRIDEが大手を振っている時代にプロレスラーが自分たちのプロレスのアドバンテージを模索しないわけがないのだから。 汚職や脱税が、さしてストーりーに絡まず偶然的なものにとどまっているのも、団体の慣行の弊害を対抗物に据えないプロットと無縁ではない。主人公たちがあるべきプロレスを模索して勝利していく痛快な小説を期待したのだが、著者は格別プロレスに愛を感じて本編を書いたというわけではなく題材に使ったに過ぎないということなのだろう。それ自体は特異なことではないのだが、私としては寂しいところ。 |
『陰摩羅鬼の瑕』 2003/8/13(水) 図書カードをもらったので勢い込んで新刊書店へ。ところが本を図書券で買おうとすると、現金で買うのに比べて、なぜか必要以上に慎重になってしまう。せっかく図書券を使うのだから無駄な使い方はできないと思ってしまうのだ。なぜかと考えてみると、図書券とか図書カードとかは人から貰うものだからかもしれない。せっかく貰った図書券をつまらない本を買って無駄にするのは申し訳ないと思うからなのか。そんなわけで1冊も新刊が買えなかった小心者のオレ(^^; 『陰摩羅鬼の瑕』京極夏彦(2003年8月講談社ノベルズ)読了 冒頭、関口と伯爵がほぼ『存在と時間』をなぞるような会話をするにもかかわらず、結局本作はハイデッガーとは全く無縁のまま終わる。ハイデッガーの思想が動機だったら、あるいはもっとアクロバチックに朱子学のハイデッガー的解釈が隠された真相だったら(どんな真相だ?)、などといろいろ期待しただけにまるで拍子抜け。どれだけ無理があっても、そういうものを書き切ってくれていたら拍手喝采だったのに。ほっとしたのは前作の『宴の支度』のようなあまりにもつまらない方向には向かわなかったということだけ。 続いて不知火京介『マッチメーク』を読み始めたが、冒頭から凶器攻撃?さらに各レスラーの得意技が「四の字固め」だったり、「アルゼンチン・バックブリーカー」だったり。いったい、いつの時代のプロレスだよ? |
『木島日記』 2003/8/8(金) 今日は半休。明日は台風のため出かけられない可能性もあるため、今日のうちに本を買いに行く。行った店は「雨の日は定休日」という典型的なやる気のない古本屋。すでに多少雨は降っていたものの大雨になるのは今夜の夜半過ぎと言われているのでまさかまだ閉まってはいないだろうと思ったのですが。昼間からもう閉めてるがな、早すぎ。 別の古本屋で次の本を購入。 『オペラ道場入門』玉木正之(2000年小学館)600円 「小林幸子と美川憲一のルーツはバロック・オペラだ」、「『ニーベルングの指環』は『スター・ウォーズ』の世界」など、過激な主張が連なる異色のオペラ入門。 『マスク』ビル・プロンジーニ(1988年創元推理文庫)270円 『詩神たちの館』デイヴィッド・チャクルースキー(2002年早川書房)1000円 台風に備え新刊もまとめて購入。って、台風に備えるべきものは別にあるのでは?(^^; 『摩多羅神の贄』夢枕獏(2003年8月あんず堂) 陰陽師、坂東玉三郎、白石加代子など、夢枕獏が語る役者の魔力。 『陰摩羅鬼の瑕』京極夏彦(2003年8月講談社ノベルズ) パラパラとめくると、確かに「ハイデッガー」とか『存在と時間』とかの文字が目に映る。 『マッチメイク』不知火京介(2003年8月講談社) 本年度江戸川乱歩賞受賞作。あえてプロレスを舞台にした著者に拍手! 『氷川瓏集 睡蓮夫人』日下三蔵編(2003年8月ちくま文庫) 日下三蔵氏の解説が勧めるとおり、まず冒頭の「乳母車」を読んでみた。しんと静まった雰囲気が好ましい。 『新刊!古本文庫』北原尚彦(2003年8月ちくま文庫) 珍本・奇本、トンデモ本などの古本文庫を紹介。 『メフィスト2003年9月号』(講談社) 『IN POCKET 2003年8月号』(講談社) 『木島日記』大塚英志(平15年3月角川文庫)読了 平成12年に刊行された単行本を加筆、訂正のうえ文庫化したもの。 