① 電力、電界強度Eおよびpfdの関係 電力(W)、電界強度E(V/m)およびpfd(電力束密度(W/m2))の関係についてはスプリアス発射又は不要発射に関する文書(ITU-R SM.329-12 Annex1)でオープンサイトでの測定を考慮して解説されており、その概要は以下の通りです。なお適用周波数範囲など詳細は原文でご確認ください。 完全で理想的な場合(すなわち、自由空間、遠方界の条件)には、E(V/m)、無線送信機空中線と測定地点間の距離d(m)、EIRP(W)およびpfd(W/m2)間の単純な関係を確立することができます。 E(V/m)=((30×(EIRP(W)))-1/2)/d(m) Eの最大値はハイトパターンのピークで、この値は測定アンテナの高さを調整することによってOATS(Open Area Test Site)で得られる最大値であり、概ね次のように表される。 Emax=1.6E これは4dB(20Log1.6)のサイト利得(床面反射の影響)を表しています。E(V/m)としての電界強度を次のように(dBμV/m)に変換することができます。 E(dBμV/m)=120+20LogE(V/m) pfd(W/m2)は次のように表されます。ここで、条件を遠方界としているので空間インピーダンスは120π(Ω)となります。 pfd=E2/120π さらに、pfd(dBW/m2)は次のように表されます。 pfd(dBW/m2)=10Log pfd(W/m2) ちなみに、同文書ではEIRP(等価等方輻射電力)とERP(実効輻射電力)の関係について EIRP(dBm) =ERP(dBm)+2.15(dB)と記載されていますが、国内法では小数点以下3桁を切り捨てた2.14dBが採用されています。なお、工学的には四捨五入した2.15dBが用いられるようです。 ② 3m離れた場所での電界強度(自由空間)とEIRPの換算 無線送信機空中線からd(m)離れた測定用空中線の位置での電界強度は①と同様に E(V/m)=((30×Pt(W)×Gt(倍) )-1/2)/d(m) ‥‥(1) E :電界強度(V/m) Pt:送信空中線電力(W) Gt:送信空中線絶対利得の真値(倍) d :測定場所までの距離(m) EIRPは空中線電力と空中線絶対利得の積ですから EIRP(W)=Pt(W)×Gt(倍) ‥‥‥‥‥‥(2) (2)式を(1)式に代入し左辺にEIRPを移項すると EIRP(W)=(E2×d2)/30 dBの式に書き直すと EIRP(dBW)=20LogE(V/m)+20Log d(m)-10Log30 d=3mとし、EIRPをdBm、電界強度EをdBμV/mに変換すると EIRP(dBm)-30(dB)=E(dBμV/m)-120(dB)+9.54(dB)-14.77(dB) EIRP(dBm)=E(dBμV/m)-95.23(dB) ‥‥‥‥‥‥‥‥(3) ちなみに、ITU-R SM.329-12 Annex1のTABLE7にはd=10mで計算した値が記載されており、EIRPが0dBmの場合の10mの距離での電界強度は84.77(dBμV/m)となっています。 ③ 3m離れた場所での電界強度(床面反射の影響)とEIRPの換算 無線送信機空中線と測定用空中線がともに等方性空中線であり、床面による損失がない床面反射波の場合、直接波と床面反射波の合成電界強度となりますが床面反射波の電界強度は直接波より距離が長くなる分レベルが低くなります。 ここで、測定高さ1.5mとすると、床面反射波の伝搬距離は以下の通り 床面反射波の距離 = 直接波の距離×1.414 電界強度は距離の逆数に比例(距離に反比例)して減衰するので直接波より3dB低い値になります。したがって直接波と床面反射波の合成電界強度は以下の通り 合成電界強度 = 0dB +(-3dB) = +4.7dB 一例として真数で直接波を1.0μVとすると床面反射波0.707μV 合成電界強度は1.707μVとなり、4.645dB Upします。 (3)式の右辺に床面反射波の影響を加えると、以下の式となります。 EIRP(dBm)=E(dBμV/m)-95.23(dB)+4.65(dB) EIRP(dBm)=E(dBμV/m)-90.6(dB) ‥‥‥‥‥‥‥‥‥(4) ただし、実際に使用する空中線が半波長ダイポールの垂直偏波や指向性アンテナの場合は床面反射の影響は少なくなります。したがってITU-R SM.329では①に記載した通り概ね4dBを採用しています。 |
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