本書は、民俗学者折口信夫が仕分け屋木島平八郎に憑かれた昭和12年から16年に書いた「日記」を、著者が紹介するという体裁になっている。 折口の周辺で続々と起こるオカルト的な事件を、木島が、それがあってはならぬものか、あることが許されるものかを仕分けしながら解決していくのだが、せっかく折口信夫が主人公なのに、木島や、謎の少女美蘭、陸軍中尉一ツ橋などに翻弄されて、民俗学者としての鋭さをまるで発揮できないのは残念。それでも小説としてはおもしろいので近いうちに続編も読んでみるつもりです。 |
『くもはち』 2003/8/6(水) 以前から気にはなっていた、 『江戸の絵を愉しむ 視覚のトリック』榊原悟(2003年6月岩波新書) を、新刊書店で立ち読み。 狩野永徳の襖絵(ふすまえ)「四季花鳥図」のうち、四面セットの襖絵は、1枚目、2枚目が部屋の東面に沿って置かれ、連続してそこから90度屈折して、3枚目、4枚目が部屋の北面に沿って置かれているのだが、その東面の2枚目に描かれている雄の鶺鴒(せきれい)と、北面の4枚目に描かれている雌の鶺鴒が、90度屈折した位置から互いに鋭く見つめ合う図になっているのだという。 なるほど、襖絵にもそんな立体的な工夫がされているものがあるんですね。 やっぱりこの本は面白そうなので買わねば。 他に『ダ・ヴィンチ 2003年9月号』(メディアファクトリー)も購入。 特集は、「京極夏彦大特集」。宮台真司は『陰摩羅鬼の瑕』を「朱子学をハイデガー的に解釈するという大胆な発想」と絶賛しているようだが、ほんとか???勝手に宮台が言ってるだけのような気がするな。そりゃどんな思想でもハイデガー的に解釈しようと思えばできてしまうのかもしれないが、あえてそんなことをしなければならないような場面も想定しにくいし。 『くもはち』大塚英志(2003年7月角川書店)読了 柳田國男や小泉八雲、夏目漱石、シャーロックホームズなど登場人物はにぎやかだが、小説自体はなぜか淡々としていてかえって好ましい。語り手の「のっぺら坊」が怪談作家の「くもはち」に、たえずからかわれて困っているところも面白い。 「のっぺら坊が幽霊を見たって騒いでいるなんてちょっとしたポンチ絵だぜ」 「しかしだね、ぼくはこの目ではっきりと」 「だからどの目だい?」 このシリーズはこれから何冊かは続くのだろうと思いながら読んでいたのだが、最終話で様子が変る。この先は同じような物語が続けにくくなっているのだ。しかしできたらこの話をターニングポイントとするのではなく、忘れてしまったかのように、同じ設定で続けてほしいところだ。 ところで「くもはち」という名は「八雲」からとったということでいいんだよね? |
損して得とれ 2003/8/3(日) 某店で店主に、「即売会には行かれましたか?今日が最終日でしたね」と尋ねられ、 「えっ、即売会は来週でしょ」と答える。 「あれ、そうでしたか。変だなあ。あっ、これ6月のチラシだ」 その時は店主のまちがいかと思いましたが、今調べてみると確かに即売会は今週でした! ごめん、来週まちがえて行かないでね。 本を物色していると、ごみ屋さん登場。週刊誌の束をいくつも店に運び込んでいる。まさかお金を出すことはないだろうと思っていると、店主が、 「2500円でどうかな」 ええっ、こんな週刊誌でもお金になるんですか? 「買っておかないと次に来てくれなくなっちゃうからね。ごみ屋さんからは持ち込みのお客よりいい本が入ることも多いんですよ」 なるほど。大阪のあきんどは、損して得とれでんな。 購入したのは、 『綺型虚空館』梶尾真治(昭59年早川書房) 『遥かよりくる飛行船』井辻朱美(1996年理論社) 『恋の森殺人事件』岩崎昭吾(1989年立風書房) 以上、3冊で1000円 大塚英志『くもはち』を読み始めましたが、1作目は小泉八雲の葬式や夏目漱石まで登場し、出だし好調。 |
『くらのかみ』 2003/8/2(土) 古本屋に、「昭和12年頃の辞書はあるかね」と言いながら年配の客が入って来た。 店主が客を辞書の棚の方に誘導しながら、「昭和12年ねえ。英和でいいですか?」などと質問している。 「英はいらん。和だけでいいわ」 普通そうだろうなあ。店主もなぜ英和だと思ったのか。昭和12年という細かい注文に幻惑されたのだろうか。 「和だけね。これは、うーん、昭和61年ですね」 「そりゃ、新しすぎるわ」 「じゃあこれなんかいかがでしょう?明治の辞書を完全復刻したものですが、旧字体ですよ」 「どれどれ、こりゃいかん。ほしいのは実用的な辞書なんだわ」 なかなか難しい注文のようです。 店主も、「実用的な辞書ですか。それじゃあ広辞苑なんかどうです」と少々投げやりになってきました。 「そりゃ百科事典みたいなやつだろう。そういうのはいらんだわ」 「国語辞典ですよ」 「いいわ、よそで探すわ」と言って出て行ってしまい、その客がなぜ昭和12年の辞書を探しているのかは、ついにわからずじまい。はたから口をはさむわけにもいかなかったのでしかたのないことでしたが、もしそれが昭和12年に初めて使われた言葉の意味を調べているのでしたら、昭和12年刊行の辞書にその言葉が載っている可能性は限りなく低いと思うよ。 『くらのかみ』小野不由美(2003年7月講談社ミステリーランド)読了 本家に集まった登場人物は大人16人、子供6人。この中に犯人と座敷童子が隠れている。 著者は意識的に、少年少女向けとしては破格の、多数の主要登場人物と、錯綜した筋立てを持つ、高水準の本格推理小説を書こうと試みたものだろう。 大人16人が容疑者で、各事件についてその1人1人のアリバイが問題になるという、子どもが理解するにはかなりレベルが高い小説だが、著者はていねいに、作中の子どもたちが手作りする系図や地図、各登場人物のアリバイ表、時系列表などをさしはさむことにより、読者の子どもたちがハードルを越えることができるようにと工夫している。いやあ、これがないと私でも理解して読み進むことは難しかったと思うけど(^^; |
『新世界』 2003/8/1(金) 8月、ちまたでは怪談ものがはびこる季節だが、もともとミステリーやホラー、SFの類しか読まない人間には、特に読書傾向に影響はないよね(^^; 新刊購入は、 『くらのかみ』小野不由美(2003年7月講談社ミステリーランド) 四人ゲームをしていた子供たちの人数が、いつのまにか4人から5人に増えていた。 「かつてこどもだったあなたと少年少女のための"ミステリーランド"」第一回配本中の一冊。予定されている執筆陣も豪華で楽しみ。 『くもはち』大塚英志(2003年7月角川書店) 怪談作家くもはちと、のっぺら坊のむじなコンビの本格妖怪連作集らしい。 『金時計の秘密』ジョン・D・マクドナルド(2003年7月扶桑社ミステリー文庫) 大富豪の叔父から相続した金時計に隠された驚天動地の秘密。これも面白そう。 『新世界』柳広司(2003年7月新潮社)読了 「原爆の父」オッペンハイマーの未発表の遺稿。そこには原爆開発が行われていた都市ロスアラモスで起きた奇怪な殺人事件の記録が記されていた。 小説の形式としては、オッペンハイマーがあえて彼の友人イザドア・ベルの視点で書いた遺稿を、柳広司が翻訳したという形になっている。さらに、過去、未来、寓話、黙示が入り組む錯綜した構成をとった小説。 原爆が完成したことによりこの世は新しい世界を迎える。それに対する登場人物たちの慄きと、それと正反対の冷徹さ。「殺すか、狂うか」しか選択肢がない世界。作者は、それは原爆を前にしたとき、すべての者が必然的に陥らざるを得ないジレンマだという。エンターテインメントというにはあまりに深刻な内容に慄然とせざるを得ない。 なお、冒頭でカタカナとひらがなの表記が反対になっているのは新しい趣向だろう。 |
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